Fate/Grand Order 幻想創造大陸 『外史』 三国次元演義   作:ヨツバ

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はい、前話から2時間後に更新しました。
今日も調子が良いぞう。
タイトルで分かるように今回は日常回とはちと違いますね。


孫呉の人たち6-孫堅襲撃事件-

156

 

 

建業では様々な日常が送られる。その1つとして日常化と言うかいつもの事になりつつあるのが雷火の怒鳴り声である。

 

「何をしておられるのですかー!?」

 

それは今日もであった。その理由はいくつもあるが、多いのが炎蓮との事が多い。

前になんか養生中なのに巨大人食い虎を1人で討伐しに行くところを雷火に見つかってデカイ雷が落ちたものである。

呉群太守の炎蓮に怒鳴れるのは雷火くらいである。それでもなかなか炎蓮は雷火の言うことは聞いてくれないのでいつも最終的には何度も雷が落ちるのだ。

 

「あああああもおおおおおお!!」

 

結局のところ、炎蓮は虎退治に出て討伐してきた。急いで一緒について行った雪蓮と共にだ。

雷火がより怒ったのが虎退治で炎蓮の身に危険が迫った事があったからだ。何とか無事に虎を討伐できたがその過程で命の危険があったのだ。

それに関しては雷火だけでなく雪蓮も怒って炎蓮に怒鳴っていた始末である。

何も炎蓮も全ての忠言を無視するなんて事は無い。聞くときは聞く。寧ろ聞いている程だ。だが自分の考えだけで完結できるものはほとんど聞かないのだ。

それが雷火を困らせる部分である。何を言ってもそれ以上の言い返しをして黙らせてくるから負けじと言い返すという繰り返しでヒートアップばかりしているのだ。

 

「まったく炎蓮様は!!」

 

これでは雷火の心労も絶えない。

 

「雷火さんも大変だね」

「分かってくれるか立香よ。ならお前からも炎蓮様に言ってくれ!!」

「言ってるけど聞かないんだよね炎蓮さん」

「…そうなんじゃよな」

 

ため息を吐いて観念するしかないと思うが雷火はしない。

 

「それにしても雷火さんって疲れてないかな?」

「何じゃいきなり。疲れてないぞ」

「でも運動不足で、肩と言わず身体全体が凝っているでしょ」

「そんなことは…」

「嘘はダメだよ」

「むう…」

 

いきなりの話の方向転換。確かに疲れていないと言えば嘘になる。

雷火自身も自分の身体の調子くらいは分かっているのだ。確かに肩が凝っていたりはするし、前にぎっくり腰になったが仕事に支障がないので重要視はしていなかったのだ。

 

「まあ、少しは凝っておるかの」

「なら湯治に行こう」

「湯治じゃと?」

 

疲れているならば湯治が一番だ。身体だけでなく心も休まるのだから。

 

「お主とか……はっ、まさか!!」

 

急に何かを察したのか顔が赤くなった。

 

「炎蓮さんと荊軻も一緒だよ。元々、蓮華さんが炎蓮に湯治させるために提案したんだ。そしたら炎蓮さんが雷火さんもどうかって」

「あ、そういうことか」

「何がそういうこと?」

「何でもないぞ。うむ、何でもない」

 

手をパタパタさせて話をはぐらかせる。

 

「で、湯治じゃと?」

「うん。さっきも言ったけど蓮華さんの提案でね。炎蓮さんも行くと決めてくれたんだ。それで雷火さんも誘えってさ」

「なるほどな。ならば儂も行こう…それに炎蓮様を御する役目をしなければならんからな。お主と荊軻もそうじゃろうて」

「正解です雷火先生」

 

雷火も湯治に行く事が決定した。

 

「はあ、温泉に入ったら炎蓮様が泳がないように注意せねば」

「そんなことするの炎蓮さんは?」

「するのじゃよまったく…炎蓮様もいつまで経っても子供なのじゃから」

「泳ぎたくなる気持ちは分かる」

「お主もか!!」

 

行くと決まれば早速準備するのであった。

 

「出発!!」

 

建業から出発して夕暮れには長江の畔にある宿場町に到着した。

その町は古くから温泉が栄えてきた場所で戦で傷を負った招聘もよく訪れているのだ。

湯治を行うならこの町が一番良いらしい。

 

「じゃあ温泉に入りに行くか」

 

湯治に向かったのは町でも一番デカイ温泉宿だ。流石に閻魔亭ほどではないが立派な温泉宿である。

 

「ここは風呂がデカイ。狭い風呂だと泳ぐことが出来んからな」

「マナー違反です」

「炎蓮様と風呂に入ると心が休まらんのじゃ。泳ぐわ潜るわ人を湯船に引きずり込むわ…」

「ハッハッハ!!」

 

元気な子供かと心の中でツッコミを入れた。

 

「よーし、立香よ入るか。どちらが長く潜れるか風呂で勝負だ!!」

「応……って言ったけど男です俺」

「あん?」

 

炎蓮たちは女湯で藤丸立香は男湯。それは決まったことだ。

閻魔亭での温泉クエストでも編成も男と女で分けられていたほどなのだから。

 

「構わん、オレと一緒に女湯に入れ」

「私は構わんぞ」

「ほれ、荊軻も言ってるぞ」

「え、良いの!?」

「わしは絶対に認めませんぞ!!」

「はん、年甲斐も無く何を照れておるのだ。洗濯板のような貴様の胸を見られたところで、どうということもあるまい?」

「ぐぐっ…そういう問題ではござらん!!」

 

一瞬だけ本当に入ろうかと思ったが、どうせ厄介な事が起こるだろうと思ってすぐさま藤丸立香は男湯へ入っていった。

 

「ちぃっ、逃げたか。風呂で襲ってやろうと思っておったのだが」

「呆れた殿じゃ」

「貴様は硬過ぎるのよ。それゆえ今だに独り身で男も寄り付かんのだ」

「余計なお世話じゃ」

「早く入りに行こうではないか。湯に浸かっての酒も悪くないな」

 

それぞれが温泉に入りに行くのであった。

 

「良い湯だな…アビバノンノン」

 

温泉に入るとつい気持ちよくて独り言が出てしまう。何度も最高と言っても足りないくらいだ。

立派な温泉なだけあってロケーションも素晴らしい。眺めは綺麗でお湯は気持ちよくて最高なのだ。

温泉も言われた通り広くて泳ぎたくなってしまうほどである。しかも今は藤丸立香1人なので今なら本当に泳いでしまいたくなる衝動に駆られる。

 

「んん?」

 

静かに温泉に入っていたら板壁の向こうから激しい水飛沫の音が鳴った。

 

「やはりいつ見ても広い風呂じゃあねえか。泳ぎがいがあるってものだ!!」

「炎蓮様。温泉は静かに浸かるですぞ!!」

 

どうやら炎蓮が勢いよく温泉に入水した音のようだ。雷火の怒鳴り声まで響く始末である。

 

「いいじゃねえか。今は他の客とかいねえし」

「確かに女湯は人がいませんが、男湯は分からないのですぞ!!」

「なら確かめるか。おい立香、他に誰かいるかぁ!!」

「炎蓮様!!」

 

ここに誰かいれば無視していたが、男湯には誰もいないので返事をする。

 

「俺以外は誰もいないよー!!」

「誰もいないってよ婆」

「だからと言って騒いでは困りまする!!」

 

せっかく温泉に来て癒されに来たというのに雷火は休まってないようである。彼女の苦労も同情してしまうものだ。

 

「まあまあ落ち着け雷火よ」

「荊軻か。いや、こればかりは言っておかんと孫家としての品位が…」

「せっかく湯治に来たのだ。怒鳴ってばかりでは心身ともに休まらんだろう。今日ばかりは大目に見てやれ」

「これでも大目に見ておるわ。つーかもう酒を飲んでおるのか」

「オレにも呑ませろ荊軻」

「いいぞ」

「まったく炎蓮様は…まあ、風呂で泳がれるよりかは酒を飲んでいた方がマシか」

 

男湯は静かに入れるが女湯は静かに入れないようだ。もし、藤丸立香が女だった場合はきっと大変な目に合っていたかもしれない。

聞き耳を立てると酒を荊軻と炎蓮は飲んでいるようだ。これだと雷火は温泉に浸かっていても大変である。

それに比べて男湯は藤丸立香1人で静かにゆったりできるのだ。雷火にも癒されてもらうために呼んどいて悪いが女湯の方で苦労してもらうしかない。

 

「ふぃー」

 

気持ちよすぎて眠ってしまいそうだ。だがすぐに叩き起こされる羽目になる。

 

「おぉい立香!!」

 

炎蓮が呼び掛けてきたのだ。すぐに眠気が吹き飛ぶ。

 

「なーにー!?」

「こっちに来るか。今なら誰もおらんぞ!!」

「行きません!!」

「ったく、ヘタレだなぁ」

 

ヘタレでも何もない。男としては行きたいが、行ったら行ったで大変な事が起きると目に見えている。

ここは理性を尊重して男湯でゆったりとするのが一番である。風呂上りはコーヒー牛乳でも飲みたいが、この時代に無いのが残念である。

こんな乱世の時代だというのにまさか温泉でゆったりできるなんて思っても無かった。

 

(今さらだけど本当にここまでゆったり出来るなんて思わなかったな。洛陽でもゆったりしていなくは無いけど…あの場所はあの場所でキナ臭いのもあったから)

 

この三国志の外史に来てから一番ゆったりしているかもしれない。カルデアにいた時もこのようにゆったりする時も少なかった。

 

「……頑張ってきたよね俺」

 

自分の身体を見る。最初にカルデアに訪れた時よりもガッシリしているし、傷も増えていた。

それは藤丸立香が特異点に亜種特異点、異聞帯を探索した結果でもある。だがまだ彼の旅路は終わっていない。

 

「頑張ってるよロマン」

 

このまま長風呂して湯あたりする前に出ようかとそろそろ出ようかと思った時、異変が起きた。

 

「うるぁあああああああ!!」

「っ!?」

 

急に女湯の方から炎蓮の怒鳴り声が響いた。

 

「炎蓮様!!」

「どけい雷火!!」

「お主も気を付けろ炎蓮!!」

 

一瞬何が起きているのか分からなかったがすぐに理解した。女湯の方で戦いが起きているのだ。

急いで風呂から飛び出して板壁の脇にある男湯と女湯をつなぐ通路へと走った。

 

「こいつらは…」

 

その頃、女湯には複数の黒装束の男たちが剣を持って現れていた。

 

「丸腰だからと言って油断するな。先ほどみたいに殴られるぞ。確実に仕留めろ!!」

 

剣を持って黒装束の男たちが迫るが荊軻は冷静なままである。

 

「丸腰ではない。どんな時も得物は遠くに離していないさ」

 

人の目に見えないくらいの糸を引くと匕首と南海覇王が包まれた布が引っ張られて出てきた。

 

「炎蓮よ」

「でかしたぞ荊軻」

 

自分の愛用の武器を構える炎蓮と荊軻。

 

「雷火は後ろに下がっておれ。行くぞ荊軻!!」

「速やかに片づけてみせよう」

 

南海覇王と匕首を振るい、バシャリと水飛沫が発生した後には全て片が付いた。

 

「炎蓮さん、荊軻、雷火さん!?」

 

女湯に足を踏み入れたら壮絶な光景が広がっていた。

 

「主か。見て分かるように敵襲だ」

 

荊軻が匕首の刃に滴る血を拭いながらその場を説明してくれるが理解はすぐできた。女湯はまさに血の海としか形容できない景色になっているからだ。

真っ赤に染まった湯船には黒装束をまとった数人の男たちが力を失って漂っている。

炎蓮は洗い場に立って黒装束の男を足で踏みつけており、彼女の手には鮮血にまみれた宝剣である南海覇王が握られている。

 

「炎蓮さん!?」

「案ずるな無傷だ」

 

まさか平穏な温泉街に突如として襲撃者が現るとは考えもつかなかった。

 

「どこぞの刺客か」

「おい貴様、いったいどこの手の者か?」

 

瀕死の刺客に雷火が問いただしているがその前に口から血反吐を吐いて絶命してしまった。

 

「流石に答えんか…たわけめが」

 

彼女は吐き捨てたが死体はやや低調に浴槽の縁へともたれかからせた。

 

「武人ならば命を賭けるは戦場じゃろうて。風呂で死んでどうするのじゃ」

「おい、死体を片付けよ」

 

静かに呟くと炎蓮の護衛たちがすぐさま現れる。気付きはしなかったが護衛たちもすぐ主を守れるように近くで待機していたのだ。彼女たちは素早く死体の後始末に掛かった。

 

「場をわきまえんたわけどもよ。人が心地よく湯に浸かっておる時に」

「たわけはこれを命じた物にございましょう…皆、若いな」

 

雷火は何ともやり切れない表情であった。

汚れ仕事を命じられ、散った若い命を惜しんでみるように見えてしまう。

 

「みんな無事なんだね?」

「ああ」

「見れば分かるだろう?」

「うん………てか、ああー!?」

 

すぐに両目を塞いだ。

なんせ、荊軻と炎蓮、雷火が生まれたままの姿が目の前にいるのだから。

襲撃があったせいで頭から抜けていたがここは温泉宿で女湯。先ほどまで彼女たちは温泉に浸かっていたのだから裸なのは当たり前である。

両目を塞いだが彼の脳裏には彼女たちの裸姿かしっかりと記憶されていた。

 

「り、立香よそこで何をしておるか!?」

「ごめんなさい雷火さん。騒ぎが聞こえて尋常じゃないと思って来ちゃいました!?」

「おい立香。雷火の前でそんなモノをブラブラさせるな。どうせなら勃ったヤツを見せてやれ」

「ちょ、何を言って…!?」

「ぐぁああっ、汚らわしい!!」

「汚らわしい!?」

「このぉ、早う出て行け!!」

「は、はい。すいませんでした!!」

 

雷火に桶を投げつけられて、慌てて男湯に退散するしかなかった。

 

「はーはー…びっくりした」

「大丈夫か主よ?」

「う、うん。大丈夫だよ荊軻」

「なら良かった。主に何かあれば困るからな」

「心配してくれてありが…と?」

 

藤丸立香の真横に裸の荊軻がいる。その肌は水が滴り、艶めかしく綺麗であった。

 

「なんでーー!?」

「襲撃があったのだ。主の傍に行くのは当たり前だろう。そもそも襲撃されるとは不覚であった。襲撃される前に片づけるべきであったな」

「いや、でもでもー!?」

 

流石に裸相手は冷静になれない。露出の多い恰好と裸は全然違うのだ。

襲撃が起きた後とはいえ、まさか裸の荊軻を見るとは思わなかったのだ。

 

「襲撃は防いだが、この後も何が起こるか分からないからな。離れるなよ」

「ちょ、くっつきすぎ…」

「カルデアのマイルームではもっとくっついていただろう?」

「ちょっ、言い方!!」

 

いろんな意味で騒ぎがあったのですぐに温泉を出るはめになった。

のんびりしていた温泉旅行が一変して血みどろの殺し合いになってしまったのだ。忘れそうになるがこの世界は暗殺が日常的に起きるような時代である。

久しぶりにゆったりなんてこの時代では所詮、夢にすぎないのかもしれない。

 

「刺客による襲撃なぞいつもの事だ」

 

そう呟く炎蓮。だからこそ彼女の傍には腕の立つの護衛たちがいるのだ。

以前に建業の町を視察した時に雪蓮に対して「我らは常に命を狙われておる」なんて事を言っていたが本当であったと今日でより実感してしまった。

この時代にいる野心家たちは本当に命を狙われているのだ。藤丸立香も今までの旅路も命掛けであったが、この外史にいる覇道を掲げる者や野心家たちも命掛けで生きている。

 

「…お前も気を付けろよ」

「いつも気を付けてるよ」

 

せっかくの湯治がまさかの出来事になってしまった1日だ。

 

(この襲撃は何かキナ臭いな。どこか不安が胸に残る。これから勢力拡大を目指そうって時に…ったく)

 

 

157

 

 

江夏にて。

 

「よう降るの…」

 

外は大雨である。恵の雨ではあるが、どこか悪い知らせを伝えているように感じてしまうのだ。

 

「申し上げます。手の者、しくじりましてございます」

 

ほれ見た事か、と心の中で呟く。

 

「左様か。何ゆえしくじったか?」

「ハッ。孫堅は手練れの護衛を引き連れており、また孫堅自身の剣術もすさまじく、我らの精鋭でも傷を負わせることは叶わず…申し訳ございませぬ」

「構わぬ。して、我らの放った刺客は皆、死んだか?」

「ハッ…」

「そうか…口を割った者は?」

「いえ、それはおりません」

「分かった。下がって良いぞ」

 

部下は静かに下がる。

 

「あの虎め。雑兵と斬り合う蛮勇を見せながらも意外と用心深いところがある。なかなかに隙は見せぬか。いや、元来、虎は用心深い獣か」

 

面白くも無いと思う黄祖。

 

「これで斃れるようなら今までの戦で既に絶えていたであろうな」

「でしょうね。孫堅は他の武将たちとは違う強さを持ってますから」

「于吉か…勝手に部屋に入るな」

「これはこれは失礼しました」

 

于吉が音も無く黄祖の元に現れていた。

 

「兵馬妖の調整は終わりました。いつでも使っても構いませんよ。それにこの傀儡もね」

 

白装束が出現する。

 

「得体が知れないが使えるなら使わせてもらう」

「どうぞ使ってください。兵馬妖も傀儡もどんな命令も従いますので」

 

黄祖の陣営に于吉の闇が広がりつつある。




読んでくれてありがとうございました。
次回は・・・3時間後予定。

今回は炎蓮寄りの雷火との日常回を混ぜたものでしたが、ほのぼのとしたものではなく大きな戦いに至る前に起きた事件です。
これから起きる事件というのが藤丸立香が過去で解決する案件ですね。

次回はまた現在sideに戻ります。
そろそろこの2章も終盤に入っていきます。

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