Fate/Grand Order 幻想創造大陸 『外史』 三国次元演義   作:ヨツバ

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こんにちは。
今年のハロウィンイベントも面白かったです!!
人狼ゲームが題材とは…最初はほんとに選択式で吊るすキャラを選ばないといけないのか!?とヒヤヒヤしましたよ。
霊衣キャラが増えて大満足ですし、NPCとはいえ今回の新キャラも良いキャラしてました。

そしてお迎えできたダイダロス&ナウクラテー。
素晴らしいキャラだ!! やっぱロボットとロボ娘はすばらしい。
イカロスも登場して本当に良かった…!!


しかし今年のハロウィンイベントは早い気がする。
やはりこの後に控えているものがあるからかなあ…


月のドキドキ宝探し-海鮮隊-

2073

 

 

魔鯛鬼。

まさに鯛の鬼。そんな鬼と対峙するのは北郷一刀、朱里、季衣の3人。

スラリと北郷一刀は次元刀を抜く。前回の反省を生かして今回からはちゃんと武器持参である。

季衣もまた岩打武反魔を装備。

 

「蜀ノ 天ノ御使イサァン!!」

「な、何だ…?」

「オ名前ハァァン?」

「ほ、北郷一刀だが…」

「一刀サンネ」

 

ジィィィっと熱心に見てくる魔鯛鬼。その視線にちょっと後ずさってしまう。

 

「一刀サァァァァァァァァァン!!」

「うわあああああああああああ!?」

 

魔鯛鬼がぴちぴちドタドタと北郷一刀に猛ダッシュ。

 

「アタシト 一緒ニ 鯛料理ヲ 食ベマショオオオオオ!!」

「うわああああああああ!?」

「きゃああああああああ!?」

「鯛料理はあたし食べたい!!」

「アタシヲ 食ベテ 一刀スゥワアアアアアアアン!!」

「うわあああああああ!?」

「あたしお前を食べたくない」

 

魔鯛鬼の謎の気迫に負けて北郷一刀たちはつい逃げた。

何というか魔鯛鬼の気迫が貂蝉の気迫に似ていたからかもしれない。

 

「絶対アイツ俺狙いだ!?」

「ご主人様の名前を連呼してますもんね!!」

「兄ちゃんモテモテだね」

 

このまま逃げていても意味は無い。せっかく武器を構えたのなら戦わないといけない。

 

「お前を叩きにしてやるぞ!!」

 

季衣が岩打武反魔を回転させて投擲。

 

「アラァ?」

 

岩打武反魔が魔鯛鬼に思いっきり普通に直撃。

 

「アッフウウウウウウン!?」

 

そのまま砂浜に倒れる。

 

「ウゴゴ…一刀サンノ 愛ガ 重イワ」

「ソレ俺の愛じゃないぞ」

「あたしも愛を投げてないけど」

 

びちびちと砂浜に打ち上げられたような魔鯛鬼。岩打武反魔を直撃すればただでは済まないというのに彼は意外にも平気そうだ。

鯛とはいえ、鬼。肉体は頑丈という事かもしれない。更に金の鎧を纏っているのでより防御力もあるのだ。

 

「フウ…一刀サンノ 愛ヲ 感ジタワ」

「だから俺の愛じゃねえって」

「あたしも愛をあげてないんだけど」

「何だかあの鬼…貂蝉さんと似てるような」

 

ここに貂蝉がいたら「そんな事ないわよん」って言うはずだ。

 

「こうなったら岩打武反魔を何度もぶつけてやる!!」

 

連続で攻撃し、本当に鯛の叩きを作ろうってくらいの気概を見せる季衣。

 

「鯛ノ叩キハ 嫌。デモ最高!!」

 

季衣の猛攻撃に魔鯛鬼はふざけているのかってくらいに回避していく。

 

「い、意外に身軽のようです」

「当たんないよー!?」

「ウフフ。アタシハ タダノ鯛ジャナイワ。鬼ノ鯛ナノヨ」

「見りゃ分かる」

 

本当にただの鯛の鬼ではない。

既に彼の攻撃は始まっているのだ。北郷一刀たちはまだ気付かない。

 

「ウフフ」

 

 

2075

 

 

海朔鬼は己の傘からゆらゆらと触手をのばす。

 

「フフ…貴方 好ミダワ。私ノ触手デ 引キズリ 込ンデアゲル」

「流琉殿、雛里殿。後ろに下がってください」

 

蘭陵王は剣を抜く。

 

「は、はい」

「私も戦います!!」

 

流琉は伝磁葉々を構える。

 

「オ子様ハ イラナイワ。ソコノ美男子ガ 欲シイノ」

 

クラゲの触手の本数は種類によって異なる。数本のものから数百本に及ぶものまで様々だ。

目の前にいる海朔鬼は笠から触手を何本出せるか分からない。現在、目で見えるのは6本だ。

 

(海月の鬼か。海月…やはり気を付けるべきは毒か)

 

クラゲと聞くとやはり触手に毒のイメージがある。ならばクラゲの鬼である海朔鬼も毒を持っている可能性があるのだ。

 

「流琉殿、雛里殿。奴は毒を持っている可能性があります。接触は避けた方がいい」

「はい」

 

ゆらゆらと6本の触手を蘭陵王に伸ばす。

 

「っ、私から離れて!!」

 

蘭陵王は流琉と雛里から自分からも離れる。

相手の狙いは最初から蘭陵王のみ。流琉と雛里には興味もないようだ。

 

「私ノ物ニ ナリナサイ。暗キ海デ 愛シ合イマショウ」

 

6本の触手に毒がある事を仮定し、触れないようにしなければならない。

 

「はあ!!」

 

剣を振るって触手を斬り落とす。

 

「私ノ触手ヲ ヨクモ 斬リ落トシタワネ。デモ 触手ハ 再生スル」

 

クラゲの触手は千切れてもいずれ再生する。海朔鬼もまた再生する。

触手は瞬時に生え変わり、蘭陵王をまた捕縛しようと伸ばし続ける。

 

「させません!!」

 

流琉が伝磁葉々を投げつける。

敵が毒を持つ触手を伸ばしてくるなら此方も遠距離から武器を投げ飛ばせばいい。

 

「喰らえー!!」

「嫌。アンナノ 食ライタクナイ」

 

笠部分を巨大化し、伝磁葉々の重い一撃を吸収する。

 

「ウフフ。私ノ笠ハ ドンナ鈍器ノ 攻撃モ 無効化スルワ」

「嘘!?」

「しかし斬撃には弱い!!」

 

蘭陵王は剣を振るって触手を6本全て斬り落とす。そのまま間合いを詰めて海朔鬼に接近。

重撃に強くても斬撃には弱いというのは海朔鬼自身も知っている。故に対策は考えている。

 

「私ノ触手ハ 6本ダケジャナイワ」

 

笠から追加で10本伸びだした。

 

「なにっ」

 

接近してきた蘭陵王に10本の触手で襲う。

敵が近づいたら触手の数で応戦すればいいと、海朔鬼は考えた。

他にも対策はあるが、まずは触手の数で勝負という事である。

 

「はあ!!」

 

10本の触手も全て斬り落とすが本体である彼女までには到達できなかった。

 

「貴方ガ ソチラカラ 来テクレルノハ 嬉シイケド ソノ剣ハ イタダケナイワ」

 

触手を再生し、現在16本。更に4本増やして合計20本となった。

 

「たくさんの触手が…あの鬼は何本まで触手を出せるのでしょうか」

「クラゲの触手は多くても100本があると言いますからね」

「更に毒もあるとなると…脅威ですね」

 

現状はお互いに有効打は無い。蘭陵王達は海朔鬼の能力を把握しなければならない。

 

(蘭陵王さん、流琉さん。私が敵を観察する時間をください)

(分かりました。流琉殿は私の援護をお願いします)

(はい。任せてください!!)

 

蘭陵王が前に出て、流琉がその後ろに。そして雛里が相手方を観察するためにより後方へと移動した。

 

「ウフフ。貴方カラ 来テクレルナラ 嬉シイワ」

 

海朔鬼は笠から更に10本の触手を生やす。合計30本の触手となる。

 

「まだ触手が増えるか」

「私ノ触手デ 絡ミ捕マエテ アゲル」

 

 

2076

 

 

貫魚鬼。鋭く尖った鼻を磨き、キラーンとさせる。

実際は『吻』というらしいが彼にとっては鼻らしい。

 

「オイラ葉ハ 貫魚鬼。オ前ラハ?」

「吾輩ハ 太歳星君だぞー!!」

「ボクは賈駆」

「ソウカソウカ。ヨロシクナ」

 

元気よく挨拶してくる貫魚鬼。

他の鬼よりも何と言うか天真爛漫というか元気いっぱいだ。あまり悪意を感じないが太歳星君たちを殺すと言っている事から何処か矛盾している。

 

「オイラト 勝負勝負~!!」

 

シャキーンっと構える貫魚鬼。

狙いを定めており、まずは太歳星君。

 

「イクゾー!!」

 

ドスドスと走ってきて突貫。

太歳星君はヒラリと回避。

 

「おっと~」

「ちょ、大丈夫!?」

「大丈夫だぞエイエイ」

「えいえいと呼ぶな」

 

攻撃を早速外した貫魚鬼は特に落胆や苛つきはない。

 

「オ、回避シタネ。次ハ 当ルゾー!!」

 

次の狙いを定める。チラリと太歳星君から詠へと視線を移した。

 

「ひ、ボク!?」

「突撃ダー!!」

 

またもドスドスと走ってきて突貫。狙いは詠。

 

「危ないぞ」

「きゃっ!?」

 

地面に手を付けて詠の足元に太歳の塊を出現させて無理やり回避させる。

 

「マタ 回避サレタ。ヤルジャン!!」

「大丈夫かー?」

「へ、平気よ。ありがと」

 

二回連続で攻撃を回避されても落胆せず、寧ろ楽しそうだ。

恐らくゲーム感覚で楽しんでいるのかもしれない。

当たらない的を如何に当てようと考え、行動し、戦うのを楽しんでいる。

 

「二回モ 外シチャッタ。ジャア 次ハ コウシヨット」

 

突撃攻撃を止め、鼻を剣のように振るいながら攻撃してくる。

 

「はっ、よっ、とっ、おっと!!」

 

回避、回避、回避。

太歳星君は身軽な小柄で上手く回避していく。

 

(あの鋭い鼻は確かに危ないけど…そこまで早くないね。回避し続けて隙を見つけたら叩く)

 

詠は手に魔力を込める。

 

「ヤルヤルヤルヤルゥ!!」

「こんなん当たらないぞー!!」

「ヤッパリ 海ノ外ダト 難シイナ。デモ 難シイ 的ヲ 当テテコソ 面白イッテモノダネ!!」

 

ギュルインと周囲を薙ぎ払うように回転しながら一閃。

 

「モット 攻撃 速度ヲ 上げるヨー!!」

「こっちだっていくらでも避けてやるぞー!!」

 

太歳星君は背中から四本の黒い腕を出現させる。

 

「ワオ。背中カラ 腕ヲ 四本 生ヤスナンテ 君 人間 ジャナイネ?」

「吾輩は吾輩だ。太歳星君だー!!」

 

背中に生やしたう四本の黒腕のおかげでよりアクロバティックな動きをする事ができるようになった。

回避率が上昇したとも言える。相手の攻撃は吻による剣戟のようなもの。回避率の上がった太歳星君には当たらない。

 

「太歳星君…タダノ 名前 ジャナイノカナ。今度 胡才様ニ 聞イテミヨット」

 

太歳星君の正体。その名の通りであるが、カジキの鬼である貫魚鬼は知らない。

 

 

2078

 

 

鋏蟹鬼は巨大で荒々しい鋏をチョッキンチョッキンさせる。

その体躯は巨大で硬い。そして内からは狂暴な妖気を発している。

 

「オ主ガ 大陸最強ノ 呂布奉先カァ!!」

「…この蟹強いかも」

「滾ルゾ 滾ル。面白イ 殺シ合イヲ シヨウヤッ!!」

 

二つの鋏はまるで怪物の顎のようだ。

 

「オルゥアアアアアアア!!」

 

相手を食い千切るように鋏で挟み殺そうとする。

 

「チョッキン チョッキン チョッキンナァ!!」

「…ねね、下がって」

「恋殿!?」

 

恋は音々音を下がらせて、一気に前へと進む。その手には夏仕様となった方天画戟を握る。

 

「だああ!!」

「ルラッシャア!!」

 

鋏と方天画戟がぶつかり合う。お互いに押し負けず、留まった。

 

「ナンジャ。コンナモンカァ?」

「…硬い」

「恋殿の一撃を耐えたですと!?」

 

鋏蟹鬼は海鬼海鮮隊の中で一番硬く、一番の破壊力を持つ。

その硬さは大陸最強の恋の攻撃すら凌ぐのだ。

 

「…なら、これならどうだ!!」

 

恋は闘気を発し、力を集中させる。

 

「…英雄豪傑!!」

「ヌオォオウ!?」

 

今度は恋の破壊力ある技を放つ。

どんな硬い鉱物も砕く威力。しかし恋の手に伝わる感触は想像したものではなかった。

 

「本当ニ コンナモンカア?」

 

恋の技は鋏蟹鬼の甲殻に傷を付けていない。

 

「う、嘘です。恋殿の技が効いてないなんて…」

 

恋が方天画戟を振るうえばどんな奴も吹き飛んだ。耐えられる者なぞ多くない。

相手が鬼であろうとも恋は敵知らずだったのだが今回の鋏蟹鬼は違った。

 

「コレジャア 黒イ方ガ 手応エガ アッタゾ!!」

「…黒イ方?」

「コノ程度ジャ 儂ヲ 甲羅焼キニ 出来ンゾォ!!」

 

鋏蟹鬼が恋を誰かと比較している。しかし「黒い方」と言われても今は分からない。

 

「儂カラ 蟹味噌スラ 抉リ出スノモ 遠ォスギル 未来ジャケンノォ!!」

 

二つの鋏をチョッキンチョッキン。何だか軽い擬音だが実際はそんな可愛いものではない。

えげつない鋏によるえげつない切断音が周囲に響く。

 

「武器ゴト 貴様ヲ チョッキンナァジャア!!」

 

 

2079

 

 

泳咬鬼は静かにたたずむ。見かけとは裏腹に冷静沈着で残忍である。

彼は冷静に、残忍に相手を削り殺し、噛み殺す。

 

「私ハ 泳咬鬼。以後 オ見知リオキヲ。ト言ッテモ 今日デ サヨナラ デスケドネ」

 

鮫肌をキラつかせ、顎の牙をギラつかせる。

 

「マスター指示を!!」

「徴側、徴弐は戦闘準備を。月は後ろに下がって」

 

藤丸立香は魔術礼装を起動する。

 

「シャシャシャ。アナタ方ガ カルデア デスネ。ソシテ董卓。削リ甲斐ガアリソウデス」

 

両腕に剣のようなヒレ。否、身体全体が鮫肌に覆われており、当たれば削られる。

泳咬鬼は自慢の鮫肌で相手を削り弱らせ、最後には自慢の顎牙で噛み殺すのだ。

 

「シャアアアアア!!」

「徴側、徴弐。奴の攻撃を受けちゃいけない!!」

 

突撃してくる泳咬鬼の攻撃を受けずに回避する徴姉妹。

 

「躱サレマスカ。シカシ イツマデ 躱シ 続ケラレマスカネ?」

 

泳嚙鬼の攻撃を受けてはいけない。それは過去に似たような敵と戦った事があるからだ。

昔、呉の賭博場で戦った「鮫人」がいた。同じ「鮫」であるならば鮫肌を武器にしている事を想像出来るのは容易である。

 

「じわじわといたぶってくるわけね」

 

徴弐は水の薙刀を形成させる。

 

「時間をかければかける程、此方の体力を奪われる可能性がありますね」

 

徴側は水の剣を形成させる。

 

「水ノ武器デスカ。ソンナ物 私ノ鮫肌デ イクラデモ 削リ斬ッテアゲマスヨ」

 

泳噛鬼は徴姉妹に向かって走って攻撃を連続で繰り出す。

直撃しなくていい。掠れさえすれば人間の肌なぞ削れる。削れれば血が流れる。

血が流れれば人間でなくとも生物は体力を奪われ、いずれ動けなくなる。そうなれば泳噛鬼の自慢の顎牙で嚙み殺すだけだ。

 

「シャアアアアアアアア!!」

「姉さん。合わせる!!」

「うん。弐っちゃん!!」

 

水の剣と水の薙刀を交差させるように斬りつける。

 

「シャア。水ノ武器モ 大シタ事 アリマセンネ」

「意外に堅い!?」

「鬼であり鮫の性質を持つ敵。厄介ですね」

 

鬼の筋力と硬さ。鮫の狂暴性と性質。それが見事に合致し、泳噛鬼は上級鬼として成った。

更に彼には『ある妖魔』も肉体に埋め込まれており、切り札としても残している。

海鬼海鮮隊。すなわち鬼の特殊部隊は伊達ではない。

 

「シャアアアアアアアア。私相手にいつまで持ちますかね?」

 

鮫は持久力はあまりないと言われている。しかし鬼の体力によって補われている。

彼にとって獲物を逃がす事は絶対にない。

 

「姉さん」

「うん。もっと魔力で武器を強化するよ」

 

徴姉妹の武器は水。水流操作とも言える。

より強化した水の剣と薙刀で攻撃を再度繰り出す。

 

「少シ 強化シタトコロデ 私ノ鮫肌ニ 傷ツケル事ハ 敵イマセンネ」

「なら」

「合わせて弐っちゃん!!」

「うん!!」

 

二人の水を合体形成させ、水の三角錐型ハンマーを完成させる。

 

「「合体メコンデルタ!!」」

「ナニ!?」

 

水の体積を増やし、威力を倍増させる。

大きければ大きいほど。重ければ重いほど威力は上がる。

 

「グヌウ…ヤリマスネ。シカシ ソノ程度デハ 私ニハ 勝テマセンヨ」

 

水の三角錐ハンマーを耐えた泳噛鬼は腕を振るう。

 

「くっ!?」

「弐っちゃん!?」

「大丈夫。掠っただけだ」

「シャシャ。ソノ掠リガ傷ガ 命取リナンデスヨ」

 

たかがかすり傷。されどかすり傷。

 

「魔術礼装起動。シーハウス・シャワー」

 

徴弐の傷が治っていく。

 

「ありがとマスター」

「ナイス、マスターさん!!」

「ドウイウコトデス?」

 

泳噛鬼にとって敵は徴姉妹だけではない。カルデアのマスターも敵である。

 

「彼モ ヤハリ 妖術ヲ 使ウノデスネ」

 

于吉達からの情報でカルデア勢は強力で妙な力を使うと知った。

実際に今戦っている徴姉妹は水を操作する術を使用し、カルデアのマスターを傷を癒す術を使用した。

 

「時間ガ カカリソウデスネ」

 

時間を掛けて狩るのは気にしない。確実に敵を仕留めるのに時間がもったいないとは思わないからだ。

自慢の鮫肌で体力を削り、トドメで噛み殺すのは変わらないが、しかし何かひと手間加えるべきだと考えている。

 

(海ノ中ニ 引キズリ込メバ 此方ノ 独壇場ナンデスガネ)

 

今は地上。しかし海ならば泳噛鬼はより万全に戦えるのだ。

 

(少シダケ 戦イ方ヲ 変エテミマスカネ?)

 

泳噛鬼は妖気を練り上げ、肉体を強化する。そしてチラリと空に暑く輝く太陽を見た。

 

「妖魔ノ 力ヲ 解放シマスカネ」

 

泳噛鬼の鮫肌が影のように黒くなる。

 

「変化した?」

「肌が黒くなっただけに見えるけど注意して弐っちゃん」

「うん。気を付ける」

 

ただカラーバリエーションを変えただけなわけがない。

何か特別な力を使ってくるに違いないのだ。より警戒して戦わなければならない。

 

「シャア。行キマスヨ」

 

同じように突っ込んで来て同じように連続で攻撃してくる。

攻撃方法に変化は見られない。変わったのは本当に見た目の色だけだ。

 

(何だ…奴は何をしてるんだ?)

 

藤丸立香は敵を観察している。泳噛鬼の変化は現在見た目のみ。

攻撃方法も先ほどと変わらないため、敵の行動が分からない。

 

「敵にすぐ対応できるように徴側たちに強化魔術を付与しよう」

 

魔術礼装を起動し、「ランブル・パーティー」を付与。

徴姉妹が後手に回されたとしても素早く動けるようにするための強化魔術である。

 

(マスターは私達とコイツの戦いを観察しているはず)

(敵の変化を観察し、作戦を練っているはずです。なら私たちはこのまま戦って勝機を見つけよう)

(分かったよ姉さん)

 

警戒を緩めず、泳噛鬼に攻撃を続ける。しかしここで戦いの流れに変化を起きた。

 

「あっ…!?

「姉さん!?」

 

徴側の腕が傷つけられ、血が垂れた。

 

「何で!?」

 

何故か徴側がダメージを負った。

敵と戦っていれば傷が付くのは当然だ。しかし徴姉妹だけでなく藤丸立香も驚いたのは、徴側が攻撃を受けていないのにダメージを負った事である。

 

「何で、姉さんはアイツの攻撃を避けたのに」

「まさか…呪いや妖術の類でしょうか?」

 

徴側は傷ついた腕に手を添える。

 

(物理的に受けた感じであって…違う。これは?)

「シャシャシャ」

 

混乱までとはいかないが敵の謎の攻撃に少し動揺する。

正体不明の攻撃とは怖いものだ。

 

「マダマダ 行キマスヨ」

 

泳噛鬼は連続攻撃を止めない。

 

「姉さん。避けて!!」

「うん!!」

「無駄デスヨ 無駄!!」

 

またも徴側は攻撃を回避しても傷を付く。更に徴弐もまた同じように傷を付けられてしまう。

腕や手などの四肢が、顔や背中に少しずつ傷を受けていく。攻撃を受けていないのにダメージを負っている。

 

「何が起こっているんだ…」

 

藤丸立香も観察しているが相手が何をしているか分からない。

泳噛鬼の攻撃が空ぶっているのに徴姉妹は傷ついていく。

 

(きっとあの鬼が黒くなったのが影響の力だろう。でもどういう能力までか分からない)

 

早く相手の能力を解析して対処をしなければならない。このままでは徴姉妹は分けも分からず傷つけられ、噛み殺されてしまう。

藤丸立香は徴姉妹と泳噛鬼の戦いを観察して早く対抗策を見つけなければならない。

 

(どういう能力なんだ…攻撃は回避してるのにダメージを負っている。どんな理屈なんだ?)

 

早く解析しなければ徴姉妹が危ない。焦れば焦る程、観察能力は失われていく。

観察するという事は冷静になる事が重要だ。しかし仲間が傷ついていく姿を冷静に見るのは難しい。

特に藤丸立香のように優しい人間や仲間思いの人間は辛いはずだ。しかしやらねばならない。

 

「早く敵の能力の正体を見つけないと…」

 

息を吐いて冷静になろうとする。血が滲むくらい拳を握って観察を続ける。

 

「あ…」

 

ここで何かに気付いたの藤丸立香や徴姉妹でもなかった。

気付いた者は藤丸立香の後ろにいた月であった。

 

「どうしたの月?」

「もしかしたら…徴側さんたちが攻撃を受けていないのに傷を受けている理由が分かったかもしれません」

「ほんと!?」

「確証はありませんけど…」

 

月はまだ妖術や魔術にそこまで詳しくない。しかし月も藤丸立香達のように観察眼は育っている。

そもそも彼女は上に立つ側の人間であり、人を纏める側の人間だ。故に観察眼を持つ側の人間でもあるのだ。

だからこそ気付いたのである。

 

「次の攻撃時にあの鬼が攻撃した箇所をよく見てください。その箇所は下です」

「攻撃したその下?」

 

泳噛鬼が攻撃を繰り出した時、徴弐は回避した。攻撃は彼女の身体の何処にも触れていない。

攻撃に触れていないのに右太ももに傷が付いた。

 

「あ、もしかして…そうなのか?」

 

攻撃は徴弐に当たっていない。しかしある意味、当たった個所がある。それは「影」である。

泳噛鬼の影(攻撃)が徴弐の影(右太もも付近)に重なった時に、本当に傷が付いた。

ただし、この1回では完全に判断が付かない。拳をもっと握りしめながら泳噛鬼と徴姉妹の攻防を見守る。

 

「…やっぱり。月の言った通りだ」

 

我慢しながらも観察を続けた結果、泳噛鬼の攻撃が徴姉妹の影に触れた瞬間に、その影と同じ個所に実際に徴姉妹は傷を受ける。

 

「月、ありがとう!!」

「いえ、そんな…ううん。今は徴側さんと徴弐さんを!!」

「ああ」

 

ほぼ間違いなく泳噛鬼の力は、影に触れた部分に本体と同じ個所に傷を付けるというものだ。

能力の正体は分からなければ傷を受けた本人たちは、攻撃を回避しているのに何故か傷を付けられるのか分からず恐怖しかない。

 

「でも恐らく力の正体は分かった……影だ!! 二人とも距離を取って!!」

 

藤丸立香の声により徴姉妹は一気に泳噛鬼から距離を取る。

 

「影?」

「奴が徴側たちの影に触れたところに、傷が付く!!」

「ホウ…気ヅキマシタカ」

 

泳噛鬼の能力の正体は「影鰐」。于吉によって埋め込まれた妖魔である。

影鰐。

波一つ無い凪の日に現れる怪魚。海面に映った船乗りの影を飲み込み、影を飲まれた者は死んでしまうというものだ。

泳噛鬼は「影鰐」の力を飲み込み、使いこなしている。相手の影を飲み込めば死んでしまうのなら、相手の影を傷つけば傷を付けられるのだ。

 

「分カッタ所デ モウ遅イデスヨ」

 

徴姉妹の身体は既に傷だらけである。

 

「ソコマデ 弱マレバ モウ 十分デス」

 

泳噛鬼は大きく口を開き、牙を剥き出しにする。

 

「アトハ コノ自慢ノ 顎デ 食ライ 殺シテヤリマショウ」

 

徴姉妹は受けた傷によって弱まってきている。後は徴姉妹本体でも影でも飲み込み、喰らいつけば終わりである。

 

「シャアアアアアアアアアアア!!」

「姉さん」

「うん。相手の能力が分かれば対応は可能です」

 

徴姉妹は手元に小さな象を召喚した。

 

「重くて痛いの、やっちゃおう!!」

「姉さんは軽いけどね」

 

弐匹の小さい象は元気よく空へと、泳噛鬼の真上へと跳んだ。

 

「ナンデスカ?」

 

何をしようが意味は無い。泳噛鬼にとって手乗りサイズの小さな象など食ってしまえばいいのだから。

ガパリと口を大きく開く。しかし小さな象と油断したのは泳噛鬼である。

 

「ナニ!?」

 

弐匹の小さな象は合体し、巨大な象と成った。そして直下にいる泳噛鬼を潰す為に落下していく。

 

「大キイーー!?」

 

泳噛鬼の口では飲み込めない。影であっても大きすぎる。

 

「ぱおーーん」

「ガアァ!?」

 

泳噛鬼は巨大な象にぷちっと潰された。

 

 

2080

 

 

砂浜に巨大な象が落下した。その直下には鮫の鬼である泳噛鬼。

数の子を食べた時に鳴るような「ぷちっ」という音を立てながら潰れた。

 

潰れた音が聞こえても徴姉妹は召喚した象をすぐには戻さない。潰れた音が聞こえ、潰れた瞬間を視界に入れても、相手は鬼。

 

頑丈で狂暴な鬼であるなら巨大な象に潰されても無事な可能性がある。故に徴姉妹は油断しない。

お互いの手には水の剣と水の薙刀を形成したままだ。

 

「たぶん。無事だね」

「うん。まだだね」

 

徴姉妹が警戒を解かず。藤丸立香と月も同じく警戒を解かないで巨大な象を観察し続ける。

 

「魔術礼装…」

 

藤丸立香はいつでも魔術礼装を起動できるように準備しておく。

 

「……来るよ姉さん!!」

 

巨大な象が宙へと浮く。そして砂浜へと落ちた。

 

「ああ、象さんが!?」

「シャアァァァァァ…」

 

やはり潰されていなかった泳噛鬼。彼はゆらりと幽鬼のように佇む。

 

「ヤッテクレマシタネエ」

 

ゴキゴキと首を回す。

 

「ココマデ ヤラレタノハ 初メテデスヨ」

 

妖気が膨れ上がる。泳噛鬼の両目が白目となる。肉体が大きくぼこぼこと膨れ上がる。

 

「本気ヲ 見セテアゲマスヨ。本気ノ姿ヲネ」

 

泳噛鬼の肉体が大きく変化していく。

尾びれには細かい針がおろし金のように無数に生えていた。牙は大きく鋭く鈍く煌めく。

背びれは見事に大きく尖っており、まるで刃のようである。体格は鯨ほどまで大きくなりつつある。

その姿はまさに巨大な鮫であった。

 

「へ、変身した!?」

「それともあの姿が本来の姿でしょうか」

 

泳噛鬼の完全体。その名は「磯撫で」である。

外見は鮫に似ており、尾びれに無数の細かい針を備えるとされる。海面を撫でるように近づき、人目につかぬまま尾の針で船上の人を引っ掛け海中へ落とし、呑み込むという事から、その名が付いた。

 

「シャアァァァァァァ…」

「お、大きい…」

「本来ノ 私ノ 戦場ニ ゴ招待シマショウ」

 

泳噛鬼は己が膂力と尾びれを上手く動かして砂浜だというのに動き出した。

 

「シャアアアアアアアアア!!」

 

狙いは徴姉妹、藤丸立香、月。

 

「回避してマスター!?」

「モウ 遅イデスヨ!!」

 

尾びれに生えている無数の針は徴姉妹と藤丸立香たちを引っかける。

 

「うわっ!?」

「きゃあっ!?」

「月まで!?」

 

磯撫では、その無数の針が生えている尾びれで獲物を捕らえる。

獲物を捕らえるプロでもある。相手がどんな生物だろうが英霊であっても捕える。

 

「しまった。このままじゃ海に引き摺り込まれる!?」

「海に引き摺り込まれたら吞み込まれる!?」

「私ノ 独断場ヘ!!」

 

泳噛鬼の行先は海。

 

「はやく針を折らないと!?」

 

徴弐は水の薙刀で背びれの針を斬ろうする。

 

「弐っちゃん。先にマスターと月ちゃんを!!」

「モウ 遅イト 言ッテイルンデスヨ!!」

 

泳噛鬼は海へと跳び込む。そして海の中から空へと跳んだ。

大きな巨体は空で露わになった。その巨体を見たのは北郷一刀達や他の海鮮隊の海鬼達。

 

「コノママ海ニ 全員引キ摺リ 込ンデアゲマスヨ!!」

 

泳噛鬼の恐怖が発揮される。




読んでくださってありがとうございます。
次回の更新もまた未定です。


2073~2079
各海鮮隊たちとの場面で分かれてます。

各話ごとに短いですが中でもちょい長いのは泳噛鬼のところ。
この事から今回スポットが当たるのは泳噛鬼との戦いです。
まあ、立香と月がいますしね。

妖怪として影鰐を使わせて頂きました。
影鰐の能力を参考に戦闘描写を書きましたが違和感なかったかな?

鋏蟹鬼の言う「黒い方」。
もしかしたら誰の事か分かる人は分かると思います。

2080
泳噛鬼の本気。
次回で戦いは激化する…たぶん。
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