Fate/Grand Order 幻想創造大陸 『外史』 三国次元演義   作:ヨツバ

374 / 377
お久しぶりです。
やっとこさまた更新できました。
ほんとに最近、忙しい…。


三国七夕祭り-2人の鬼を再会させるな-

2029

 

 

長江の河まで爆走するは怠劫鬼。項羽や恋たちの攻撃や追跡をものともせずに愛する人の下へと急ぐ。

 

「オレノ 邪魔ヲ スルナァァァァ!!」

「邪魔しないとウチらの国が滅ぶんやろーが!!」

 

馬の速度を上げ、次に駆け出したのは霞だ。彼女の得物である飛龍偃月刀を持ち直し、怠劫鬼目掛けて振るう。

 

「貰ったで!!」

「ウオオオオ。オレハ モット 強クナル。モット、モットダアアアアアア!!」

 

怠劫鬼の「強くなりたい」という願いは彼自身の想像次第でいくらでも強くなれる。

自分の皮膚を、肉体を岩のように硬くする事だってできるのだ。

 

「硬った!?」

「邪魔スルナ!!」

 

怠劫鬼は笹を剣のように振るって霞の馬を薙ぎ払おうとする。

 

「マズッ!?」

 

霞は馬の手綱を引き、怠劫鬼の攻撃を回避する。

 

「硬い身体やな。ならこっちももっと力込めたる!!」

 

気を集中し、練り上げる。

 

「ヌウ、強キ 気ヲ 感ジル」

「行くで!!」

 

驚異のバランス力で霞は自分が乗る馬の背に立つ。そして力の限り跳んだ。

 

「ウチかて必殺技の1つや2つあるんや!!」

 

集中し、練り上げた気を飛龍偃月刀に乗せる。そして霞は怠劫鬼の頭上より技を放つ。

 

「飛翔青龍破!!」

 

飛龍偃月刀より青龍の気砲が放たれた。

 

「グオオオオオオオオ!?」

 

飛翔青龍破に飲み込まれた怠劫鬼。その光景はそのまんま青龍が鬼を喰らうが如く。

 

「どぉや!!」

「マダマダァアアアアアア!!」

「嘘やろ!?」

 

青龍に喰われた鬼がまるで無理やり口から這い出たような怠劫鬼。

身体は飛翔青龍破によって負傷していた。

 

「…やはり計算通りである」

 

項羽はボソリと呟くが誰にも聞こえていない。

 

「オレハ 止マラナイ 負ケナイ!!」

 

笹をしならせ、霞が乗っていた馬を再度狙う。狙いは馬の脚。

如何に強靭な馬脚とはいえ、鬼の放つ一撃は堪えるものだ。

 

「ウチの馬に何て事すんねーーん!!」

 

霞の馬は倒れ、すかさず彼女は駆け寄った。

 

「霞は馬の容体を診てろ。こっからはアタシらに任せな!!」

「スマンっ」

 

驚愕な事だが怠劫鬼は白蓮、赤兎馬、霞という実力者たちを払い除けている。

「彦星みたいな鬼だなー」と思っている場合ではない。このままでは本当に江東の河にいるであろう鬼と合流させてしまう。

可能性は低いと言われているが三国滅亡が近づいている事でもある。

 

「こりゃマズイぜご主人様」

「…もうすぐ長江に着くかも」

「ああ、分かっている。そろそろ本当にどうにかしないとな」

 

北郷一刀は怠劫鬼を睨む。もしもの為と腰には次元を切り裂く刀を携えている。

 

「項羽。演算は終えてる?」

「無論だ指導者よ。白蓮殿や霞殿が良い仕事をしてくれた」

「じゃあ、仕掛ける時?」

「うむ。作戦は…」

 

項羽の演算は終了した。ここからは仕掛ける時である。

 

「蘭陵王!!」

「はっ。マスター!!」

「翠!!」

「分かったぜご主人様!!」

 

作戦開始。

項羽の指示により、蘭陵王と翠が馬の速度を上げる。

 

「しっかりお掴まり下さいマスター!!」

「しっかり掴まってなご主人。あと変なとこ触んなよ」

「だから、この状況でそんな事できるはずないからな!!」

「さっきアタシの胸触ったじゃねえか」

「一刀?」

「不可抗力だって!!」

 

怠劫鬼の左右から挟むように並走させる蘭陵王と翠。

 

「マタ 来タカ オレノ 邪魔ヲスルナ。オレハ 彼女ニ 会イタイダケダ!!」

 

怠劫鬼は愛する人に会いたいだけだ。

三国を滅ぼしたいとか、三国の王や臣下、武将たちの首を獲りたいとか、そんな目的はない。

怠劫鬼は五胡の所属だが五胡の王や于吉たちの目的なんてどうでもいい。本当に愛する人と再会したいだけである。

 

「オレガ 愛スル者トノ 再会スルノガ ソンナニ 悪イノカアアアアアア!!」

 

何も知らない第三者から見れば藤丸立香や北郷一刀たちは恋人たちの逢瀬を邪魔する奴ら。

怠劫鬼はただ愛する人と再会したいだけ。北郷一刀たち三国に悪意などない。彼は于吉の実験に組み込まれてしまった憐れな被験者のような存在だ。

 

「何だか俺らが悪い気がしてきたんだけど…」

「ご主人んなこと言ってる場合かよ。こっちがヤらなきゃ、ヤられるんだぞ」

「…ああ、分かってる」

 

恋人の逢瀬を邪魔するゴロツキのような立場になってる北郷一刀たちだが、翠が言うように怠劫鬼を倒さねば三国が滅ぶ可能性があるのだ。

まさに「殺らねば殺られる」という状況だ。ならば「殺られる前に殺るしかない」のだ。

 

(やるしかないのか)

 

北郷一刀にとって敵が鬼という人外であっても悪ではなく、大陸の覇権どうこう関係無い者と戦うのは初めてかもしれない。そして、こうも戦いにくいと言うか自分たちがまるで悪のように思えてしまう。

それでも戦わないといけないのだ。覚悟を決めるしかない。

 

(立香はどう思ってるんだろう)

 

北郷一刀はチラリと蘭陵王の馬に乗る藤丸立香を見る。既に彼は覚悟を決めた顔をしていた。

 

(立香はあの鬼を倒す為にもう覚悟を決めてる…結構、立香ってドライなとこあるのか?)

 

実は違う。自分たちが世界(異聞帯)の悪となる事があったのだ。自分たちの目的の為に悪となる覚悟はもう出来ているという事である。

もっとも悪というよりも生存競争に勝ち取る為に相手を斬り捨てる覚悟を持てるようになったというのが正しいかもしれない。

 

「蘭陵王 強化ブーストをかける。仕掛けるよ!!」

「はっ、マスター!!」

 

剣を鞘から抜き、馬の手綱を引いては怠劫鬼に接近する。

 

「翠、こっちも仕掛けるぞ!!」

「覚悟決めたなご主人。じゃあ、行くぞ!!」

 

挟撃作戦実行。

 

「はああああああああああ!!」

「うらあああああああああ!!」

「クルカ。モットモットモット オレハ強クナル。モット モット 強クナレイ!!」

 

右からは蘭陵王の長剣が、左からは翠の銀閃が振るわれる。

 

「勢い破竹の如し!!」

「秘技・旋回斬!!」

「効クカアアアアアアアアア!!」

 

怠劫鬼の肉体・筋肉はより強固に強靭になる。

 

「なんと硬い!?」

「うえ、アタシの銀閃が弾かれたぞ!?」

 

怠劫鬼は挟撃を強化された肉体で弾き返す。

 

「だが、アタシの狙いは次だ!!」

 

翠は追撃を仕掛ける。

彼女の狙いは鬼の持つ短冊が吊られた笹である。特に笹の短冊が吊られている部分さえ切断できればいい。

 

「おらあああ!!」

「サ、サセルカ」

「こっちです!!」

「ナヌ!?」

 

蘭陵王の大声につい怠劫鬼は視線を移してしまった。そして視界に入ったのは絶世の美青年の顔だった。

 

「ゆくぞ。魔性の貌!!」

「顔ガ何デ光ッテ!?」

((確かに何で顔が光るのか…美形の顔が極限まで至ると光るのかな))

 

蘭陵王の素顔が光るのは藤丸立香と北郷一刀も気になるところではある。

 

「目ガ見エヌ!?」

 

怠劫鬼の視界は潰され、笹は斬り落とされた。

 

「笹ガ…イカン!?」

 

怠劫鬼の能力は笹に吊られた短冊の願いを叶える能力。しかし叶える短冊が無ければ能力は使えない。

 

「ヤラレタ…シカシ、強クナリタイ トイウ願イハ 継続シテイル!!」

 

短冊の吊られた笹が斬られたとはいえ、既に叶えているものは継続中だ。

怠劫鬼はいまだに強化し続けられる。

 

「モット、モットモットモット。モッーーーーート強クナレ。モット、硬ク、強靭ニ。脚モ モット 速ク ナレエエエエエエエイ!!」

 

怠劫鬼はまだまだ強くなる。彼が強くなる条件はイメージだ。

「強くなりたい」という願いも結局の所、確定した強さは無い。「強くなりたい」という願いは個々によって変化する。

故に怠劫鬼がイメージによっていくらでも強くなれるのだ。

 

「恋殿。仕掛けるぞ」

「…分かった。いつでもいける」

 

項羽は魔力を練り上げる。恋もまた気を練り上げる。

 

「分カル。分カルゾ…モウスグ到着スル。彼女ガ待ッテイル。負ケルワケニハイカヌ!!」

 

怠劫鬼の強くなるイメージは想像と視界に映るモノで決まる。

彼が霞や蘭陵王、翠の攻撃を耐えたのは目で見てイメージしたからだ。それは蘭陵王たちの攻撃を怠劫鬼にとって想像以上ではなかったという事である。

逆に怠劫鬼の想像以上のものであれば、「強くなりたい」という願いを超えられるのだ。

 

「待ッテロ 倫安鬼。オレガ 今行クゾオオオオオオオオオ!!」

 

肉体は強化した。どんな攻撃にも耐えられると強固な意志を宿す。

 

「否。貴様の目的は果たされぬ」

「…決める」

 

今度は項羽と恋の走らせる赤兎馬が怠劫鬼を挟む。

 

「オレハ 貴様ラノ 攻撃ヲ 耐エテミセル。 耐エレバ オレハ 彼女ニ会エル!!」

 

怠劫鬼は現在 視界を封じられている。項羽と恋の姿は見ているが、どのような攻撃が来るか分からない。しかし彼はどんな攻撃でも耐えてみせる最強の自分をイメージする。

 

「オレハ 倫安鬼ニ 会ウンダアアアアアア!!」

「戦術躯体。一太刀で終わる」

「…決める。一騎当千!!」

 

項羽と恋の一撃が怠劫鬼の下半身と上半身を切断した。

 

「エ」

 

怠劫鬼の視界は戻りかけていた。しかし自分の肉体が既に切断されていた。

 

「何故…」

「我らの一撃が貴様の想像を超えた。それだけの事」

 

怠劫鬼の「強くなりたい」という願いは彼自身のイメージで決まる。

相手の姿を見て、攻撃も見ればどれくらい強くなればいいのかイメージしやすい。しかし彼は視界を一時的に潰されていた為に2人の攻撃を防ぐイメージが出来なかった。

故に今回は自分の想像出来る限界で強くなった。しかし敗因は項羽と恋の一撃が怠劫鬼の想像を超えていた事である。

 

「ガァ…」

 

大陸最凶と大陸最強の武人による一撃。怠劫鬼では2人の攻撃を防ぐイメージが出来なかったのである。

更に逆転の一手が出来る短冊の吊られた笹すら切断されたのだ。怠劫鬼は対抗手段が何もなかった。

 

「アア…倫安鬼」

 

視界が戻り始める時、己は項羽と恋に負けたと認識してしまう。

肉体が崩れ始め、灰のようになるのが分かる。もはや無念しかなかった。

 

「倫…安鬼 スマナ…イ」

 

最後に彼の視界に映ったのは倫安鬼。あと少しで彼は最愛の人に出会えたはずだった。

 

「敵ではあるが、其方の愛する人と再会したいという願いは…この躯体でも理解できる」

 

 

2030

 

 

虞美人と貂蝉が倫安鬼によって人質にされた。しかし2人に人質の価値は無かった。

2人が皆から嫌われている人だとか、殺されても同情出来ない犯罪者とかではない。ただ単に2人ならどんな事をされようとも殺す事が出来ないと想像してしまうからだ。

 

何せ虞美人は状況によっては気分次第で自爆して肉体を再構成する。貂蝉は本当にどうすれば殺せるか想像できない。

 

三国武将の誰かが言っていた。「虞美人殿はいくら斬っても殺せないよ。だって首斬られても生きてたんだよ。アタシ死ぬほどビビったんだからね!?」とか「…貂蝉は殺せない……と思う。殺せる想像が出来ない」とか。

2人が無敵だから大丈夫という謎の信頼感があるからこそ「人質の価値が無い」と思われているのだ。

 

「……二人ノ命ガ 惜シイノナラ 何モシナイ事デス」

(手を出しても大丈夫な気がします)

(手を出しても大丈夫な気がしますわ)

(手を出しても大丈夫だとユウユウ思います)

(手ぇ出しても大丈夫な気がするのです)

(虞美人さんと貂蝉さんが危ない…!!)

 

月はどうやら優しすぎるようだ。他の皆は一致で「2人は人質になってるけど大丈夫でしょ」という認識である。

 

「貴女方ガ 手ヲ出サナケレバ 私モ オ二人ニ 何モシマセン」

「私に気にせずやっちゃってぇん!!」

「私の事はいいからさっさとこの鬼を倒せ!!」

「そんな、虞美人さんと貂蝉さんを見捨てられるわけが」

「「「「分かった(ですわ・です・ですぞ)」」」」

「ええ!?」

 

月は2人の身を案じていたが、それ以外は普通に手を出そうとした。

 

「み、皆さん2人が人質に取られてるんですよ!?」

「いえ、だって、2人がいいって言いますから…」

「あのお二人ならユウユウたちの攻撃に巻き込まれても大丈夫ですよ月さん」

 

「人質気せず攻撃しちゃえ」というスタンスに月は焦った。そして顔には出していない倫安鬼もまた心の中で「アレ…コノ二人 人質ニシチャ 駄目ナ人達 デショウカ」と焦った。

普通の場面なら月と倫安鬼が正しいのだが、人質になった虞美人と貂蝉が問題だったのである。

2人ほど人質にしてはいけない人材である。

 

「……ドウヤラ 人質ノ策ハ 失敗シタヨウデス。慣レナイ事ヲ スルモノデハ ナイデスネ」

 

そう言う倫安鬼だが虞美人と貂蝉を開放しない。2人に人質の価値が無くとも、解放して戦力を戻すのはより愚策だ。

 

「コウナッタラ…」

 

倫安鬼は短冊の吊られた笹を振りかざす。

 

「私ハ倫安鬼。織姫ノ鬼。願イヲ 叶エマス」

「またです!!」

「今度は何の短冊を使った能力でしょうか…!?」

 

短冊を吊るした笹がより光り輝き、月や秦良玉たちを包み込む。

 

「ま、眩しっ」

「目くらましですか!?」

 

強く光り輝いたかと思えば急に治まった。

 

「コノ短冊ニ 書カレタ願イハ 恋スル人ノモノ」

 

短冊には「燃え上がるような恋がしたい」と書かれているが楊貴妃たちには見えなかった。

 

「あ…っ」

「うぐ」

「こ、これは…」

 

月や栄華たちが呻き声をあげる。

身体が熱い。胸が、心が、とても熱く焼けそうなのだ。

 

「恋ハ 素晴ラシイモノデス。心ヲ満タシテクレル……時ニハ 心ヲ、身体ヲ オカシクスルクライ」

 

『恋の病』という言葉がある。

相手を深く思うあまり心身が消耗し、食欲不振、不眠、仕事に集中できないなど病気のような症状だ。

倫安鬼は短冊に書かれた願いを恋の病と認識し、呪いとして昇華させたのだ。

 

「これは…どういう」

 

秦良玉は胸を抑える。熱くてどうにかなりそうだ。

何か呪いのようなモノというのは理解出来たが、どのような条件で呪いが発現・進行しているか彼女だけでなく、月や栄華たちも分からない。

このまま呪いが進行すればマズイ事だけは理解出来る。胸は熱く、身体が燃え上がりそうだがまだ動ける。

 

(動けるうちに奴を倒さねば)

 

トネリコの槍を握り直し、スキルを発動する。

 

「忠士の相!!」

 

マスターに忠誠を誓い、同時にマスターからも信頼を寄せられる。

無実の罪で夫が投獄されたにも拘らず彼女は明に忠義を尽くし、当時の皇帝である祟禎帝も彼女に絶大な信を置いたという伝承をスキルとして昇華させたもの。

 

「あぐ!?」

 

マスターを想えば想う程、マスターから想われれば想われる程、スキルとして効果は発揮する。しかし今この時だけは悪手であった。

 

「秦良玉さん!?」

 

秦良玉は胸を抑えて膝を付く。胸内から熱が身体全体に広がるように苦しく、熱い。

彼女の忠誠心と隠していた想いが仇となっている。こればかりは倫安鬼の能力を解明出来なかったのが原因だ。

 

「うぐ…」

 

時間が経てば経つほど倫安鬼の能力が全員を侵食していく。

栄華も能力の侵食に苦しんで胸を抑えて膝を付く。

 

「貴女…私たちに何をしたんですの!!」

「貴女ハ 恋シテマスネ 素敵デス」

「へ…ななななななっ、何を急に言ってますの!?」

 

いきなり敵に「誰かに恋をしている」と言われて分けが分からない栄華。

 

「栄華ちゃん恋してるんですか!!」

 

そして何故か異様に反応する楊貴妃。

 

「相手は誰ですか!!」

「私モ気ニナリマス」

「何で敵の貴女も一緒になって聞いてくるんですか!?」

 

謎の攻撃に加えて、いきなり自分の恋について突かれて混乱しそうになる。

 

「恋バナはどんな時も最優先事項なのです!!」

「何を言ってるんですか楊貴妃さん!?」

「だって、恋はいつでもハリケーンらしいんですよ!!」

「どういう事!?」

「良イ 言葉デスネ」

 

楊貴妃は惚けているようで冷静である。

恋バナに浮かれている馬鹿な女の子を演じて倫安鬼から情報を抜き取る腹黒だ。

 

(早くこの術式を解読しないとユウユウ含めて皆が危ないですよコレ…)

 

楊貴妃もまた胸から燃え上がるように熱が身体に侵食している。正直に言ってしまえば辛い。

この呪いともいえる術式は危険だと警鐘を鳴らしている。

 

(恐らく限定的な呪い……何とか解読しないと。短冊に書かれている文字さえ見えれば多少は分かったかもしれないのに)

 

倫安鬼が短冊に書かれた願いを叶える事で攻撃として放出する。その短冊が分かりさえすれば解読に繋がるのだが、隠されてしまった。

こうなった以上は倫安鬼の動きや感情、会話での誘導で術式を解読するしかない。

恋バナに興味津々な女の子を演じて目がキラキラ。鼻をフンスフンスして栄華に近づく。

 

「何でこんな状況そんな事を聞くのですか楊貴妃さん!?」

「貴女ハ 恋シテマスネ」

「してないですわ!?」

「貴女ハ 恋シテマス」

 

倫安鬼の発動した能力はいわば恋の病を呪い化したようなモノだ。

酷く限定的な能力だが嵌れば脅威である。

 

(コノ願イニヨル 呪イハ 強力デス。 ソレニシテモ 全員ガ恋シテイタトハ……ヤハリ 恋トハ 良イモノデスネ)

 

この場にいる全員が呪いに掛かった事に関して倫安鬼は驚いた。そして恋は素晴らしいと再確認した瞬間でもあった。

 

「ゼッタイニ恋 シテマスヨ」

 

倫安鬼は栄華が恋していると確信している。何故なら恋の病という呪いに掛かっているのだから。

恋をしている者しか嵌らない倫安鬼が仕掛けた呪いだ。確信しかない。

恋の病の呪いは相手の恋する熱量によって浸食度合いが変化する。好きな人を想えば想うほどに呪いは強力になり、侵食も早いのだ。

秦良玉の場合は隠していた想いも混じり、スキルによる「忠士の相」による忠誠心も相まって呪いの進行が速まったのだ。

 

(好キナ人ヲ 想エバ想ウ程 呪イハ進行シマス。 私ノヨウニ)

 

倫安鬼も人間だった頃、好きな人を想うがあまり身体を壊した事がある。

恋の病。馬鹿には出来ないストレス性の病気であり、身体に異常がないのに心に掛かる負荷で身体を壊す。

好きな人を想うがあまり心が燃え、身体すら燃えたのだ。その苦しさは倫安鬼が一番分かっているからこそ、呪いとして昇華できたのである。

 

「貴女ノ 好キナ人ニ 心当タリガ アリマス」

「はあ!?」

 

倫安鬼の言葉に栄華は「何言ってんのコイツ?」という顔をしていた。しかし次の言葉にキュっと心を締められる。

 

「北郷一刀」

「ひゅ」

 

北郷一刀という名前を聞いて栄華の頬が赤くなる。図星であった。

 

「ええっ、栄華ちゃんいつの間に!?」

「ちちちち、違いますわ。あんな男!?」

「い、いつそんな絆を深めたの!?」

「だから違いますって!!」

 

その取り乱しようが答えのようなものだ。

 

「栄華さんがご主人様を」

「違いますわよ月さん!?」

「えー…栄華殿、あんな男が好きなのですか。悪い趣味ですよ」

「だから違いますわよねねちゃん!?」

「あらあら栄華ちゃんも恋する乙女ね。そして私の恋敵ねん!!」

「貴方と一緒にしないでくれます!?」

 

何故か皆も反応し出す。

 

(アノ御方ト 于吉殿カラ 事前ニ 情報ヲ頂イテイマス。ソノ情報ニ嘘ハ無カッタ)

 

恋の病による呪いは好きな人を想えば想う程、強くなり、侵食は速くなる。

この場にいる全員が恋をしているのであれば呪いの進行を速める為に倫安鬼は言葉巧みに相手の恋心を刺激するだけだ。

そのため、彼女は事前に三国側の個人情報を得ていた。しかし驚いたのが三国の武将たちがほぼ全て恋する乙女だという事だ。

 

于吉やあの御方が冗談でも言っているかと最初は思ったが嘘を言っているような目ではなかった。

ある意味、北郷一刀という男が恐ろしいと思った。三国の武将乙女たちを全て惚れさせるなんて偉業以前に異常であるからだ。

しかし、おかげで恋の病という名の呪いを付与出来たのだ。

 

「ドノヨウニ 彼ヲ 好キニナッタカ ドウカハ 知リマセン。デモ 好キニ ナッタカラニハ 素敵ナ事ガ アッタノデスネ」

「ないですわ!!」

「ソウナノデスカ…デモ恋シテル。キット 好キニナッタ キッカケガ アッタハズデスヨ」

「切…っ掛け。うぐ!?」

 

北郷一刀を好きになった切っ掛け。

状況が状況なだけに北郷一刀との記憶を思い出してしまう。そしてソレが倫安鬼の狙いであり、恋の病の呪いを進行させる作戦であった。

 

「栄華さん!?」

 

胸を強く抑えて蹲る栄華。彼女は胸内に燃える炎を耐えるしかない。

 

(栄華さんが北郷さんの事をいつの間に好きなったのは驚きでした)

 

栄華は桂花程ではないが男に興味が無かった。だというのに北郷一刀は栄華の心に入り込んだのだから驚きである。

 

(それにしても…恋バナ。好きな人や恋愛についての話しばかりですね。あの鬼が好きな鬼に会いたいという目的を持っている。恋する鬼というのだから別に変ではありませんが)

 

恋する鬼が恋の話しをするのはおかしな事ではない。しかしおかしな事ではないからと言って術式解読の材料から外すのは愚計である。

 

(……もしかしなくても恋に関連する術式なのでは。考えすぎかもしれないけど可能性として捨てきれません)

 

判断材料がまだ少ない。もっと材料を集めねばならない。

 

「ソコノ 小サナ 軍師サン」

「ね、ねねですか!?」

 

倫安鬼の次の狙いは音々音。

彼女の情報も与えられており、彼女の好きな人は恋(呂布)である。更に彼女もまた北郷一刀を想っているのだ。

一に恋、二に北郷一刀と言ったところだ。好きな人が2人いるという状況であり、意外にもこの中で一番呪いの進行が早く強いのだ。

 

「貴女モ 北郷一刀ガ 好キナノ デショウ?」

「ねねがあんな奴の事好きなわけないです!!」

「ジャア…呂布奉先ガ 好キ」

「うう!?」

 

これは絶対に嘘ではない。音々音が恋の事が好きなのは誰もが知っている。

 

「ソノ 呂布奉先ガ 北郷一刀 ノ事ヲ 好キナノデショウ。好キナ人ノ 好キナ人ヲ 好キニナル」

「なぁ」

「ソレハ 場合ニヨッテハ 良クナイ事 ナノデショウ。デモ 一緒ニナッテ好キニ ナルコトハ 悪イ事ジャナイデス」

「だから…ねねは…アイツの事なんて」

「一緒ニ 好キニ ナッテ 一緒ニ 愛シテ モラエルノハ 案外悪イ モノジャ ナカッタデショウ?」

「何でソレを…うう!?」

 

倫安鬼の言葉に音々音はある夜を思い出してしまった。北郷一刀に恋と一緒に愛してもらった夜。

北郷一刀は音々音にとって恋敵だった。しかし今は違く、恋、音々音、北郷一刀の3人の関係は良い着地地点を見つけたのだ。

恋敵から悪友へ。悪友から気兼ねない友人へ。そして好きな人へ。

 

「うう…うう…。胸が、身体が熱いです」

 

音々音もまた胸を抑えてうずくまってしまった。

 

(コレデ…三人。二人ハ捕縛中。残リ二人)

 

倫安鬼はチラリと楊貴妃と月を見る。

 

(アア…早ク会イタイ 怠劫鬼)

 

倫安鬼は待つだけだ。愛する人と再会する為に絶対に待たなければならない。

愛する人が待ち合わせ場所に来るというのに、自分が待ってなくては愛する人に申し訳ない。

 

(ねねちゃんまで…それにユウユウに掛かっている呪いも徐々に侵食してます)

 

楊貴妃は今まで得た情報材料を元に術式の解読に専念する。あまり時間はかけられない。

既に敵の発動した呪いは楊貴妃達全員を蝕んでいる。

 

(秦良玉さん。栄華さん。ねねちゃん。いずれの3人も好きな人に対しての問いをされてから呪いの進行が速まりました)

 

まるで好きな人を想った事で呪いが侵食した。そして楊貴妃自身に感じるこの熱い想い。

 

(まさか……え。これってまさか…そういう呪いなのですか。恋心を利用した呪い!?)

 

楊貴妃は倫安鬼の持つ短冊が吊られた笹を見る。その中にある短冊を見つけた。

 

(やっぱりコレって。酷く限定的な呪いだけど場合によっては宝具級になってもおかしくないと思いますよコレ…)

 

特攻宝具のようなモノ。特に呪いに特化したモノ。楊貴妃はそう判断した。

特攻の中でも似たようなモノでビュルンヒルデの持つ宝具だ。彼女の心に燃える「愛」が高まる程に強化されるものだったり、「愛する者」特性を持つ者という限定的な相手ならば異様な威力を叩き出したりするものだ。

 

ただ呪いに掛かる条件と侵食される方法も察した。しかし解読したところでどうにも出来ないし、止められない。

恋している者は恋心を捨てる事は出来ない。簡単に燃え上がるような恋心は冷めるものではない。

英雄であっても神霊であっても不可能だ。故に楊貴妃はこの呪いの危険性に大いに警鐘を鳴らしている。

 

(この呪いで人を呪い殺せるかまでは分からない。ただ相手の目的が待つ事……なら邪魔者を足止めさえ出来ればいい)

 

楊貴妃は秦良玉、栄華、音々音を見る。胸を抑えて辛そうに蹲っている。

捕縛され、帯で繭のように捕まっている虞美人は反応が無い。そして貂蝉は何故か「あんあん」言っている。

 

「ああ~~ん。ご主人様の愛が私のお胸をドッキュンバッキュンしてるうぅぅぅぅぅ!!」

(貂蝉さんは何か大丈夫そう…)

 

大丈夫そうに見えるが貂蝉もしっかりと呪いが侵食しているので動けない。

 

(今の段階でまだ動けるのはユウユウと…月ちゃん)

 

チラリと月を見る楊貴妃。月も辛そうだがまだ動けそうだ。

 

(月ちゃん…戦えるのかな?)

 

今回の編成は虞美人曰く、項羽が選んだとの事。

 

(月ちゃんが戦える姿が想像出来ないんですけど…)

 

失礼な事を思ってしまうが月がこの場にいる理由が分からない。

彼女は戦う者ではなく、後方で援護するような役が似合う。寧ろ政治タイプの方が似合う。

 

(こうなったらユウユウが動くしかない)

 

琵琶を手元に出現させる。

 

「オ二人トモ 恋シテマスネ」

「っ!?」

 

倫安鬼が口を開く。

彼女の言葉を聞いてはならない。何故なら恋心を刺激するような言葉を聞かせて、呪いをより侵食・進行させようという魂胆だからだ。

 

「見テイテ分カリマス。オ二人共 大キナ恋心ヲ 宿シテマス」

「月ちゃんまともに聞いちゃいけません!!」

「大キナ 恋心ガ アルホド トテモ 素敵ナ 出会イガ会ッタノデスネ」

 

恋心を刺激させる言葉を聞いてしまうと、どうしても連想してしまう。

連想しないようにしても倫安鬼が言葉巧みに連想させようとする。

 

「素敵ナ琵琶デスネ。ソノ琵琶デ 好キナ人ト 奏デルノハ 素敵ナ一時ニ ナリソウデスネ」

「うぐっ」

 

楊貴妃は思い出してしまった。藤丸立香に己が奏でるを琵琶を聴かせてた一時を。

倫安鬼が言った事はたまたま当たっていただけに楊貴妃にとって運が悪かった。実際にその時の思い出は良かったのだからこそ呪いがより侵食してしまう。

 

「貴女ハ 槍ヲ持ツ 武人ノ方ト 同ジデ 藤丸立香 トイウ方ガ 好キナノデスネ」

「うぐぐっ!?」

 

楊貴妃は藤丸立香が好きだ。

国を傾国させてしまった悪女であり、邪神に改造された自分を受けて入れてくれたマスターであり、人間。

一緒に特異点を解決し、絆を深めた。絆を深めるごとに想いが強くなる。

尤も暴走してしまう事があるのだが。

 

「全く…恋心を利用する呪いなんて趣味が悪いですよ」

(気付カレマシタカ)

 

呪いの発動条件を知られたがもう遅い。

 

「……確カニ 否定ハシマセン 恋心ヲ 利用 スルノハ 良クナイデス。デモ 私ハ ソレデモ アノ人ニ 会イタイノデス」

「ううう…」

 

楊貴妃は胸を抑えて蹲る。琵琶をコトリと地面に落とす。

身体が燃える様に熱い。そして楊貴妃の身体が燃え始めた。

 

「楊貴妃さん!?」

 

楊貴妃の身体が燃え始めた事に月は驚愕した。

 

「燃エタ。ソウデスカ…コノ呪イハ 限界マデ 侵食スルト 燃エルノデスネ」

 

倫安鬼はこの呪いに関して全て知らない。何せ今回初めて使用したのだから。

能力として理解していたが何処まで呪いが強くなって効果を発揮するまでは分からなかったのだ。

 

「自分ノ 恋心ニ 身体ガ 燃エテシマウノデスネ。当然ノ結果デスネ」

 

重度による恋の病。その果てによる症状結果に倫安鬼は納得出来た。自分も身体が燃える程に狂おしくもおかしくなったのだから。

 

「アト一人」

 

倫安鬼は最後の1人を見る。

 

「貴女モ恋シテマスネ」

「う」

「ソシテ 貴女ハ ソノ恋心ヲ 解キ放ッテナイノデスネ」

 

恋心を解き放っていないという事は想いを告げていないという事。

言い換えるなら片思いとも言うかもしれない。それはある意味、辛いものだ。

 

「ヌイグルミ ヲ持ツ人。彼女モ 想イヲ 告ゲテナイケド 貴女程デハナイ」

 

想いを告げていない。この言葉に月は言われなくても分かっている。

想いを告げたいけれど告げられない。勇気が出なくて告げられない。

もしも告げてしまって今の関係が壊れたらどうしようと思ってしまう。自分が望む結果になればとても良いが、最悪な結果になってしまう事を想像すると怖いのだ。

 

「恋心ハ 内ニ秘メテイテモ イツカ 燃エ上ガリマス。私ガ 放ツ 呪イ ガナクトモデス」

「それは…」

 

言われなくても分かっている。

月は心に秘める想いを押し留めているが、最近は押し留めるのが難しくなっている。しかし想いを告げられる勇気が出ない。

故に辛いのだ。倫安鬼の呪いに嵌る前から既に辛かった。顔には出さないだけで平気な振りをしていただけだ。

 

(コノ子ハ 最初カラ 恋ノ病ニ 心ト身ヲ 灼ケテイタノデスネ)

 

そうと分かればもう倫安鬼の手の内である。最初から恋の病で身を焦がしているのであれば、後は呪いの侵食を速めるだけの切っ掛けを作ればいい。

それは月の想い人を想像させるだけでいい。そして恋心を増長させるような記憶を思い出させればいい。

倫安鬼にも恋心を増長させる思い出はある。思い出すだけで心が溢れるのだ。

 

(彼女ノ想イ人ハ…)

 

あの御方と于吉から頂いた情報は嘘はない。故に月の想い人は知っている。

 

(本当ニ アノ男性ニハ 驚キデスネ 三国ノ武将全員ヲ 誑シ込ムナンテ)

 

何なら武将だけでなく、軍師や政治家はたまた王や皇帝まで誑し込む。そんな男が北郷一刀である。

 

「貴女ノ 想イ人ヲ 知ッテマス。彼ハ アル意味 凄イデスヨ」

「うう…」

「北郷一刀 デスネ」

「え?」

 

月は一瞬だけ呆けた。確かに北郷一刀も素敵な男性であるが、月の心にいる人物は彼ではない。

 

「エ?」

 

そして倫安鬼もまた月の予想外の反応に呆けた。それが彼女が犯した最大の隙であった。

 

「イア、イア、ングア、グア」

 

謎の言葉が周囲を支配する。倫安鬼は言葉が聞こえた方に視線を送ると青黒い外骨格のようなモノを纏った楊貴妃が飛び出して来ていた。蒼い炎を纏いながら。

 

「エ 何デ 動ケテ…ソレニ ソノ姿ハ!?」

「フォーマルハウト!!」

 

楊貴妃は倫安鬼に抱き着き、蒼炎を燃え上がらせた。

 

「アアアアアアアアアアアアアア!?」

「私が私自身の燃え上がる恋心に燃えるか貴女が燃えるか勝負!!」

「何故 動ケルノデス!?」

「私は特別なのですよ」

 

予想外が続き、倫安鬼は混乱した。しかしすぐに冷静にならなければならない。

楊貴妃は一か八かの耐久力勝負を仕掛けてきたのだ。鬼となって身体が頑丈になったかといえ、蒼炎は特別な炎と感じ取って危険だと判断。

 

「離レテ!?」

 

鬼となって膂力は上がっている。無理やり引き剥がすしかないと思って楊貴妃に掴みかかる。

 

「離れません!!」

「離レテ!?」

 

トネリコの槍が飛来し、倫安鬼の右肩を貫く。

 

「ウグッ…マダ 動ケテ!?」

「私はマスターの槍。こんな所で蹲ってるわけにはいきません!!」

 

秦良玉が気合でトネリコの槍を投擲したのだ。

 

「ウウウウウウアアアアア!?」

 

右肩を貫かれ、右腕が動かない。ならばと左腕を掴んでいる笹を振るう。

 

「笹ト短冊ガ燃エル前ニ…!?」

「ち、ちんきゅう…きぃぃっく!!」

 

音々音の必殺「ちんきゅーきっく」により笹を蹴り弾く。

 

「貴女モ動ケテ!?」

 

音々音は笹を蹴り弾いてそのまま転がりながら着地し、また蹲った。

彼女の体力と気合と根性全てを出し切って倫安鬼に不意打ちを食らわせたのだ。

 

「笹ト短冊ガ…!?」

 

このままではマズイと危惧する倫安鬼。何が何でも引き剥がさないと思って、継続している帯の操作する。

 

「離レテクダサイ!?」

 

帯で楊貴妃を引き剝がそうとするが帯の見た目がおかしかった。

 

「エ…赤黒イ?」

 

帯が全て血に染まったように赤黒かったのだ。更に赤黒く染まった帯からは呪詛が滲んでいた。

 

「ナンデ!?」

「ああ、ソレ。私の血」

「エ」

 

虞美人を捕獲していた帯の繭が赤黒く染まっていた。そして斬り裂かれて中から虞美人が飛び出した。

 

「ソンナッ…身動キヲ 完全ニ 封ジテイタノニ!?」

 

倫安鬼は虞美人を帯で四肢を縛り、首や腹部やら全て縛り付けていた。絶対に動けるはずがなく、恋の病の呪いで更に動けなくしていたのだ。

 

「んなもん身体を爆ぜて再構成すればどんな帯だろうが鎖だろうが抜け出せるわよ。普通よ普通」

 

そんな事が出来るのは虞美人しかいない。

 

「それに恋の病の呪いですって?」

 

虞美人は双剣を構える。

 

「私の項羽様に対する恋…いえ、愛は呪いなんかでどうにかできるようなものじゃないわよ!!」

「ナントイウ…愛ノ力」

 

虞美人は双剣を振るって倫安鬼の首を斬り飛ばした。

 

「ゴメンナサイ 怠劫鬼。私ハ 貴方ノ為ニ 待ツ事ガ出来ナカッ……」

 

最期に倫安鬼の視界に映ったのは怠劫鬼の首であった。

 

「アア…怠劫鬼。モウ少シデ……デモ、会イニ来テ クレタンデスネ」

 

倫安鬼は名残惜しくも消滅した。再会出来なかったけれども愛する人が自分と求めて来てくれたという事には満足したのであった。




読んでくださってありがとうございます。
次回の更新もまた未定。でもやっと七夕編も次回で終了です。





華琳役の乃嶋架菜さんのご冥福をお祈ります。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。