Fate/Grand Order 幻想創造大陸 『外史』 三国次元演義 作:ヨツバ
更新がまたまた遅れてすいません。
今年のFGO水着イベント。面白かったです!!
最後の最後でまさかの爆弾を落としていきましたが…それはそれで「次」に繋がるので楽しみです。
マシュとリリスの絡みは奏章Ⅳ以来ですね。読んでて面白かったです。
そして藤丸立香とリリスの絡みもまた尊い……リリスは完璧にヒロインでした。
こっちの水着イベントというか話しもどんどん書いていきたいというかさっさと進めたいです。
頑張れ…作者である私……。
さて、では、物語をどうぞ。
2067
白い砂浜を歩くは二人の美女。徴姉妹の徴側と徴弐である。
その光景はまさに海に降臨した美女神。こんな事を口にすると他の女神に嫉妬させられそうになるから言えないが本当に彼女たちは綺麗なのだ。
もう二人が歩くだけで絵画になってもおかしくない。これはもう目に焼き付けるしかない。
「もう、マスターさん。声に出てますよ」
「姉さんが綺麗なのは当然だろ」
「声に出てたか。でも徴弐も綺麗だよ?」
「んぐ。全く…マスターはいつもそういう事を言う」
口に出さず、思ってるだけにしているつもりだったが藤丸立香は無意識に賞賛してしまったようだ。しかし仕方ない。
徴姉妹が綺麗で可愛いのだから誰だって賞賛する。藤丸立香だってする。
「だからほめ過ぎですよぉ」
「ほめ過ぎ。過度な賞賛は嫌味だよ」
「でも本音だから」
「もう…」
「だからマスターは…はあ」
何を言っても藤丸立香の本音は変わらない。綺麗だから綺麗だと言うし、可愛いと思えば可愛いと言う。
それこそが藤丸立香である。徴姉妹はマスターの称賛に照れるし、調子を狂わされる。
「弐っちゃん。これは何を言ってもマスターに勝てないよぉ」
「姉さんを負かせるとか不敬だから」
「オレは二人に対して何に勝ったのさ?」
何はともあれ、徴姉妹が綺麗で可愛いのは確かである。
「おーい。ぼすぼすー、であであのマスター!!」
そろそろマスターの褒められ、賞賛攻撃を止めたい徴弐だったがここで助っ人が横入りする。
その助っ人とは太歳星君である。尤も彼は助っ人という自覚はなく、ただ単に三人を見かけたから元気よく声を掛けただけだ。
「やっぱ夏はあっついぞ。そして海が綺麗だぞー!!」
元気いっぱい満点笑顔の太歳星君。彼を見ると呪いの神とは思えない。まるで太陽の子だ。
「海の水も冷たいぞー!!」
「そうだね太歳星君。海の水は気持ちいんだ」
「ベトナムの海とはまた違いますね」
「うん。海なんてどこも同じかと思ってたけど地域や国で違うんだよね」
太歳星君はおもいっきり海へ両足をドボンと着地。徴姉妹は海に手を入れてチャプチャプ。
「そうだ。素材探しをするんでしたね」
「そうだったね」
チャプチャプと海に入れていた手を戻す。
「今回の素材探しは楽でいいね。いつもだったら地獄の鬼周回なんだし」
「いやあ…はは」
「そこでマスターが苦笑すんな」
徴弐の言葉には本当に苦笑しか出来ない藤丸立香であった。
何故ならカルデアでは本当に地獄の鬼周回を実践し、素材回収をしているのだ。
この時ばかりは藤丸立香は変な意味で狂うし、サーヴァントたちもイヤイヤしながらアドレナリンを大量分泌している。
特に諸葛孔明だったり、アルトリア・キャスターだったり、マーリンだったりと過労死組は逃げ出す程だ。しかし何故かこの時だけは藤丸立香は彼らを無理やりにでも周回に連れ出す力を発揮できるのだ。
「素材ってどんなのがいいの?」
「何か見た目が良さげなやつ」
「適当すぎないマスター?」
「まあまあ。まさにコレが素材だってのを見つけてみましょうよ」
「姉さんはマスターに甘いよ」
口には出さないが徴弐もまたマスターに甘い。こんな事を言ったらおもいっきり否定するのだが。
「素材っぽいの…ならアレはどうかな?」
「何か心当たりがあるの太歳星君?」
「向こうに綺麗な砂浜があったー!!」
ぴょんぴょんと跳ねながら太歳星君は案内してくれる。
案内され、到着した場所は『白い砂浜』であった。
「わあ。綺麗」
「でしょー!!」
「見事だね」
辺り一面の白い砂浜が広がっていた。
『白い砂浜』は珊瑚や貝殻の破片、石英などの鉱物が波に削られて白く輝く美しい砂浜となったものだ。
「なんか一部分でめっちゃ光ってる箇所あるんだー」
太歳星君が指さす方向を見ると確かに一部分だけ輝く箇所を発見。気になって駆け寄ってみると本当に白い砂が輝いていた。
「何でココだけ輝いてんの?」
「さあ?」
手に取ってみると太陽の反射で輝いているわけではなく、本当に白い砂自体が輝いていた。
「コレは素材になりそうかな?」
「なるかもね」
「虚影の塵が素材になるんだから、この白い砂だって素材になるんじゃない?」
砂というよりも正確には珊瑚や貝殻の破片、石英などの鉱物の削り破片だ。
「なるかもね。一応回収しておこっか」
太歳星君と徴姉妹は『輝く白砂』を手に入れた。
「それにしてもお腹ちょっと空いてきたな」
小腹が空いてきた。まだお昼前だがお腹が空いたのだから仕方ない。
「おやつかー?」
「なら丁度いいですね」
そう言って徴側は軽食を取り出す。
「あ。これって」
「はい。蓮の実のチェーです」
バレンタインイベントの時に二人から送られた料理。
まさかここで食べられるとは思わなかったものだ。
「皆さんの分も用意したんですけど別行動してますからね。後で皆さんにも分けないと」
「じゃあ先に頂いちゃおうっと」
蓮の実のチェーはホクホクとした優しい甘さの蓮の実を主役にしたベトナムの伝統的な甘いデザート。
ビタミンB群やミネラルが豊富で夏の疲労回復、精神安定、食欲不振に高い効果がある。冷やして食べると夏バテ予防に最適である。
「やっぱ美味しいなあ」
「まだ食べてないじゃん」
「食べなくても美味しいって分かるから」
「ちゃんと食べてよ」
パクリと一口。
「う~ん。このほっくりとした優しい甘い味わいが良い…」
「美味しいぞ!!」
徴姉妹の作る蓮の実のチェーが不味いわけがない。
「ああ…美味いなあ」
「マスターが凄く感慨深く食べてるんだけど…何を思い出してんのさ」
「二人とのバレンタインの事」
「思い出すな。こっちも恥ずかしくなる」
徴弐は何処か恥ずかしそうに姉の作った蓮の実のチェーを食べる。
「徴弐も一緒に作ったの?」
「今回は作ってない。純度百パーセント姉さんお手製の蓮の実のチェーだ」
パクリと食べると徴弐は良い笑顔になる。
大好きな姉の手料理なら笑顔になるに決まっている。
「そっか。徴弐の作った蓮の実のチェーも食べたかったな」
「うぶっ」
徴弐がちょっと吹いた。
「な、なんで」
「何でって…そのまんま、徴弐の手料理を食べたいなって思っただけなんだけど。以前食べた料理が美味しかったし。それに徴弐みたいに綺麗な人の手料理って嬉しいし」
「だからこのマスターは…」
本当にただ素で思っただけだ。
「……ほんとに、いつか背中刺されても知らないよ?」
「何でそんな話に?」
「分からないのか?」
「ふふふ。意外に弐っちゃんとマスターってお似合いかも~」
「っ、姉さん」
「うふふ~」
藤丸立香と徴弐のやり取りを微笑ましく見守る徴側。
「っ…というか姉さんの手作り蓮の実のチェーじゃ不満だってのかマスター!!」
「そんな事ないけど。だって徴側の料理って完璧だし」
「当たり前だ」
「美人で器量良し。女性で素晴らしいよ徴側は」
「当然だ!!」
「もうマスターったら褒めすぎです」
ここまで褒められると照れてしまう。
「徴側の旦那に慣れたらきっと幸せだよ」
「も、もうマスターさん。それは言い過ぎですよ~」
少しニマニマしてしまうのであった。
「マスター…それは許さないよ」
「目がマジになってるって徴弐」
徴弐は徴側ガチ勢なので不用意な言葉は危険だ。
「吾輩こういうの知ってる。誑しって奴だぞ」
「そう」
「もう。何処で覚えたの?」
「いや、本当に」
徴弐は太歳星君の言葉に肯定し、徴側と藤丸立香は何処で覚えてきたのか聞き出す。
「ナーサリーライム」
「ああ…」
納得がいってしまった。彼女が幼女の姿だが物語の化身であり、様々な知識を持っている。
故に「誑し」なんて言葉を知っているのだ。なんならナーサリーライムから「マスターは誑しよ誑し。イケナイ大人だわ」なんて言われた事がある。
「誑しなのは確かじゃん」
「あまりオレが誑しと言い廻らないで欲しいんだけど」
「事実は隠せないからどうあがいてもマスターが誑しという事が広まるのは止められないよ」
藤丸立香が誑しなのは何度も言うが事実である。もう止められないし、止まらない。
2068
青い海と青い空が広がる。
海も空も30分毎に風景が変わると言われ、同じ景色は無いらしい。
その影響なのか、ずっと海と空を飽きる事なく見てられる。
悩みなんて一時だけ忘れさせてくれる。しかし一時だけで、悩み自体を解決させてくれるわけではない。
この夏こそ勝負なのだ。もう想うだけでは満足できない。彼女は「次」に進みたい。
(この水着を褒めてくれました)
似合う、可愛いと言ってくれた事が嬉しかった。月並みの称賛であっても好きな人からだと凄く心に突き刺さる。
もっと話したい、もっと一緒にいたい、もっと関係を持ちたい。彼女はどうやら想像以上に彼に対して想いが強いようだ。
「月?」
「あ、ごめん詠ちゃん。ちょっとぼーっとしてた」
「疲れてるの?」
「そうじゃないよ。海の景色を見てたらね」
「ああ、なるほどね」
詠もまた海の景色を見る。月のようにずっと見てられる気分になるが、ただ海を見ているだけでは勿体ない。
海の景色を見て楽しむのも良いがもっと海を楽しみたい。
「先に素材探しとやらを先にやっちゃおうよ。その後に泳いでみるのもいいかもね」
「うん。そうだね」
特別な武器や武具の素材探し。武器や防具でなくとも妖術等の触媒も良し。
「びぃちこぉみんぐ、だっけ?」
「意外な宝物が漂着してるかもってご主人様が言ってたしね」
二人して海辺をトコトコ歩く。すると前から見知った顔が現れる。
「ご主人様じゃない」
「立香さん、徴側さん、徴弐さん」
合流するは北郷一刀、藤丸立香、徴姉妹。
「何か見つけた?」
「いえ、まだですね」
「じゃあ一緒に探そうよ」
「はい!!」
皆で一緒にビーチコーミング。
これから何が見つかるか楽しみだ。海辺を歩きながら何かないかと探すと早速、月が何かキラリとしたモノが発見。
「アレなんだろう?」
「何かあった?」
「はい。何か光っているモノが」
月が指さす方に向かってみると綺麗なモノを見つけた。
「綺麗な欠片」
「何これ…まさか宝石じゃないわよね?」
「もしかして…瑠璃?」
砂の中から緑色の欠片を拾う。
「綺麗」
「これってもしかしてシーグラスか?」
「しぃぐらす?」
シーグラス。
海の波で揉まれ、研磨されたガラスの欠片。綺麗で美しいので「海の宝石」・『人魚の涙』と呼ばれ、「身に付けると一つだけ願いを叶えてくれる」や「奇跡や運命の出会い、絆をを引き寄せる」といった『運命の石』とも言われている。
「運命の石に人魚の涙」
運命の石は奇跡の出会いや本当に出会いたかった人の絆を引き寄せると言われている。
そして人魚の涙は海の神様に恋した人魚の涙が固まった物であり、愛の象徴と例えられている。
(ガラスか。三国時代にもあるんだよな…ただメッチャ高価なだけで)
三国時代の中国にもガラスは(瑠璃)はあった。ただし現代のような透明なモノはなく、装飾品や貴重品として扱われていた。
「えーっと。コレ、海で削れた瑠璃だな」
「やっぱコレ瑠璃なの!?」
瑠璃は三国時代で高価な代物だ。非常に珍しく宝石の一つとして扱われている。
何せ一般の人が日常的に使えるようなものではなかった程である。
現代では一般的かもしれないが三国時代ではガラスは技術的に貴重な物。
「何で瑠璃が海辺に落ちてんのよ!?」
詠の言葉はもっともかもしれない。ガラスは自然界には存在しない。ガラスは人工物なのだから。
(外の国のガラスが流れてきたのか?)
三国時代の外にガラス製造できるだと、例えばローマ等だ。
「もしかしたら外の国の瑠璃かもな」
「外の国。なるほどね…海の向こうには漢や蜀とは違う国があるとは聞いてるけど」
詠や月たち知識ある者ではれば外国の存在は知っている。ただ知識として知っているだけで文化等は知らない。
「欠片とは言え綺麗ね」
「海の向こうの国は瑠璃をこれだけ綺麗に作る技術があるのですね」
(海に揉まれて研磨されたってのはあるけど…色や透明度に関してはな)
近くを見るとシーグラスがチラホラ見える。色も様々あるのに驚いた。
瑠璃の価値を知る者なら、欠片とはいえ宝物が砂浜に落ちているようなものである。
「何かここら辺にシーグラスがいっぱい落ちてるね」
「こんな事は珍しいですね。潮の流れの影響でここら辺に流れてくるのでしょうか」
都合が良いくらいにシーグラスがたくさん落ちている。不思議だが丁度が良い。何かの素材になるかもしれない。
ガラスは昔から装飾品に使われている。それこそ儀式用の道具にもだ。何か触媒や武器の装飾品に使えるかもしれない。
「それにシーグラスの色にも意味があるんだよね」
「意味があるんですか?」
「うん」
青。恋や出会いを呼ぶ。精神の安定を司る。
緑。健康や癒し、安らぎを司る。
赤・オレンジ。非常に数が少なく、レアものであり、情熱や生命力を高める事を司る。
「へえ、面白いわね」
「この緑色は癒しや安らぎの意味があるんですね」
「うん」
そうなると健康長寿の願いが叶うという事だ。他の色のシーグラスを探してみるのも一興である。
「他にも色があったりするの?」
「ああ。他にも白や茶色、黄色、桃色とかあるらしい」
更に紫や黒、灰色もあったりするらしい。
「皆で探してみようか」
色付きシーグラス探し開始。
「「「おーーーー」」」
「で、見つけてきた」
「「「早」」」
各々が色付きシーグラスを見つけて確認し合う。
「ボクが見つけたのはコレ」
詠が見つけてきたのは黄色のシーグラスだ。
「お、レアじゃないか」
「れあ?」
「貴重な色の一つだよ」
黄色のシーグラスはレア枠。
「黄色だとどんな意味があるの?」
「確か…希望や幸福、金運、知性の意味があったかな?」
黄色だと金運のイメージが強い。
「やったな詠。金持ちになれるぞ」
「金持ちになりたい願いはないんだけど」
金持ちになれるならなりたいはずだ。しかし詠は大金持ちになりたいとは大きく願ってはいない。
彼女は別にもっと大きな願いがあるのだ。
「なら知性の意味もあるからもっと頭が良くなるぞ」
「ぼくは元から頭いいけど。でもまだ頭が良くなるならいいかもね。戦術とか色々と思いつきそう」
軍師として知力アップならいくらでも来いだ。詠も智の者なら知識はいくらあってもほしいという事だ。
そういう意味では詠が拾ってきた黄色のシーグラスはピッタリの物である。
「詠ちゃんが拾ってきたっていうのも納得できますね」
軍師たる詠が知性を司る黄色いシーグラスを拾ってくるに何かシンパシーを感じる。
「私が拾ってきたのは紫」
次に徴弐が拾ってきたシーグラスは紫色。
「それもレア枠だ」
「紫は癒しとか精神の安定とか……あとは高貴とか神秘だったな」
紫は確かに高貴なイメージを感じる。
「高貴とか私に合ってないんだけど」
「そうかな。高貴なイメージありそうだけど」
「お前の目は節穴かマスター」
ジーっと見る藤丸立香。それを返すように徴弐はジト目になる。。
「そんなに見つめるなよ」
「でも神秘さは合ってるよね」
「……ったく」
第三再臨の姿はまさに神秘そのものだ。
「それに精神の安定…冷静って意味も合ってるんじゃないかな」
「はい。弐っちゃんはいつも冷静で、私を助けてくれます」
「妹が姉を支えるのは当たり前」
「ふふ、逆もまた然りだよ弐っちゃん」
徴弐が拾ってきたシーグラスは紫。そして姉である徴側が拾ってきたのは茶色。
「茶色のシーグラスだ」
茶色のシーグラスには家庭運や仕事運を高める効果と心を落ち着かせる癒しの効果がある。そして身を守り邪気を寄せ付けない力があるとされる。
「姉さんピッタリだ」
「うん。徴側といると落ち着くし、癒されるからさ」
「そうなんですマスター?」
「うん。一緒に居ると落ち着くし。それに可愛いよ」
「姉さんがカワイイのは同意」
「もうマスターに弐っちゃんは~」
更に家庭的というのイメージに合う。彼女の雰囲気と優しさには誰もが首を頷くかもしれない。
恥ずかしそうに笑う徴側もまた可愛いと思う藤丸立香と徴弐。
「なあ立香は何のシーグラスを見つけたんだ?」
「オレは黒」
藤丸立香が見せてみせたのは黒色のシーグラス。
黒のシーグラスは魔除け・厄除け、更に安定や意志の強さの効果や意味がある。
「厄除け・魔除け…はある意味そうかもねマスター」
「そうなのか徴弐さん?」
「私はありますね」
藤丸立香に魔除け的なイメージが想像出来ない北郷一刀。しかし月にはあるようだ。
(まあ、マスターが魔除けというよりも守られてる方だけどね」
藤丸立香は英霊達に守られている。そう言う意味では最強の魔除けを有していると意味になる。
月の場合だと助けられた過去がある。特に悪霊や妖魔から助けてくれた事から彼に魔除けのイメージがあるのだ。
「他だと意志の強さ」
「それはピッタリだわ」
「はい。マスターの意思は強いですからね」
藤丸立香の意思の強さは誰もが認めた。
本人としては「そうかな?」と思っている。彼は本当に駄目な時は駄目だと諦めるタイプだからだ。
尤も諦めて来なかったからこそ今があるのだが。だからこそ英霊たちも力を貸しているのだ。
「立香の意思の強さは尊敬してるぜ」
「ありがと一刀」
友人から尊敬されるのは嬉しくもこっ恥ずかしいものだ。
「そう言えば一刀は?」
「俺は白」
北郷一刀が拾ってきたのは白色のシーグラス。
白色のシーグラスは新たなスタート(再生)や可能性を示唆する。
「新たな始まりと可能性」
過去をリセットし、ここから新しく物事を始める力を与えてくれる。
可能性とは才能の開花。眠っている才能を引き出し、未来の選択肢を広げてくれる。
「俺に合ってるかコレ?」
「合ってんじゃない?」
詠が疑問形ながらも北郷一刀に白のシーグラスが彼に合っていると思っている。
彼が桃香に新たな始まりを示してくれたのだから。
「アンタが桃香と出会ったからココまで来たんでしょ」
北郷一刀と出会ったからこそ桃香の物語が始まり、今では蜀という国を建国し、三国同盟まで締結させた。
更に仲間達にも恵まれ、その仲間達も才能を開花させて活躍させているのだ。
「こじつけ強くねえか?」
「でも実際にそうなってるんだから、こじつけでもいいわよ」
「そんなもんかね」
個々が拾ってきたシーグラスの意味を自分に当てはめているのが中々面白い。
「こうなるとご主人様が再生を司る天の御遣いで藤丸が魔除けを司る天の御遣いね」
「「なんじゃそりゃ」」
詠の言葉に二人は同時に反応するのであった。
「俺は何も再生してねえぞ」
「これから桃香たちと大陸を再生するんでしょ。争いの大陸から平和な大陸に再生するって事」
「オレは魔除けっていうけど何から守るのさ」
「于吉かそういう奴らから。実際に戦ってるでしょ」
「「やっぱこじつけ感が強いな~」」
「うるさい。二人して声を合わせないでよ」
「ふふ」
そんな三人のやり取りに笑う月や徴側であった。
「そう言えば月は?」
「あ、私は桃色のを見つけました」
「激レアじゃん」
桃色のシーグラスは恋愛運の向上や良縁を呼び寄せる。恋を呼び込んだり、パートナーとの絆を深めたりするパワーがあるとされている。
さらに幸福と自己愛と心の癒やしも意味する。
「心の癒しか…確かに月ならピッタリね。だってボクは月を見てると癒されるし」
「もう詠ちゃんは」
「それに嬉しそうな月を見るとボクは幸福な気持ちになるよ」
親友からそう言われて嬉しい月であった。詠の言葉に他の者たちも頷く。
「確かに月は癒され枠だな」
「優しさが溢れてますからね~」
「ふふ、徴側さんには負けますよ」
「いえいえ、月ちゃんの方が優しいですって」
結論、月も徴側も優しい女性だ。
「他だと恋愛にまつわるけど…月は恋愛上級者だったりする?」
徴弐がふと呟く。
「い、いいいえ、私はそんな恋愛に強くないです」
ちょっと動揺した月。
恋愛上級者であれば彼女も悩んでいなかったはずだ。
(ふふ。寧ろ桃色のシーグラスから力を貰えるといいですね)
徴側は月の気持ちは何となく察している。彼女が桃色のシーグラスを拾ったのは当然だったのかもしれない。
(偶然かもしれないけど…夏が後押ししてるみたいです)
月は桃色のシーグラスを握りしめるのであった。
「素材も色々と集まってきてるな」
「ところでシーグラスって素材になる?」
「………月のシーグラスだけは魔力を感じる」
徴弐が月の桃色のシーグラスを指摘する。
「そうなの?」
「他のは感じないけど月だけは魔力を宿してるよ」
桃色のシーグラスだけがどうやら特別のようだ。
「案外、そのシーグラスが本当に『人魚の涙』だったりするかもね」
新たな素材としてシーグラスを手に入れた。
2069
海でビーチコーミングをしていると貝殻やシーグラス以外に奇妙な物や怖い物が見つかる時がある。海には宝物だけではないのだ。
「ひう!?」
「どうしたの月?」
「い、いえ…ちょっと」
月が砂浜を歩きながらビーチコーミングをしていると怖い物を見つけたのだ。人によるかもしれないが、ソレを直接見るのを苦手だと言う人はいる。
「何か見つけたの?」
「は、はい。その…」
指さした方向を見てみると白い何かがあった。
「動物の骨?」
白い何かとは動物の骨。正確には海洋生物の骨だ。
「結構良い状態で残ってるな」
「立香さんはこういうの平気なんですか?」
「うん。平気な方かな」
スケルトン系のエネミーをいくらでも狩ってきたし、骨の素材をたくさん回収してきた。今さら、動物の骨に対して不気味とは思わない。
逆に何の動物か予想するくらいの余裕すらある。
「私は少し苦手ですかね」
月(董卓)が動物の骨が苦手というのは意外な感じだ。こう言っては何だが、彼女は人の死体を見てきたはずだ。それなのに苦手というのは分けているのかもしれない。
戦や策謀で人を殺して死体を見るのと、幽霊を見るとでは怖さが違うのかもしれない。
それに月は「少し苦手」と言った。見慣れれば平気になる。現に彼女は既に慣れて海洋生物の骨を観察していた。
「何か見つけたのか?」
「ああ。何かの動物の骨」
「骨か。ビーチコーミングでもあるよな」
ビーチコーミングで骨を見つけるのは珍しい事ではない。
魚の骨や海獣・海鳥の骨が砂浜に流れてくるものだ。見つけたら「うえっ!?」と驚くかもしれないが、ビーチコーミングだと標本やインテリアの材料として人気らしい。
「何の骨だ?」
「どうしましたご主人様?」
「何か見つけましたか?」
朱里と流琉も合流。海洋生物の骨を見て「おおう…」とリアクションしていた。
二人ともそこまで不気味がっておらず、多少なりとも興味を抱いていた。
「状態は良いけど何の骨かなって」
「う~ん。難しいですね」
「魚を捌いているので魚ならある程度は分かると思いますが…この骨は大きいです。魚のようで魚じゃありませんね」
流琉は何の骨か分からない。朱里も観察しているが分からないのか難しい顔をしていた。
「朱里も分からないか?」
「はい。すいません」
「いや、謝らなくていいよ」
朱里は天才だが専門が違う。天才にも種類があり、専門がいくつもあるのだ。
「姉さんなら何の骨か分かったかもしれません」
「朱里にお姉さんいたんだ」
「そうなんですよ流琉さん。実は私の姉さんは生き物とか好きでよく観察とかしてました」
(朱里の姉か。そういや会った事ない…朱里の姉すなわち諸葛孔明の姉)
朱里の姉。正史だとすなわち諸葛孔明の兄。
その名を諸葛瑾。正史だと呉の孫権に仕え、大将軍まで上り詰めたという。
(呉に朱里の姉が仕えているなんて話は聞かないな。呉が隠しているわけがないよな?)
三国同盟を締結し、交流を増やしている。親密になってきているが人は全てを誰かに身の内を暴く事はしない。
(まあ、同盟しているからって全てをさらけ出すってわけないもんな)
仲を深まても人には隠したい事は一つや二つあるものだ。それこそ同盟をしている国同士でも隠しているモノはたくさんである。
(それに確か…正史だと諸葛瑾は諸葛孔明は公私を厳しく分けて私的な接触を避けたと聞いた事がある)
気になるなら聞いてみるのも一つの手だ。
「朱里。ちなみに朱里の姉はどっかの国で働いてたりするのか。例えば呉や漢とか」
「いえ、ただ、何処かに仕官しに行くとは聞きました。たぶん漢には行くって言ってたかな」
朱里の話では姉は仕官先を探しに行った以降、会っていないらしい。連絡は少なからず取り合っていたようだが今だともう無い。
朱里が桃香に仕官し、蜀を建国、政に戦と忙しくて、と言い訳だが姉との交流が気が付けば無くなっていたのだ。
「姉さん今何しているのかな」
姉には姉の道があると思って大きな心配はしていない。正史と一緒で姉が何処かに所属しているなら私的な交流を朱里も進んでしようと思わない。
尤も魏と呉に実は所属し、三国同盟による交流なら話しは別だ。ちゃんと言っておくと朱里は姉と姉妹仲が悪いわけではない。仲は良好だ。
「朱里の姉は生き物に詳しいのか?」
「はい。子供の時から動物や虫が好きで、捕まえてはよく観察する人でした。そのおかげで多くの生物の知識を昔から有してましたね」
「へえ~」
「あと…私にはわからなかった趣味もありましたけど」
「朱里の姉の趣味?」
「はい。その…動物の死体や虫をバラバラに…したりとか」
「バラバラ…」
流琉は少し怖がる顔をした。
「あ、その、姉さんが残虐な性格で生き物を殺していたわけじゃないですよ!?」
動物や虫をバラバラにしていたというのは今で言う解剖の事だ。
確かに人によっては生き物を解剖する事は残虐な行為かもしれない。しかし生物の未知や神秘を解き明かすには必要で、神聖な行為でもあるのだ。
朱里の姉はこの事から生物学に興味があるようだ。正史での諸葛瑾は武力や政に秀でていた。しかしこの外史世界では生物学に秀でているのかもしれない。
「姉さんがいればこの骨の正体が分かったかもしれません」
結局のところ骨の正体は分からない。そう思った時、ある人物が近づき、直接触ってみせた。
「んー?」
砂浜に流れ着いた海洋生物は白骨体。小さな欠片なら触れなくも無いが大きい骨だと触りにくいし、拾いにくい。
朱里や月は触ろうと思わない。
その中で堂々と触ったのは太歳星君であった。
「コレなんだろなー?」
ベタベタと触って太歳星君は骨の正体を考える。
「私も動物の解体は出来ます。料理という意味では動物の骨は触れます。けどよく分からない動物の骨はちょっと…」
不気味さ、祟り的な意味で触りにくい。しかし太歳星君なら動物の白骨死体の不気味さや祟りなんて気にしない。何せ彼自身が祟り神なのだから。
「コレってもしかして海豚かー?」
海豚。すなわちイルカ。
哺乳類クジラ目に属する小型の鯨類の総称。漢字では「海豚」と書き、中国では海の豚に似た姿で見なされた事に由来している。
イルカは「愛」や「平和」、「幸運」、「癒し」の象徴でもある海洋生物だ。
「これって海豚なんですか?」
「確かにそれっぽいかも」
「海豚の骨ってこんなんですね」
実物は可愛いが、骨だけだと不気味だ。
「よく分かったね太歳星君」
「図書館の本で見た事あるからなー」
図書館とはもちろんカルデアの図書館だ。きっと子供サーヴァントたちと一緒に呼んだのかもしれない。
「イルカの骨か」
イルカの骨問わず、動物の骨は魔術・妖術の触媒になりそうだ。
呪いだったり、占いだったり、儀式だかで動物の骨は使われているイメージがあるからだ。実際に死霊魔術なんてある程だ。
「大きいけど触媒として回収しておくか?」
「そうだな」
イルカの白骨遺体を回収。その際に奇妙な物を発見。奇妙な石のような塊だ。
「これなんでしょう?」
「それは海豚の耳骨かも」
イルカの耳骨。『布袋石』とも呼ばれている。
耳骨は「海に沈まず岸まで流れ着く」縁起の良さから、海の安全や幸運を呼ぶお守りとしても扱われている。
「幸運のお守りなんですね」
「骨だと悪い感じだと思っちゃうけど幸運的なモノもあるのね」
骨は怖いイメージだ。しかし全てではなく、幸運や縁起物だってある。
「他にも鮫の歯や海洋生物の化石もあったりするのかな」
北郷一刀たちはイルカの骨(耳骨)を手に入れた。
2070
夏の海。夏の魔力。夏の解放感。
何故か分からないが男女関係無く人を大胆にさせる。それは三国の王や武将・文官だけでなく、カルデアの英霊たちだって有効だ。
夏の魔力に充てられているのは者がここにも一人。
(びぃちこぉみんぐ。ちょっとした宝探しですね。でも見つけているのが何となく全部が恋愛寄りな気がします)
発見したシーグラスやイルカの耳骨など幸運や恋愛成就、願いを叶えるといった意味合いが多かった。気のせいかもしれないが、まるで自分の願いを後押ししているかのようだ。
だからなのか月もより夏の魔力を当てられて大胆になる。それこそ藤丸立香を二人きりでビーチコーミングを誘う程度には。
「り、立香さん!!」
「なにかな月?」
「む、向こうの方を探しに行ってみませんか?」
「いいよ。行ってみようか」
誘う事が成功して嬉しさが顔に出る。
そのまま月は藤丸立香の手を握った。この行動に対して自分自身でも驚いた。
自分はここまで大胆だっただろうかと驚くが今は気にしない。大胆になったというならばこのままイケるところまで行くのみである。
(あう…ドキドキします。私ってばこんな大胆に)
大胆になっていてもドキドキするのはしょうがない。
しっかりと手を握っているが手汗をかいてベタベタしたらどうしようと思ってしまう。
「海が綺麗ですね」
「色んな海を見てきたけど…ここの海も綺麗だ」
藤丸立香は夏特異点で様々な海を見てきた。どの海も同じようで異なる良さと美しさがある。
この外史世界の海もまた美しい青色だ。ただずっとぼーっといつまでも見てられる。
「立香さんは色んな海を見てきたんですか?」
「うん。本当に色々な海を見てきたんだよ」
思い出すだけでオケアノス・アトランティス・ブルースカイランド・ルルハワ・トレジャーアイランド・ハワトリア等々。
どの海も大変であったが美しかった思い出もある。
「どんな海があったか聞いてみたいです」
「いいよ。ちょっと…というかめっちゃ長くなるけど」
「ふふ、いいですよ」
一つの海の記憶を話すだけでも本当に長くなる。浜辺をゆっくりと歩きながら藤丸立香は己が体験した様々な海を話すのであった。
「オケアノスって海では仲間と大冒険だったなあ」
「海賊と一緒に船に乗ったんですか?」
「うん。みんな豪快で良い人たちだったよ」
フランシス・ドレイクは豪快で気持ちのいい奴だ。綺麗で強くてカッコイイ人物で憧れる。
彼女の部下たちもノリが良く、楽しくて頼もしい奴らである。
「海賊が良い人って想像がつかないんですけど」
「あはは…海賊にも色んな人達がいるんだよ」
月からしてみれば海賊は悪い人のイメージだ。実際に港町など襲って物資を強奪しているという報告を聞いていたら嫌でもそうなる。
「確かに悪い海賊もいる。でも良い海賊だっている……よ?」
「ふふ、疑問形になってますよ」
「良い海賊」と言って藤丸立香も「ん?」と思うのであった。そんな顔をしている彼を月を見て、つい少し笑ってしまった。
海賊は悪い存在だ。故に海賊が良いとは言えない。ただ『悪』な人物たちとはいえ、分かり合えないわけではないし、仲良くなれないわけでもないのだ。
「船の旅で海を見るのも良いものだよ」
「それは羨ましいですね。私も船で旅をしてみたいです」
月の本音だ。戦や政を気にせずに好きな人と海を旅をするというのはきっとドキドキして楽しいはずだ。
「他には無人島で開拓もしたなぁ」
「無人島で開拓…立香さんは凄いですね」
「いや、一人で開拓したわけじゃないよ。みんなで開拓したんだ」
「でも何で無人島を開拓する羽目に?」
「海難(レイシフト失敗)して無人島に漂着したから」
「思いのほか命がけだったんですね!?」
無人島では脱出用の船を製造する前段階として生活安定のために色々と開拓したのである。
「大変だったけど楽しかったよ。目の前に広がるのは美しい海。穏やかな風。斬りごたえのあるカニ…」
「斬りごたえのある蟹?」
大きな蟹でもいたのだろうかと思う月であった。実際は本当に人を襲う程の大きな蟹。
「開拓ってどれくらい開拓したんですか?」
「えーっと、まずは拠点作りからで…」
「ふむふむ」
小屋や井戸、炊事場、風呂場を作りもした。小屋に関しては最終的に大きな屋敷や城までに至った。
「なるほど。住むところは必要ですね。それに風呂場まで作れるなんて……って城!?」
野菜畑や穀物畑を耕したりもした。
「なるほど。安定した食料を得る為に野菜を」
「ちなみに瓜(スイカ)だったり麦や米だったり」
「麦や米を育てられたんですか!?」
牧場を作り、牛や羊、鶏なども育てた。
「無人島に牛や羊がいたんですか!?」
無人島での生活をより良くするために道や水路、橋を作ったりもした。
「無人島で道の舗装や水路を!?」
余裕が出てきたのか庭(枯山水や迷路)も作った。他には遊び場を作る為に闘技場も建設した。
「無人島に闘技場!?」
見晴台用に五重の塔や大きな人物像を建てたりもした。
「無人島がもう町というか国になってません?」
月の驚きはもっともである。藤丸立香の説明にツッコミどころはいくつもあるのだから。
しかし彼の説明からはツッコみどころはあるものの、嘘を言っている気配がないのだ。
「というか立香さんて色々と出来るんですね」
船を製造したり、城や屋敷・道路や水路を建設・舗装している時点で建設業を網羅している。
「オレ一人でやったわけじゃないからね。本当に皆で造ったんだ」
「ちなみに何人くらいですか?」
「えーっと、だいたい14人以上かな」
「それでも十分に凄いんですよ立香さん」
十数人で無人島に城を建設している時点であり得ない偉業である。
(やっぱルーンのおかげかなー)
やはりルーン。ルーン魔術は全てを解決する。
「ふふ。大変だったみたいですけど本当に楽しかったんですね」
無人島での開拓物語を話している藤丸立香はイキイキしていた。その様子から本当に楽しんでいたのが感じられる。
無人島で開拓。冒険心があるのであればロマンある展開だ。月に大きな冒険心は無いが、それでも楽しそうと思うのであった。
「もしも立香さんと無人島に漂着しても何とかなりそうですね」
「何とか生き残る自信はあるよ!!」
親指を立ててニカっと笑う。
「もしも無人島に遭難してたら立香さんを頼っちゃいますね」
サバイバルは任せろ言わんばかりに藤丸立香は胸を叩く。
そんな彼を見ながら月は心の中で「無人島で過ごすのも良いかも」なんて思うのであった。そして藤丸立香達の仲間が羨ましいとも思う。
「無人島繋がりで別の海だと宝探しに行ったりもしたね」
トレジャーアイランドではロマンある大冒険をした。ブルースカイランドとは違う冒険であり、王道な冒険であったのだ。
「いやあー…色々と大冒険だったよ。ハッハァがたくさんいたなあ…。巨大顔面卵も驚いたし」
「はっはぁ?」
「あ、いや、こっちの話」
量産型コロンブスやコロンブスの顔面卵について月は知らなくていい事だ。
「それにしても宝探し。今の私たちみたいですね」
「ビーチコーミングではなかったけどね。当時は遺跡や洞窟を探検したりしたんだ」
「宝は見つかりましたか?」
「うん。見つかったよ」
トレジャーアイランドではとても凄い宝物を発見した。しかし見つけただけで良かったのだ。
「見つけたけど持ち帰る宝物じゃなかったんだ。あの宝物は思い出として持って行く物だったからね」
「どんな宝物なんですか?」
「それは内緒。金銀財宝ではないよ。あえて言うなら浪漫かな」
「内緒にされちゃうと知りたくなっちゃいますよ立香さん」
トレジャーアイランドで見つけた宝物は見つけた者たちだけの秘密である。
世が世ならいずれ別の誰かに見つけられ、世紀の大発見と世界に駆け巡るものだ。
「あ」
「どうしたの?」
「いえ、大きな流木があったので少し驚いただけで」
「あー、アレか」
砂浜に大きな流木が流れついていた。
流木。海や川に流れ込んだ木が波や水に削られて海岸や川岸に打ち上げられたもの。
自然が作った独特な形が人気で現代ではインテリア、ハンドメイド、アクアリウムなどに使われている。
「本当に大きいね」
「最初は流木じゃなくて何か大きい生物かと思っちゃいました」
「確かに遠目から見ると魔物に見えてもおかしくないね」
流木は独特な形をしている物が多い。人によってはモンスターに見える形があったりもする。
まるで龍骨のような頭に見えたり、巨大な悪魔のような手に見えたりとだ。
「ここいらは流木が多く流れ着いてる」
周囲を見渡すと様々な流木が見えた。
人によってはアクアリム等に使う宝物(材料)がたくさんあると喜ぶかもしれない。怖がりの人なら奇妙なナニカや生物がたくさんいるように見えて不気味がるかもしれない。
「流木って素材になるのかな?」
流木がインテリアやアクアリウムになるのは知っている。しかし武器や武具になると思えない。魔術や妖術の触媒になるかも分からない。
「素材に…どうだろう?」
長い間川や海を旅してきた流木は、自然の『気』や水・木のエネルギーを宿すアイテムと言われているのだが藤丸立香はそこまで知らない。
更に日本における流木の古い言い伝えがあるにはある。
それは飛鳥時代に淡路島へ流れ着いた大きな木を島民が薪として燃やしたところ素晴らしい香りが辺りに漂い、それを 日本書紀 の記述に基づき聖徳太子が「香木」であると見抜いたという言い伝えがある。
日本の香文化の始まりを告げる有名な伝説の始まりのようなものだ。「流木」ではなく「香木」であるならば魔術・妖術の触媒になるかもしれない。
「一応集めてみるかな」
藤丸立香のイメージで魔術・妖術の触媒になるような流木を集めてみようする。
何となくで動物や奇妙な生物の形の流木を探してみようかと思う。もしくは魔術寄りの形をした流木だ。
(自分で思ってなんだけ魔術寄りの流木ってなんだろ?)
例えば悪魔の手のような形だったり、モンスターの骨のような形だったり、剣や杖といった武器のような形など。
「一緒に色々と見てみようか」
「はい。そうですね」
藤丸立香は流木を拾うために月の手を放す。物を拾うのだから当然なのだが月は何処か残念そうな顔をする。
(しょ、しょうがないですよね。こればっかりは)
自分の手から離れた藤丸立香の手をつい追いかけてしまった。なんだか自分らしくない月は変にはずかしくなる。
きっと普段の自分らしくないのも夏のせいだと勝手に思ってしまう。
「色々な流木がありますね……あ」
月はある大きな流木を発見した。それは彼女にとって良くない記憶を思い出す。
「…………」
「どうしたの月?」
少し雰囲気が変化したのを藤丸立香は気付く。
「いえ、この流木を見て良くない事を思い出してしまって」
少し苦笑いの月。
発見した流木はまるで大きな骨の手のような形をしていた。
「見事な流木で…何だか手の形をしてるね」
「はい。ただコレが…その…張譲の事を思い出してしまって」
張譲。
十常侍のリーダーであり、漢帝国を腐敗させた原因の一人。
張譲とは藤丸立香も二度戦った。黄巾の乱後と反董卓連合時にだ。
一度目は悪龍となって牙をむき、二度目は悪霊となって悪意をばら撒いた。
「そっか、月は張譲に憑りつかれてたから」
張譲は悪霊となり巨大ゴーストのような存在となったのだ。
月が見つけた流木はゴーストのような手の形を想起させ、憑りつかれていた嫌な記憶を思い出てしまったのかもしれない。
「大丈夫ですよ。確かに嫌な記憶ですけど乗り越えてますから」
トラウマにはなっていない。彼女には闇に飲み込まれずに済んだからだ。
それこそが藤丸立香達が月を救った事である。張譲に憑りつかれていた月を救った彼らは彼女にとってヒーローである。
「立香さんが…立香さんたちが救ってくれましたから」
「そっか。それは良かった」
助けられて本当に良かったと思う藤丸立香。
特異点・異聞帯の解決に向かえば救える人や救えない人いる。
藤丸立香からしてみれば救える方が良いに決まっている。救えなかった人がいて、「しょうがない」や「マスターのせいじゃない」と言われても気にしないわけがない。
「……貴方に助けてもらって本当に良かった」
「オレだけが助けたわけじゃないよ?」
「ふふ、分かってますよ。でも立香さんに助けられたのも本当ですよね?」
藤丸立香だけが月を助けたわけではない。皆で月を助けたのだ。しかし藤丸立香が助けたというのも事実である。
「立香さんに助けられたのは二回ですね。いえ、他にもありますね」
謎の洋館事件や猫の妖怪に憑りつかれた事件などが挙がる。
「そう言えばそうだったね」
「立香さんと主人と猫ごっこは…恥ずかしかったけど良い思い出ですよね?」
「月。それを良い思い出にしてはいけない」
藤丸立香と月が主人と猫のペットプレイをしたのはそもそも不可抗力である。
首輪とリードがお互いに外れなかったので一日中ペットプレイを蜀で皆に見られるという高度なプレイにもなってしまったものだ。
何故か分からないけどカルデアの清姫や牛若丸が居たら張り合ってきそうな気がする。
「あの時はちょっと……何だか変な気分に…なったような…」
「月。その先に行ってはいけない」
月はどうやら変な扉を開きかけたようだ。
「…でも相手が立香さんだからですよ」
ポソリと呟く。その小さなつぶやきが藤丸立香に聞こえていたのか聞こえていなかった分からない。
「私を助けてくれた立香さんは私の命の恩人で、英雄なんです」
「いや、英雄だなんて…何だかな」
英雄と言われてむず痒いというか心に居心地の悪さを感じる。
藤丸立香自身、自分が英霊たちのような英雄なんて畏れ多いし、英雄だなんて言えない。
「英雄ですよ。少なくとも私にとっては」
誰かが言った。「英雄とは、過去の功績に対して人々から贈られる称号。自らなろうとするものではないし、ましてや、なりたいと思ってなれるものでもない」と。
それでも誰か一人でも英雄だと思えば、認めたら、その人物はその人にとっての『英雄』なのだ。
「何だか恥ずかしいな」
「ふふ。私は立香さんに助けられてばっかりです」
月はまた藤丸立香の手を握る。
「私がここに居られるのは立香さんのおかげなんです」
「月?」
月は顔を赤らめながらも藤丸立香の指に自分の指を絡ませる。これもなかなか大胆な行動だ。
普段の彼女であれば恥ずかしくて出来ないが、やはり今の彼女は夏の魔力に充てられて大胆になっている。
心臓がドキドキしており、顔が熱くて赤くなっているのが自覚できる。しかし彼女は今なら普段よりも言いたい事が言えるような気がしている。
「な、何だかいつもと違いね。えと、悪いってわけじゃないよ?」
「はう…ううん、そうですね。私も夏に浮かれているかもしれません」
恥ずかしそうに笑う月。それでも彼の手を離さないで指を絡ませたままだ。
「立香さんは英雄のようにカッコイイです」
「褒めすぎだって」
褒められる事は藤丸立香も何度もある。しかし英雄と褒められるのは無かった気がする。故にむず痒いのだ。
「褒めすぎじゃありません。感謝してもしきれないんですから。それに……言いたい事は感謝以外にもあると言いますか、何と言いますか…」
月の心を破裂させようとする『大きく熱い想い』。今なら口から解放出来そうな気がする。このまま夏の魔力に充てられて勢いで吐き出したっていいかもしれない。
周囲には誰も居ない。手と手を握って、指を絡ませている。二人の距離は密着しようと思えばできる。
(立香さん…)
藤丸立香は鈍感のようで鈍感ではない。相手の気持ちぐらい分かる。
こんな事を言うと世の男たちから恨まれるかもしれないが、藤丸立香は多くの好意を抱く者たちの気持ちを受けている。
難聴系主人公や超鈍感系主人公ではない。相手の気持ちに気付き、相手の気持ちをちゃんと返す事が出来る男なのだ。
「あ、あの…」
月が覚悟を決めたような声色だ。
何を言いたいのか分かる気がする。これには藤丸立香も真剣に答えなければならない。
「わ、私は、立香さんのこと…」
夏の魔力に充てられ、勢いで気持ちを吐き出そうとする。未来がどうなるか考えない。今は気持ちを全て解放したいのだ。
「月どこーーーーーーーーっ!!」
せっかくの覚悟が水を差された気分である。そして声主も分かってしまった。
「「………」」
「あ、ここにいたのね月」
「お、立香もいたか」
声主は詠である。そして一緒にいたのが北郷一刀。
「ちょっと藤丸。何で月の手を握ってるのよ…は、まさか手でも怪我したの月!?」
詠は急いで月の手を取って確かめる。しかし怪我なんてしているわけがない。
「良かった。怪我してなくて」
「詠ちゃん……」
「なに?」
「今だけはちょっと嫌いかも…」
「ええ、何でぇ!?」
まさかの言葉に傷ついた詠であった。普段なら絶対に言わない台詞を言われて地味にノックアウトされる。
詠もワザとではないし、心配していたのも本心だ。ただ間が悪かったとしか言えない。
「……はっ!?」
そして察した北郷一刀。彼も鈍感でありながらも察せる男である。
「立香」
「なに一刀?」
「マジごめん…」
「いや、急に謝られても!?」
月の想いはまだ解き放たれない。
読んでくださってありがとうございました。
次回の更新は未定。
2067
立香と徴姉妹と太歳星君のお話。
まあ、立香と徴姉妹の絡みの方が多めかな。
蓮の実のチェー…食べてみたいなあ。
2068
三国時代にシーグラスってあるの?と思ってはいけない。
外史世界だからこそ…あるのかもしれない。
それにしてもガラスって当時だと高価な物だったんですね。現代のガラスを見たらめっちゃ驚きそうですね。
FGOのコミカライズ版のドレイクが胡椒を見て驚いたように。
シーグラスも色で色々と意味があったのも調べてて面白かったです。
2069
海洋生物の骨。
海辺を歩いていると見つかりますよね。
私も見つけた事があります。何の海洋生物の骨かは分かりませんでしたが。
あと腐臭が……こればっかりはどうしてもねえ。
イルカの耳骨は見つけた事はありません。一度は見つけてみたいかも。
2070
月のドキドキ宝探しでした。(ちょっとした立香×月でした)
宝物は見つかったけど手に入れる事はできませんでしたね。
まだまだ!!