Fate/Grand Order 幻想創造大陸 『外史』 三国次元演義 作:ヨツバ
恋姫革命の最終章『劉旗の大望』発売まであと十日切りましたね。
どんな物語か気になるー!!
ぐだぐだファイナル面白かったです!!
柴田さんはガチャに来なかったのは残念でした。
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宿屋にて炎蓮たちは手に入れた情報を整理していた。その中で気になったのが都である洛陽での噂だ。大将軍の何進や十常侍たちが殺されたというものである。
「あの大将軍がなぁ…」
都と聴けば聞こえは良いが、実はその上では人間という魑魅魍魎たちがドロドロと争っているのだ。
このような大きな情報が陽州に入ってこなかったのは黄祖との戦いでそれどころではなかったからだ。
「今頃なら雪蓮たちもこの情報を手にしてる頃か?」
今の落陽は恐らく大将軍や十常侍に代わる誰かを決めるのに渦巻いている段階だと予想する。まさに炎蓮の予想通りで洛陽では、正確には朝廷では誰が大将軍の代わりになるかを決めている。
その誰かとはもう決まっている。その誰かとは心当たりがある荊軻や李書文たち。
(…董卓)
直接関わっていないが董卓たちが十常侍たちを粛正した現場には出くわしたのだ。その後は悪龍との決戦になって大変であったのだが。
(あの者が朝廷を取り仕切るか)
董卓の上にいた大将軍の何進と十常侍の張譲達を朝廷から消して身綺麗にした。ならば次は己自身が大将軍や十常侍より上になるということである。
(自分より上の者がいなくなった。ならばやることは…)
あの董卓が荊軻の想像している事をするかどうかは分からない。そもそも彼女の性格を考えると想像できないのだが人間とは変わるもの。
どうなるかなんて最後まで分からないものだ。
「ちっ…都に行ってみたかったが時期が悪いな」
残念がる炎蓮。
今の洛陽には無闇に近付かない方が安全である。そういう場所に行けば何かしら巻き込まれる可能性は無くはないのだ。
「そう言えば、ここで華佗の仕事が終わったら次はどこ行くの?」
地和がふと誰もが気になる疑問を投げ掛けた。
もし、洛陽で何も起こってなければ立ち寄ったかもしれない。
「む、確か貂蝉が行ってみたい所があるといっていただろう」
「あー、確かに言ってたわね」
貂蝉は華佗に目的地を譲ったから陳留に来ている。彼の仕事が終われば今度は貂蝉が向かいたかった場所が目的地になる。
「あいつ何処に行く気なんだ?」
「それは貂蝉が帰ってきたら分かることだ」
その目的地には藤丸立香たちを驚かせる人物がいることを今は分からない。
「どんな治療をしてるか分からんがさっさと戻ってきてくんねえかな」
どんな治療をしているか。今頃治療している頃で、その様子を見たら驚くか理解できないかだ。
222
「何だぁこりゃ?」
開口一番のセリフ。
燕青はこっそりと城に侵入して華佗と曹操たちがいる謁見の間に辿り着くとよく分からない状況に出くわした。
そもそも外庭で卑弥呼と大剣をもった黒髪の女性が戦っていたのも分からない。治療に来たはずなのに何故戦いになっているか首を傾けたほどである。
卑弥呼が外庭で戦っている事に関しては色々とあるのだがここでは割愛。
どういう経緯で卑弥呼は戦っているのか分からなかったので燕青は無視して謁見の間まで侵入してきたのだ。
「はあああああああああ!!」
華佗が闘気を剥き出しにしてある女性に向かって対面していた。その女性というのが曹操だ。前に洛陽で見たから記憶していた。
「ぐはぁっ!?」
分からずに驚いたのが華佗が何もないところで吹き飛んだ事だ。これに関して燕青はポカーンな状況である。
「きゃっ!?」
「大丈夫かしら。飛び散った瓦礫に当たって玉のお肌が傷ついたら大変だものねぇん」
更に横では華佗が何故か吹き飛ばされた余波で飛んだ瓦礫から女性を助けた貂蝉の姿が見えた。
「あ、ありがとうございますわ。気持ち悪いですけれど、悪い人ではありませんのね」
「華佗ちゃん。こっちはわたしに任せて心置きなくヤっちゃってちょうだい!!」
「ああ、ありがとう貂蝉!!」
「なんだか発音が妙に引っかかる気がしますけれど」
「気のせいよぉん」
たまに貂蝉は言葉の発音に関してイントネーションが違う気がするのだ。
そんな様子を見ている燕青は全くもって状況が飲み込めない。確か華佗は曹操の治療のために来ているはずなのに何故か勝手に吹き飛んでいる。
何となくだが何かと戦っているような感じに見える。
「秋蘭さま…何が起こっているんでしょう」
「分からん。五斗米道の治療を見るのは私も初めてなのだ」
「五斗米道じゃない五斗(ゴット)…米道(ヴェイドー)だ!!」
「ですからそれはもういいですの…」
どんな状況でも華佗は発音に対しては譲らない。並々ならぬ拘りはここまでくれば天晴というもの。
「ぐう、この気当たり…この一撃の重み…違う。この病魔、俺が今まで戦ってきたどんな相手とも違う!?」
「おおおおお…なんだかすごい感じっす」
「姉さん、何か見えてるの?」
「見えてないけど、なんかすごいのだけわかるっす!!」
「だが、俺は負けない。この技を授けてくれた師匠の為にも…俺の治療を待ちわびる大陸のみんなの為にも…でえええええい!!」
患者である曹操はもう何が何だか分からないが治療されているらしいので何か言いたくても言えない。
もしかしたらこれが五斗米道の治療だったら口を挟むわけにはいかないのだ。実はとても口を挟みたいのではあるが。
「俺は…俺は負けてなるものかぁぁぁ!!」
「華佗ちゃん、がんばってぇぇぇぇん!!」
「ああ。我が身、我が鍼ひとつとなり。一鍼胴体、全力全快。必察必治癒…病魔覆滅。でええええええええい!!」
「ちょっと。今、必殺必中とおっしゃいませんでした?」
「気のせいだろう。あれでも医者だぞ?」
周囲にいる曹操の家臣たちも華佗の治療行為や発言に訳が分からなくなっている。途中から合流した燕青は今でさえ状況が飲み込めていない。
「ぐうう…俺の五斗米道が…負けてなるものかあああ!!」
これは治療のはずなのだが燕青が知る治療とは違う。こんな状況に思考回路がついに一旦止まる。
もう一度自分の頭の中で整理する。華佗は曹操の治療をしに来たはずである。だが何故か曹操と対面して勝手に吹き飛んだりしている。
全くもってその光景が診察や治療行為に見えない。
「せ、せめてあそこに届けば…!!」
「ちょっとあいつ華琳さまのどこを触ろうとしてるのよ!!」
「桂花。そろそろ部屋を出た方が精神衛生上良いかもしれんぞ」
「嫌よ。私が居ない間にあの男は…華琳さまの、華琳さまの…華琳さまのー!?」
「うおおおおおおおっ。届けええええええ!!」
「……ふはっ!!」
「け、桂花さん!?」
何故か桂花と呼ばれた女性が鼻血を出して倒れた。何で倒れたのかは華佗が勝手に吹き飛ぶのと同じくらい分からない。
周囲もカオスになりつつありそうである。寧ろもうなっているのかもしれない。
「とりあえず華侖。桂花を他の部屋に運んでおいてくれるか?」
「はーい。わかったっす」
「でやあああああああああああああ!!」
華佗が気合を持って曹操に立ち向かうが手に持っていた鍼が急に折れた。
何があったのか燕青の目ですら分からなかった。分からない状況であるが理解するために見ていたのだが全く理解できない。
「何もしていないのに折れた…」
「俺の鍼が折れるなんて…馬鹿な!?」
「お姉さま。やはり刎ねてしまいません事?」
「取り合えず終わるまで待ちましょう。華佗もまだ終わりにするつもりはないようよ」
「ああ、当たり前だ。俺はここで、こんな所で倒れるわけにはいかないんだ!!」
「そうよ。負けないで華佗ちゃん!!」
華佗のセリフは何処かの物語の勇者が言いそうな言葉だ。まるで魔王とも戦っているように感じるがやっているのは診察、治療のはずである。
更には彼の目がまるで燃えているようにも見えてしまった。闘魂の入った目だ。
(なにあれスキルかぁ?)
「師匠…禁を破ってすみません。最後に戴いたあの鍼を今こそ使わせていただきます!!」
華佗が何か物騒な事を言い出した。治療行為に禁を破るというのは絶対にダメな気がする。
「病魔め。お前の野望を絶対に叩き潰す。俺の最大最強の一撃を受けてみろ!!」
最終局面に入りそうな勢いである。
「受けてみ…あれ。こっちだったけ…あれ?」
「何をしているのだあれは?」
「さあ、何か探しているようですけれど」
「あれ、どこいった…鍼がなっ、ぐあああ!?」
また勝手に吹き飛んだ。
「い、いかん!?」
「なんだか逃げ回ってますわね…あの方、結局何がしたいんですの?」
「私にも分からん」
「くそ、俺は医者だ。諦めるな、諦めてなるものか。足りない道具は俺の情熱と勇気で補ってみせる!!」
先ほどの華佗の様子だけは燕青は理解できた。特別な鍼を使って治療しようとしたのだが様子を見ると持っていなかったというものだ。
その特別な鍼とは恐らく燕青の手にある物。やっと渡せそうなタイミングが見えて来た。
「ぐあああああああ!?」
「華佗ちゃん!!」
「また吹き飛ばされましたわ!?」
「…とはいえ、流石に茶番も飽きてきたわね」
流石に曹操もこの状況がまだ続くと言うのならば考えがある。
「ぐあああああああ!?」
「な、だぁりん!?」
華佗は何故か謁見の間から外庭まで吹き飛ばされていた。何をどうしたら謁見の間から外まで吹き飛ばされるか分からない。
「ちっ。病魔が曹操を離れてこんな所まで…もうこうなったら離れるだけ引き離すしかないか。卑弥呼、貂蝉!!」
「心得た!!」
「分かったわぁん!!」
何となくだが流れが少し変化した事に気付いた燕青。
本当に何となくだが忘れものを渡すタイミングがやっと来た。本当にやっと来たのだ。
状況が状況過ぎて燕青は空気になっていたのだが正直に言うとあの空間に入りたくなかったのである。
これはもうさっさと渡してトンズラした方が良いと判断。
「おい、忘れもんだぞ!!」
「え!?」
燕青は礼の薄紫の包みをまっすぐに華佗へと放り投げた。
「燕青、何でここに…って、これは。よぉっしゃああああああああ!!」
「おおっ!?」
鍼を渡すと今日一番の大声を出した華佗。その声量の大きさにちょっと驚いた。
「これさえあれば千人力だ。行くぞ病魔。貴様の野望もここまでだ!!」
すぐさま曹操の元に戻ろうとするがここで状況が変化した。
「者ども、あいつらを包囲せよ。名医の名をかたって騒ぎを起こす狼藉者どもだ。つまみ出せ!!」
包囲された華佗たち。理由は言うまでも無く分かってしまう。
その答えは先ほど聞こえていた。
「卑弥呼、分かってるわねん」
「言われずとも分かっておるわ。だぁりん、我々が道を切り開く。お主は病魔を叩き潰せ!!」
「分かった。お前たちの熱い思い無駄にはしないぜ!!」
何故か展開が熱くなってきた。理解は出来ないが熱い。
「行くぞ、んふぅぅ!!」
「わたしが戦うのはただ愛のため。大切なあの人との約束たのため。うっふうううん!!」
「ぐわあああ、キモチワルイ!?」
「うふふ。キモチイイだなんて大胆ねえ」
「いや、そこの兵士が言ったのは違うぜ…つーか一文字多いぞ」
ついツッコミを入れてしまう。
「ならもう一発ご奉仕しちゃうわよん!!」
「がははははは。だいぶ調子が出てきたようではないか貂蝉。それでこそ我が弟子なり。ならば私もモリモリ滾らせるしかあるまい!!」
「ぐわああ、腋がぁぁぁぁ!?」
「ふん。お毛毛の手入れはちゃんとしておるわ。それとも若造には刺激が強すぎたか。ほれほれぃ!!」
「やめてやれ」
曹操軍の兵士たちに同情。流石に燕青も脇を強調してくる卑弥呼とは戦いたくないと思ってしまった。
まさに卑弥呼と貂蝉の漢女無双である。
「な、なんですのこの方々。本当に正視に耐えませんわ!!」
先ほどは貂蝉に助けてくれた事を感謝していた女性も酷い事を言ってしまう。貂蝉たちには悪いが彼女の気持ちは分からなくもない。
「姉者!!」
「分かっている!!」
「そんな一撃じゃ、ガチガチに滾ったわたしのあそこは貫けないわよぉん!!」
「な、私の太刀が弾かれた!?」
(おい、今どうやって弾いた?)
瞬きしてしまったのでどうやって貂蝉が大剣を弾いたか分からない。
「今だ、だぁりん!!」
「ああ!!」
華佗は卑弥呼の声に金色の鍼を大きくかざすと虚空に向かって高らかに叫んでみせた。
「我が金鍼に全ての力を込める…この一撃よ輝けえええ。賦相成・五斗米道ォォォォォ!!」
(おい今ファイナルと叫んだぞ。完全に横文字じゃねえか。いや、そもそも五斗米道も発音具合も…)
卑弥呼の話だとこの外史では彼の言う五斗米道は神農大帝が編み出した究極医術との事。さらに華佗が所属している道教組織も五斗米道と言う。何等かの関連性はあるかもしれない。
(つーか、これどうなるんだ?)
華佗は全ての力を籠めるように金の鍼に気を込めている。
「うおおおおおおおおおおおおおおお!!」
「止めろ、ヤツを止めろー!!」
「させないわよぉん!!」
「だぁりんよ。今こそ見せるのだ。五斗米道最強の一撃を!!」
本当に治療行為をしているのか今でさえ分からない。
そもそも華佗は治療行為をしているようだが曹操陣営の方は既に変質者を捕縛しようと躍起になっている。
「お姉様ーー!!」
「げ・ん・き・に・なれええええええええ!!」
「ぬおおおおおお、やらせはせん。やらせはせんぞおおおおおお!!」
「ちっ、華佗ちゃん!!」
「ならば今度は私があああああああ!!」
燕青は見ていて本当に理解できないが決着はつきそうだということは分かった。
治療行為に対して決着がつくという言い方はおかしいのであるが。
「おおおおおおおおおお!!」
「ぬおおおおおおおおお!!」
「はあああああああああああああああ!!」
貂蝉と卑弥呼が道を開いたおかげで華佗の一撃がついに繰り出される。
「…やったか!?」
結局最後まで見ていた燕青はある事を思って口を開いた。口を開きたくもなる。
「いや、だから何だよこれ!?」
そう叫ぶのは当然かもしれない。
そしてまだまだ続く。
223
藤丸立香は陳留にて陳珪と再会した。彼女は曹操の元に降ったのでこの陳留で出会う可能性は無くも無い。
「陳珪さん!!」
「あら、立香くん。それに孔明さんたちまでお久しぶりです」
陳珪は藤丸立香がまさか陳留にいるとは思わなかった。この再会は何かしら縁があるということだ。
沛で縁を紡ぎ、洛陽で再開し、今度は陳留で再会を果たした。この流れに不思議な縁が無いとは言えない。
「まさかこの地で再会するなんてね」
「お久しぶりです陳珪さん」
自然な流れで陳珪は藤丸立香の隣に座る。ピタリと接触するくらい近い。
「うふふ」
「近くないか陳珪」
「あら。これくらい普通よ武則天ちゃん」
陳珪と藤丸立香の異様な近さにジト目をする武則天。
「俵さんは?」
「別行動中」
「そうなのね。嬉雨もこっちに来てれば俵さんに会えたかもしれないのに…間が悪いわね」
ため息を吐く仕草がいちいち艶めかしい。こういう女性を色気ある女性と言うのかもしれない。
この外史だと陳珪は紫苑と並ぶくらいの色気ある女性だ。
「蘭陵王さん。今日も来させていただきました!!」
「典韋殿。今日も元気ですね」
「あ、あの…蘭陵王さん。今日は」
「せっかくのお誘いはありがたいですが答えは変わりませんよ典韋殿。申し訳ありません」
「あうう…そ、そうですか」
チラリと見ると典韋と呼ばれた女の子が蘭陵王と話していた。彼女は蘭陵王に対してキラキラした目で会話している。
そのキラキラした目に関してはすぐに分かる。典韋は蘭陵王に憧れや恋心に似た気持ちがあるのだ。
そして蘭陵王はキッパリと何かに対して断った。その答えに残念がる典韋。
(まあ、あの年頃の童ならば蘭陵王と出会えば惹かれるのは分からんでもないからのう)
アイドルに会ったファンのような感じである。
「ところで陳珪さんたちはどうしてここに?」
「私たちは蘭陵王さんと秦良玉さんを曹操様の陣営に入れるために来たのよ。まあ、勧誘ね」
簡単に言うとヘッドハンティング。2人の才能を見つけた曹操は手に入れるために陳珪たちを寄越したのだ。先ほどの蘭陵王と典韋の会話もすぐに理解できた。
話を聞いていくと今日が初めてではなく何度も来ては説得しているとの事。本当ならば曹操も自ら勧誘に来るつもりだったようだが今日は先約があるとの事。
それが華佗の治療だとすぐに分かった。
「陳珪殿。私たちは曹操殿に仕える気はありません。既に私たちには主がいますので」
「そのようね」
チラリと陳珪は藤丸立香に視線を移す。
まさか2人の主というのが藤丸立香とは思いもよらなかった陳珪。このような縁に関して不思議とまたも思ってしまった。
何度か勧誘しに来たが2人は頑なに曹操の元に仕える気は無かった。その理由というのが藤丸立香であったのだ。
曹操と藤丸立香を比べれば普通は曹操を選ぶのだが蘭陵王たちは藤丸立香を選んだ。何もかも曹操が上なのだが藤丸立香を選ぶということは何か彼にしかない惹かれるものがあるということだ。
それに関しては陳珪も分かる気がする。藤丸立香は曹操のような王の資質が無くとも何か惹かれるものがあるのだ。
「勧誘失敗ね」
曹操にどう報告しようか考える陳珪。
彼等2人の実力や才能があるのは陳珪も分かっている。だからこそ曹操は欲しがっていた。
更に曹操の趣味的にも秦良玉はストライクだったようでソッチの方でも欲しがっていたのだ。
(今回は残念ね華琳様。それに流琉ちゃんも)
キラキラした目で蘭陵王と話す典韋を見る陳珪。
勧誘出来なかった。その結果は変わらない。
そもそも秦良玉たちが藤丸立香から曹操に鞍替えするというのは曹操陣営にいる夏候惇が別の主に鞍替えをするというのがあり得ないくらいのレベルだ。
(秦良玉さんたちを勧誘するのは春蘭様が華琳様から離れるのがあり得ないくらい無理難題のようね。こればっかりは私でも無理)
蘭陵王と秦良玉の勧誘はこれ以上何をしても無駄だと分かったので陳珪は普通に藤丸立香たちとお茶をする事を決めた。
最初は藤丸立香を引き込めばそのまま秦良玉たちも引き込めると思ったが、それは同じ事で彼等も旅をしている目的がある。勧誘は結局は難しいと判断したのだ。
「典韋ちゃん。勧誘はもう無理みたい。お茶にしましょ」
「え、そうなのですか…」
勧誘が無理と言われて残念がる典韋。
「あ、あの蘭陵王さんはいつまでこの陳留に?」
「それは…主殿によりますね。どうなんですか?」
「華佗の仕事が終わったら出発かな」
この陳留を訪れた一番の理由が華佗の仕事である。
「華佗とは…」
「そう言えば2人は知らなかったな。今、私らの旅には他にも同行者がいる。それは集まった時にでも紹介しよう」
諸葛孔明は簡単に華佗について説明する。その者こそが熱き医者である華佗なのだ。
「なるほど我々以外にもこの大陸で仲間になった者がいるのですね」
「一癖も二癖もある奴らばかりだがな」
それはお互い様というやつだ。カルデアにいる英霊たちも一癖も二癖もある者たちばかりなのだから。
「そう言えば華佗さんとは一緒に旅を続けていらしたのね」
「うん。彼には助けてもらってるよ」
華佗には何だかんだで助けてもらっている。特に藤丸立香は生身の身体であるため時折、華佗には身体に異常が無いか診てもらっているのだ。
それに彼のおかげで旅の最中で怪我人や病人も助けて回っていた。特に彼がいなければ炎蓮は助かっていなかったほどだ。
今頃は曹操も華佗に診てもらって回復に向かう事になっていると予想している。
熱い正義感のある人物で医術の腕も良いなんて凄いとしか言いようが無い。
「曹孟徳様も華佗さんに感謝するかもしれないわ」
曹操が悩んでいる頭痛。華佗ならば治療できる腕を持っているからこそ陳留に呼ばれたのである。
(史実だと華佗と曹操は因縁があるのだが…この世界だと分からんからな)
諸葛孔明は三国志の歴史は既に頭に入っている。華佗と曹操の因縁についても知っているのだ。
何か起こるのではないかと少し予想しているのだがすぐに頭の片隅に追いやる。
この外史は三国志を元にしている異世界。しかし正史の三国志の歴史通りになっているとは言い切れない。何かしら違う流れが起きているのだ。
「華佗の仕事が終わったら陳留からすぐに出てしまうのね」
「まあ、ここには旅の途中で寄ったからね」
「次はどこに行くのかしら?」
「それは…貂蝉に聞かないと分からないな」
「貂蝉?」
知らない名前に首を傾ける。
「ああ、沛を出た後に仲間になった人だよ」
今思うと貂蝉は何処に向かうつもりなのか聞いていなかった。しかし彼に限って寄り道に何処かに寄るとは思えない。
特別な何かがある目的地なのかもしれない。これは後で詳しく聞くべきな案件になる。
「貂蝉とはどんなお人なのかしら?」
「あとで曹操に聞いてみれば分かるじゃろうて」
「…武則天さんの顔を見ると何かあるのね。その貂蝉って人」
武則天の顔を見て何かを察した陳珪。恐らく陳珪ならば驚きはしないが顔を引き攣るくらいはしそうである。
蘭陵王も秦良玉も驚くかもしれない。この外史の貂蝉と卑弥呼はカルデアにはいない特別な存在であるからだ。
「あ、このお茶美味しい」
お茶を啜る。
陳珪たちも同じくお茶を飲む。もはやちょっとしたお茶会になっている。
最も藤丸立香たちは食事をしに店に入って来た。陳珪たちは秦良玉たちを勧誘しに来たが不可能だと判断した。結局はお茶会になるのであった。
久しぶりにゆっくりとした食事をした。つい前までは揚州で孫呉の命運を賭けた戦いをしていたのだから。
こういう普通で当たり前の食事を平和と感じてしまう。
藤丸立香たちは陳珪たちと普通に食事をするのであった。そして食事が終わればまたお別れだ。
また出会えたのだから次も何処かで出会えるはずだ。縁とはそういうものだ。
「じゃあまたね立香くん」
「うん、またお会いしましょう」
「蘭陵王さん。またどこかでお会いしましょう!!」
「はい。またどこかでお会いしましょう典韋殿」
藤丸立香たちは宿屋へ。陳珪たちは曹操のいる城へ。
どちらも戻ったその後にまさかの出来事が起きている事を知ることになる。
読んでくれてありがとうございました。
次回は1週間後予定。早く更新できたらします。
さて藤丸立香たちが秦良玉たちと合流している頃、華佗たちははっちゃけてます。本人は至って真面目に治療してますがね。その状況に出くわした燕青は全くもってついていけないようです。
次回で漢女道は一旦終了です。そして次々回からついに本当の天の御遣いに近づきます。