Fate/Grand Order 幻想創造大陸 『外史』 三国次元演義 作:ヨツバ
今年の夏も熱いですね。ですがFGOではついに水着イベントが始まりますね!!
石の貯蔵は十分かー!!
物語はついに北郷一刀と藤丸立香が接触。
ついに主人公同士のクロスオーバーですよ。彼らはどのような物語を紡いでいくのか。
231
北郷一刀。
彼は聖フランチェスカ学園に通う普通の少年だ。何の因果か分からないが彼は有名な武将が全て女性という三国志という異世界かはたまた並行世界かに飛ばされてしまったという数奇な運命を辿っている。
更には天から落ちてきたという信じられないところを目撃した劉備たちによって天の御使いなんてものに祀り上げられる事になった。
自分には特別な力がないことを理解している一刀はそんな扱いを拒否するが、 何もできない自分でも街の人々を勇気付けられのであればと思い直し、『天の御遣い』を名乗って劉備たちと行動を共にしたのだ。
結果、彼は劉備たちと共に大陸の平和を目指すために乱世へと足を突っ込んだのである。
劉備たちと一緒に行動するということは彼が知る三国志の歴史を辿っていくということだ。それは戦をするということ。
既に黄巾党の乱を走り抜けたが人と人の殺し合いである戦争を体験した現代を生きる北郷一刀にとっては想像を絶した。だが彼はこの三国志の世界を生きるにあたって乗り越えなければならないのだ。
「桃香様、ご主人様こっちですよ!!」
「急ぐのだ!!」
「ああ、今行く!!」
「ま、待ってよ~」
北郷一刀は今、平原にて相になった劉備と一緒に街を治めていた。街を治めるなんて仕事は学生だった彼にとってしたこともない。
今は分からない事だらけであるが劉備たちと共に努力している。
「少しは街も落ち着いてきたかと思ってたけど変な奴らは否応なし出てくるもんだな」
「黄巾党を倒しても平和は訪れないね…」
黄巾の乱が終わっても大陸に平和は訪れなかった。その事に関しては北郷一刀は分かっていた。
この三国志の歴史を知っている彼にとってまだ苛烈な戦いは起きると予想はしている。今はまだ嵐の前の静けさというのを感じているのだ。
「どんな奴らなんだ。盗賊くずれとかか?」
「いえ、違います……その」
関羽はどこか言いずらそうな顔をしていた。それはまるで「言っても信じてもらえるか?」という感覚の顔である。
「愛紗?」
「んにゃ?」
「……その、女性用の下着のみを履いた筋骨隆々の大男がよく分からない事を言い放って民たちが怖がっていると」
部下から聞いた関羽も信じられなかったのだろう。自分でも何を言っているのか最初は分からなかったほどだ。
「ワンモア」
「わ、わんもあ?」
「もう一回言って」
「下着のみを履いた筋骨隆々の大男が現れたと…」
「………」
北郷一刀はその変質者を見たくないと思ってしまった。見たらきっとトラウマものになってしまうかもしれない。
「帰っていいかな?」
「駄目だよご主人様!!」
「帰らしてください」
「敬語!?」
北郷一刀は何故か分からない貞操の危機を感じてしまった。だからこそ物凄く帰りたくなったのだ。
「そんな報告聞いたら私だって帰りたいんだからね!?」
劉備と関羽も彼と同じように帰りたいようだ。それは関わってはいけないと本能的に察知しているからだ。
「鈴々はどんな奴か見てみたいけどなー」
張飛に関しては怖いもの見たさという感情が大きいようだ。
人間は怖いものや不思議なものを見たい気持ちが強い時があるものだ。だからこそ人間は自ら危険なところに足を踏み込んでしまうものである。
特に好奇心旺盛な張飛にとっては変に興味を持ってしまう報告であったのだ。
「鈴々の教育上よろしくありません」
「むー、鈴々はもう大人なんだぞー!!」
「何言っているんだ。鈴々はまだまだ子供だろう」
見た目も心も子供に見えるが張飛も戦場を駆け抜ける武人で、この姿で多くの敵と殺し合い生き残ってきたのだ。
戦場を駆け抜けている彼女を子供とは言えない。だが関羽や劉備にとって張飛はまだまだ子供のようだ。
「私だって嫌なんですから。それでも民を守らねばなりません」
「それを言われるとなぁ」
「だね。ご主人様」
民を守るためと言われてしまえば劉備も北郷一刀も首を横には振れない。特に劉備の願いでもあり目的は『大陸の皆が笑顔で暮らせる世の中』である。
その願いは誰もが願っていることであり、不可能である程の願いだ。それでも劉備は諦めずに足を歩める。
「でも変質者を相手することが大陸の平和へとつながるんだろうか」
「下着だけの筋骨隆々の大男…だよね」
「ほら、いいから早く行きますよ!!」
「さっさと行くのだー!!」
劉備は大陸の平和を目指しているが今はまだまだ力が無い。そんな彼女を北郷一刀は少しでも支えられるようになろうと心に決めたのだ。
自分が何故、過去の三国志の世界に来たのか。そもそも本当にこの世界は自分の知る歴史の三国志なのか分からない。だがきっと何か理由があるかもしれない。
(俺がこの世界に来た理由は分からない。もしかしたら理由なんて無いかもしれない。でもやるべきことは決めたんだ)
所詮はただの学生の北郷一刀。それでも乱世を生き抜き、劉備たちのために努力する。
自分の覚悟を再度確認し、足の動きを速めた。
「「痛てっ!?」」
そして誰かと接触事故を起こした。
「あ、マスター大丈夫!?」
「ご主人様大丈夫!?」
「「だ、大丈夫」」
今、この世界では聞かない横文字の言葉が聞こえた。
「まさかご主人様と桃香様を狙う刺客か!?」
「そちらこそ誰か!!」
関羽は青龍偃月刀を構え、張飛も蛇矛を構える。相手方も槍を構えていた。
ただぶつかっただけであるがこのご時世だ。関羽の度が過ぎる警戒は分からなくはない。噂では具合が悪そうな人に声をかけたら刺客だったなんて事もあったらしいのだ。
自分の主を守るために細心の注意をするのは悪い事ではない。しかし今回に関しては本当に誤解の可能性もある。
「お兄ちゃんは鈴々が守るのだ!!」
「何じゃこのチビ?」
「お前もチビだろー!!」
張飛はツインテールの紫髪の女の子に対してバチバチモード。やはり張飛は自分の身長がコンプレックスらしい。
「す、すいません。急に角から飛び出してしまって…」
「いや、こっちこそ急いでいたもので…」
お互いにごっつんこして尻餅をついてしまったが特に異常はない。
まず相手から謝罪の言葉を言ってきた。刺客ならば謝罪をするなんてことはない。そもそも刺客ならばこの段階で襲ってきているはずだ。
ならばぶつかった相手は刺客でも何でもない関係無い人たちである。
すぐにでも誤解を解かないと関羽が青龍偃月刀を振るってしまうかもしれない。ごっつんこした部分を擦りながら相手を見た瞬間に北郷一刀は思考が一瞬だけ停止した。
思考が停止した理由がまさに目の前の人物なのだ。この三国志の世界ではまず見ない服装をしており、更に顔つきも自分と似ているような気もする。それは同郷の人間だと思わせるには十分だった。
「「え、もしかして…?」」
ハモッた。相手も同じ考えのようであり、すぐさま北郷一刀は相手に口を開いた。
「な、なあ。あんたもしかして」
「そういうあんたも」
北郷一刀の目に映ったのは藤丸立香であった。
「俺は藤丸立香だ」
「俺は北郷一刀だ。もしかしてあんたもタイムスリップしたのか?」
「タイムスリップしたというか目が覚めたらこの世界にいたというか…」
「俺と同じだ」
どういう経緯か分からないが、藤丸立香も北郷一刀も気が付いたら三国志の世界に転移していたのだ。まさに境遇は同じだ。
「もしかして、ご主人様の知り合い?」
「いや、知り合いってわけじゃないんだけど……同郷?」
「えっ、てことはもしかしてこの人もご主人様と同じ天の国の人なの!?」
この世界の人々が言う天の国とはどのような国を指しているか分からない。天の国と言うのだから神々しい国を想像しているかもしれない。
「うーん。まあ俺と同じってのは確かだと思う」
「じゃあお兄ちゃんと同じ天の御使いなのかー?」
「そういえば噂で2番目の天の御使いが現れたとか聞きましたが…まさか彼が?」
「彼がそうかどうか分からないけど愛紗。一旦、矛を降ろしてくれ。どうやら刺客でも何でもないようだし」
「む、そうですね。此方の誤解のようで失礼した」
「いえ、誤解が解けたのなら此方としても良かったです」
関羽は青龍偃月刀を降ろした。すると同じくトネリコの槍を降ろす秦良玉。それらを見て全員が警戒を解く。
「なあ、詳しく話がしたいんだが良いか?」
「それは勿論。そもそも俺らはあなた方に会いに来たんだ」
藤丸立香と北郷一刀。
本来の外史世界では会合する事のない者同士。彼等の会合がこの外史の物語を本来のルートより変化を促すのだ。
「私も彼等の事は気になりますがまずは不審者の捕縛です」
「そうだよご主人様!!」
「あ、そうだった。ちょっと待っててくれ。今から町で現れた不審者を捕まえに行かないと行けないんだ」
藤丸立香たちは北郷一刀と劉備たちを探していた。しかし北郷一刀たちは町に現れた不審者を捕まえに来ているのだ。
「不審者?」
「ああ、あんたらには関係ないから待っててくれ」
「一応聞くけど不審者の特徴は?」
「信じがたいかもしれないけど女性下着のみを履いた筋骨隆々の大男。変態だ」
その特徴を聞いて藤丸立香たちは全てを察した。
「凄く…知り合いです」
「マジか!?」
232
諸葛孔明はとても微妙というか複雑というかどういう顔をすればよいか分からない顔をしていた。それは貂蝉に巻き込まれて不審者扱いされたというわけではない。
不審者扱いも嫌ではあるが、それよりも彼にとって会いたいようで会いたくなかった人物が目の前にいるからだ。名誉の為に言っておくが諸葛孔明の目の前にいる人物は何も悪くない。
ただの諸葛孔明の自分勝手の感情に過ぎないのだ。
「はあ…ついに出会ってしまったか」
「問題発生?」
「どうしたのん?」
「何でもない…はあ」
現在の諸葛孔明たちは平原の兵士たちに囲まれて攻防を繰り返していた。主に貂蝉と哪吒の2人が平原の兵士たちを千切っては投げ、千切っては投げを繰り返していたのだ。
平原の兵士たちは2人の強さに慄いている。大人数で挑んでいるのに全く勝てないのだ。特に貂蝉の威圧に兵士たちは恐れている。
「うっふん!!」
気持ちは分からなくもない。貂蝉に挑むのにまず勇気と決死の覚悟が必要である。
「それにしても…はあ」
諸葛孔明は平原の兵士たちの後ろに控える2人を見てため息を吐く。本当に今の諸葛孔明は自分勝手の感情でため息を吐いているに過ぎない。
「はわわ。あの人たちとても強いです」
「あわわ。朱里ちゃんこれって援軍を呼んだ方が良いよね?」
「うん。あの2人はとっても強いよ。愛紗さんと鈴々ちゃんを呼んだ方が良いね」
2人の小さな女の子。彼女たちが諸葛孔明をよく分からない複雑な感情を出させている原因だ。正確には2人のうち1人である。
(まだ名前も確認していないがあの子だと分かる。あの子がこの三国志世界の諸葛孔明だ)
何故か分からないが諸葛孔明はこの三国志世界の諸葛孔明を知っている。知っている理由は分からない。
恐らく何処か別の世界線の疑似サーヴァントになった自分自身の記録のせいかもしれない。
それは「諸葛孔明といったらこの人だっけ?」と言われて「それは言われると思った」というくだりをしたような記録があったような気がしたのだ。
「ねえ朱里ちゃん」
「なに雛里ちゃん?」
「なんかあの男の人、朱里ちゃん見て複雑そうな顔してないかな?」
「…ええ、何で?」
その疑問は当然であるが本当にそれは諸葛孔明の自分勝手の感情なので彼女に悪いことは何もない。
「あらあら朱里ちゃんに雛里ちゃん…」
「知り合い?」
「まあね。でもこっちの彼女たちはアタシを知らないでしょうけどねん」
貂蝉は彼女たちを知っているが別の外史での話。この外史では初めて接触したのである。
「戦闘続行?」
「いや、誤解を解かねばならないな」
「そもそも何でアタシたち襲われてるのかしらねぇん?」
「お前の恰好のせいだよ」
見た目とは本当に大事だ。貂蝉は悪い人間ではないが恰好のせいで損をしているのだ。
最も貂蝉は自分の恰好に誇りでも持っていそうだ。
「まずは援軍を呼ぼう」
「待ってくれ!!」
「え?」
ここで諸葛孔明は大きな声で戦いを止める。戦う必要の無い戦いはしても意味は無いのだ。
「こんなになってしまったが私たちは怪しい者ではない」
「「ええ?」」
2人の女の子は貂蝉を見る。
「…気持ちは分かるが怪しい者ではない」
凄く信じられない目をしている。だが彼女たちがそんな目をするのはしょうがない。
「おい貂蝉。次から服を着ろ」
「この姿こそがアタシの完璧な一張羅よん!!」
話が通じない。
「えーっと…」
彼女たちも判断に迷っている。だがここでやっと誤解が解ける時が来たかもしれない。
「おーい!!」
「ご主人様!!」
北郷一刀たちが合流したのだ。
「おーい!!」
同じく藤丸立香たちもである。
233
公孫賛は今の状況に焦っていた。
彼女は時々、劉備の様子を見に平原を訪れていた。そしたら不審者が町の各箇所に現れたという報告を受けたのでついでに手伝いをすると自ら言い出したのだ。だがその不審者が予想外に強すぎるのである。
「な、何だこいつら強すぎるだろ!?」
何故か女性物の下着を履いた筋骨隆々の大男と仮面を着けた剣士は兵士たちを軽く蹴散らしていくほど強い。
はっきり言えば今の戦力では勝てないと判断している。公孫賛は仮面を着けた剣士と剣を交えたが自分よりも格上とすぐに分かった。
自分自身だってそこらの不審者や盗賊程度には負けない強さは持っているが目の前の相手は別物であったのだ。
「まさかこれ程強いなんて。しかもあいつらの後ろにいる奴は…」
更に公孫賛が警戒しているのが相手の後ろに控えている赤い鎧を纏った巨漢だ。まだ何も動いていないが威圧感だけでヤバイ存在だと本能で分かってしまうのだ。
(てか、そもそもあいつら……特に仮面を着けた剣士は兵士たちをあの赤い鎧の巨漢に近づかせないように戦っている気がするな)
仮面を着けた剣士は何故か赤い鎧の巨漢に兵士たちを近づかせないように戦っているのだ。まるで赤い鎧の巨漢を戦わせないようにしているようなのだ。
(あいつを暴れさせたくないってことだよな。正直、私もあいつと戦いたくないぞ…)
威圧感だけでもヤバイ赤い鎧の巨漢。見ているだけで冷や汗がダラダラ垂れてきそうだ。
もう既に応援は呼んでいる。今の人数だけでは勝てないと判断したからだ。
(早く来てくれ…)
その願いが通じたのか公孫賛の元に援軍がやってきた。その人物こそが平原の兵士や、悔しいが自分よりも武がある趙雲である。
「公孫賛殿」
「おお、来たか趙雲。力を貸してくれ。こいつら相当強いぞ!!」
「うむ。知っている。そこの2人は知らんがあの赤い鎧の巨漢は一騎当千の強者だからな」
「え、知ってるって……てか、お前の後ろにいる奴らは?」
援軍に来た趙雲の後ろには知らない顔ぶれは何人もいた。
「知り合いだ」
「こいつらと知り合いなのか!?」
先ほどから戦っていた者たち含め、趙雲たちの後ろにいる者たちも個性的な面々ばかりだ。
「本当に知り合いなのか?」
「知らない面々もいるがな」
234
平原の町にて不審者が現れたという報告だが何とか解決した。
誤解であって誤解では無かったのだ。確かに変質者もとい下着のみの筋骨隆々の大男はいたが悪い人ではなかったというだけである。
そんな事件よりも北郷一刀は更に重要な状況と遭遇したのである。それは自分と同じ境遇の転移者の存在だ。
まずは城へと全員を案内して急遽、緊急会議の始まりである。
「えーっと…まずは自己紹介をした方は良いよね?」
「ああ、そうだな。まずは俺らから。俺は北郷一刀。劉備たちのところで世話になっていて天の御遣いをやっている」
「りゅ、劉備です。この平原の相をやっています」
「私は関雲長だ」
「鈴々は張飛なのだ!!」
「私は幽州の牧の公孫賛だ」
「しょ、諸葛亮です!!」
「ほ、鳳統です!!」
劉備軍の自己紹介。
その面々はまさに三国志で主役級の1国である蜀で活躍する武将や軍師たちだ。全員女性なのはもう驚かない。
だが外史の諸葛孔明と張飛が小さい女の子だとは予想できなかった。やはり偉人や英雄らが実は小さい子だった時の場合は普通に驚く。
「俺は藤丸立香。カルデアっていう組織に所属している者です」
「カルデア?」
「かるであ…そんな州あったっけ?」
北郷一刀と公孫賛は頭にハテナマークを浮かべた。彼等だけでなく諸葛亮や鳳統も頭にハテナマークを浮かべていた。
彼らが知らないのは当たり前である。知っていたら逆に問題だ。
「なあ、カルデアって何だ?」
「人理を継続し保障する機関です」
「そのまんまだぞマスター。…未来の人類社会の存続を世界に保障する保険機関のようなものだ。もっと簡単に言うと人類滅亡を防ぐ組織だな」
人類の未来を見守る組織。そんな大それた事を言われても北郷一刀はピンと来ない。
「魔術と科学を持ってして創られた組織でもあるんだ」
「科学はいいとして…魔術?」
「そういえば言っていいのかな。秘匿にしてるんだっけ…孔明先生」
「状況が状況だからな。それに今回のは稀なケースだ」
今回に関しては外史という三国志を元にした異世界であり、その異世界に藤丸立香と同じかもしれない時代の人間もいたという稀すぎるケースだ。
そもそも今いる異世界に一緒にいるという時点で秘匿も何もないのである。今の北郷一刀は一般人でありながら魔術世界には秘匿である今の状況をまさに体験している者だ。
一部の魔術師ならば今の北郷一刀を羨ましく思うだろう。
「状況が状況だ。全てを説明は出来ないが、説明出来る部分は言うべきだ」
本来ならば本当の事を言うわけにはいかない。だが状況が状況で、貂蝉が言うには北郷一刀はこの外史では特別な存在だ。
特別な存在であるならば語るべき事は話しておくべきである。彼がこの外史でのキーパーソンならばここで関わるべきなのだ。
「ここからは私も説明に加わろう。まず我々はーー」
藤丸立香と諸葛孔明は説明出来る部分は説明し、機密情報部分に関しては言わずに上手く話していった。
「……あの、魔術とか過去の英雄とか信じられないんだけど」
「今の状況」
「オーケー信じた」
確かに普通の一般人ならばカルデアの存在なんて信じられない。だが北郷一刀は今まさに三国志の世界にいる。それこそがカルデアの存在を信じる証拠になるのだ。
「あ、あの…」
「何ですか?」
「気になるのがあるんですけど」
ここで挙手をしたのが劉備だ。
「大陸を混乱に堕とそうとしている方士の于吉って人で、あなた方は于吉を探しているんですよね?」
「ああ。奴を捕まえねばこの大陸は混乱する。それは黄巾党の乱の時よりもな」
「そもそも黄巾の乱の発端が于吉だったんだよね」
黄巾の乱の原因になってしまったのは張三姉妹だ。しかし張三姉妹を黄巾党の頂点に立たせるように仕向けたのは于吉である。
「他にも于吉は様々な所で策を巡らせた。そして我々が食い止めてはいるが本人は今だに捕縛には至っていない状況だ」
説明の中で藤丸立香たちの正体は天の国の人間という事にすることにした。北郷一刀と藤丸立香が同郷ならばそういう事にしていた方が説明が楽だからだ。
一番目の天の御遣いが北郷一刀。二番目の天の御遣いが藤丸立香。
そこに諸葛孔明は天の御遣いの噂と自分たちの目的を混ぜて役割を勝手に作り上げたのだ。
天の御遣いの役割は大陸に平和をもたらす存在だ。それを1番目は表側、2番目は裏側と分けたのである。
1番目は戦争を終わらせて平和にさせる天の御遣いであり、2番目は大陸の混乱を加速させる方士を捕まえる天の御遣いとしたのだ。
「…なら、私は于吉を捕まえるのを手伝いたい」
「桃香?」
「だって于吉って人が大陸を混乱させるほどの方士なんだよね。ならほっとけないよ!!」
劉備の願いは大陸の民が笑顔で暮らせる平和な世界だ。于吉という方士が大陸に混乱を呼ぶというのならば劉備の性格上、無視できない。
彼女の性格から「手伝う」という言葉は北郷一刀や関羽たちは最初から予想出来ていた。そこが彼女の良いと所でもあり、悪いところでもあるのだが。
彼女たちには彼女たちのやるべき事があるはずだが更に藤丸立香たちの面倒事に関わるというのはまさにお人好しというやつである。
「桃香ならそういうと思ったよ」
「あははー。お姉ちゃんはそういうの無視できないからなー」
劉備の考えに関羽たちは反対する様子はない。既に気持ちは一緒のようだ。
「手伝わせて。私たちもそんな人がいるなら無視できない」
(貂蝉の言った通りの人物だな)
諸葛孔明は貂蝉から劉備たちの人物像を聞いていた。特に蜀の頂点である劉備についてはよく聞いた。
平和を愛し、仲間を大切にする優しき徳ある人物であるのは間違いない。そして夢想家であるというのも間違いない。
ただ悪い人間でないことは確かなのだ。
「俺も手伝わせてくれ」
劉備と北郷一刀は真っすぐに真剣に見てくる。ならば藤丸立香も真剣を答えを出さないといけない。
最も言うべき言葉は決まっている。
「うん。よろしくお願いするよ」
がっしりと握手する藤丸立香と北郷一刀であった。
「…ところで後ろの人たちについて聞きたいんだけど」
「ああ、そうだよね。自己紹介するよ」
ここからがいろいろとまた説明がややこしくなる。
「荊軻だ。で、こっちが呂布奉先」
「□□」
「燕青だ。よろしくなぁ」
「儂は李書文だ」
「あたしは玄奘三蔵よ」
「哪吒」
「妾は武則天じゃ」
「諸葛孔明だ」
「蘭陵王です」
「秦良玉と申します」
「拙者は俵藤太だ。よろしく頼む」
やはり人数が多い。更に彼等だけでない。
「で、実は天の国じゃなくて現地で出会った仲間もいるんだ」
「炎蓮だ。訳あって立香たちと一緒に旅してる。てか、おい立香。やっぱてめえ天の御遣いだったんじゃねえか」
「天和でーす。立香くんも天の御遣いだったのー?」
「地和よ。てか立香たちが天の国の人間って今知ったんだけど!?」
「人和です。よろしくお願いします。まさかの事実ね」
確かに彼女たちに藤丸立香たちが天の国の人間とは説明していない。本当は天の国の人間ではないのだが。
これはまた説明が面倒くさいが今はしょうがない。
「そしてこっちが」
「俺は華佗。五斗米道の華佗だ」
「アタシは都の踊り子、貂蝉よん!!」
「ワシは卑弥呼だ。よろしくのう!!」
簡単な自己紹介を終える。
「「「「………」」」」
自己紹介を終えたら劉備陣の何名かがポカーンとしていた。
「なあ藤丸」
「なに?」
「これからたくさん質問してっていいか?」
「どうぞ」
「俺ってこれでも英雄や偉人たちのことは結構知ってるんだ」
「ほう」
北郷一刀はこれでも様々な英雄や偉人を知っている。男性も女性も憧れる英雄や偉人がいるものだ。そこから様々な神話や伝説を調べる事がある。北郷一刀はまさにそういう人間だったのだ。
「荊軻ってもしかして始皇帝暗殺の…」
「正解」
「燕青って水滸伝の…え、あれって確か創作じゃ…え?」
「正解」
「李書文って八極拳の…」
「それも正解。よく知ってるね」
「武則天って中国史上初の女帝じゃ…」
「おおー正解」
「哪吒って中国神話の哪吒太子だったり?」
「イエス」
「玄奘三蔵はあの三蔵法師だよね。有名過ぎる」
「うん。三蔵ちゃんはすぐ分かるよね」
「秦良玉は確か唯一女性の武将だった…」
「正解だ」
「蘭陵王って雅楽の曲目の一つにもなった…」
「正解。もしかして聞いた事ある?」
「俵藤太って日本の武将だよな。何故急に日本?」
「正解。それは俺も分からない」
「呂布奉先…俺ってここで呂布奉先にあった事があるんだけど」
「彼もまさしく正真正銘の呂布奉先です」
「……え、諸葛孔明なのか。え、どう見ても英国人の気が…」
「諸葛孔明です」
北郷一刀はまさかの面々に驚きを隠せない。
「どれも気になるんだけど…特に気になる事をまず聞きたい」
「どうぞ」
「え、諸葛孔明って…え?」
「え、えと、私と同じ名前ですか?」
まずは諸葛孔明同士についてだ。外史の諸葛孔明もカルデアの諸葛孔明が気になっているようだ。
「あー…同じ名前だし呼び方がややこしいよね」
「そうだけどそうじゃない」
北郷一刀は少しはカルデア側の事は説明によって理解した。藤丸立香に仕えている面々はまさに過去の英雄や偉人たち。その正体が英霊ということも少しは理解した。
信じられないが今の状況にいる北郷一刀の立場からして嘘ではない。
「え、何で諸葛孔明が2人も…てか呂布奉先も…え?」
北郷一刀が混乱しているのは何故に諸葛孔明と呂布奉先が2人もいるのかというものと性別も姿も全く違うということだ。
混乱するのも分かるがそれは北郷一刀は過去にタイムスリップしたと思っているからである。この外史が北郷一刀の生きていた時代の過去ではない。三国志を元に創られた世界と認識しなければならないのだ。
藤丸立香と北郷一刀が同じ時代の人間と過程した場合、過去にタイムスリップした北郷一刀が出会った諸葛孔明は本物だ。同じく藤丸立香が出会った諸葛孔明も本物である。この2人が同じでなければおかしいと北郷一刀と思って混乱しているのである。
「こっちの諸葛孔明が女の子ってのも信じられなかったけど…そっちの諸葛孔明は英国人にしか見えないんだけど」
英国人の諸葛孔明なんて普通は偽物と思うだろう。しかしカルデアの諸葛孔明に関しては少し特別なのである。
「それはカルデアの諸葛孔明がちょっと特別なんだ」
「北郷と言ったな。君が私を見て思う疑問は当然だ。しかし私も正真正銘の諸葛孔明だ」
「…嘘を言っているようにはみえないな」
「嘘は言っていないからな。そこの部分に関しては後で詳しく話そう。呂布奉先に関してもな」
2人もいる諸葛孔明や呂布奉先に関してだけでなく、他のカルデアの面々全員を説明していたら、日が暮れる事は確実なのである。
「同じ名前だがよろしく頼む諸葛孔明」
「は、はい。よ、よろしくお願いします」
(……やはり想像通りだったな)
どこかの別の世界で玉藻の前に言われた言葉が記録として蘇る。「はわわ、敵が来ちゃいました。ご主人様」というのが何故か記録によく残っているのだ。
ついため息を吐いてしまった。彼女は何も悪くないがため息を吐いてしまう。
「あの、何でため息を吐くんですか…」
「いや、すまない。此方の問題だ。さて、呼び方だがややこしくならないように決めておこう」
「あ、なら私は諸葛亮で大丈夫ですよ」
「では私は諸葛孔明だな」
呼び方も決まったところでまだ気になる部分パート2がある。
「……貂蝉?」
「貂蝉です」
北郷一刀は筋骨隆々の大男を見て引いた。
「うっふん!!」
更に物理的に二歩引いた。
「嘘だろおおおおお!?」
「気持ちは分かる」
「いや、実は女だったパターンはあるけども、その逆はねえだろ!!」
「しかも筋骨隆々の大男だしね。しかも下着のみってのもね」
北郷一刀はこの世界で初めての驚きをしてしまった。
「あらあら。カワイイわねん一刀ちゃん。まるで可愛いパンダちゃんのよう!!」
「つーかこっちは卑弥呼って…ええ!?」
「ふふん。貂蝉の言った通りなかなか良いオノコではないか!!」
貂蝉と卑弥呼の圧に流石の北郷一刀も押され気味だ。
「こんな人たちだけど良い人たちだよ」
「マジかよ。俺なんか尻を抑えたくなったんだけど」
「それは俺も時々ある」
「危険じゃねーか!!」
この中でも異色を放つ2人。だが本当に異色である存在たちなのだ。
「彼らはある意味特別な存在なんだ。それも説明する…て言ってもそれは彼らから話すと思う」
「特別な存在って…ある意味特別すぎるだろ」
諸葛孔明と貂蝉が特に気になった部分だ。他にも聞きたい事はたくさんあるがまずはここまでである。
「えーっと藤丸さんたちとご主人様たちの天の話が難しくてよく分からなかったんだけど…」
劉備は藤丸立香たちの話がよく分からなかったようだ。確かに最もいろいろとややこしい話ではあった。
「えっと、まとめると藤丸さんたちはご主人様と同じ天の国出身で、天の御遣いで、于吉を捕まえる為にこの大陸に来たってことでいいのかな?」
「そうです」
劉備たちにはカルデアの話は不明点ばかりだ。「何の話をしているのだろう?」という感じなのは間違いない。だがカルデアの目的だけは理解できた。
大陸の平和を求める劉備たちにとってカルデアの目的はある意味同じ道を辿る。ならば一緒に辿った方が良いというものだ。
これから藤丸立香たちは劉備たちの陣営にお世話になる。それは劉備達が本来のルートから外れた険しい物語に足を突っ込むということである。
「よろしくお願いします」
「こちらこそよろしくお願いします」
藤丸立香と北郷一刀と劉備。今回はどのような物語が紡がれるのかはまだ分からない。
読んでくれてありがとうございました。
次回はまた未定です。
次回は今回カルデア側と劉備陣営のキャラの絡みが少なかったので、ソレを書いていこうと思います。
藤丸立香と北郷一刀はあるとして、
劉備と三蔵ちゃん、関羽と秦良玉、諸葛孔明(朱里)と諸葛孔明(エルメロイⅡ)などですね。更に再会した星や出番が少なくなっていた張三姉妹も書いていこうと思います。