Fate/Grand Order 幻想創造大陸 『外史』 三国次元演義 作:ヨツバ
更新がまた遅れて失礼しました。
FGO。
フロリアンイベント…面白かったです!!
いやあ、なかなかしんみりくる物語でした。敵の願いも否定しずらい者でしたね。
花咲じいさん…アンタ良い人すぎだよ。でも善人すぎるのも駄目ってのを今回の話で知れましたね。
フローラもおみぃさんも良いキャラでした!!
そして張角が今回の話しで良い活躍してましたよ。カッコよくも何してんじゃって感じで
そしてそして来週にはVDイベントが!!
恋姫
恋姫†大戦が2月5日にリリースされましたね!!
私はまだプレイしてませんが今後の物語の展開が気になります!!
2024
「うぐ…ふぐっ…うう…」
北郷一刀は男泣きをしていた。いきなりすぎて理由を知らない人は意味が分からない。
ただ誰であっても理由なく泣くわけがない。彼が男泣きをする理由は目の前の武人が過去を語ってくれたからである。
その武人の名は項羽。
「如何した北郷一刀よ」
項羽は己の過去を語っていたら北郷一刀が男泣きをしたので「はて?」といった感じだ。
「項羽さんの過去がまさかそんな真実だったなんて」
北郷一刀が男泣きをしているのは項羽の過去(真実)を聞いたからである。
項羽。秦王朝を滅ぼし劉邦と次なる天下を争った「西楚の覇王」。
残虐非道な虐殺の数々。無双の武人であり、最凶の王と語られる。首尾一貫しない政策で自陣営を自壊させていったという愚王とも言われた。
武人として最凶と挙げられるが王としては暗君だったと良くも悪くも語られた。しかし彼には歴史に埋もれた真実があるのだ。
「まあ、オレもその事実を聞いた時はね」
「指導者も如何した?」
「一刀の気持ちに同調してる」
項羽の正体は始皇帝が仙界探索の途上で回収した哪吒太子の残骸を元に設計した高速演算能力を持つ人造人間。
彼が起動した時、最初期にプログラムされた目的意識があった。それは天下泰平である。
天下泰平の実現は早いければ早いほど良いはずだ。早期実現のために行動するべく始皇帝の死によって腐敗しきった秦の政府を見限り、次に天下を統治すべき者を探し始めたのだ。
その者こそがちに漢王朝を興す龍の因子を持つ天命の男・劉邦。
劉邦は才があるとはいえ当時はまだただの任侠人の内の一人に過ぎなかった。叛徒が蔓延る今の情勢ではふとしたことで踏み潰されかねなかったのだ。
「昔の劉邦って最初から凄かったわけじゃなかったのか」
「まあ、人間 最初から何でも完璧にこなせるわけじゃないしね」
「そりゃそうか」
そこで項羽はあえて自らも叛徒として名乗りを上げるとともにのちの劉邦の障害となるであろう勢力を先んじて平定し始めたのだ。
力による平定をあえて行うことにより、それを良しとしない有志の徒を劉邦の元に集めさせ、劉邦の皇の器ができる時を稼ぎつつ自らをそれ以外の世の乱れを納める『箱』としたのである。
しかし項羽が奸賊を束ねても尚劉邦の器は完成には至らならず、結果項羽は悩んだ末最後の手段を決意することとなるのだ。
最後の手段とは今の劉邦の器でも統治できる規模にまで天下を縮めることである。
「何でっ!?」
「ぐっちゃんパイセン曰く…劉邦は遅咲きだったんだって」
虞美人によれば遅咲きで力足らずであったため、彼に先んじて群雄を平定して成長の猶予を作ったが間に合わなかったのだ。
当時の劉邦の実力では中華全土を治めるには足らなかった。項羽はそう予知すると彼でも治められるサイズまで中華を「縮める」ために大虐殺を行ったのだ。
天下泰平の早期実現の為、あまりあるほど広大な農地が叛徒に渡らぬ前に焼却した。里を追われ飢えに苦しむ民が暴徒と化す前に虐殺した。治めきれぬ土地と数え切れぬほどの民を切り刻んだのである。
それは人間の観点からすれば、まるで無益な暴政であり魔王の所行に他ならなかった。
「まあ、真実を知らなきゃ…そう思うよなあ」
その人倫から逸脱した行いにより、魔王項羽を討伐せんと劉邦の元に世は一つとなり最終的に項羽は劉邦達に敗れ戦死。
結果として秦亡き後の混乱期たる楚漢戦争はわずか4年で終息し、新たな王朝『漢』が誕生したのである。
「うぐ…くっ…ふぐぅぅ…項羽は皆の為にやったんだよな。確かに苛烈すぎるかもしれないけど全てが民の為に」
項羽のやった事は苛烈すぎた。しかし『悪』として民を苦しめるためではなく、天下泰平の為に。
(確かに大虐殺はやりすぎだ…でも当時からすれば仕方なかったのかもしれない。項羽は裏の英雄だったんだな)
現代の価値観を持つ北郷一刀にとって項羽のやった事は苛烈すぎだ。共感できるものではなかった。
しかし真実を聞けば思う所はある。項羽は誰にも理解されず、歴史的にも暗君・暴君と刻まれようとも天下泰平のために自ら悪となったのだ。
「もう項羽は漢じゃねえか!!」
「我は人造人間だが性別は男であるのは違いない」
「そういう意味じゃないんです!!」
平和の為に自ら悪となる漢。こういう存在に北郷一刀は弱かったりする。そして藤丸立香もまた刺さる。
「項羽はカッコイイって一刀は言ってるんだよ」
「私が…カッコイイ?」
「ああ。項羽はカッケェ漢だ!!」
「それで泣いているのか。ふむ…理解が難しい」
北郷一刀の漢泣きと藤丸立香の項羽を褒める理由が良く分からない。
過去で実行した天下泰平は項羽にとって「そうすべき作業」だった。褒められるものではないと思っていたが2人の感情を読み取ると何故か顔が緩む。
「理解が難しいが…悪くない気分だ」
項羽が「フッ」と微笑した。
心の中で藤丸立香と北郷一刀が「「項羽が笑った!!」」と同じ事を思うのであった。
「ここから項羽とぐっちゃんパイセンの話に移行しようか」
「項羽と虞美人さんの?」
「ああ。こっからはもう凄いから」
「そんなに!?」
「聞いたら今後、項羽とぐっちゃんパイセンが尊い存在になるから」
「覚悟しよう」
北郷一刀が正座した。
「項羽。またぐっちゃんパイセンとの話が聞きたいんだけど」
「愛する虞との話をするのは構わない。しかし…」
「「しかし?」」
「これから行くべき所がある」
「行くべきところ?」
「うむ。指導者よ 動くのであれば機動力がある者たちを編制せよ」
項羽はそう言って駆け出してしまった。
「項羽がどっかに行ったんだけど…立香は知ってる?」
「いや、知らない。項羽は未来演算で最短行動をするから時たま理解出来ない行動があるんだ。でも全て皆の為に動くんだ」
項羽が急に何処かに駆け出した。その理由はその後に来る緊急報告で理解する事になった。
「い、急ぎの報告ですっ。鬼を発見致しました!!」
慌てた兵士による報告に藤丸立香たちがざわついた。
「これは…そういう事!?」
項羽がいきなり出撃した理由はすぐに理解できた。
北郷一刀たちはすぐさま翠たちに声を掛けて出撃準備をするのであった。
2025
ある鬼が長江へと向かって全速力で疾走している。
「エッホ エッホ エッホ。怠劫鬼ガ 倫安鬼ニ 会イタイッテ 伝エナキャ!!」
ある鬼とは怠劫鬼。ただ愛する人に会いたいが為に鬼となり、全力で長江まで大陸横断をしている。
「ウオオオオオオオオオオ 待ッテイテクレ 倫安鬼!!」
怠劫鬼は愛のパワーで疲れ知らずで全速力。
「目標を補足。これより討伐に移行する」
項羽が怠劫鬼を補足。四本の剣を構え、疾走する。
「…見つけた。セキト行く」
怠劫鬼を追いかけるは項羽だけでなく、恋も追いかける。
今「セキト」と言ったが犬の方ではなく、馬の方である。
「ヒヒン。この呂布奉先に任せれば鬼の脚等に負けません!!」
UMAの赤兎馬もいる。
「あの鬼…相当な脚力ですね。我らが操る馬からどんどん引き離してます」
「張遼隊を率いるウチが鬼なんかに負けれへん!!」
「この馬超。馬に乗って敵に追いつけられねえなんて鼻で笑われるぜ!!」
「私だって馬の扱いには長けてるんだからな!!」
今回の鬼は機動力が強力だ。故に追いかけるは機動力に優れた者達が急遽選ばれたのだ。
その者たちが項羽、恋、赤兎馬、蘭陵王、霞、翠、白蓮。
馬に長けた者たちや馬その者、機動力が馬以上の存在が怠劫鬼を追いかける。
「しっかり掴まっててくださいマスター!!」
「振り落とされんなよ。ご主人様!!」
「「お、おう!!」」
藤丸立香は蘭陵王と一緒に、北郷一刀は翠と一緒に馬に乗っている。
「あ、ご主人様。こんなとこで変なとこ触るな!!」
「こんな状況でスケベするわけないからな!?」
ただの不可抗力である。
「しっかし…あの鬼は彦星っぽいな」
「一刀もそう思うか」
「ああ。七夕やってる俺らに合わせてんのかっていうくらいだろ」
理由は謎だが怠劫鬼は七夕伝説の彦星をモチーフにされているように見える。
まだ藤丸立香たちは知らぬ事だが怠劫鬼は七夕伝説の彦星と似たような境遇でもある。
「そこ鬼。お前何者だー!!」
「私ハ怠劫鬼!!」
北郷一刀が声を掛けると思いの他、すぐに返答が帰って来た。
「何が目的だ」
今度は藤丸立香が声を掛ける。
「私ノ目的ハ タダ1ツ。愛スル者ノ再会ダ!!」
返答をしてくれる怠劫鬼だが疾走は止めず、顔も向けない。
ただただ疾走し、愛する人に再会する為に全速疾走。
「愛する人と再会?」
怠劫鬼が彦星のような鬼だとすると、彼の発言から織姫のような鬼がいるという事だ。
現段階では藤丸立香たちは鬼一体。怠劫鬼だけが現れたとしか把握していない。
新たな鬼の出現が示唆されたのだ。
「指導者よ問題無しである。我が妻が既に対応している」
流石は項羽と言うべきだ。実は鬼がもう一体出現していた事を未来演算で予測し、虞美人を向かわせたのだ。
出来れば未来演算で予測していたのであれば話して欲しいものだが彼は多くを語らない。必要最低限の事を語るのが項羽である。
「そして奴をもう一体の鬼と再会させてはならぬ」
「再会させてはならぬ?」
「再会さちゃいけない?」
「うむ。可能性は低いが零ではないと計算された」
項羽は未来演算で「何か」を予測した。その「何か」とは項羽が動く程の異変という事だ。
可能性は低いと言う項羽だが万が一の事を考えた結果、鬼二体。もしくは一体だけでも確実に排除しなければならない事態なのだ。
「項羽。計算した結果何を予測したの?」
「三国の崩壊である」
「「「「なっ!?」」」」
まさかの答えに翠や北郷一刀が驚く。何せ怠劫鬼がもう一体の鬼と再会すると三国が崩壊すると言うのだから突拍子もない。
「何でだ!?」
翠が全員を代表してツッコミを入れた。
「恐らく儀式的な術式が奴に組み込まれている。奴がもう一体の鬼と再会した時に術式が起動する可能性が高い」
「何がどうやったら鬼同士が再会したら三国が滅ぶんだよ!?」
「奴が持つ笹…正確には短冊を見よ」
短冊は笹に何枚か飾らている。そして短冊には何かしら願い事が書かれていた。
目を細めて短冊に書かれている文字を何とか読む。
「えーっと…炎のように熱い男になりたい?」
「それではない」
「波を撃てるようになりたいってなんだ?」
「それでもない」
短冊は複数枚ある。
「金持ちになりたいってのあるけど…鬼も金が必要なんやな」
「それも違う」
「何々…左慈と愛の結晶を作りたい。黒幕は于吉の野郎じゃねえか!!」
「それも違うが黒幕は正解」
今回の鬼を動かしたのは于吉で間違いない。ただ願い事に関してはノーコメント。
もしこの場に左慈がいたら于吉の短冊を細切れにして燃やしていたはずだ。
「三国が崩壊崩壊しますように…アレか」
短冊の中に不穏な1枚があった。他にもノーコメントな短冊もあったが置いておく。
「七夕伝説の彦星と織姫に何て事を願ってんだ于吉の野郎」
「でも何で二体の鬼が再会すると三国が滅ぶんだよ!!」
「願い事…儀式、術式。七夕伝説。彦星のような鬼…まさか織姫のような鬼がいるとしたら」
藤丸立香がブツブツと呟きながら考え始める。
項羽の未来演算によれば鬼二体が再会すれば三国が崩壊する。怠劫鬼が持っている笹に吊るされた短冊が三国崩壊と記されている。
七夕伝説をモチーフにした鬼の可能性が二体。これではまるで于吉が、五胡が三国崩壊を七夕伝説に願っているようだ。
「儀式に術式……まさか、そのまんま七夕伝説を元にした術式なのか?」
そうなると鬼同士を再開させてはならないという項羽の言葉が理解出来る。
「何か分かったのか立香」
「たぶん…鬼同士が再会して三国が滅ぶという意味が理解出来たかもしれない」
予測出来た答えは簡単だ。項羽が言った儀式・術式というのが、そのまんま七夕伝説を元にしたモノなのだ。
七夕伝説では短冊に書かれた願いを叶えるには彦星と織姫が再会した日に2人が願いを叶える。ならば彦星のような鬼が会いに行く鬼は織姫のような鬼。
彦星のような鬼と織姫のような鬼が再会し、願いを叶える魔術的儀式という可能性が大いに出た。
「おいおい…そんな儀式で三国が崩壊させられるってのか!?」
「項羽は可能性は低いって言ってたよね」
項羽を見ると「然り」と呟いた。
もしも彦星のような鬼と織姫のような鬼が再会しても七夕伝説のように願いが叶う可能性は低いという。しかし可能性という低いというだけでゼロではないのだ。
万が一の可能性があると計算結果に出たからこそ項羽が出張っているのだ。
「黒幕が于吉であれば、どんな妖術を組み込んでいるか分かりません」
「え、えーっと。じゃあどうすればいいんだ?」
翠がシンプルな答えを求めた。
「鬼を倒す」
「そりゃ簡単な問題だな」
三国崩壊を止めるには鬼を倒せばいい。簡単な解決方法である。
2026
江東の河付近にて鬼が一体だけ岩に座っていた。その姿はまるで誰かを待っているかのようだ。
「居たわ。項羽様の計算通りね」
「女性の鬼…」
「なんだかねねたちが来ている服と似ているような気がします」
虞美人は項羽に頼まれ、指定された場所に辿り着いていた。
項羽の未来予測によると、この場にいる鬼を仕留めないと三国が滅ぶと計算された。
三国が滅ぶという確率は低いが可能性は零ではない。それ故に項羽は愛する虞美人に頼んだのだ。
「何だか待ってるみたいです」
「ええ、待ってるんでしょ。鬼の彦星とやらを」
虞美人は鬼が二体存在し、それが七夕伝説を模倣した儀式である事も意外にも理解していた。
七夕伝説で彦星と織姫が願いを叶える。その模倣で願望成就をさせようというのだ。
「大人しいですわね」
「あらあら…あの鬼は男を待つ乙女ねえ」
「ひっ、何で貴方がここに!?」
貂蝉がぬるっと現れたので驚いた栄華。
「えーっと、今回は貂蝉さんも気になるから付いてきてくれたんですよ栄華さん」
「楊貴妃さん。今すぐこいつを送り返してくださいませ」
「何でですか?」
「あの鬼を退治する前にこのムキムキを退治する事になりそうですからです」
「貂蝉さんは味方ですよ!?」
織姫のような鬼の場所に向かったのはメンバーは7名。虞美人、月、秦良玉、栄華、楊貴妃、音々音、貂蝉。
何故この編成かと言われれば項羽の未来演算で決めたのだ。虞美人に伝え、彼女が七夕衣装作成班に文句を言いながらも加入していた理由である。
(項羽様が決めた人選…なら問題無しよ)
愛する夫の決めた編成に疑問を思う必要無し。ただ敵である鬼を倒せばいいだけなのだから。
「ちょっとそこの鬼」
虞美人は堂々と鬼に対して声を掛けた。
「ちょ、虞美人さん。せっかく向こうが気付いてないのに声を掛けてどうするんですの!?」
「そうなのです。不意打ちを食らわせられたのです!!」
「うっさい」
「「うっさい!?」」
虞美人は栄華と音々音のいう事を無視。
「……ヤハリ 来マシタネ」
鬼は静かに虞美人たちの方に視線を移す。
「アンタ誰よ?」
「私ハ 倫安鬼。愛スル人ヲ 待ツ者デス」
「愛する人…?」
鬼が愛する者を待つ。まるで恋する乙女のようだ。
「私ガ 誰カヲ愛スルノハ オカシイデスカ?」
「え」
急に倫安鬼が問いかけてくる。
「鬼ガ 誰カニ 恋シ、愛スルノハ オカシイデスカト 聞イテマス」
「それは…」
月たちにとって鬼は化け物で、敵でしかない。会話は出来なくもないが今まで敵として会話する事しかなかった。相互理解する事はなかった。
まさか鬼の方から敵としてではなく、愛に関して問いかけてくるとは始めてであった。
「鬼が恋し、愛する…」
「ハイ。オカシイデスカ?」
言葉に詰まった。月や栄華たちは言葉を返せなかった。
鬼は三国を滅ぼそうとした。大切な主であり、王を殺そうとした。そんな鬼が愛や恋を口にするのが違和感しかない。
頭を整理した栄華は静かに倫安鬼を否定した。
「おかしいですわね」
「オカシイデスカ」
「ええ。鬼は私たちの大切な人を殺そうとした。仲間を殺した。そんな鬼が愛だ恋だと言うのがおかしいですわ」
「……ソウデスネ。私タチハ 貴女方 三国ヲ 滅ボソウトシタ。ソンナ私タチガ 人デアル 貴女方ニ 愛ヲ 口ニ スルノハ 見当違イデシタネ」
倫安鬼は一瞬だけ、何かを考える様に目を瞑った。
「デスガ…鬼ニモ愛ハアルンデス」
人外だろうが愛はある。そう口にする倫安鬼。
「誰カヲ愛シ、愛サレルノハ 人間ダケデハ アリマセン」
「……そうねん」
貂蝉は倫安鬼の言葉を肯定した。
「ちょっと貴方!?」
「栄華ちゃん…相手が鬼であれ人外であれ誰か愛する事は誰も止められないわ」
「……鬼は私たちの敵ですわよ」
「そうね。思う所はあるでしょうが愛の形は人それぞれよん」
人には人の愛があり、人外には人外の愛がある。
「貴方モ愛ヲ知ッテイルノデスネ」
「ええ。私ほど愛に詳しい者はいないわよん」
「誰カヲ 愛スル事ハ 素晴ラシイ事デス」
愛は尊い。
「貴女方モ 誰カ好キナ人ガ イマスカ。誰カヲ愛シテマスカ?」
倫安鬼が月たちに新たに問いかける。自分には好きな・愛する者がいるかどうか。
友愛にしろ、親愛にしろ、恋愛にしろ、誰かを想う事は少なからずいるはずだ。人であれば誰かを好きになる事はあるはずだ。
倫安鬼は月達に問いかけている。彼女たちの心には誰かを想っている。好きな人がいるのだ。
「当然よ。私は項羽様を愛している。なんならこの中で一番想いが強いわよ!!」
「私もご主人様をこぉれでもかってくらい愛してるわん!!」
「ねねも恋殿が大好きなのです」
「ユウユウもマスターの事が…えへへ」
倫安鬼の問いかけに堂々と答える虞美人たち。
「月ちゃんや栄華ちゃんもいますよね~」
楊貴妃が月と栄華に同意を得ようと問いかけた。
「ふえ、ええと!?」
「楊貴妃さん急に何を言い出すんですの!!」
顔を赤くする2人はもう誰かを想っていると、好きな人がいるといっているようなものだ。
「楊貴妃殿。今はそれどころじゃ…」
「秦良玉さんだって隠しているつもりかもしれませんがマス」
「楊貴妃殿!!」
秦良玉は一瞬で楊貴妃の口を片手で塞いだ。勢いが強かったので張り手になってしまった。
「痛いです!?」
「あ、申し訳ございません!?」
唇がひりひりするのか楊貴妃は口を抑えて悶絶していた。
「フフフ…ヤハリ、貴女方ニモ愛スル人ガ イルノ デスネ」
倫安鬼がニコリと笑った。
「愛スル人ガ イルノハ 良イ事デス」
倫安鬼は大陸の遥か先に視線を送る。
「私ハタダ愛スル人ヲ 待ッテイルダケデス。三国ヲ ドウコウシヨウトハ 思ッテマセン」
「愛する人を待っているだけ?」
「ハイ。私ハ愛スル人ト 再会シタイダケ ナノデス」
倫安鬼は虞美人たちと出会ってから殺気は無く、襲う素振りも無い。ただただ岩に腰かけているだけ。
「虞美人さん。何だかあの鬼から三国が滅ぼそうとするような感じはしないのですが…」
月は倫安鬼の様子から三国が滅ぶという未来がイメージが出来ない。
倫安鬼は確かに鬼で月たちの敵かもしれないが、今までの鬼とはこれまでの会話で違うと思うようになってきている。
この鬼がどうやって三国を滅びへと繋がるのか分からない。
「ああ…そういう事」
「虞美人ちゃんも分かったみたいね」
「どうでもいいけど…こういう時に口にするなら、憐れと言った方がいいのかしらね?」
「……もしくは黒幕がえげつないんでしょうねえ」
貂蝉は黒幕である于吉か左慈を思い浮かべる。恐らく于吉だろうと当たりをつけた。
「于吉ちゃんもやってくれるわね」
目の前にいる倫安鬼は本当に愛する人と再会したいだけである。
三国を滅ぼしたいとか、虞美人や栄華たちを食い殺したいとか思っていない。
ただ虞美人は倫安鬼をこのまま野晴らしには出来ない。項羽の未来演算によって導き出された未来予測を回避するために戦うしかない。
「アンタに恨みは無いけど…斬るわよ」
「え、虞美人さん。この鬼は確かに鬼ですけど…もしかして悪い鬼じゃないんじゃ」
「月さん。奴は鬼で敵です。虞美人さんが言うように倒すべき鬼ですよ」
「栄華さん…」
倫安鬼は悪い鬼ではないかもしれない。そんな考えを過るが栄華が現実を戻してくれる。
非情で冷徹な考えをしていると思われているかもしれないが栄華のようにピシャリと言い切ってくれる人物は必要だ。
悪い人(鬼)じゃないかもしれない。しかし討伐しなければ自分たちの首を絞める事になる。心を非情にしなければならないのだ。
月のように相手を思いやる心が強いと敵なのに悪い者ではない者と戦う時は危険だ。判断を鈍らせてしまうからである。
故に覚悟が必要だったり、冷徹な考えを通す仲間が必要である。今回はたまたま栄華や虞美人だっただけだ。
「私ヲ 討ツノ デスネ」
「ええ」
虞美人は双剣を構える。秦良玉もトネリコの槍を構え、楊貴妃は琴を構える。
貂蝉は筋肉を膨れ上がらせ、栄華と音々音は月の前に出る。
「私ハ タダ待ッテルダケ。誰カヲ 食イ殺ソウトスル ワケデモアリマセン。デモ…私ガ 彼ト 再会スルト 三国ガ滅ブカモシレナイ…ダカラ 討タレルカモシレナイノハ 理解シテマス」
倫安鬼は腰かけていた岩から立ち上がる。
「私ハ彼ト再会シタイ。彼モ私ト再会シタイト願ッテマス。ナラ…彼ヲ悲シマセナイ為ニ 私ハ ココデ 待タナクテハ ナラナイノデス」
短冊が複数吊られている笹を持つ倫安鬼。
愛する人が再会しに向かってきてくれているのに、待ち合わせ場所に居ないなんて悲しい事は無い。
「彼ノ為ニ 私ハ ココデ待チ続ケル。ソノ為ニ 私ハ戦イマショウ」
読んでくださってありがとうございました。
次回の更新はまた遅れるかもしれません。最近、忙しすぎて…。
一応七夕編もあと2~3話で完結する予定です。
2024
項羽の過去話(真実)を聞いて北郷一刀が漢泣き。
天下泰平の為とは言え、項羽のやった事は苛烈すぎます。しかし全ては良い未来への為に。
現代の価値観では理解できなくとも項羽が悪人ではないというのが分かりますね。
誰からも理解できなくともすべては良い事の為に。
ある意味、デイヴィットと似てる?
2025
エッホエッホ
これ私すきです。なんか頭に残るフレーズです。
まあ、この物語で歌う鬼では可愛さは無いですけど
めちゃくちゃ全速力で走る鬼を追いかけるために機動力のメンバーが集められました。
午年ですし…UMAの活躍も多めに出そうかな?
2026
虞美人が衣装作成班にいた理由は項羽が未来演算による指示でした。
貂蝉も久しぶりにちょっと活躍しますよ~。
倫安鬼と怠劫鬼は鬼だけど今まで登場した鬼とちがって悪い鬼ではないかもしれない。
だって2人はただ再会したいだけの鬼ですから。2人も三国とかカルデアとかどうでもいい。
しかし再会すると于吉に組み込まれた術式が発動します。
ただ再会したいだけなら三国やカルデアは特に手出しする事はなかった。でも再会したら三国が滅ぶかもしれない術式が起動する。
そうなると三国やカルデアは2人を再会させないように討伐する事になる。
虞美人や貂蝉が言った「憐れ」や「えげつない」はそういう事。