Fate/Grand Order 幻想創造大陸 『外史』 三国次元演義   作:ヨツバ

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こんにちは。
今回も藤丸立香たちの出番はあんまりありません。
恋姫sideが多いですね。

そして今回からある人物たちの設定を変えさせていただきました。
それに関してはあとがきで書きます。


豫章攻め

164

 

 

朝廷への根回しは成功し、炎蓮は劉耀を討った後に揚州刺史に任せられる約束を秘密裏に取り付けた。

黄巾討伐における炎蓮の働きが評価され、逆に劉耀は朝廷に見放されたのだ。

荊州刺史の劉表とも不戦の盟約が結ばれ、炎蓮は満を持して劉耀討伐の兵を挙げる事になった。

総大将に炎蓮、副将雪蓮、軍師冥琳、両翼の祭、粋怜。

いつもの布陣に今回は軍師補佐として穏が、破壊工作担当として明命が加わる。

蓮華、小蓮に雷火は建業での留守居役で、思春は水軍の編成のため盧江群へ戻っていた。

 

「豫章へ出立!!」

 

孫呉の軍勢は建業を出発した。呉、丹陽、淮南、盧江の四郡から集められた兵力は総勢五万という規模である。対する劉耀は揚州に残った支配地域へ大騒動をかけ、十万を超える兵力でこれに抗おうとしている。

呉軍は盧江群を経由して長江を渡った後、豫章郡の柴桑県に入った。柴桑の町は劉耀の支配下だったが孫呉の軍勢に恐れをなした県令は、ここを無血開城したのだ。

呉軍はさらに南進し、敵の本拠地である豫章の城を目指す。

 

「敵は砦を出て、野戦で迎え撃つ構えのようですね~。数はおよそ二万五千です」

 

討って出るということは相手の士気は高い。もしくは後が無いという焦りからの覚悟かもしれない。

 

「でも、敵は全部で十万もいるんですよね?」

「刺史のご威光は健在ということでしょうかね~?」

「十万といっても戦乱を逃れて豫章に引き籠っていた弱兵にすぎないわ。後はただの寄せ集め。黄巾党の方がよっぽど歯ごたえがありそうね」

「ただ、太史慈さんには気を付けないと駄目ですね。個人の武勇もさることながら、将としての力量もかなりのものだと聞いています~」

「ええ、それだけが楽しみだわ」

 

雪蓮はその太史慈を出来れば仲間にしたいと考えている。

 

「出来ればじゃないわよ。何があっても、あのコは私のモノにしちゃうんだから」

「なんか怖い笑顔だなぁ」

 

太史慈は本当にとんでもない人に狙われてしまったものだ。

 

「では、軍議を始めます。敵は前方の森や山地に散って布陣しているようです。いかにも伏兵を潜ませやすそうにな地形ですね」

「なら、突っ込んで行って斬りまくるか。伏兵が出てきたらその都度、ぶっ殺しゃいいんだ」

「それでは冥琳の仕事がなくなりますよ」

「はい~。それに地の利は敵方にありますし~」

「ますは明命か燕青に調べさせるのがよろしかろう」

「はい、わたしが敵陣に潜入して罠や伏兵をよくよく調べて参ります」

「んあ、俺もか?」

 

潜入捜査や斥候は明命や燕青の仕事だ。

 

「明命の役目はもっと後だ。冥琳の利口なアタマも劉耀との決戦までとっておけ。まずはこのオレが斬り込んで孫呉の恐ろしさをヤツらの目に焼き付けてやろう!!」

 

先頭を切って突撃するなんていつもの炎蓮である。

隠居どころか、このまま天下に向けて斬り進んでいきそうだ。

 

「認めないわよ」

 

雪蓮は強い口調で制した。その口調はいつもとは違う厳しさがある。

 

「ああ?」

「先陣は私が引き受ける。母様は本陣に控えていて」

「馬鹿を抜かすな。これは揚州を制する大事な戦ぞ。孫呉の棟梁たるオレが戦端を開かずして、いった誰がやるってえんだ?」

「私がやるって言ってるでしょ。まだ母様の出る幕じゃないわ。それに怪我だって完治していないんでしょ」

「またそれか」

 

いつもいつも黄巾党での戦いの傷を出される。もうウンザリだという顔を出してしまう。

 

「誤解しないで。私は孫家の一武将として総大将である孫文台に意見しているの」

 

雪蓮は真っすぐに炎蓮を見る。

 

「……」

「こんな前哨戦に総大将が出陣することはない。私が軽く蹴散らしてくるから母様こそ、その気迫は劉耀との決戦まで取っておいてください」

「はんっ、それでオレを言いくるめたつもりか?」

「そうよ」

 

一瞬の間が空く。

 

「ち、しょうがねえな」

 

意外とあっさり雪蓮の主張を認めた。

 

「よし、分かった。先陣は雪蓮、お前に任せる」

「ハッ!!」

「兵三万を持って攻めよ、副将は祭だ」

「ハハ!!」

 

こうして揚州の覇権をかけた呉軍と劉耀軍の戦は雪蓮の先陣で幕を切ることとなった。

 

 

165

 

 

ついに戦が始まった。

この戦は冥琳の知略が巡る。彼女は地形やわずかな痕跡から敵の伏兵が潜んでいるであろう場所を次々に見抜いていったのだ。

観察眼の鋭さには藤丸立香たちはもちろん、雪蓮たちも驚いた表情をしたものだ。

敵を見抜き、雪蓮隊の軍勢は優勢で真正面から敵軍にぶつかっていった。黄巾の乱では豫章へ逃げていた劉耀の兵に対して、戦に戦を重ねてきた孫呉の精兵は段違いの強さだったのである。

 

「はー…ちょっと弱すぎるわね。これじゃあ、母様に良いところを見せられないわ。よし、もっともっと行けー!!」

 

彼女は勝ちに浮かれて突撃するような無能ではない。無謀にも見える雪蓮の突進は敵の伏兵を看破していないと装うための策である。

そのおかげで油断した劉耀軍の伏兵は祭によって徐々に仕留められているのだ。

 

「さあ、ゆけぇっ!!」

 

粋怜の隊や穏に明命の隊も順調に劉耀の兵士たちを倒している。

この戦は悉く、冥琳の読みが的中しているのだ。もうすぐ敵の本陣は目の前に迫っている。

 

「さあ、一気に攻めるわよ!!」

 

冥琳は兵二千で右の岩山を迂回していきながら攻める。祭は森から攻め上がり、敵の横腹を突いて行く。

明命は敵を穏に任せて崖を上り、冥琳の援護に向かっていく。粋怜は雪蓮の隊の後詰めにつく。

それぞれが上手く動いていくのであった。そして祭が一番に敵本陣に攻め入る。

 

「敵将討ち獲ったり!!」

 

祭が敵の総大将を討ち取った事で前哨戦は終了した。

劉耀軍はと言うとほぼ全滅でわずかに残った敵兵も拠点の砦を放棄して南へ撤退したのであった。

 

「俺らの出番無かったなぁ主」

「出番が無いなら無いで構わないよ」

 

この前哨戦では藤丸立香たちの出番は特に無かった。

 

「マスターの言う通り、無いなら無いで構わん。本来、儂らは戦をするために居るのではないからな」

 

緒戦は無事に終わる。

 

「どう、これが私の力よ」

 

本陣に戻った雪蓮は堂々と胸を張って炎蓮に戦勝報告をする。

 

「ふん」

「何なのよ、その態度はー、たまには娘の成長を素直に喜んだらどうなの?」

「ああ、そうだな。オレがおもっていた以上にお前は立派に育ったようだ」

「でしょ」

 

ニッコリと笑う雪蓮。

 

「オレが指揮をすりゃあ、もっと早く勝てただろうがな」

「またそんなことを言ってー」

 

軽口を言い合う。しかし、炎蓮は娘の成長を喜んでいたのだ。

 

(これなら家督を譲ってもよいかもしれんな)

 

この緒戦の戦いで大敗北をした劉耀軍は離反や兵の逃亡が相次いでいる。

豫章城への道筋には幾つかの城や砦があるがこの戦の結果によって城主は既に孫呉の帰順を申し入れていた。

 

「雪蓮、お前はこのまま三万を率いて豫章城へ攻め上がれ」

「え?」

「お前が我が嫡子だ。孫呉の跡継ぎとして、この大戦でオレの代わりに見事果たしてみせよ」

 

これには皆が驚いた顔をした。

雪蓮の家督相続には誰一人疑問を持っていなかったが炎蓮が重臣の前で、ここまではっきり告げたのは初めてのことだったのだ。

 

「緒戦の勝ちぐらいで浮かれた顔をしてるんじゃねえ。先陣の役目をオレから奪ったのはお前だろうが。ならば最後までやってみせろ!!」

「母様……はい。分かりました!!」

 

雪蓮の表情が引き締まった。

言いたいことがあるだろうが、それを堪え、孫家を継ぐ者として決意を顔に滲ませる。

彼女も心の何処かで察していた。この戦に勝利したら家督が譲られると。

 

「応、その意気だぞ」

 

その後は軽口をたたき合うが、雰囲気から間違いなくこの戦を決着を雪蓮につけさせるつもりだ。

彼女の中では家督を譲る意思がもう固まっているのだ。

 

 

166

 

 

呉軍の先鋒は敵拠点を次々に落としながらついに劉耀の本城である豫章城を視界に捕らえた。

総大将は雪蓮。軍師に冥琳、副将に祭、それに穏が同行している。そこに藤丸立香たちがくっついている状況だ。

そして炎蓮に粋怜、明命は後方の本隊にいる。

 

「あれが豫章の城ね。結構手強そうだわ」

「ああ。城の守りはあの太史慈が指揮を執っているようだ。これまでのようには行かないでしょうね」

 

ここに到達するまでの間、呉軍は全ての戦で圧倒的な勝利を収めていた。敵の野戦軍はほとんど壊滅し、残る豫章城にこもった三万程度だ。

一方の呉軍には、劉耀を見捨てて内応した敵の軍勢も加わり、兵力は出陣前の三万を上回っていた。

 

「相手は籠城戦の構えか」

「当然だな。しかしもはや敵に援軍は望めん。穏の調べによると城内の兵糧はあと一か月も持たん様だ」

 

太史慈は事前に周辺の集落から食料と農民を城内に集めようとしていた。しかし、冥琳は先発させた部隊にそれを襲撃させ、敵の兵糧を悉く奪い、焼き払っていたのだ。

結果、豫章城にはほとんど食料は集まらず、それを消費する農民ばかりになったのだ。

兵糧攻めは籠城している相手には大打撃に近い策である。

 

「私たちも補給路が伸びてきているし、あまりのんびりとも構えてられないんだけど」

「雪蓮は真っ向から攻める気か。私は、ここは慎重に兵糧攻めをするべきだと思うが」

「それじゃあ、追いついた母様に後ろから殴られそうだわ」

「ふっ…藤丸、お前はどう思う?」

「そうだな…俺も兵糧攻めの方が確実だと思うけど、雪蓮さんはやりたい事があるんじゃない?」

「お、よく分かってるじゃない」

「それって太史慈との一騎打ちかな?」

「正解!!」

「はあ…」

 

冥琳はため息を吐くが止めはしない。

雪蓮はあれだけ太史慈を気にかけていたのだ。そんな考えくらい予想がついてしまう。

普通は危険だが、雪蓮が総大将である太史慈を倒せば敵の士気は大いに下がる。城攻めの策としては悪くは無いのだ。

 

「ま、立香たちはそこで見てなさい。江南の狂虎の娘がどれほどの強さなのかしっかり見せてやるわ」

 

彼女は笑っているが、その身体からは闘志が漲っていた。

炎蓮から受け継いだ猛る虎の血が身体中で煮え滾り、燃え盛るような気を立ち上らせているのだ。

これには李書文も目を見張った。機会があれば戦ってみたいと思っているのだ。

 

「それじゃあ、行ってくるわ」

「いってらっしゃい。死ぬなよ」

「検討を祈る」

「死ぬわけないわ」

 

雪蓮は馬にまたがると、たった一騎で豫章城の門近くまで駆けていった。

 

「本当に行っちゃった」

「雪蓮を信じるしかないさ」

 

雪蓮は城門の前で馬を止め、大きく深呼吸をする。そして大声を腹の底からひねり出した。

 

「孫策が来たぞー!!」

 

まるで友達の家を訪ねる童のようだ。

その声に反応した太史慈がまさか城壁の上に出てくるとは藤丸立香は思わなかった。

 

「わ、孫策!!」

「太史慈、久しぶりね!!」

「おー、孫策。ひっさしぶりー!!」

「元気にしてた?」

「してたしてた!!」

 

まるで友達のように会話をする2人の光景が広がっていた。

 

「何だぁ、アレ」

「友達に会う感覚だな」

 

それからしばらくの時が過ぎた。

太史慈との友達のような会話が終わった以降、敵の城に目立った動きはない。

そもそも大将同士の一騎打ちなぞ考えられない話であるが、あの太史慈なら必ず受ける感じがする。

それからまた待つと、ついに豫章城の門が開いた。城門から太史慈がさっそうと馬を駆って姿を現したのだ。

その顔は再開を喜び合った先ほどのものとは一変して武将の顔になっている。

 

「孫策」

「太史慈、待っていたわよ」

「また会えて本当にうれしいよ」

「ええ、不思議ね。あなたとは一度、戦っただけなのにまるで他人の気がしないの」

「私もだよ」

「この城攻め、勝負はまだこれから。でも、ここであなたとの決着をつけておかないと一生、後悔しそうなのよ」

 

コクリと同意したように太史慈は頷いた。

 

「もう、言葉はいらないわね!!」

 

太史慈が槍を構えたのと同時に雪蓮も剣を抜いた。

城を囲む呉軍からも閉じ籠もった敵軍からも一切の音が聞こえなくなった。

誰もが固唾を飲んで、武人の意地と誇りを掛けた勝負の行方を見守っているのだ。

 

「ハァァァーーー!!」

「てやぁぁぁーー!!」

 

雪蓮の剣と太史慈の槍がぶつかり合った。

 

(劉耀様のためにも負けるわけにはいかない!!)

(母様に任されたこの戦は負けられないのよ!!)

 

お互いに譲れぬ思いを持ちながら剣を振るうのであった。

 

(それにしてもまさかあの方が援軍をくれるなんてね。まあ、間に合わないと思うんだけど…)

 

太史慈側にはまさかの援軍の当てがあったのだ。それは今の劉耀軍にとって吉報であった。

その援軍こそが孫呉を脅かす闇だとも両者とも気付くことはない。

 

 

167

 

 

江夏郡の長江にて。

 

「急げ。日が暮れるうちに全軍を渡しきるのだ」

「ハッ!!」

「ふふふッ、孫堅も思いのほかに甘かったの。不戦の盟約など信じ、我らに背中をさらそうとは…孫権がおらぬのは、まこと残念だがな、あれには甘寧のことで借りがあるからの。太史慈も救ってやらねばなるまいて。ふふ、劉耀はすでに死んだも同じ。あれから太史慈を奪い、豫章も我がものとするか」

 

黄祖は豫章へ向かうべく出立の準備を行っていた。

 

「黄祖様。襄陽から黄忠将軍、魏延殿がお見えになりました!!」

「ほう、通せ」

「遅くなりました!!」

「おお、両名とも待ちかねておったぞ」

「お初にお目にかかります。ワタシは劉表様が配下、姓は魏、名は延、字は文長と申します」

「うむ。苦しゅうない。黄忠も久方ぶりであるな?」

 

黄祖の前に現れたのは劉表に同じく仕えている将の黄忠と魏延である。

 

「黄祖殿…劉表様の命にて出陣しましたがこれはいったいどういうことでしょうか?」

「んん?」

「私たちは孫堅殿が盟約を破って江夏を侵す構えと聞き、急ぎ援軍に駆け付けたのです」

「は、はい。それがなぜ長江を渡って豫章まで出陣することに?」

 

彼女たちは劉表の命によって江夏まで来た。その理由は孫堅は不戦の盟約を破ったからと報告を受けたからだ。

 

「納得のいくご説明をしていただけますか?」

 

だが黄忠は今回の戦に関して何処か疑問を抱いている。何か不安が胸に引っかかるのだ。

 

「うむ。孫堅は盧江へ軍全を結集し、確かに我が江夏郡へ攻め込む気配であった。されど気が変わったのか突如、豫章へ兵を向けたのよ。餓えた虎の考えなど、人には理解できんの」

「陽動でしょうか?」

「分からぬ。分からぬが故に虎の気がまた変わらぬうちに背後よりこれを叩く」

「え、それよりも下手に長江を渡らず、守りを固めるべきでは?」

 

孫堅が江夏を攻めてくるというのならば確かに長江を渡る必要はない。寧ろ長江に渡らずに構えていた方が良いはずなのだ。

 

「ふ、何を申しておる。今こそ、あの狂猛な虎を討つ絶好の機会ではないか?」

「黄祖殿、お疑いが過ぎませんか?」

「ふむ?」

「劉表様と孫堅殿は不戦の盟約を結んだばかり。今、孫堅殿が荊州へ戦を仕掛けてくるとは思えません。盧江に軍勢を結集し、豫章へ兵を向けたのは揚州刺史の劉耀様を討つのが目的でしょう。そう考えるのが妥当では?」

 

黄忠が疑問に思っているのが不戦の盟約を破ったという事についてだ。結んだばかりでいきなり破るというのがおかしい部分だ。

どうせこんなにも早く破るのならばいちいち不戦の盟約なんて結ぶ必要はないからだ。こんなのは二度手間になる。

 

「くくッ、まさにそれよ」

「はい?」

「孫堅は一太守でありながら、刺史を攻め殺し、揚州を我が物にしようと目論んでおる。あれには義も信もない。袁術と同じ奸物よ。左様に強欲で傍若無人の輩が劉表様との盟約を律義に守り続けると思うか?」

「それは…」

 

黄忠も孫堅の事を全て知っているわけではない。絶対に孫堅が盟約を破らないという安全なんて確約されていないのだ。

もし本当だったとして、揚州を制した後は荊州の江夏が狙われる可能性は高いのだ。黄祖の考えも全て流してはいけない。

 

「黄祖殿の御懸念は分かりますが盟約を結んだ相手を攻めるからにはまず劉表様におうかがいを立てるべきではないでしょうか?」

「この機を逃せば孫堅は討てん。それに劉耀様の将である太史慈とは長年のよしみがある。私はこれを見捨てるわけにはいかん。すでに援軍を出すと遣いの者も送ったのだ」

「そのようなことまで、ご勝手に…」

 

黄忠と魏延たちが状況を把握し始めても次から次へと黄祖は豫章へ援軍を出す準備を着々と進めているのだ。

まるで黄祖が独断で進めているように。

 

「ふふ、江夏の軍勢のみでは少々、心もとないがそなたら2人が力を貸してくれるなら我らの勝利は確実ぞ?」

 

チラリと黄祖が魏延を見る。

 

「特に魏延。荊州一とも謡われる、そなたの武勇は私も聞き及んでいる」

「え、ワタシ、は、はい。いえ…はは、荊州一だなんてそんな…」

「謙遜するでない。黄巾討伐においてもその方の働きは並々ならぬものがあった。劉表様も常々お褒めになっていらっしゃったぞ」

「それは本当ですか!?」

 

少し褒めただけで瞬時に魏延を上手く乗せる事が出来ると判断。

 

「その力、私のために貸してくれぬか。孫堅は恐ろしき相手だ。あの蛮勇に立ち向かえるのは、そなたをおいてほかにはおらん」

「はい。お任せを!!」

「魏延…!!」

 

簡単に乗せられた魏延に黄忠は声を掛けるが意味が無い。褒められ、乗せられた事で黄忠の言葉が届いていない。

 

「うむ。もしも孫堅を討ち取ることが出来れば私はそなたを太守に推薦してやろう」

「ワタシが太守に!?」

「そなたは一武人で終わるような器ではあるまい?」

「は、はい。どうかワタシの働きを見ていてください!!」

 

ここまで褒めちぎられて魏延の心情は上がりに上がっていた。今の自分ならば何でも出来そうな気分になっているのだ。

 

「うむ、期待しておるぞ」

「…はあ」

 

小さくため息を吐く。

 

(黄祖殿に影響され過ぎよ。この方をあまり信じない方がいいわ。黄祖殿は誰にも腹の底を見せない方…何を考えているか読めない)

 

結局、黄祖に上手く乗せられてこのまま豫章に向かう事になってしまった。彼女の胸に引っかかる不安は大きくなるばかりであった。

 

(…大丈夫かしら)

 

黄祖は黄忠たちを説得した後、船で豫章へと向かった。

 

「魏延を呼んだのは正解であったな。黄忠だけなら安易には首を縦に振らんかっただろうからな。あの阿呆めは虎を誘き寄せるための餌になってもらうか。くっくっく」

「わあ、悪い顔に悪い笑いですね」

「む、于吉か。貴様はまこと神出鬼没であるな」

「そうですかね?」

 

急に現れる于吉。彼は黄祖軍に入り込んでおり、今みたいに神出鬼没に現れるのだ。

彼のような存在は自由にさせておくのは危険であると黄祖は思っているが身動きを封じるのができない状況である。ただ今のところ何も変な事はしていないので現状は見張るだけになっている。

 

「いやあ、それにしても劉表と孫堅の不戦の盟約を何事もなく破るとは普通出来ませんよ。そして貴女に何も疑問を思わずついていく部下たちもね」

「今のは私の部下を馬鹿にしたか?」

「いえいえ」

 

何処か勘の触る男であるとイラつくが彼の持つ力は魅力的だ。

 

「私の兵馬妖を使えば魏延と黄忠の力なんて必要無いのに」

「お前の力はとっておきだ。使う機会は私が決める」

「分かりました」

 

ペコリとお辞儀をする。

 

「あと、貴様はこの戦いであまり表に出るな」

「大人しくしてろと?」

「そうだ」

「はいはい、分かりましたよ。でも表に出たいときは出ますからね」

 

そう言って消える于吉。どうやって消えたのか気になるが道士だからと自己完結している。

 

「フフ、待っていろ太史慈。私が救ってやるからな」

 

 




読んでくれてありがとうございました。
次回も2時間後。


さて、設定を変えたというのが紫苑(黄忠)たちです。
他の方からもこの物語の彼女たちに対して疑問や不自然に思っていたようですが、それが彼女たちが劉備軍に入る前の所属についてです。実は彼女たちって真恋姫だと劉章、革命だと劉表の配下だったりと作品ごとに違うんですよね。

この物語では誰の配下についてはあえて書いてませんでしたが、漢中という言葉を書いていてしまったので劉章の配下という事になっていた事に気付いなかった作者でした。

恋姫革命『劉旗』のHPのキャラ説明でも紫苑たちがまずは劉表の配下だったようなので、この物語もそのように修正しました。なので一章の『朝廷の悪龍』篇もそれに沿って修正しました。

急な修正失礼しました。


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