Fate/Grand Order 幻想創造大陸 『外史』 三国次元演義   作:ヨツバ

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2章の決着の物語です!!



長江水上決戦:後半

205

 

 

「くーわーれーるー!?」

 

玄奘三蔵は修蛇に食べられかけていた。食われまいと修蛇の口に如意金箍棒で閉じらせないようにしているがピンチであることは違いない。

 

「ちょ、張昭さん助けてー!!」

 

大ピンチの玄奘三蔵。すぐに助けにいくはずだが、張昭の視線は玄奘三蔵も修蛇からも外れていた。

張昭だけでなく周泰や陸遜たちや孫呉の兵士たちもある一ヶ所に視線を移していたのだ。

 

「い、生きておられたのじゃ」

「へ、生きてたって!?」

 

張昭はとても驚いていて嬉しい顔をしているが玄奘三蔵はそれどころではない。

 

「食われちゃうよー!?」

「泣き虫僧侶 助ける 世話の焼ける」

「この声は!!」

 

修蛇に高速に接近して蹴りを食わらせた者が玄奘三蔵の危機を脱っさせた。

その者は玄奘三蔵がよく知る者である。

 

「哪吒ー!!」

 

哪吒が修蛇に蹴りを喰らわせたのだ。

 

「こいつ 修蛇」

 

哪吒は修蛇を睨む。修蛇もまた同じように睨みつける。

 

「大きい でも倒す!!」

 

火尖槍を構えて一直線に修蛇に飛び立つ。

突っ込んでくる哪吒に対して修蛇は口を大きく開いて飲み込んだ。

 

「って、哪吒が食われたー!?」

 

見事に食われた哪吒。だがこれで終わったわけではない。

 

「グガガガガガガガガガガガ!?」

 

急に修蛇が苦しみだした。すると修蛇の背中から哪吒が破って飛び出したのだ。

 

「ボク 妖魔に食われない」

 

体内から貫かれた修蛇は肉体が崩れながら長江へと沈んだ。

 

「後は…」

 

哪吒もまた張昭たちと同じように視線を向ける。視線の先に彼女たちが驚く理由がいるのだ。

そもそも哪吒が連れて来た人物である。

 

「雪蓮姉様…」

「生きてた…良かった」

 

孫権と孫尚香は哪吒が連れて来た人物を見て涙が溢れてきそうになる。

 

「なぜ孫策が…!!」

 

空から降ってきたのは孫呉の当主である孫策だ。

 

「仲謀、尚香。あなたたちが生きていて私も嬉しいわ。でも感動の再会はもうちょっと待っててね。まずはこいつを倒す!!」

「はい!!」

「うん、姉様!!」

 

孫策が生きていた。この事実は孫呉の者たち全員に大きな希望を持たせたのだ。

そのおかげで孫呉の兵士たちは先ほどよりも気合を入れて兵馬妖や敵兵と戦う。

 

「…どうやって孫策がここまで来たか分からんが貴様がここにいるという事はまさか」

「ええ、あんたの城は落としたわ。それにもうすぐ袁術軍も合流する。あんたの負けよ!!」

「…そうか人虎たちがやられたか」

 

長江の水上決戦も黄祖軍の妖魔となった将も討たれた。主要な人物は黄祖だけである。

 

「だがまだ負けてはないぞ」

 

黄祖は斬り落とされた腕を拾って切り口にくっつけると繋がった。まるで何とも無かったように腕が戻ったのだ。

 

「貴様らをここで殺して次はのこのこと来た袁術を殺せばいいだけだからな」

 

このような状況でも負けたとは思っていない。寧ろこれからだと言わんばかりの顔だ。

 

「はっきり言っておこうか。私は既に人間ではない。先ほどみたいに腕を斬り落としたくらいで殺せると思うな」

 

黄祖の正体は僵尸だ。ただの僵尸ではなく、于吉が手ずから黄祖の死体から作り出した特別製の僵尸である。

 

「ならあんたが死ぬまで斬ってやるわよ!!」

 

孫策は跳び出して黄祖に斬りかかる。

 

「画影剣よ」

 

画影剣が孫策に飛来する。黄祖はその隙に矢を放った。

 

「はあ!!」

 

孫策は画影剣を斬り弾き、矢を避ける。

 

「ちっ」

 

迫る南海覇王を避ける。矢を連続で放つが孫策も躱していく。

 

「黄祖!!」

「姉様援護するよ!!」

 

孫権と孫尚香も黄祖に斬りかかる。孫三姉妹が母親の仇である黄祖と戦っているのだ。

 

「孫堅の残した娘たちよ。ここで殺してやろう」

 

画影剣を操り孫策たちを襲う。

 

「飛んでくる剣なんて珍しくないわよ。これでもここまで空飛ぶ子に連れてきてもらったからね!!」

 

飛来してくる画影剣を何度も弾く。放たれる矢も上手く避けていく。

この戦は黄祖さえ倒せば終わりなのだ。その黄祖は目の前にいる。

孫呉が狂った原因は于吉と黄祖の2人である。于吉は藤丸立香たちが退けたからあとは黄祖のみだ。

ここで黄祖を倒して孫呉を取り戻すという気持ちが孫策たちに力を与えてくれる。

 

「私を討ち取ろうとする感情が嫌でも伝わる。だが死ぬのは貴様らだ孫堅の娘たちよ!!」

 

確実に孫家を滅ぼすには孫策たちを殺す事だ。黄祖の目の前には丁度、孫三姉妹がいるのならばこれほど絶好の機会は無い。

既に斬られる事に恐怖は無く、画影剣を操りながら孫三姉妹に向かって走り出した。

 

「黄祖!!」

 

孫策たちが向かってくる黄祖を囲んでいっせいに武器を振るった。

 

「最初に死ぬのは貴様だ!!」

 

まず黄祖が狙った相手は孫権であった。

画影剣を孫策に飛ばして近づかせないようにし、孫尚香には腹部に蹴りを入れた。そして孫権が振るう剣は刃の部分を掴んで受け止める。

僵尸となった彼女にとって剣を素手で掴み取るなんてわけない。更に孫権程度の剣の腕は最初から怖くなんてない。これが孫堅や孫策ならば切断されていたが。

 

「このおおお!!」

 

孫権は剣の柄を強く握りしめて切り裂こうとするが剣は動かない。それほどまで黄祖の握力は強い。

 

「まずは貴様からだ孫権!!」

 

孫権にトドメを刺そうと腕を伸ばす。孫策と孫尚香は孫権を助けに走るが間に合わない。

死が近づく事を感じ取った孫権は身を守らねばと思うが剣は弾き飛ばされた。

 

(何か…!!)

 

他に何かないかと腰に手を伸ばして何かを掴んで振るった。

 

「…え?」

 

黄祖の右腕がボトリと床に落ちたのだ。

 

「右腕が…木剣で斬られた?」

 

孫権が手に持っているのは木剣であった。

黄祖は斬られた右腕と孫権の持つ木剣を見る。木剣で斬るのはあり得ない。

黄祖は僵尸だ。腕を斬られたところで痛みは無い。すぐに繋げれば問題無いのだ。先ほどは孫策に斬られたかすぐに繋げた。

しかし、斬られた右腕がボロボロと崩れて消滅したのだ。

 

「何だと!?」

 

黄祖はすぐさま木剣を持つ孫権からすぐに離れる。

彼女の持つ木剣はただの木の剣ではない。桃木剣だ。

中国において桃は邪気を払うとして親しまれており、果実や枝を魔除けに利用することがある。桃木剣は桃の木から作られた邪気を払う剣なのだ。

更に桃木剣は僵尸にとって弱点となる剣だ。僵尸となった黄祖にとって唯一の弱点。

 

「蓮華。その剣を私に!!」

「させん!!」

 

孫策はすぐに孫権が持つ桃木剣で黄祖を倒せると気付く。黄祖もまた孫権が持つ桃木剣が自分を殺せる剣だと気付いた。

両者とも孫権に向かう。

 

「姉様!!」

 

孫権は孫策に桃木剣を投げ渡す。

受け取った孫策は片手に南海覇王。もう片方には桃木剣を握って黄祖に走り出した。

 

「おのれ!!」

 

片腕を斬り落とされた黄祖はもう弓矢が使えない。

 

「画影剣!!」

 

指を孫策に差すと画影剣が飛んでいく。孫策は直線に飛んでくる画影剣を斬り飛ばす。

 

「黄祖おおおおおおお!!」

「ふん」

 

黄祖は指をクイっと動かすと斬り飛ばされた画影剣が方向転換してまた孫策に向く。そして孫策の背中に向けて飛来した。

孫策の前方には黄祖が、後方からは画影剣が迫る。だが孫策1人だけではない。ここには孫権と孫尚香がいるのだ。

 

「させるか!!」

「させない!!」

 

孫権は剣を拾って投げ飛ばし、孫尚香は月華美人と言うチャクラムを投げ付ける。投げた先には画影剣。

直撃した画影剣は逸らされた事によって孫策への直撃は免れた。孫策は妹を信じていたのか気にせずに黄祖に走る。

 

「こいつら…!?」

 

逸れた画影剣を呼び戻して画影剣を掴んで黄祖も孫策に向かう。

 

「黄祖おおおお!!」

「孫策!!」

 

両者同時に剣を振るう。

南海覇王で画影剣を持つ腕を斬り落とし、桃木剣で黄祖の胸に突き刺した。

 

「あ…あぐぁぁぁ!?」

「これで終わりよ黄祖!!」

 

桃木剣によって突かれた胸の部分から黄祖の身体に亀裂が入った。

 

「こ、ここで終わりなのか…私は」

 

ヨロヨロと後ろによろける黄祖。

桃木剣を胸に突き刺された事実を信じられないがすぐに現実を理解する。黄祖はここで消滅するのだ。

 

「くくく…まったく親子だな。孫堅もまた私の胸に突き刺して殺した」

 

黄祖がやられた事で兵馬妖たちがボロボロと崩れていった。

至る所で孫呉軍と黄祖軍の戦いに決着がついた事が皆に分かっていく。

 

「ここまで私に着いてきてくれた部下たちよ…すまない」

 

黄祖軍の兵士たちは兵馬妖が崩れた事に自分たちの主が討ち取られたと理解させられる。

 

「後悔があると言うのなら…せめて貴様ではなく甘寧に討ち取られたかった」

 

黄祖は甘寧を見る。甘寧も気付いて同じように見た。

 

「ああ、甘寧……思春よ。手に入れたかった」

 

その言葉を最後に黄祖は消滅した。

 

 

206

 

 

孫呉と黄祖の因縁はついに決着がついた。

黄祖が討ち取られた事により妖馬兵は全て崩れ、黄祖の兵士たちも全面降伏だ。最初はまだ敵兵たちは黄祖の敵討ちをしようとしていたが援軍の袁術軍が見えた事により戦う意思は消えた。

兵力差は黄祖率いる江夏軍が上であった。長期戦になっていたら数で押されて負けてしまう可能性はあったのだ。

その前に総大将である黄祖と配下の将を討ち取った事と援護で来た袁術軍が決め手である。

 

「さあ、黄祖のやつを討ち取ってやるのじゃー!!」

「あの…お嬢様。どうやらもう終わったみたいですよ?」

「なぬ、そうなのか?」

 

活躍出来なかった袁術軍ではあるが来ただけでも働きをしてくれたのだ。

 

(まあ、無茶な戦いをしなくて良かったですよ)

 

結果的に楽な戦いで終わった事に安心した張勲。そのままこの戦いの手柄をどう奪うか考え始める。

せっかく長江まで軍を率いてきたのだから何かなければ割に合わないのだ。最も既に軍を率いて援軍に来ただけで孫呉に借りを作ったのだ。

 

(よし。このまま上手く孫呉の足並みに入って建業に向かって居座っちゃいますか)

 

張勲が腹黒い考えをしているが今の孫呉には分からない事である。

 

「姉様!!」

「雪蓮姉様ー!!」

 

孫権と孫尚香はすぐに孫策に駆け寄って抱き着いた。両目からは溢れんばかりの涙がポロポロと垂れていく。

母親まで亡くして姉まで失くしていたと思っていたが生きていた。その涙に偽りはない。

 

「本当に心配かけたわね蓮華、シャオ」

「本当よ姉様…」

「うわあああん雪蓮姉様ぁあああ」

 

孫姉妹はもう二度と離さないとしっかりと抱き合っていた。

その姿を見た張昭は心の中で孫堅に今の気持ちを伝えていた。目頭が熱くともしっかりを彼女たちを見る。

 

(炎蓮様…貴女様のご息女は大きな壁を乗り越えました。傷だらけでありながら立派なお姿ですぞ!!)

 

陸遜も周泰も勝利した事を噛みしめ涙を流す。戦が終わってこれほどまで涙を流す事は今までなかった。

 

「到着が遅れたが終わったのじゃな」

「そうね祭…」

 

孫呉の両翼である程普と黄蓋はお互いに拳をコツンと突いた。

 

「蓮華様…」

 

甘寧は黄祖に負けた自分を不甲斐ないと思っている。二度とこんな醜態を見せまいと孫権を見て誓う。

 

「やっと終わったんだな雪蓮」

「雪蓮…良かったね」

「李案もな」

「うん冥琳」

 

孫策たちを見て軽めに息を吐いて一息ついた周瑜と太史慈。今までの不安感がいっきに消えた瞬間である。

こうして長きにわたった黄祖との戦いは終わった。

 

「さあ、帰りましょう。建業へ」

 

戦いが終わって建業に戻るのだがそこで予想外の事が起きる。それは袁術が孫策たちの護衛という名目で十万の軍勢が建業に押し寄せて居座ってしまったのだ。

黄祖との戦いで疲れ果て、傷ついた呉軍に袁術軍十万を追い出す余力は無い。

そして袁術は南陽から丹陽へ拠点を移してしまったのだ。

 

「やはりな、こうなったか」

 

何となく予想していた諸葛孔明であったがどうこう出来る状態ではなかったので、こればかりはもう時既に遅しというやつである。

黄祖との因縁に決着がついたかと思えば次に新たな問題を抱える羽目になった孫呉。

しかし長きにわたる黄祖との戦いに比べればと思えば多少は気持ちに余裕が持てる。

今はやっと戦いが終わった事というのが大事なのだ。

 




読んでくれてありがとうございました。
次回は2週間後予定です。早く更新出来たら更新します。

今回で現在sideの戦いも終了です。次回で2章も終了です。
何だかんだで2章も長かったものです。この後の孫策たちは原作通りになりますが、藤丸立香たちが助けた女性が結局どうなるかは次回で分かります。

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