Fate/Grand Order 幻想創造大陸 『外史』 三国次元演義   作:ヨツバ

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こんにちは。
またまた早めに書けたので更新です。


錦帆賊との決戦

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太陽が真上に昇る頃、戦いの幕は切って落とされた。

 

「突撃です。敵は賊軍。頭目さえ倒してしまえば勝利はこっちのものです!!」

「全力前進。周泰を援護するよー!!」

 

明命、小蓮の率いる三十隻、兵一万が錦帆賊の敵船に突撃する。

此方側は上流で敵側が下流。河の流れを考えると有利に思えるが錦帆賊は流れをものともせずに此方側の横腹をつくように回り込んできたのだ。

孫権の軍は楼船と露橈船という大型船を有しておるが甘寧率いる錦帆賊はほとんどが小型船で中型船も数える程度。しかも大型船は一隻だけだ。

だがこの戦いでは有利さは錦帆賊であるため此方側が大きな船で威圧しても戦い方は向こうが知っているのだ。

孫呉水軍の戦力を見ても錦帆賊は士気は高いままなのだから。

 

「はっはーっ、孫呉の雑魚を食っちまえ!!」

「決めろぉおおお!!」

 

錦帆賊は突撃してくる。

 

「面舵いっぱぁい!!」

「周泰様。左舷から敵が!!」

「面舵もっときれーーーー!!」

 

面舵をきっても敵の艨衝という船が突っ込んできた。

 

「負けるなー。こっちも体当たりで沈めろー!!」

 

負けじと同じように錦帆賊の船に突っ込む。

 

「江賊もやるな」

「李書文さんもちゃんと戦ってくださいよー!!」

「なに、儂が出るのは…」

「野郎ども。乗り込めえええ!!」

「今からだ」

 

李書文の出番は錦帆賊が乗り込んできてから始まる白兵戦だ。

明命隊は分厚い輪形陣を敷いていたが錦帆賊は巧みな操船で護衛の露橈船をかわし、沈めて楼船に殺到してきた。

何隻も艨衝に突入され、彼女の船は半壊してしまう。そうなれば航行不能に陥った。

彼女の乗る船に敵船が集まり錦帆賊はどんどん乗り込んでいく。

 

「かかってこい江賊ども!!」

 

李書文は槍も持って錦帆賊に突撃した。

明命が指揮する楼船に錦帆賊が襲い掛かっている様子を見て小蓮はすぐさま援護に向かっていた。

 

「周泰が危ない。もっと急いで!!」

「しかし、尚香様。進路を敵船に阻まれてます!!」

「ならもっと矢を撃って。何のためにこんな立派な矢倉のある船に乗っているのよ!!」

「はい!!」

 

矢を放って敵に囲まれた明命の救援に向かう小蓮たち。だが錦帆賊も黙っているはずが無く、四方八方から小蓮の乗る船に突入して陣形を崩していく。

 

「こっちの船も沈めろー!!」

「ちょっと、護衛の露橈は何してっ…あっ!?」

「ああ、護衛の露橈なら大半を沈められてるぜ。残った方は敵に乗り込まれて防戦している最中だ」

「なら燕青も援護に行って!!」

「ほいきた」

 

燕青も単騎で敵船に乗り込んで拳を振るう。普通なら無謀だが彼は歴戦の強者として戦うのだ。

 

「ああん、なんだこいつ1人で乗り込んできたぞ?」

「自殺志願者かよ」

「ならオレ様が殺してやるぜ!!」

 

錦帆賊が燕青に対して複数で襲い掛かる。

 

「いいよぉ。てめえらみたいな分かりやすい奴はシンプルに殴る」

 

瞬殺。

燕青が今おこなった動きに関して誰かが見たとしたら感想を口にするならばその言葉しかない。

 

「なんだ、仲間がいきなり吹き飛んだぞ!?」

「あれ、あいつはどこ行った!?」

「こっちだよ」

 

敵船を沈没させたら、次の船へと移動。その繰り返しである。

 

(さーて、まだなんとかなるが時間の問題だね。俺らが錦帆賊を荒らしてもあっちがこの戦いで有利だからな。いずれは形勢逆転されちまう)

 

この戦いは個ではない。群なのだから燕青や明命が1人で錦帆賊を何人倒しても意味は無い。

 

(軍師さんが考えた策が上手くいくといいんだが…いや、上手くいってもらわないと困る)

 

戦力的には孫呉が勝っているが長江の戦い方は錦帆賊の方が上である。

孫呉水軍よりも錦帆賊の方が操船技術も船上での兵士たちの身のこなしも上であったのだ。

 

「孫呉水軍の船は見た目は立派なのですが実は間に合わせの急造船が多いんです。防御力にはかなり難がありましてぇ…」

 

味方の船が次々と沈んでいく。しかし孫権は感情を押し殺したような表情で静かに前を見据える。

彼女が睨んだ先には乱戦からの現場から少し離れた河の上に待機する十隻ほどの敵船。

 

「興覇はまだ動かないか」

「あそこに甘寧がいるの?」

「恐らくな。こちらの本隊が控えたままなので興覇も慎重になっているようだ」

 

どちらもまだ動かない。しかし此方は功を焦って動くわけにはいかないのだ。

穏の考えた策を実行するためには今、動くことはできない。

孫権は仲間の無事を祈りながらただ待つしかできない。だが彼女が動く時はもうすぐである。

 

「動いた!!」

 

孫権が睨んでいた残りの敵船団も明命隊と小蓮隊に攻撃を開始したのだ。

 

「ここまでは想定通りです!!」

「後はシャオたちがどれだけ敵を引き付けてくれるか」

 

孫権たちの視線が小蓮たちが乗る楼船に移る。

 

「たぁーーー!!」

 

小蓮が錦帆賊と戦う。見かけによらず戦えるのだ。

 

「何だあのガキ強いぞ!?」

「ガキって言うなー!!」

 

小柄な彼女がガタイの良い錦帆賊を倒していくのを見て、部下の兵士たちだって負けていられない。

だが戦況はどんどん変化していく。

 

「あ、周泰様の船が!?」

「ええ!?」

 

明命の船は破壊され、もう浮かぶのすら危険な状態である。

 

「周泰様。船内に大量の水が!!」

「もうこの船は持ちません!!」

「っ…わかりました。みんな、立派によく戦いました。船は捨てます。総員退艦してください!!」

 

すぐさま退艦するように命令する。

 

「李書文さんも!!」

「儂は最後でいい。こやつ等を相手しておかないと無事にお主たちが退艦できぬだろう」

「危険ですよ!!」

「呵々。これくらいの修羅場なぞ何度も体験しておる!!」

 

そう言って沈む行く船を気にせずに李書文は錦帆賊を屠る。

彼の姿を見て錦帆賊は戦意を失う者も現れてもおかしくはない。

 

「戦う意思ある者のみ儂の前に出るがいい!!」

「く、くそっ。こんな奴に俺ら錦帆賊が負けるかよ!!」

 

それでも錦帆賊にも誇りや意地がある。相手が鬼のような存在でも突撃してくる奴はいるのだ。

 

「来い。その意地を受け止めては砕いてやるわ!!」

 

明命たちを退艦させる役目は李書文だ。このような無茶は彼くらいしかできない。

 

「ああ、周泰の船が…!?」

 

明命の乗る楼船が沈む。それを見た小蓮は焦ってしまう。

 

「早く船を進めて落ちた兵士を助けないと!!」

 

早く助けに行かねばと思っているが自分の乗る船があらぬ方向へと進んでしまう。

 

「ちょっと取り舵だってば!!」

「それが操舵室を敵に奪われました!!」

「奪わっ、ええ!?」

 

そんな時、チリンと鈴の音が鳴った。

 

「孫尚香…仲謀の妹だな?」

「もしかして!!」

「錦帆賊頭目、甘興覇だ。母なる長江を乱す輩は誰であろうと容赦せん」

 

小蓮の前に甘寧が現れた。

 

「それはアンタたちのことでしょ!!」

「大人しく我らに降るなら良し。あくまで抗うつもりならこの船もろとも河底に沈んでもらう」

「シャオを甘くみないでよ。たぁーーーーっ!!」

「ふんっ!!」

 

攻撃するが甘寧の剣で弾き返される。

 

「つまらん。孫家の末娘たるお前の力がその程度なら仲謀の腕前もたかが知れたものだろうな」

「何ですって、姉さまの悪口は許さないわよ!!」

 

悪口を言われて怒りが走り、再度攻撃を繰り返す。

 

「…なかなかの動きだ。しかし攻撃にまるで重さが無い。そのような細腕では、私に傷一つ負わせられんぞ?」

「きゃあ!?」

「おっと待ったぁ!!」

「む!!」

 

小蓮に向けられた剣先が変わって声が聞こえた先に一閃する。

「危ないねぇ」

「貴様は?」

 

そこ立っていたのは燕青であった。

そして静かに拳を構えた。

 

「そこの孫家の姫さんを殺されるわけにはいかないんでね。こっから天巧星の燕青がお相手しよう」

「…貴様、強いな」

 

先に動いたのは甘寧である。剣を縦横無尽に操って剣閃を繰り出す。

一閃、二閃、三閃、四閃、五閃と斬撃を燕青をギリギリのところで避ける。

避け続ける燕青に対して甘寧は冷静なまま剣を斬り続ける。

 

「ほう、良い動きだな」

「お前さんもな」

 

避け続けても戦いは終わらない。今度はこっちの番だと燕青は拳を振るう。

 

「重い一撃だ」

 

甘寧は剣の腹で受け止めていた。

 

「ひゅうっ、よく受け止めたな」

「粋がるなよ」

 

どこか余裕そうな燕青に対し甘寧は少し苛立つがすぐに冷静になる。

勝負時に冷静を失うのはマズイ事だ。しかし人の心はどうなるか分からない。

 

「尚香様!!」

「周泰生きてたのね!!」

「はい、面目ございません。船を沈められてしまいました」

「ううん、生きてて本当に良かった」

 

明命が合流する。

危うく沈没する船から逃れるが早く主家の娘である小蓮を助けに来たのだ。彼女の忠義心は高い。

 

「周泰、そいつが甘寧だよ!!」

「この人が!?」

「あの船の生き残りか。この娘を助けにきたお前の忠義心は高いな」

 

甘寧は小蓮に明命、燕青に囲まれた。だが彼女は焦りは無い。

彼女は如何に3人を仕留めようかと頭を働かせているのだ。

 

「3対1だが、どうするよ?」

「この程度の状況なぞいくらでも打破してきた!!」

 

すぐに間合いを詰めて燕青に剣を振るう。

 

「おっとぉ」

 

腹部すれすれに剣が横切った。少しでも反応が遅ければ腹を掻っ捌かれていたと誰もが思ってしまう。

 

「助太刀します!!」

「シャオも!!」

「武人の戦いに横やりを入れるような無粋をするな!!」

 

小蓮と明命を甘寧は気合と共に剣で吹き飛ばす。

 

「そろそろだな」

 

その戦いの様子を見ていた孫権は呟いた。

 

「では、ついに」

「ああ」

 

甘寧と燕青の戦いに明命が合流したその時に穏の策が実行された。

 

「よし、今だ」

「はい!!」

 

ここでついに孫権が決断する。

ここまで戦の流れは穏が思い描いた通りの展開を見せていた。

 

「面舵、敵の根城に向かって全力前進!!」

 

穏が考えた策はまさに肉を切らせて骨を断つ作戦。

囮となる船団を孫呉水軍から大部分を投入して錦帆賊を全て引っ張り出して、残りの孫呉水軍で拠点を叩き落とすというものだ。

 

「お頭、敵の本隊が動き出したぞ!!」

「なに!!」

 

甘寧は此方に向かってくると予想したが孫権の乗った船は此方に来ない。

 

「何故こない…?」

「ふふふー」

 

ここで小蓮はしてやったりの顔をする。

 

「っ、しまった。全軍、今すぐ船に戻れ!!」

 

すぐさま甘寧は孫権の狙いが分かったのだ。

 

「仲謀め、我らの拠点を落とす気だな!!」

「はっはー。俺らを相手してていいんかい?」

「くっ、こいつ…!!」

 

孫権の狙いが分かった今、甘寧は燕青たちと戦っている暇は無い。

 

「くっ…こいつらと戦っている暇はない。急いで仲謀の元に向かうぞ」

「はい、こいつらは任せてくれお頭!!」

 

甘寧は部下に任せて孫権の元に急いで向かった。だが穏の策は既に甘寧の足元に絡みついている。

 

「急げー。もっと櫂を漕げ!!」

 

孫権の本隊は激戦の横を素通りし、錦帆賊の拠点を目指して河の上を滑っていく。

甘寧も此方の狙いが分かっているが全ての錦帆賊にが拠点の危機が上手く伝わっていない。それはほとんどの敵船が囮船団に戦うのに夢中であるからだ。

それでも数隻の船が進路を妨害しようと一列になって向かってくる。その先頭を進む船には甘寧の姿があった。

 

「おのれ仲謀。決戦の約束を交わし、我らを河におびき出し…その隙に空き家へ押し込もうとはっ、この卑怯者がぁ!!」

「はい。これが戦ですよ。戦とは騙し、謀り、あざむくこと!!」

「黙れぇええ!!」

 

甘寧は怒りを吐き出してしまった。

 

「味方をあれほど犠牲にし、船を、兵を失って…それで得た勝利にいったい何の価値がある。無様な勝利は敗北にも等しい!!」

「勝利と敗北は違いますよ?」

 

戦をするからにはどんな手段を使っても勝つこと。それは間違いではない。

 

「興覇、お前の負けだ。これまでお前がやってきたことは所詮戦の真似事に過ぎん。まことの戦とはこういうものだ!!」

「仲謀!!」

 

孫権は母親譲りの威厳で胸を張って言い放った。

炎蓮や雪蓮なら穏の策を採用しなかったかもしれない。だが孫権は2人よりも現実的で冷徹な判断力を持った将である。

2人は違う戦い方があるのだ。彼女の正論に甘寧は何も言い返せない。

戦いに卑怯も正々堂々もあるのだから。

 

「お頭、砦から煙が!!」

「何だと!?」

 

錦帆賊の拠点を守る砦から黒煙が立ち上っている。

これも策の1つで、水上決戦に全力を注ぐと見せかけて別動隊が陸路で敵の拠点に向かっていたのだ。

兵力は少数だが錦帆賊もこの決戦にほぼ全勢力を注ぎ込んでいる。ならばその拠点を守る兵もわずかなはずである。

 

「仲謀、貴様はどこまでも!!」

「まだ卑怯と罵るか興覇。戦はお前が考えているほど甘いものではないぞ!!」

 

戦とはどうなるか分からない。戦術なんて何百通りもあるもの。

錦帆賊が歴戦の兵であろうとただの蛮勇で軍師の策に勝つことは出来ない。

 

「もはや勝敗は決した。例えここで逃れようと、蛮勇を振りかざすだけの錦帆賊は遠からずどこかで誰かに駆逐されよう!!」

 

戦況は一変する。

 

「興覇。大人しく我ら孫呉に降れ!!」

 

孫権は大声で甘寧に降伏を説く。

堂々としたその姿はやはり孫家の将の1人だ。

 

「ぐ…」

 

今の甘寧はどうすることもできない。拠点に向かえば背後の孫権に襲われる。ここで戦ってもその間に拠点は落とされる。

どう考えても甘寧に勝つ見込みは無い。

 

「降れ興覇!!」

「……私を侮るな。ならば鉄の檻をも砕く、蛮勇の力をとくと味わせてやろう!!」

 

甘寧は諦めなかった。自棄になったわけではない。

彼女の号令で敵船団は一本の鋭い槍となり、孫堅の楼船めがけて一直線に突進してきたのだ。

錦帆賊の結束力は侮れない。こんな不利の状況でも一丸となって戦局を覆そうとしている。

 

「孫権の首を挙げろ。それで我らの勝利だ!!」

「まさに蛮勇を持ってこちらの策を打ち破る気か!!」

 

だがこれも読み通りである。

 

「甘寧の船を包囲しろ。他の船と切り離せ!!」

 

孫権の指示で敵の隊列を切り裂くように温存していた孫呉水軍の艨衝が突撃する。

実は明命たちの船団や陸路拠点を目指す別動隊すら囮だったのだ。

真の狙いは甘寧が先陣を切って懐に飛び込んでくる今の状況を作り出す事である。

この戦いの目的は賊の殲滅ではない。甘寧を孫呉に引きいれる事だ。

 

「お頭、このままじゃ危ねえ!!」

「まだだ。孫権さえ討ち取ればこの戦は我らの勝ちぞー!!」

「…興覇。蛮勇には、時として蛮勇で応えるべきか」

「ほえ、仲謀さま?」

「ゆけえっ、甘寧の船に突撃しろーーー!!」

「ええ!?」

 

孫権も同じく、突撃の号令を出した。

 

「興覇ぁああ!!」

「仲謀ぉおお!!」

 

二隻は正面を切って突撃する。

 

「ぶつかる!?」

 

二隻は正面衝突する。その余波大きく、上手く立つことができない。

 

「きゃあああ!?」

「穏さん大丈夫!?」

「はは、はい。仲謀さまは!?」

 

その孫権は猛烈に揺れる甲板上を走っていた。そのまま船の縁を飛び越えて甘寧の船に乗り込んだのだ。

藤丸立香も何とか走って船の縁から見る。

 

「興覇!!」

「なっ、なにぃ!?」

 

まさか孫権が来るとは思わなかったのか虚を突かれた甘寧。

孫権はすぐに剣を抜き放って態勢を崩していた甘寧の喉元に白刃を突き付けた。

 

「さあ、これでどうだ?」

「仲謀…」

 

その瞬間に戦場の全ての音が止まった。

大将同士が対峙した緊迫の場面に注視しているのだ。

 

「……孫堅は蛮勇。狂虎とも渾名されているが、まことはそれを通り越して羅刹のような武者だと聞く。その娘もまた命知らずの荒武者か」

「孫家の娘にとって誉め言葉ね」

「そんな戦いぶりでは長くは生きられんぞ?」

「それは心配していない。お前のように有能な将が私のために働いてくれるのだからな」

 

甘寧の顔が少し和らいだ。

 

「……私の負けか」

「興覇…錦帆賊は強い。その強さに統制と軍師の策が加われば、お前の水軍はまさに無敵となるだろう」

「……ふっ」

「腹は決まったか?」

「仲謀は昔と変わらんな。傍目には育ちの良い箱入り娘だがその身体には猛々しい獣の血が流れている」

 

全くもってそうだと船の上からガンドの準備をしていた藤丸立香も思う。

まさか敵船に突っ込んでいくなんて予想外過ぎる。彼女だけが他の孫一族と違うとも思っていたが血の繋がりは馬鹿にできない。

孫権も炎蓮と同じように無茶をするような人間であったのだ。

 

「共に遊んでいた頃も向こう見ずなお前はよく町のごろつきに食って掛かっていたものだ」

「ふふ、結局いつもお前に助けてもらっていたが。ええ、私はあの頃のまま、何も変わっていないわよ。だがお前とて変わっていないはずだ。情義に厚く、弱きものを守って世を正そうとしている」

「……」

「私の願いはお前と同じだ。ともに歩もう興覇。私にはお前が必要なのだ」

「…ああ、そのようだな。あの頃と同じく私が守ってやらねば危なっかしくて見ておれん」

 

先に折れたのは甘寧であった。

 

「仲謀…いえ、孫権様」

 

旧友と思い出を語っていた顔が一介の武人のそれに戻った。

彼女は姿勢を正すと孫権に向かって拳と手の平を合わせ、頭を下げながら臣下の礼を取る。

 

「この甘興覇、死訪れるその時まで孫権様にお仕えする事をここに堅く誓います」

「ええ…ありがとう思春」

「ハッ、蓮華様」

 

話がまとまり、2人は真名の交換をした。長馴染みと言っていたから元々知っていたかもしれない。

だが今ので甘寧が孫権の仲間になったということは変わりない。敵同士から一緒に前を向いて未来に進む関係になったのだ。

 

「さて、甘寧は仲間になったけど…」

 

他の錦帆賊はどうかと思ったが甘寧が仕えるなら俺たちも、というように孫呉に仕えることを決めたのを見てホッとする。

 

「まったく最後の最後で仲謀さまが敵船に飛び移ったのは想定外でしたよ~」

 

孫権は勝つために非情な策を選び、冷静な戦況を見極めて機を逃さずに命令を下す。かと思えば、猪武者のような蛮勇も振るう。

そんな姿が武に生きる甘寧の心を動かしたのかもしれない。

 

「蓮華様。我ら錦帆賊、孫家の覇道にどこまでもお供いたします」

「うむ、思春。よろしく頼んーー」

 

甘寧と孫権が手を取り合おうとした時、孫軍の船がいきなり沈没した。

 

「な、なに!?」

「誰が手を出した!!」

「いえ、誰も手を出してねえっす頭!!」

「じゃあ誰が!?」

「あれは…?」

 

江東の河に黒く大きな物体の影が浮き出たのを藤丸立香は見た。

 




読んでくれてありがとうございました。
次回は…また1時間後くらい?

孫権と甘寧の戦いは孫権の勝利・・・と思ったらまだ続きます。
次回がオリジナル要素が加わった話ですね。
立香が何を見たのか・・・・それは次回です。

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