Fate/Grand Order 幻想創造大陸 『外史』 三国次元演義   作:ヨツバ

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こんにちは。
FGOでは新たな幕間が追加されましたね。
この調子でどんどんと新たな幕間が追加されて欲しいです!!
ほんとに久しぶりなあ。

FGOハロウィンはもうすぐ終了しますね。
次はいったい何が来るのでしょうか…。


月のドキドキ宝探し-恐怖の鮫-

2081

 

 

泳噛鬼。

海に潜む恐怖の生物が鬼の力を得て地上へと姿を現した存在が泳噛鬼だ。彼は人を襲うために故郷の海を捨てたというが結局の所、彼の独壇場は地上ではなく海である。

 

巨大な鮫というのはその見た目だけで恐怖だ。そして鮫という名と鋭い牙でより恐怖を増長させる。

 

更に更に海の中に落ちて、360度どこから襲われるかと思えば誰だって恐怖ものだ。

鮫とは恐怖の生物である。

 

「イヤアアアアン!?」

 

魔鯛鬼は恐怖した。

 

「チョットォ 泳噛鬼チャンタラ キレテンジャナイノォ!?」

 

魔鯛鬼は泳噛鬼が完全体になっている姿を見て憤怒していると分かってしまったのだ。

 

「更ニ 白目ニモ ナッテルシイ!?」

 

鮫が白目になっているのは別に怒っているからではない。獲物を捕獲する際に敵から反撃される場合を考えて目を守るためのものだ。

しかし鮫が本気で獲物を狙う時の状態なので危険な事には変わりない。

 

「コレハ 逃ゲナイト イケナイジャナイ。アノ状態ノ 泳噛鬼チャンハ 最悪 敵味方 分カラナクナッチャウノヨォ!?」

「緊急避難カ 魔鯛鬼!?」

「最悪ネ。泳噛鬼ハ 冷静沈着ノヨウニ 見エルケド アレ 実際ハ トテモ 怒ッテルワネ」

 

泳噛鬼が完全体となったが口調は特に変化なし。普通に丁寧語で話している。

怒っていないように見えるが仲間である魔鯛鬼達からしてみればメッチャ憤怒しているらしい。

 

更に怒りで敵味方関係無い。丁寧語を話し、冷静のように見えるが実際は見境なく残虐に襲い掛かるのだ。

 

「ナンジャア 泳噛鬼ノ奴 キレ タンカァ?」

 

鋏蟹鬼がノッシノシと走ってくる。

 

「ドウジャ 儂ハ 横歩キダケジャナク 前ニモ歩ク事ガ デキルンジャ!!」

「ソンナノハ ドウデモ イイワヨ!!」

「儂トシテハ 凄イ事 ナンジャガ!?」

 

蟹は横歩きしか出来ないイメージだが、実際のところ前歩きが出来る蟹は一部存在する。

 

「ココハ 一旦 鯛参匹…ジャナクテ退散スルワヨン!!」

「キレタダケジャロ。襲ッテキテモ 儂ガ ブチ殺シテヤルワ」

「突ク」

「ヌオウ!? ソコノ穴ハァ!?」

「コラ。オイラハ 背中ヲ 突イタダケダゾ」

 

貫魚鬼は鋏蟹鬼の背中を突っついて動きを止めた。

 

「サッサト 帰ル。オイラモ 泳噛鬼ニ 襲ワレタクナイ」

 

海鮮隊にとって泳噛鬼が憤怒した事により暗殺・襲撃計画は失敗となった。

そもそも敵味方関係無く襲ってくる存在がいれば暗殺や襲撃なんて出来るわけがない。

 

「ま、待て…逃げる気か…うぐ」

「うう~…なんかフラフラする~」

「ご主人様、季衣ちゃん。大丈夫ですか!?」

 

北郷一刀と季衣は何故か酔ったようにふらふらしている。外身に傷一つ無いが内側は既に敵の術中に侵されていたのだ。

 

「ウフフ。アト少シデ 一刀スゥワント イイコト 出来タノニィ」

 

魔鯛鬼は海ではなく、砂浜の向こうへと走っていく。

本当は海に戻りたいが海には憤怒に駆られている泳噛鬼がいるので不可。

 

「退きましたか…しかし新たな問題が。マスター!!」

 

蘭陵王はすぐに藤丸立香達の方へと駆け寄る。しかし彼らはもう既に海の中。

 

「月さんまで!?」

「早く助けないと」

 

雛里と流琉も海へと近づく。しかし近づけば近づくほど泳噛鬼のテリトリーである。

 

「アノ仮面剣士ヲ 手ニ入レタカッタノニ。泳噛鬼サエ 邪魔シナケレバ………仕方ナイワネ。マタ今度」

 

海朔鬼は触手を引っ込めて撤退した。次こそは捕縛すると言わんばかりのギラギラした目を蘭陵王に向けながら。

 

「…叩き割れなかった」

「恋殿の攻撃を耐えた奴なんて初めてですぞ」

 

恋は隙を見て鋏蟹鬼に方天画戟を叩きこんだ。しかし硬く、ヒビすら入らず耐えきったのだ。

 

「ヤッパリ 黒イ方ガ 強イノォ」

 

そんな彼の言葉を思い出す。「黒い方」の意味は分からないが、誰かと比較されて恋の方が弱いと言われた事だけは分かる。

今まで恋は強いと言われた事があるが弱いと言われたのは始めてだ。悔しいのかつい無意識に拳を強く握りしめてしまう。

 

「アレガ 三国最強カァ。ヤッパ黒イ方ガ強イノウ」

 

鋏蟹鬼の記憶にある「黒い方」。その存在はいずれ恋の前に現れる事になる。

 

「ジャーネ。マタ 遊ボウナー」

 

貫魚鬼は太歳星君と詠に手を振りながら退散していく。

彼にとって暗殺・襲撃は遊びだ。否、暗殺等を理解していない。

 

「どっか行ったぞ」

「月、月、月!?」

 

詠は貫魚鬼の事はもうどうでもいい。彼女にとって今は月の安否が大事なのである。

それは太歳星君も同じでマスターである藤丸立香たちの安否を気にしている。すぐに助け出さねばと動く。

 

「マスター!!」

 

藤丸立香達は海に引き込まれ、恐怖の鮫に命を狙われている。

 

 

2082

 

 

海の中では完全体となった泳噛鬼にとって最大のテリトリーだ。

地上生物は水の中では無抵抗。海の中に引き摺り込まれた獲物(藤丸立香や月)たちを噛み殺すのは泳噛鬼にとって簡単すぎるものだ。

 

そもそも水の中では地上生物は息が出来ず、生きていけない。海の中には人間よりも大きい生物もたくさんいる。小さくとも人間を簡単に殺せる毒を持つ生物だっている。

 

人間は生身だと海の中では弱すぎる生物なのだ。よくよく考えればいちいち地上で戦う必要はなかった。最初から己がテリトリーで戦えば良かったのだ。

完全体と成った泳噛鬼(磯撫で)は巨体。身体は頑丈で、大きな口に鋭い牙。もう獲物である藤丸立香達を見つけたらその大きな口を開いて噛み殺せばいいだけだ。

 

(シャアアアアア。モシクハ 溺レ死ナセレバ イイダケデス)

 

噛み殺してもいい。溺れさせてしまってもいい。しかし冷静そうに見えていて、実は憤怒している泳噛鬼は出来れば自ら噛み殺したい。

確実なのは溺れさせてから噛み殺す事だが、憤怒しているという理由で生きたまま噛み殺したいのだ。

 

(私ヲ 怒ラセタ 罰ヲ 身ヲモッテ 味ワウト イイデスヨ)

 

泳噛鬼は大きく口を開き、狙いを定める。まず狙われたのは藤丸立香か、月か、徴姉妹か。

 

(まずい!? このままじゃ溺れるし、あの鬼に喰われる!?)

 

今の状況を藤丸立香は嫌でも理解していた。彼だけでなく徴姉妹や月もそうだ。

早く海から脱出しなければならない。

 

(早く…海から出たいけど海流がぐちゃぐちゃだ!?)

 

泳噛鬼が巨体を活かして海流を意図的に作り出し、藤丸立香たちを海面に出さないようにしているのだ。

肺に残った酸素を限界まで絞り出させて弱らせる。そして憤怒によって早く噛み殺すのだ。

 

(水の中だと上下とかもう分からない!?)

 

自分が今どんな状況か分からない。ただ海流に揉まれている。

 

(うぐぐぐぐ…)

 

身体を蹲った状態で海流に揉まれている。目は開けられない。息も長時間もたない。

月や徴姉妹がどうなっているか分からない。敵である泳噛鬼がいつ襲ってくるかも分からない。もう恐怖でしかない。

 

この恐怖の中で藤丸立香は泳噛鬼を倒す作戦と自分を含め、皆を助ける作戦を考えなければならない。そしてそれは徴姉妹も同じ考えである。

 

(時間がない…!?)

 

海の中、鮫の鬼に襲われる、酸素がもたない。焦りと死への恐怖が思考の邪魔をする。

今まで死線をくぐり抜けていたとはいえ、怖いものは怖い。特にこのような恐怖は月にとって初めてだ。

 

(怖い…立香さん!!)

 

月は海流の中で蹲って、手で口と鼻を抑えている。それでも息が続かない。

 

(この…状況で……私は)

 

地上ではただ後ろで守られているだけだった。泳噛鬼の能力解析に貢献したが本人的にはまだ足りない。

もっともっと役に立つ事をしたいと恐怖の中で自分が望んでいる。

 

(何か突破出来る糸口を探さないと…!!)

 

時間は残り少ない。今の月が出来る事を考える。

彼女自身に泳噛鬼を倒す力はない。しかし倒す手伝いは出来るはずだ。それは藤丸立香や徴姉妹に力を貸すという意味である。

 

(今の私に…何ができるのか)

 

海流に揉まれている中で目を頑張って開ける。しかしぼやけてよく分からない。

一瞬だけ巨大な鮫が見えた。完全体になった泳噛鬼であり、見た事により恐怖が一層増長されたが我慢する。

 

このままでは溺れ死ぬだけか、噛み殺されるだけだ。何か出来る事はないかと考えている時に何かが身体に当たった。そして無意識に掴んでしまった。

何かもまた月を掴んできた。この事から「何か」というよりは「誰か」だ。目を頑張って開けた時、月は安心した。

 

(立香さん!!)

(月!!)

 

海流に揉まれている中で、ある意味奇跡だったかもしれない。藤丸立香と月がお互いにぶつかり合うとは偶然であり奇跡だ。

お互いに離れないように強く抱き着く。無事であった事にお互いに少しだが安心を覚え、心の余裕が生まれた。

 

(月を見つけられて良かった。でも早く海面に出ないと)

(立香さん無事だった。良かった!!)

 

徴姉妹とはまだ合流出来ていない。しかし無事なのは令呪を使って分かっている。

藤丸立香の手の甲からには令呪が二角消えていた。

 

(まずい…そろそろ息が)

 

普通に息を止めている状態と海の中で海流に揉まれて鮫の鬼に命を狙われている状況では、息止めの継続時間は全く異なる。

 

(作戦は既に徴姉妹に令呪で伝えた。後は時間との勝負だけど……こっちが先にもたないっ)

 

藤丸立香が先に溺れてしまえば意味が無い。そして月も溺れ死なせるわけにもいかない。

 

「シャアアアアアアアアア。ソロソロ モウ イイデショウ。モウ 噛ミ殺セル」

 

泳噛鬼は藤丸立香、月、徴姉妹の居場所を突き留めている。

この4人の中で警戒すべきは徴姉妹と藤丸立香である。月に関しては警戒する必要はなかった。

 

月はいつでも殺せるからだ。しかし藤丸立香と徴姉妹には何をしてくるか分からない故に、憤怒してもすぐに噛み殺さない。

 

「モウ 十分デス。奴ラハ モウ 打ツ手ハナイデショウ」

 

藤丸立香と徴姉妹は未だに海流に揉まれて何もしていない。

 

「アノ姉妹ヨリモ 先ニ カルデア ノ マスター ヲ」

 

于吉から話しを聞いた限りだとカルデアの弱点はマスターである藤丸立香。彼さえ殺せば「英霊」とやらも無力化できる。

 

「アノ姉妹ト アノ男ノ距離ハ 離レテイマス。ソシテ アノ男ハ 今マデ 見ルニ攻撃手段ハ 限リナク ナイ」

 

泳噛鬼は藤丸立香に攻撃力は無いと判断。補助系の妖術を使うのは理解した。そして于吉からも攻撃方法は藤丸立香にほぼ無いと聞いている。

 

ただ「英霊」召喚だけは最大限に注意しろと言われているが今の状況ならもう何も出来ないと判断した。この危機的状況で藤丸立香が何もしないのが、そう判断させた。

 

「狙ウハ アノ姉妹デハナイ。狙ウハ カルデア ノ マスター トヤラデス!!」

 

ついでに一緒にいる月も噛み殺してしまえばいい。

 

「モハヤ 息モ 続カナイデショウ。終ワリデスヨ!!」

 

泳噛鬼は藤丸立香と月に向かって泳ぎ出す。たった一口噛んでしまえば終わりなのだ。

憤怒しているが、やっと全て解放出来る。憤怒をもって藤丸立香と月を噛み殺す。

 

 

2083

 

 

もう息が続かない。

藤丸立香と月は限界に近かった。そして泳噛鬼が近づいてきている。

溺れ死ぬか噛み殺されるかのどちらかだ。もしかしたら先に息がもたないかもしれない。

 

(海面に出たいのに海流のせいで上が分からない!?)

 

一瞬だけ目を開けると泳噛鬼が此方に向っているのが見えた。本当に時間が無い。

藤丸立香は最後の令呪をどう使うかを数秒で考えなければならない。しかし意識が遠のきそうになり、息も限界に近づいている。

 

焦ってしまっている時に口に何かが触れた。そして酸素が無理やり体内に送り込まれる。

 

(んっ!?)

 

海の中で酸素を取り込む事は通常不可能だ。もしも酸素を取り込む方法があるとしたら、それは他の人から酸素を供給される事である。

 

(立香さん…)

 

月は藤丸立香の口に己の口を押し付け、残った酸素を送っていた。

人工呼吸とは違うかもしれないが、体内に酸素を送り込む方法の一つだ。

 

(ゆ、月!?)

 

月が考えた方法は己を犠牲にする事だった。自分の残り少ない酸素を藤丸立香に渡したのである。

 

この状況で自分よりも藤丸立香を生かした方が最善だと判断した。泳噛鬼に噛み殺されるより好きな人を助けて死んだ方がマシと判断してしまったのだ。

 

(立香さん……あとは…頼みます)

 

この言葉は思った事で藤丸立香には聞こえていない。しかし藤丸立香はその言葉が聞こえた気がした。

月は海の中でもニコリと優しく笑って意識を手放した。

 

(月!?)

 

このままでは月が死んでしまう。藤丸立香は拳を握りしめて最後の令呪を切った。

赤い閃光が海の中で煌めく。

 

「噛ミ殺シテヤリマスヨ カルデア!!」

 

既に泳噛鬼の大きな口と牙は藤丸立香と月の目の前だった。大きな口の中は鋭い牙が多くおぞましい。

まるでカエルをかぶりつくようにバクンと二人を飲み込んだ。

 

「血ノ味ガ 私ノ 口ノ 中ニ 広ガーーーー!?」

 

泳噛鬼は確かに藤丸立香と月を喰らった。そのまま噛み千切って血の味が広がるはずだった。

口の中から感じたのは血の味ではなく、異物感。しかも、その異物はどんどんと大きくなっている気がする。

 

「ナ、ナンダッ。私ノ 口ノ 中ニ アノ人間ドモ ジャナイ 何カガ イマス!?」

 

口の中に広がらない血の味。そもそも藤丸立香と月を噛み殺した感触もない。口の中には大きな何かがいる。

このまま、その何かを噛み殺そうと口を閉じようとしても押し負けてしまう。

 

「ナ、何ガ 私ノ口ノ 中ニ イルノデスカ!? ドンドント 大キク ナッテルンデスカ アガガガガガガガガガ!?」

 

泳噛鬼の口の中から白い何かが出てくる。その白い何かとはシロナガスクジラであった。

 

『我が祈りは此処に。落陽に郷愁を、大鯨に天恵を。無垢なる天使よ、海に来たれ。豊穣たる大海よ、歓喜と共に(デ・オセアン・ダレグレス)』

「ク、クジラガ 何故 私ノ 口カラーーーー!?」

 

藤丸立香が最後の令呪を使用して召喚したのはジャンヌ・ダルク(アーチャー)の影。そして宝具を発動したのだ。

 

宝具『豊穣たる大海よ、歓喜と共に(デ・オセアン・ダレグレス)』。

海に纏わる存在(生物)なら大抵呼び出し、力を行使することができる宝具である。特にクジラという巨大海洋生物すら呼べる事が出来る。

 

(早く海面へ!!)

 

泳噛鬼の口の中からシロナガスクジラが出て、そのシロナガスクジラの口の中には藤丸立香と月がいる。

完全に噛み殺される前にジャンヌ・ダルク(アーチャー)の宝具を発動し、シロナガスクジラを召喚して身を守ったのだ。

 

「顎ガ ハズレテシマイマス。噛ミ殺セナイデス!?」

 

このままでは内側から泳噛鬼が張り裂き殺される。泳噛鬼はシロナガスクジラを吐き出す事を急いだ。

 

「オゴオアアアアアアアオオオオオオアアア!?」

 

泳噛鬼の口からシロナガスクジラが這い出る。そして目指すは海上。

泳噛鬼が作り出した海流なぞ突破するシロナガスクジラは跳ぶように海面から突き出した。

シロナガスクジラが海面から出た姿を蘭陵王や詠たちが視界に入れる。

 

「え、なにあれ!?」

「まさかアレは…ジャンヌ殿の宝具」

 

シロナガスクジラの正体がジャンヌ・ダルクの宝具だとすぐ理解できたのは蘭陵王たちカルデア陣営だ。故にマスターである藤丸立香は無事だ。

 

(しかし月殿は無事なのか!?)

 

藤丸立香は無事だが月の安否までは分からない。しかし無事だと信じたいのだ。

 

「月、月!?」

 

詠の焦り様は異様だ。それほどまでに月の事が心配なのである。

 

「マスター」

 

シロナガスクジラが口を開け、その中から藤丸立香と月が現れる。

藤丸立香は意識はある。しかし月は意識が無いように見えた。

 

 

2084

 

 

シロナガスクジラが海面に姿を現す。そして泳噛鬼(磯撫で)もまた海面に現れた。

 

「モウ少シデ 顎ガ外レソウデシタ。イエ、腹ヲ 裂カレソウデシタヨ。ヨクモ ヤッテクレマシタネ!!」

 

泳噛鬼は磯撫でと成って完全体となり、巨体となった。巨体となった彼であっても流石にシロナガスクジラは口に入りきらないようだ。

 

もしも吐き出すのが遅かったら泳噛鬼も本当に腹から口まで張り裂けていたかもしれない。

 

「ヤハリ カルデア ハ 何ヲ シテクルカ 分カリマセンネ」

 

妖気がより膨れ上がる。これ以上は憤怒しないかと思っていた怒りが燃え上がる。

牙がより鋭く、多く生えてくる。今度こそ噛み殺すと怒りと殺意が藤丸立香と月に向けられる。

 

「ダガ モウ 終ワリデス。先ホドノ 大胆ナ 奇策ハ モウ ナイデショウ。今度コソ 噛ミ殺シマス。ソノ クジラゴト!!」

 

シロナガスクジラすら今の泳噛鬼なら噛み殺せる。狙いはシロナガスクジラの口にいる藤丸立香と月。

 

「シャアアアアアアアアアアア!!」

 

一直線に向かってくる泳噛鬼。今度こそ噛み殺す。

 

「いいえ。させません」

「鬼退治と鮫退治だ」

 

徴姉妹の声が響いてきた。何処からか聞こえてくるか。それは海の中からである。

 

「ハ?」

 

泳噛鬼が止まった。自分が自ら止まったわけではなく、勝手に止まったのだ。

 

「ウ、動ケナイ。ナ、何故デスカ!?」

 

止まった理由は何かによって縛られているようだと泳噛鬼は感じている。

 

「それは私たちの力だよ」

「動けないでしょ。このままアンタを仕留める」

 

泳噛鬼の動きを縛り付けているのは徴姉妹の力だ。

彼女たちは水で構成された刀剣類を所持しており、徴側の側は剣、徵弐の側は薙刀を使用する。同時に水を様々な形にとどめて武器とするキャスターじみたスタイルを行使する。

 

それは水を支配し、操作する力である。水さえあれば彼女たちは変幻自在の武器をいくらでも作れる事が出来る。

形は何でもいい。剣、薙刀、弾丸、ハンマー等々。魔力があれば徴姉妹は水を限界まで支配し、操作できる。

 

今この周囲にある海水さえだ。彼女たちの周囲には無限に広がる武器があるようなものである。

 

「ウ、動ケナイ…!?」

 

徴姉妹は既に周囲の海をある程度支配している。普段であれば海の水を広範囲に支配は出来ない。

令呪二角を使用して魔力ブーストをかけているからこそ、広範囲で海の水を支配できる荒業だ。

 

「少し時間がかかってしまいました。正直に言ってマスターたちの安否が気になって気になって仕方ありませんでした」

「さっさと片付けよう姉さん」

「うん。弐っちゃん!!」

 

海の水を支配した徴姉妹にとって海はもう両手両腕のようなもの。

縛り付けた泳噛鬼を海面から、海から無理やり追い出した。

 

「ガアアアアアアアアアアアアアアアア!?」

 

海から出た鮫は無抵抗。そもそも空中であれば飛行能力を持つ生物でなければ何も出来ない。

地上と海中に適応した鮫の鬼である泳噛鬼も流石に空中までは適応できない。巨体となった磯撫でに変化しても空中はテリトリー外だ。

 

「マズイデス。空デハ 私モ 何モ 出来ナイーー!?」

 

宝具の解放。

 

「全力で行こう」

「悪辣にして無法なる者達よ退け!!」

「願うはただ、皆が正しく生きられる安寧の地」

「その為なら私達はどこまでも進む!!」

「「奮起の六十五城(ともにあゆもう、われらのくにを)!!」」

 

徴姉妹の宝具『奮起の六十五城』が発動。

太守の悪政に対し徴姉妹が立ち上がるや否や民も呼応して立ち上がり、凄まじい勢いで彼女らは六十五もの城を支配下に置いた言い伝えを具現化した宝具。

 

その破竹の勢いの進軍、勢力拡大が形となった宝具が泳噛鬼を貫いた。相手が鮫と鬼の力を併せ持つ妖魔であっても意味は無い。

 

「ア…アア……アア…鮫ガ…地上ニ 出ルモノジャ アリマセンデシタネ…」

 

泳噛鬼は海に還らず、空中で塵となって消えた。




読んでくださってありがとうございました。
次回の更新は未定。そして次回で『月のドキドキ宝探し編』は終了となります。

でも『夏編』はまだまだ続きます。

2081
泳噛鬼がキレた。
「ナンダァ…テメェ」

なので他の海鮮隊は撤退です。
キレて、敵味方分からなくなるというよりは、
攻撃射程圏内に味方がいても敵を倒せれば構わないというものです。
味方と分かっていても任務さえ成功させるために一緒に殺すようなもの。

他の海鮮隊の活躍はまた今度ですね。
次回に活躍する海鮮隊は誰にしようかな…鯛?


2082
溺れる…怖いですよね。
さらに人食い鮫が近くいるとか、普通は冷静にはなれません。
一生味わいたくない恐怖です。
それでもどうにかしようとする藤丸立香と月は凄いです。


2083
たまに映画やアニメとかで口移しで酸素を相手にあげるシーンがありますよね。
あれって実際に出来るのかなって思ってます。
私は映画のコ〇ン(14番目のターゲット)で見たシーンが印象に残ってます。

水着ジャンヌ
シロナガスクジラやイルカや…鮫。さすがは海の聖女ですね。
今回はシロナガスクジラが登場しました。

そして…夏イベントでの彼女の変わりようには驚かされました。
「姉ビーム」ってなんですか。
こっちの物語では…たぶんありません。
でもそろそろ自称○○が現れてもおかしくないかな?


2084
徴姉妹が水の武器を作れるなら、海の水を支配・操作する事が出来るんじゃないかなって思って書いたシーンとなります。
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