Fate/Grand Order 幻想創造大陸 『外史』 三国次元演義   作:ヨツバ

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こんにちは。
FGOでは新たなイベントが発表されましたね。

新たな新規サーヴァントが3騎も登場!!
そしてNPCだったおみぃさんが早くも実装!! それだけ実装が望まれていたという事ですね。

これは新たな新イベントがどのようなものか楽しみです。



三国七夕祭り-七夕の準備をしよう②-

2022

 

乞巧節(七夕)。

どちらの伝説も1年に1回恋人(夫婦)が再会できるというロマンチックなもの。この三国志の外史世界でも人気ある伝説だ。

特に女性には織物等の上達を祈る特別な日でもある。

 

「きゃあ。とっても可愛いの~!!」

「思った通り素晴らしいですわ!!」

「とっても可愛いよ。恋ちゃん。ねねちゃん!!」

「これで今回の祭りの主役決まりだね!!」

 

四者四様の反応は全て同じで、ある2人を褒めちぎる。

その2人とは恋と音々音。彼女達はある衣装に着替えていたのだ。

彦星の衣装を恋が、織姫の衣装を音々音が。

 

「馬子にも衣装ね」

「虞美人様の評価が厳しいです」

 

何故2人が彦星と織姫の恰好をしている理由は演劇を開くからだ。

乞巧節・七夕伝説の演劇。機織り等の上達を祈るをする際に伝説を演劇にし、儀式のように見立てる。

簡単言えば祭事に組み込んでしまえという狙いだ。

 

「だって、こちのチビッ子はまだしもコイツが演技出来るの?」

「…う?」

「恋殿に失礼ですぞ。それとねねはチビじゃありません!!」

 

恋に役者として演技ができるか問題。

この問題に対して虞美人以外の全員が苦い顔をした。何せ彼女は口数少なめ、感情や表情をあまり表に出さないタイプの人間だ。

演劇をするにあたって恋は役者に向かないのではないかと思われても不思議ではない。

 

「誰よコイツに演劇をやらせようとしたのは」

「…恋、頑張る」

「恋はやると言っておりますぞ!!」

 

一応、恋はヤル気はあるようだ。

ただちゃんと練習をしてくれるかどうか分からない。

 

「……それは一旦、置いておくのー!!」

「置いとくな」

 

演劇をやるなら一番の課題である。

 

「まずは2人の衣装が似合ってるのを褒めちぎるののー!!」

「さっき褒めてたじゃない」

 

恋は彦星の恰好だ。

白を基調にした衣装で、腰に巻いた黒いリボンがチャームポイント。本来は男性服なのだが女性風いアレンジされ、カッコ良さと美しさがコラボしている。

 

「この衣装名は五色の夜なのー!!」

 

何を隠そうこの衣装を作成監督したのは沙和である。彼女は流行り物に強く、詳しい。三国一を自負している程だ。故に衣装作成班に呼ばれたのだ。

 

「五色の夜……ああ、そういうこと」

「陰陽五行説ですね」

 

七夕で五色と言えば短冊の五色。

緑(青)、赤、黄、白、黒(紫)。全ての色に意味がある。

緑(青)は木行にあたり、自然や成長・発展を意味する。徳を積む事が願われる。

赤は火行にあたり、火や血潮を意味する。先祖や親への感謝の気持ちを込めたり、魔除けを願う。

黄は土行にあたり、大地や富を意味する。金運や財産・豊かさを願う。

白は金行にあたり、鉱物や純粋さは意味する。義務や規則を守り、純潔さを保つ事を願う。

黒(紫)は水行にあたり、水や知性を意味する。学業や知恵を授かる・才能を開花させる事を願う。

七夕では人々はこれら五色の短冊に願い事を書き、笹に飾る事で願いが叶うように祈るのだ。

実は恋の衣装は白が基調だが五色全てが組み込まれているのだ。

 

「本当にとても似合ってるよ恋ちゃん!!」

「…ありがと桃香」

「流石は恋殿なのです!!」

「そういうねねちゃんも可愛いよ!!」

 

音々音は織姫の衣装だ。

桃色と白を基調としており、腹部に巻いた黄色のリボンと薄紫色の羽衣がチャームポイントである。小さな織姫を体現しており、可愛さ全開である。

 

「ああ、やっぱり貴女は逸材でしてよ!!」

「うんうん。可愛い可愛い」

 

全力で褒めちぎるは栄華。彼女は幼さある女の子が大好きだ。更に可愛い服を着させて愛でるのが趣味という性癖を持ちである。

 

「この衣装の名は星音聴姫ですわ。まさに姫の恰好に恥じない衣装!!」

「なんだか栄華殿が怖いんですが」

 

音々音は栄華の熱さに引いた。

 

「わあ。栄華ちゃんが凄い顔してる」

 

可愛さに感極まって栄華は普段では人に見せない顔を曝け出していた。

彼女の衣装を作成監督したのは栄華であり、彼女も沙和のように衣装作成班に呼ばれたのだ。

 

「わあ~。何だか黒ひげ様やバーソロミュー様みたいです」

「楊貴妃さん。何だか分からないですけど今の言葉を撤回して欲しいですわ」

 

何かを察した栄華は真顔で楊貴妃の先ほどの発言を撤回を強く訴えるのであった。

 

「うんうん。恋ちゃんもねねちゃんもとっても可愛いわん。まるでつぶらな瞳で怯えるツキノワグマのようねん」

「ツキノワグマが怯える?」

「私が遭遇した時はなぜか怯えてたわよ。とっても可愛いかったわん」

(それって熊が貂蝉さんを見て恐怖したという…)

 

熊であっても貂蝉はどうやら規格外の生物のようだ。

 

「ところで総監督。恋ちゃんとねねちゃんの評価は?」

「完璧よお!!」

 

貂蝉は七夕衣装作成班の総監督である。

総監督に選ばれたのは彼も沙和と同じで流行やお洒落に長けているからだ。もしかしなくても「え、コイツが?」とか「ほぼパンイチなのに?」とか思うかもしれないが、意外と貂蝉はセンスが抜群なのである。

故に貂蝉はすぐに沙和と仲良くなった。沙和自身も初めは貂蝉に慄いていたが会話をすればすぐに話が合って仲良くなったのである。

衣装作成時もとても為になるアドバイスも貰えている。

 

「沙和ちゃんも栄華ちゃんもとっても腕は良いわぁ!!」

「まあねなの!!」

「この私にかかれば造作もありませんわ」

 

沙和は貂蝉にバッチグーと親指を立てた。そして栄華は貂蝉に背中を見せていた。

 

「栄華ちゃん。何で背中向けてるのー?」

「普通ですわ」

「栄華ちゃん。人としてちゃんと顔を合わせて話すが普通だとユウユウ思う」

「いえ、親しき仲にも礼儀ありですわ」

「あの…栄華さん。今の会話が繋がってないよ?」

 

栄華にとって貂蝉は視界に入れたくないようだ。

 

「栄華ちゃん。普通に失礼だよ?」

「それは認めますが…こうでもしないと私の精神が崩壊しますわよ。それはもうあり得ない程に」

「それ脅しのつもり?」

 

嫌な脅しだ。

 

「うっふん!!」

 

貂蝉がポーズを取るが栄華は視界に入れない。しかし何故か怖気を感じるらしい。

 

「面白いイベントになりそうねん」

「くだらないわね。そもそも何で私なんかを衣装作成班に呼んだのよ」

 

虞美人が何故、七夕衣装作成班に呼ばれたか。それは彼女の衣装がなかなかセンスがあるからだ。

沙和は虞美人の衣装センスにビビっと反応したからこそ衣装班に呼んだのである。

 

「私は面倒だから手伝う気ないわよ?」

 

虞美人は我関せずという感じに茶を啜る。

 

「そんな事言わずに虞美人様も手伝いましょうよ~」

「面倒」

「ユウユウも手伝いますから~」

 

楊貴妃は虞美人を皆の輪に入れようと画策するが意味無し。余計なお世話かもしれないが桃香も虞美人には皆と仲良くなって欲しいと思っている。

 

「きっと虞美人様が織姫の衣装を着たら項羽様も惚れ直しますよ~」

「む」

 

ここでピクって反応する虞美人。彼女にとって「項羽」という言葉を出せば少しは気を向けてくれるのだ。

ただ、「項羽」という言葉を不用意に使って気を引こうとするものなら怒りを触れるだけだが。

 

「項羽様は今の私を素晴らしいと言ってくれるのよ。今さら新しい服を着た所で…」

「でもカルデアで虞美人様の新しい衣装や水着姿を項羽様がとても見とれていましたよ?」

「うむう」

 

英霊祝装や英霊祭装等々の虞美人を項羽が見てとても絶賛していた。そして虞美人は項羽に褒められて恋する乙女状態である。

 

「虞美人様も織姫の衣装を着ましょうよ。そして項羽様にも彦星衣装を着てもらいましょう!!」

「畏れ多いわよアンタ」

 

ギャイギャイと話す虞美人と楊貴妃。しかし虞美人も項羽の新たな衣装を見てみたいという欲はあった。

 

「虞美人ちゃんと項羽の織姫と彦星か。良いかもねん」

 

織姫と彦星。虞美人と項羽。どちらも似たようなものでありながら結末が全く違う。

 

「でも虞美人ちゃんと項羽が七夕伝説の演劇に出たらそれはもう…七夕じゃなくて虞美人ちゃんと項羽のお話になっちゃうわねん」

 

七夕伝説が覇王別姫なりそうだ。

 

「あとそろそろかしらね?」

「そろそろ?」

「新しい役者のと・う・ちゃ・く」

 

七夕衣装を着る者たちは恋と音々音だけではない。七夕伝説の演劇には彦星と織姫以外にも登場する人物はいる。

その役者に選ばれた栄光なる物たちが衣装作成班の元に訪れる。

 

「あのー、呼ばれてたので来たのですか」

「この私を呼ぶとはなに用だ。全く…七夕料理とやらで忙しいのに」

 

七夕衣装作成班の元を訪れたのは月と傾である。

 

「あ、やっと来たのー」

「沙和さん。私達に何か用でしょうか?」

 

沙和がビシィっと指を2人に向けてポーズを取る。

 

「2人は七夕伝説の役者に選ばれたのー!!」

「ええ!?」

「おい、全く話しを聞いてないぞ」

 

初耳の2人。そもそも彼女たちは七夕料理班だったので七夕伝説の演劇に出るとは思いすらしなかった。

 

「うん。だってさっき他の役者は誰にしようかって考えてたら2人の名前が挙がったからなの」

「私たちが呼ばれるついさっき決まったのですか」

「急すぎるだろう」

「推薦者はこの方たちなのー」

「月なら織姫役が似合うと思うわ」

「姉様なら牛荷車役が似合うと思うわ」

 

2人を推薦した者たちは詠と瑞姫。ひょっこりと登場。

 

「詠ちゃん!?」

「瑞姫が推薦してくれたのならしょうがないな……牛荷車役?」

「詠ちゃん。織姫役はねねちゃんじゃないの?」

 

既に織姫役は音々音で決まっているのに月が織姫役とはこれ如何に。

月の性格上、誰かの配役を奪うような事はしたくない。それが詠から推薦だとしてもだ。

 

「大丈夫よ月。せっかくだから七夕伝説とやらも少し脚本を変えても良いんじゃないって話しになったから」

 

時代によっては原作脚本を多少なりともアレンジを加えたり、結末を変えたりするようなものもある。

 

「だから織姫がもう1人増えたっていいじゃんって思ったのー!!」

「そうなると彦星役もあと1人増えるわけですか?」

「そうなるのー。まあ、恋ちゃん彦星1人のみで織姫2人ってのも面白いけどね」

 

沙和たちによる脚本で七夕伝説がアレンジされる。

 

「うんうん。織姫役をしたいって女の子はいっぱいいるからねん。織姫は女の子の憧れよ」

 

貂蝉が「私もしたいわねん」とか言っているが全員が無視した。何せコメントしにくい。特に栄華は極力、貂蝉を視界に入れないように努めていた。

 

「織姫は女の子の憧れだけど愛する人に1年に1回しか会えないのはちょっと…って感じですけどね」

「確かにユウユウちゃんの言う通りかもー。沙和も好きな人と1年に1回しか会えないとか嫌」

 

そう考えると織姫と彦星の忍耐力と愛の強さは凄まじいと言える。

 

「まあ、ともかく今は月ちゃんと傾さんにはコレを着てもらうのー!!」

「ええ、そうですわね」

 

沙和と栄華が2着の衣装を取り出し、それぞれを月と傾に渡した。

 

「じゃあ着てなのー!!」

「ふえ、本当に着るんですか?」

「月なら似合うわ」

「ほら、姉様も着て着て」

「瑞姫が言うなら…しかしコレは七夕衣装とやらなのか?」

 

何はともあれ着替えにいく月と傾であった。

 

「さーて、2人が着替えている間に七夕伝説の脚本を改良するのー!!」

(改良が改悪にならないように話しをまとめないといけないとですね)

 

楊貴妃は皆の意見をまとめ、良い方向に進むように調整役をそれとなく担うのであった。

 

「やっぱり織姫と彦星が出会ったら買い物するのー!!」

「買い物…天の川に露店とか加えます?」

 

天の川に露店が並んでいるのは面白そうではある。

 

「1年ぶりの夫婦の逢瀬。語りたい事はたくさんあるんでしょうね」

「それはそうですけど演劇で語るだけの場面は良いのでしょうか。いえ、語り部を入れて彦星と織姫の愛の強さを前面に出すのも良いかもしれません」

「1年ぶりの夫婦の再会でしょ。そりゃあ夜は猛烈に熱く盛り上がりそうねん」

「それはそう…でも全年齢の演劇ですよ貂蝉さん」

 

なかなか既に出来上がっている脚本を改良・アレンジは難しいものだ。

 

「あ、あの…着替えてきました」

「何だこの衣装は!?」

「お早い着替えだったのー」

 

体感1分も着替えていないような気がするがツッコミはしない。

 

「おお~~。とっても似合ってるの~~!!」

「流石は月さん貴女も逸材でしてよ。これでもう少し幼かったら私好みでしたのに」

「ちょっと栄華……でも、似合ってるのは確かよ月」

「うんうん。とっても似合ってるよ月ちゃん。天女顔負けの可愛さだとユウユウ思います!!」

 

皆が皆、月の織姫姿を褒めてちぎる。

 

「…とっても似合ってる月」

「とても似合っておりますぞ月殿」

「ありがとうございます。恋ちゃんとねねちゃんも可愛いですよ」

 

彦星の恋と織姫の音々音。とても華やかで可愛らしい雰囲気が広がる。

 

「それにしても本当に似合ってるわ。ねねには悪いけど織姫の役は月のものね」

 

月の織姫衣装。浅紫色を基調にした衣装であり、気品を醸し出す。

衣装名は織姫星織姫。

可愛さと気品を併せ持つ姿であり、羽衣もあいまって楊貴妃が褒めたように天女顔負けと言われても納得である。

 

「もう詠ちゃんったら。ねねちゃんも織姫役としてぴったりですよ」

「月殿にそこまで言われるとねね少し恥ずかしいですね」

「…ねねも可愛い」

「恋殿~~!!」

 

好きな人である恋にも太鼓判を押されて嬉しいわけがない。感極まるのもおかしくない。

 

「しかしここで雰囲気がガラリと変わっちゃう衣装が来ましたね」

 

楊貴妃がチラリと傾の方に視線を移す。

 

「ふっふっふー。瑞姫さんの衣装案を元に作ったのー!!」

「とっても似合ってるわよ姉様」

「これ牛の姿ではないか!!」

 

傾の衣装は牛荷車をイメージした服なのだが、どう見ても牛娘衣装だ。

牛柄ビキニのような衣装に牛柄のレッグウォーマー、アームスリーブ。牛耳角のカチューシャ。

まさにセクシー牛娘である。衣装名はそのまんまの牛荷車役。

月たちの衣装は可愛さと気品さがあったが傾の方は完全にアダルト方面に偏った。

 

「黒豹の衣装も見たけど姉様はやっぱこういう路線ね」

「おい瑞姫。何で私は畜生の衣装なのだ!?」

「似合うと思ったからよ」

 

瑞姫の顔に嘘は書いていない。本当に似合うと思ったからこそ衣装案を沙和に提出したのだ。

 

「でも実際に似合ってますよ傾さん」

「はい。似合ってます傾さん」

「そうねー」

 

楊貴妃は褒め、月と詠もまた似合っているという言葉に嘘はついていない。

 

「こういう牛の恰好は私ではなく、紫苑や燈、真桜とやらが似合うだろうが!!」

 

何故、紫苑たちチョイスなのか。

 

「まあ、確かに真桜ちゃん似合いそうかもー」

(確かに紫苑も似合いそうね…)

 

沙和や詠も何故か紫苑たちが牛の衣装が似合うと妙に納得してしまった。

 

「それで牛荷車役って何するんだ?」

 

七夕伝説で牛(牛荷車)は彦星(牽牛)の象徴である。

伝説の中では彦星は妻である織姫(織女)が天帝の怒りに触れて天に帰されてしまった際、苦楽を共にしてきた老牛の皮を纏って天へ昇る。

この牛の犠牲によって、彦星は織姫を追いかけることができたというものだ。世間一般的というのもなんだが、あまりその部分を詳しく知っている者は少ない。

 

「私は犠牲になるのか!?」

「それだと可哀相だから傾さんには牛荷車を引いて天に登ってもらう役になってもらう事になりました」

 

ニコっと笑顔の楊貴妃。そしていつの間にか用意された牛車を見せた。

 

「これを引っ張るのか!?」

「軽いわよん?」

 

貂蝉から軽そうに簡単に牛車を引く。

 

「貴様にとってはな!?」

「更にこの牛車には彦星役が乗ります」

「大将軍たる妾が…畜生になり、人を乗せた牛車を引っ張るとかありえんだろうが!!」

「やりなさい」

「ええ、やりなさい」

「ふざけろ!!」

 

栄華と詠が命令するのであった。

 

「こんな役をやるなら何かしら褒美でもない限りやってられんぞ」

「あ、大丈夫よ姉様。ちゃんと褒美を貰えるようにしたから」

「なに、そうなのか?」

「ええ。うふふ」

 

含みのある瑞姫に「それなら…」と我慢する傾。彼女は妹の頼みやお願い等には断れない。

 

「そして最後の最後に今回の大物出演者が登場なのー!!」

「「「え」」」

 

大物出演者と聞いて「何それ知らない」といった顔をした月や詠たち。

 

「着替えたわ沙和」

「とてもお似合いです空丹様」

「ええっ、空丹様!?」

 

現れたのは空丹と黄であった。そして皆の視線を集中させたのは空丹である。

彼女の衣装は普段と少し違う。少し違うというがちゃんと七夕衣装である。彼女の七夕衣装は天帝だ。

七夕伝説では彦星と織姫の堕落を怒り、1年に1回再会できるという救済措置を与えた張本人。

 

「空丹様が演劇に出られるのですか?」

「ええ、面白そうだし。普段は見てるだけだけど今回は私が出てみるの」

 

空丹の天帝衣装は普段の衣服を高級感溢れる黒色にしたような衣装である。

衣装名はいじわる天帝。尤も天帝はいじわるをして彦星と織姫の仲を裂いたわけではないのだが。

彼女の性質と霊帝という身分も相まって天帝というパワーワードに負けていない。

一般人が彼女の姿を見れば首を垂れてもおかしくない雰囲気である。

 

「ところで私は何するの?」

 

空丹は七夕伝説の演劇をするという事自体をよく分かっていない状況であった。

自分で演劇をしてみると言っておきながら状況を理解していない。今だに傀儡皇帝であった弊害が残っている。

北郷一刀たちは少しでも空丹に世の中の事を教えようとしているが、その邪魔をするのが黄である。

黄も空丹を傀儡にしたいわけではなく、『天子』という神聖な存在として在り続ける為に外界を断絶させたいというだけだ。

 

「そんな黄をよく説得させたわね」

「そこは沙和さんのおかげですわ」

 

普段であれば黄は絶対に反対したはずだ。

 

「黄。似合ってるかしら?」

「とてもお似合いです空丹様!!」

 

恐らく心の中では今でも反対であるが空丹が「やってみたい」となってしまえば黄はよっぽどの事がなければ最終的には折れるのだ。

 

「沙和の交渉術のおかげなのー!!」

 

天帝役を誰にするかと話題になった時、まず「天帝」なのだから役とはいえ人は選ばれる。

三国の王か、天子姉妹か、はたまた始皇帝か。誰にするかとなった時、瑞姫や沙和の推薦で空丹に決まったのだ。

 

「沙和の交渉術は凄かったわ」

「へえ、そうなの。沙和にそんな交渉力があったなんて意外ね」

 

詠は意外と言いながらも普通に沙和の交渉力を褒めた。

 

「ええ。ほぼほぼ勢いだけで黄を頷かせたわ」

 

沙和の人の話を聞かない、言い訳させないマシンガントークと鬼教官トークで黄を黙らせたと言ってもいい。

 

「それ交渉してないんじゃない?」

 

結局のところ空丹が「やってみたい」と言い出した事で黄は反対できないというのが本音である。

 

「うんうん。可愛い彦星に織姫に天帝が登場したわねん。これで七夕伝説の演劇も面白くなりそうだわん」

 

微笑ましく皆を見守る貂蝉。

 

「……彦星ちゃんと織姫ちゃん元気かしらね。それと…天帝と語り合ったのも遠い昔ねえ」

(何かコイツとても意味深な事を言ってるわね)

 

七夕衣装に全く興味無く、空気に徹していながらお茶を啜り、月餅を齧っていた虞美人。貂蝉の意味深な独り言が耳に残ったが無視する事にした。

 

「そうだ月ちゃん」

「何ですか沙和さん?」

「月ちゃんが織姫役だとあと1人彦星役を決めるんだけど…誰か彦星役でやって欲しい人とかいる?」

「ふえっ」

 

彦星役を月自ら決められる。それは見方によれば自分の好きな人を推薦出来るという事だ。

ただでさえ織姫と彦星は夫婦役。相手が女性であれば友達同士で済ませられるが、相手が男性なら意味深になるものだ。

 

「え、えーっと…その」

 

頬が赤くなる月。

 

(ど、どうしよう。ここは詠ちゃんって言うべきかな)

 

詠は月にとって親友である。彼女を彦星役として推薦する事は何も変ではない。しかし月の心に藤丸立香の顔が過った。

 

(立香さん…)

 

月は藤丸立香に対して大きな想いがある。しかしなかなかその想いを開放できず、心に閉まったままだ。

 

時折漏れ出る事もあるが大概は閉まっている。しかしある時から、その想いが強くなってむず痒くなっているのだ。

誰かが藤丸立香と仲良くしている姿を見ると焦るような気持ちになる。心がチクチクと痛い気がする。

 

特に南蛮で起きた事件後からかもしれない。何処からどう見ても一部の者達と藤丸立香との距離が精神的にも物理的にも近くなっている。

その他にも呉から戻って来た時やひな祭りや宝卵探し祭り、炎蓮たちの昔話等の後からも急激に距離感が近くなった者達も多々いる。

 

(何かあった事は確かです…なら私も…)

 

藤丸立香と精神的にも物理的にも距離を縮める。絆を深めるに月は今より一歩前進しなくてはならない。

 

「り…立香さん」

「おー、藤丸さんね。分かったなのー!!」

 

本人の知らぬ間に藤丸立香が彦星役に決まる。

 

「え、マスターが彦星やるんですか。ならならユウユウも織姫やります!!」

 

ここに来て楊貴妃も織姫役を立候補し始めた。

 

「このままだと演劇で彦星1人に織姫2人になるわね……修羅場?」

 

恋と音々音ペアは問題ない。しかし月、楊貴妃と藤丸立香トリオになるとロマンチックな七夕伝説が修羅場な伝説になってしまう。

1年1回の再会で彦星が天の川に来たと思ったら織姫が2人いたという。言うなれば男がデートの待ち合わせに行ったら女が2人いたような状況である。

 

「え、なに…ロマンチックな演劇じゃなくて修羅場の演劇でも始めんの?」

 

虞美人の素朴な疑問であった。

 

 

2023

 

 

ある河沿いに鬼が1体。そして高貴な和風衣装を来た者が1人。

 

「願望成就計画の話は聞いたか?」

「ハイ」

「本当に願いが叶うと思うか?」

「少ナクトモ 私ノ願イハ 叶イマス」

「まあ、其方はな」

 

鬼の願いとは愛する者(鬼)との再会だ。

この鬼は、彼女の名前は倫安鬼。織姫のような服を着ており、ボロボロの羽衣を纏っていた。

彼女もまた短冊が吊るされた笹を持っている。

 

「私ハ彼ニ会イタイ。ソレダケガ 私ノ願イナノデス」

 

倫安鬼はまさに恋する乙女。否、愛する夫を待つ健気な妻のようであった。

 

「健気で良い女だよ」

「貴方様ニ ソウ言ッテクダサルトハ 嬉シイ限リデス」

「なのに其方が鬼となるとはな」

 

倫安鬼は元人間。夫を愛する健気な奥さんであり、悪人のような雰囲気は感じられない。

そんな元人間が何故、鬼になってしまったのか。普通におしどり夫婦であれば夫婦共に鬼になる未来は選ばない。

 

「朕が言うのも何だが…何で鬼になったんだ?」

「何故デショウ…私ニモ分カリマセン」

 

自分自身も何故、鬼になったか分からない。しかし誰かによって鬼にさせられたわけでは無く、自ら進んで鬼になったのだけは覚えているのだ。

 

「タダ彼に会イタイ。ソレダケノ理由 ダッタカモ シレマセン」

「愛故か」

 

愛する夫の為に鬼となる妻。愛する妻の為に鬼となる夫。

 

「醜くい鬼に成ろうとも愛する者と会う為か。朕が愛する民だよ其方は」

「アリガトウゴザイマス」

 

願望成就計画は七夕伝説を元にした計画。

倫安鬼は愛する者である怠劫鬼を待つだけだ。ただ待つだけ。

 

「其方は待つだけか」

「待ツダケデス。タダ…待ツダケ トイウノモ 難シイモノデス」

「待つだけ程、簡単なものはないだろう」

「イエ、私タチノ愛ヲ 邪魔スルモノハ 多イノデス」

 

笹に吊るされた短冊には願い事が書かれている。個々の願い事は全ての者たちが肯定するわけではない。

誰かの願い事が誰かによっては否定したい願い事でもある。

 

「そうさな。この願い事は…三国は否定したいか」

 

故に怠劫鬼と倫安鬼の再会を邪魔する事もある。

いずれ2体の鬼の目撃は三国に知らされる。間違いなく、于吉や五胡勢力の差し金と思われて三国が出張ってくる。

願望成就計画の情報を知られれば間違いなく2人の再会を邪魔してくるはずだ。

 

「私ハ待ツダケデス。シカシ…彼ノ為ニ 必ズ待チマス。ドンナ弊害ガ来ヨウトモ 私ハ愛スル夫ヲ 出迎エルノデス」




読んでくださってありがとうございました。
次回の更新は2週間以内をまた目指します。


2022
七夕衣装についてキャイキャイと話合う乙女+漢女たちでした。
七夕衣装を着る恋や月たちはサービス終了した恋姫†英雄列伝からのモノです。

七夕の短冊の色にも意味があったとは知らなかったなあ。

今思うと七夕イベントってFGOで無い気がするなあ。
過去にお月見イベントがあったからちょっとした軽めの七夕イベントがあってほしい。


2023
鬼side
少しずつ七夕準備をする三国に居へんが迫っています。

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