Fate/Grand Order 幻想創造大陸 『外史』 三国次元演義   作:ヨツバ

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ついにあの場面が!?
それは物語をどうぞ。原作をプレイしている人は気付いていると思いますけど。


孫呉軍対黄祖軍

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怒る自分を抑えてく。爆発した怒りが退いてく速さは人それぞれであるが黄祖は比較的に早い方だった。

 

「はあ、はあ、はあ……ふー……」

「お、落ち着かれましたか?」

 

無様な姿を部下に見せてしまったと己を恥じる。普段ならば挑発などに踊らされるような事は無いが今回は炎蓮にしてやられたのだ。

 

「ああ……済まなかったな」

「いえ、黄祖様が無事でなによりです。しかし前衛が突破されてしまい、更に呂公将軍、討ち死にしました」

 

被害は小さくは無い。配下の将がやられた事実に黄祖はより冷静になっていく。

 

「よし、本陣を後ろに下げる」

「お退きになるのですか。敵はたかが二万足らずにございますぞ?」

「あの勢いは侮れん。兵の損耗を抑えつつ、しばし守りに徹するのだ。敵を疲れさせろ」

「承知しました!!」

 

今の黄祖には冷静になって戦況を見極める事が必要である。それに彼女には策がある。

そのために今は退いて守りを固めるのだ。

 

「黄祖ー!!」

 

炎蓮が先陣を切って黄祖の本陣へと向かう。

 

「どけい、江夏のサル共が!!」

 

もの凄い勢いで黄祖の部下たちを斬りながらどんどんと進んでいく。その姿はまるで鬼神の如し。

 

「炎蓮様!!」

「おう、明命か!!」

「申し訳ございません。先ほどは黄輅を取り逃がしてしまいました!!」

「いいや、よくやった。貴様の隊の奇襲によって戦は我らの優位に進んでいる」

「炎蓮様、黄祖はすでに本陣を南に移したようです」

 

ここで明命と粋怜が合流する。

 

「荊軻はどうした?」

「左翼の方で戦っております!!」

「そうか分かった。しかし黄祖め逃げ足の速いヤツよ。もう頭の熱が冷めたか」

 

黄祖軍は孫呉軍よりも数が多い。寡兵の孫呉軍を疲れさせて、後に反撃してくると粋怜は予測を立てている。

 

「そうだな。しかし戦は時の勢いよ。このまま攻め続け、反撃の隙を与えずに黄祖を討ち取るのだ!!」

 

明命は騎馬二千を率いて敵の退路を断てに行き、粋怜は敵軍の右翼を攻める。

 

「黄祖は何としてもここで斃さねばならん。あれを生かしておけば後々までも孫呉に災いをもたらすだろう。ゆけえい!!」

 

孫呉軍は勢いに乗り黄祖軍を倒していき、その勢いは止まらない。

二万対五万だというのに孫呉軍は黄祖軍を圧倒していく。既に粋怜が黄祖軍の将の一人である登龍将軍を討ち取っていた。

 

「黄祖様、我が軍の死傷者はすでに一万を超えております!!」

「ふむ…」

 

二万対五万という差があるというのに優位は孫呉軍。まさに強さに黄祖の配下である将たちは冷や汗を垂らしていた。

 

「黄祖様。やはり一気に決着をつけるべきではないでしょうか。戦が長引けば孫策の軍勢も南から押し寄せてきます」

「いや、挟撃を避けるためにもここは一旦、西へ退くべきだと思います」

「ふっふっ、その様に狼狽えるな。呉軍の強さは考えのうちよ。策はある」

 

まさかの勢いに狼狽える部下たちを落ち着かせる黄祖。部下たちが不安がり士気が落ちれば勝てる戦も勝てなくなる。

部下たちを抑え、冷静にさせるのも上司の役目だ。

 

「おりゃあああああ!!」

 

炎蓮は1人で何十、何百人以上斬ったか数えていない。それほどまでに敵兵を切り殺した。

 

「さあ、押せ押せ。黄祖の本陣はすぐそこぞ……ぐっ!?」

 

ここで炎蓮の身体に異変が起きる。敵兵から剣を喰らってもいないのに血が流れたのだ。

 

「炎蓮様!?」

「……なあに古傷が開いただけだ」

「なっ!?」

 

古傷とは黄巾の乱で受けた傷だ。養生していたが、その傷は思ったよりも深かった。

 

「大事ない。黄祖の首は目前だ。この戦を終わらせるぞ!!」

「はい…」

 

もうすぐだというのに古傷が開くという悪い展開。悪い展開は案外続くもので、またも悪い展開が起きた。

 

「炎蓮様ーー!?」

「明命、何故ここに。敵の後ろに向かったはずでは」

「大変です。敵に援軍です!!」

「なっ、そんな馬鹿な。ここは揚州なのよ。どこから黄祖に援軍が!?」

 

その援軍というのは劉耀軍である。その数は二万。

 

「黄祖め…我らに降った劉耀の将兵を抱き込んだか。まこと手際のよい奴よの」

 

勢いに乗って一万の敵を倒してきたと思ったら援軍二万により敵の数は合計で六万弱。

孫呉の軍も被害が無いわけではない。元々二万だった兵士だったが五千が削られたのだ。流石に六万相手に残り一万五千では戦にならない。

 

「北へ退きましょう炎蓮様。柴桑は敵が押さえていますが東北の方角ならまだ安全です。陸路で丹陽に向かえば建業から援軍とも合流できるはずです!!」

 

粋怜が撤退を提案していた時に銅鑼が響いた。六万となった黄祖軍が総攻めを仕掛けてきたのだ。

 

「総攻めか。黄祖め、この時を待っておったのだな…恐るべき奴よ。迎え撃つ。一歩も退くなー!!」

「炎蓮様!!」

 

降した劉耀軍を抱え込み、利用する。二万という数は馬鹿にならない。

 

「くっくっく、如何に天下無双の武を誇るとしょせんは一匹のケダモノに過ぎん。攻めの手を緩めるでないぞ。罠に嵌まり、もがき苦しんでおる虎は最後の最後まで気が抜けぬ相手ゆえな」

 

冷静さを取り戻した黄祖は確実に孫呉軍を仕留めるべく攻めだす。

 

「しぇああ!!」

 

一方その頃、荊軻が黄祖軍の兵士たちを的確に倒していると音も無く白装束の者たちが現れた。

 

「こいつらは?」

 

黄祖軍の兵士たちの仲間にして場違いな奴らである。白装束たちが黄祖の仲間だとは思えない。

周りにいるに黄祖の兵たちも「何事だ?」という感じに動きが止まっていた。

 

(こいつらまさか…)

 

この白装束たちを見て、ある1人の黄祖の兵が正体が答えを言ってくれた。

 

「おい、お前ら。ここは于吉殿のに任せて向こうの援護に行くぞ!!」

(やはりか!!)

 

敵兵は確かに「于吉」と口にした。この白装束たちはあの于吉が用意した存在。

そもそも過去に行く前は黄祖には兵馬妖を指揮下にあったという情報があった。それならば黄祖の陣営には于吉がいる可能性はあったのだ。

この過去に渡ってから黄祖について調べてはいた。しかしなかなか、黄祖に于吉が繋がっているという情報は掴むことができなかったのだ。

 

(それがまさかこの状況でやっと尻尾を出すとはな…)

 

白装束たちが剣を構える。全員の標的が荊軻である。

 

「来るか…ならば速やかに片づける」

 

荊軻が白装束の傀儡と戦っている間、炎蓮たちに揉め事がおき始めようとしていた。

 

「てやああああ!!」

「えやぁあああ!!」

「うおりゃあああ!!」

 

炎蓮たちは一歩も退かずに黄祖軍を斬っていく。黄祖軍だけでなく劉耀軍までも斬り殺す。

 

「黄祖に誑かされおって…あの狐が劉耀の旧臣なんぞへ素直に豫章を返すものか!!」

 

南海覇王の刃は敵の血だけでなく、古傷から出た血も含めて濡れていた。

 

「……うぐ!?」

「炎蓮様、そのお身体でこれ以上戦うのは無理です。どうか、どうかお退きを!!」

 

もう炎蓮に無理させて戦うなんてことは臣下として止めねばならない。粋怜は炎蓮を退くように進言する。

 

「黙れ、ここでオレが退いたら雪蓮たちはどうなる。豫章城に立て籠もっても六万に攻められりゃ、ひとたまりもあるまい!!」

「私と明命が全力で敵を引き付けます。明命、覚悟は出来ているわね!!」

「はい、ここがわたしの死に場所です!!」

「誰か荊軻を呼び戻して。炎蓮様の護衛をさせるわ!!」

 

最初の頃よりも孫呉軍の勢いは消えていく。

 

「ガキが、一人前の口を聞いてんじゃねえよ!!」

「炎蓮様、雪蓮殿には豫章城へ戻るようお伝えします。炎蓮様は北に向かい、建業からの援軍と合流してください!!」

 

今は退くしかない。態勢を立て直していずれ黄祖と再戦すればよいのだ。しかし炎蓮は受け入れなかった。

 

「テメーらを見捨てて逃げろってのか。天下の孫文台に、ンなみっともねえ真似ができるか!!」

 

炎蓮は提案を受け入れず敵兵を斬り倒す。

 

「粋怜、明命。兵二千のみを残して、貴様らが建業へ退け。この戦はオレが預かる!!」

「何をおっしゃるのですか!?」

 

部下を守るために戦いに残るという主と主を守るために戦いに残るという部下の平行線の言い合い。

 

これはお互いに退くことが出来ない言い合いだ。その言い合いが彼女たちにとって最悪の隙になってしまう。

 

「まったく、分からんヤツめ。生と死の境目は見極めていると言っていただろうが。どうやらこの地でオレは果てるようだ」

「何を弱気な、まだ覇道の半ばではございませんか!!」

「後の事は雪蓮に託す。まあ、揚州の地均しは半端に終わったが…雪蓮にはこれぐらいでちょうどいいだろう」

「炎蓮様、しっかりしてください!!」

「まだ呆ける歳ではない。これが我が天命よ!!」

 

たった小さな隙が彼女たちの運命を崩す。

彼女たちの揉め事を遠くから見る者がいた。それが黄祖である。

 

「何やら敵将が揉めておる様子だが……あれは虎か!!」

 

黄祖はニヤリと笑い、弓を静かに強く引く。

 

「たわけめ武勇に驕り、この期に及んで兵たちの先頭を切って戦っているとはな…左様に死にたければ、そなたの願い叶えてつかわす」

 

黄祖にとって炎蓮はイラつく存在だが、心の中ではその戦う姿は美しい虎と評している。そんな美しい虎が醜く老いさらばえる姿は見たくないとも思っているのだ。

死ぬなら気高く猛き虎のまま黄祖自身の手によって野に散らせたいと思っている。

矢を引くが力より込められる。

 

「孫堅…!!」

 

この瞬間に黄祖の殺気を炎蓮は感じ取った。このような戦況であり、自分の状態から死に関する気配に敏感になっているのだ。

 

「炎蓮様、どうか…!!」

「粋怜、下がれぇえええ!!」

「えっ…きゃあ!?」

 

炎蓮は粋怜を突き飛ばして南海覇王を構えるがもう遅かった。

 

「さらばだ…孫堅っ!!」

 

必殺の矢が放たれ、一直線に炎蓮に向かう。

 

「ぐッ……うっ!?」

 

まるで時でも止まったかのように炎蓮を見た者は錯覚してしまう。

粋怜も明命も今の光景が信じられなかった。頭の処理速度は鈍ったかのように何が起きているのか認識できていない。

 

「うぐ………うっ。ぐぐ」

 

炎蓮に額に矢が命中したのである。

 

「くく。くっくっく、ふふふふふ…ふはーあーはっはっはっは!!」

 

黄祖は手応えを感じた。あの傷ではもう炎蓮は助からないと確定した。

その手応えさに笑いが込み上げた。対して炎蓮は苦悶の声を出す。

 

「ぬぅううううう、ぐううう!?」

 

額から垂れるおびただしい血の量。

 

「い、今、傷の手当てを!!」

 

最初に我に戻ったのが粋怜だ。急いで傷の手当をしなければならないという考えが頭を巡る。それしか考えられない。

 

「黄祖ーーーーーーーー!!」

 

炎蓮は黄祖に対して吼えた。

 

「ふはははははは。孫堅よ、私はここにいるぞ!!」

 

それに対して黄祖は余裕で咆哮えお受け止める。

 

「貴様は野に生きる虎よ。人の世では決して天下へ辿り着けはせぬ。我が手により戦の中に死ねたことを幸せに思え!!」

 

今の彼女は美しい虎を仕留めたという優越感が身体を支配している。このような快感は長年味わった事は無い。

 

「くっく、寂しがることは無いぞ。孫策の首もすぐあの世へ送ってつかわそう」

「クックッ、悪いな黄祖。あれでも雪蓮はオレの娘よ。貴様のような悪党に首をやるわけにはいかん…」

「よくしゃべる虎だ。さっさと死ね」

 

炎蓮は息を整えて近くにいた部下から槍を奪った。

槍を構えて狙いをつける。もう動くことさえ辛いというのに彼女は自身の身体を無理矢理動かす。

 

「槍なぞ構えてどうする気だ。どうせ一歩も動けんだろうに?」

「ああ、オレはもうくたばる。だが……黄祖、貴様も道連れよ!!」

 

最後の力を込める。

一瞬だけ動けば良いと自分の身体に命令する炎蓮。

力の限り気合を発して槍投げの構えを作り、狙いを定めた。

 

「ぬぁああああああああああああああ!!」

 

槍は尋常じゃない速度で黄祖へと発射された。

 

「馬鹿な!?」

 

黄祖は迫る死を感じ取った。

今すぐに身体を倒してでもいいから槍の軌道から逸れねばならない。前方でも真横でも後方でもいいから倒れれば槍の軌道から抜けられるのだ。

 

(どうした動け私の足よ!?)

 

何故か身体が動かなかった。恐怖で動けないわけではない。何とか反応は出来ているつもりだがまるで金縛りを喰らったように動けないのだ。

 

「ぐうぅああぐがあ!?」

「こ、黄祖様ーーー!?」

 

炎蓮の投げた槍が黄祖の胸を貫いた。

 

「どうだ黄祖よ……このやろうが」

「炎蓮様ーーーー!?」

「明命、早く医者をぉーーーー!!」

 

外野が五月蠅いが炎蓮は気にしない。

 

(まだ……くたばれん。雪蓮よ…早く来い…)

 

額に矢が刺さったまま炎蓮は立ち続ける。今、倒れたらあの世に逝ってしまいそうだからだ。彼女はまだ死ぬわけにはいかない。あと少しだけ持てと自分自身に言い聞かせる。

そんな姿を黄祖軍の中から見ている者がいた。

 

「ふう…案外、黄祖は力強かったですね。金縛りが弾かれそうでしたよ」

 

その者は刀印を解く。

 

「それに私が槍の軌道を調整しなければ命中しなかったですよ孫堅」

 

その者の正体は于吉であった。




読んでくれてありがとうございました。
次回は1時時間後予定。


まさか孫堅(炎蓮)が!?
この場面は原作でも驚きでした。「ここで!?」っとプレイしてて思いましたよ。
しかし、この物語では原作と違うルートを辿ります。ついにオリジナル展開になるんですよ。孫呉が滅んでしまう事件がついに起こり始めます。それを防ぐ戦いに藤丸立香たちは赴きます。

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