Fate/Grand Order 幻想創造大陸 『外史』 三国次元演義   作:ヨツバ

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こんにちは。
日常編その2です。



平原での日常2

237

 

 

藤丸立香は屋根に登るとある人物たちを見かけた。

 

「星に炎蓮さん」

「立香殿ではないか」

「よお立香」

 

屋根の上で趙雲こと星と炎蓮が昼からメンマ片手に酒を飲んでいた。

 

「いい御身分だね」

「はっはっは。なに、これくらいなら誰も文句は言わんさ」

 

これがサボりでなければ確かに文句は誰も言わない。だがサボリであった場合は愛紗から鬼のような説教が飛んでくるはずだ。

最も、星ならばのらりくらりと愛紗の説教から簡単に逃げていきそうではある。そして炎蓮に関してご相伴に預かっているだけだ。

 

「立香殿はどうしたのだ?」

「屋根の上に星が見えたから会いに来た」

「そうか。なら話相手になってくれ。聞きたい事もあるしな」

「いいよ」

「オレも聞きたい事はあるぜ。ほれ飲め」

「飲めません」

 

星とはこの外史に来てから最初に出会った武将だ。短期間ではあるが一緒に行動した仲である。

またいずれ再会を約束したがまさか平原で会うとは少し驚きである。最も劉備の元には趙雲がいるというイメージもあるからもしかしたら平原にいるのではないかという予想もあったのだが。

 

「星は桃香さんたちのとこにいたんだね」

 

ここで別の補足であるが劉備たちと藤丸立香たちは真名を呼び合う仲にはなっている。

 

「うむ。大陸中を旅して今はここにいるのだ。まあ、最初は路銀稼ぎで白蓮殿のところに邪魔しただけなのだがな」

「そう言えば自分が仕えるに足る主を探してるんだっけ?」

「うむ。案外ここは悪くない」

 

星は自分の剣を預けるに値する陣営を探している。彼女ほどの者ならばどこの陣営もすぐに入れてもらえるだろう。だが星は自分の目で確かめて自分で仕える主を探していたいために大陸中を旅していたのだ。

 

「他にも候補とかいた?」

「うむ。やはり曹操のところか孫堅のところだな」

「ほー」

 

流石と言うべきか三国志の中でも主役級の陣営であった。

炎蓮はまさか自分の名前が出たのが少し嬉しいのかニヤニヤしている。

 

「曹操はやはり覇王になり得る程の人物であった。ある意味あそこが一番天下に近い陣営だな」

「確かにあの齢で既に覇者の風格だったな」

「炎蓮殿は曹操に会った事が?」

「まあな。この大陸であれほどの人物はなかなかいないだろうぜ」

 

曹操を見た感想ならば同意する。顔合わせ程度であったが曹操の覇気は大きかった。王様系の英霊たちを前にした時と同じ感覚であったからである。

三国志の歴史を知っているとはいえ、やはり天辺に立つ人物は大きな覇気を発しているのが素人でも分かる。

 

「槍を振るいがいがある陣営だが、ちとあの陣営は百合百合しいのが傷なんだよなぁ。まあ可愛いものや美しいものを愛でるのは悪くないが」

「百合百合しい」

「うむ。百合百合しい」

 

曹操の陣営は詳しくないが少し特殊のようだ。

初めて顔合わせした時は百合百合しい雰囲気はなかったが、いずれ分かる時がくる。

 

「そういえば星は孫堅さん…揚州の方にも行ったんだね」

「うむ。孫堅殿もまた天辺に立つ人物だろう。会った事はないが」

「ないんだ」

「ない」

 

その孫堅ならば真横で一緒に酒を飲んでいるだから複雑なものだ。最も炎蓮も自分の正体を話す気はないようである。

 

「会っては見たかったが、時が悪かった。どうやら大きな戦があったみたいだからな。そして孫堅殿は命を落としたと聞いた」

 

孫呉と黄祖との魑魅魍魎が跋扈した大きな戦だ。そのせいで星は揚州方面には深く足を伸ばせなかったのである。

 

「もうそこまで広まっているんだ」

「早いもんだな」

 

詳しくまでは知らないようだが炎蓮が黄祖との戦いで命を落としたという情報は既に広く流れている。

炎蓮ほどの人物に何かあったら情報が広まるのは当たり前に早い。注目されている人物の情報は広まるのが速いのは過去でも現代でも同じのようだ。

恐らく名のある諸侯たちならば建業の孫堅が死んだという情報を早くも手に入れているに違いない。曹操も孫堅の死の情報は手に入れているだろう。

 

(まあ、生きてるけど)

 

グビグビと元気に酒を飲みながらメンマを齧る炎蓮。

 

「じゃあ、孫堅の娘たちはどうだ?」

 

自分の娘の評価が気になったのか炎蓮は星に聞いた。

 

「孫策殿…彼女もまた天辺を獲るに値する人物でしょうな」

「ほー…あのじゃじゃ馬が」

「だが今の状況が状況でしょう」

 

建業の今の状況とは黄祖との大きな戦いが終わってからだ。黄祖との大きな戦いで大きな痛手を負い、更に袁術の陣営に組み込まれたのである。

そんな状況で天下を獲れるかどうかと聞かれれば普通に考えて無理と誰もが思ってしまう。

 

「そこな」

 

それについては炎蓮も分かっているのか納得した顔をする。

 

「今は袁術に鎖で繋がれているが大人しくしているとは思えない」

「それは袁術には孫策を飼いならせないってことか?」

「炎蓮殿の言う通りだ。袁術は名のある袁家の者であるが孫策をいつまでも鎖で繋げられると思えませんな」

 

今の孫呉は耐え抜く時期だ。いずれ孫呉は力を取り戻してまた天下に目指して動き出すに違いない。

 

「その時が楽しみだぜ」

「ふむ、炎蓮殿はもしかして揚州の出か?」

「おお、そうだぜ。オレは孫策に会った事があるからな。期待してるんだ」

(自分の娘だしね)

 

グビっと酒を飲み干す。

 

「で、話は変わるが。おい立香、てめえやっぱ天の御遣いだったんじゃねえか」

「それな。私も立香が天の御遣いとか聞いてないぞ」

「あー…それね」

 

本当に藤丸立香は天の御遣いではない。ただこの外史での目的を達成するために組み込まれたようなものである。

 

「もう天の御遣いでいいです」

「なに諦めた顔してるんだよ」

 

本当に天の御遣いと呼ばれるのを諦めただけである。

もう藤丸立香は大陸を混乱に招く方士を止める天の御遣いという事になっている。もうそこは否定できない。

この外史を攻略するための都合で自分自身に役割を勝手に当てはめたのだからしょうがない。

 

「まさか立香が天の御遣いとは…では、何でも願いが叶う黄金の盃を探しているのは嘘だったのか?」

「それは本当。この大陸にあるかどうかはまだ確定してないけど」

 

星と最初に出会った時に話した聖杯探索。それに関しては本当である。

この外史にも聖杯がある可能性は捨てきれないのだ。そもそも聖杯の影響によって藤丸立香たちがこの外史という世界に来たかもしれしれない。

 

「何でも願いが叶う黄金の盃ってなんだよ」

 

初耳だったのか炎蓮は聞き返す。それは当然なことで彼女には話していないからである。

 

「実は于吉を止める他に聖杯っていう黄金の盃を探してるんだ。それは別件なんだけど…もしかしたら繋がってるかも」

「信じられないが…信じられないモノはいくつか見てきたしな。例えばてめえとか」

「はははは」

 

炎蓮は藤丸立香たちが役目を終えて一旦消えた光景を見た。そういう普通ではあり得ない光景を見れば今まで信じられなかったものも考え直すことができるものである。

 

「何でも叶うか…どんなものなんだ?」

「基本は盃の形をしたものなんだけど…場合によっては結晶だったりジョッキだったり」

「じょっき?」

「場合によって形は様々かも。でも基本は盃か結晶かな」

 

今まで回収した聖杯は黄金の盃か結晶化されたモノであった。たまに例外としてフランシス・ドレイクから回収した聖杯は何故かジョッキ型であったのだ。

 

「本当に何でも叶うのか?」

「たぶん」

「たぶんって…」

「でも実際に使った人は理想の大切な人を創り出したり、悪竜…邪竜を呼び出したりしたな」

 

第一特異点を思い出す。実際にジル・ド・レェはジャンヌ・オルタを創り出し、ジャンヌ・オルタは邪竜を呼び出したのである。他の特異点も聖杯の影響で驚かせることもあったものだ。

第三特異点では狂った謎の海域になったりと、聖杯の力は時代や世界を変質させるほどである。

 

「理想の人を創り出すって…何だそりゃ」

「そのままの意味だよ。自分にとって理想の伴侶だったり、主だったり部下だったり」

「おいおい、そんなのが可能なのかよ」

「うん」

「信じられぬな」

 

炎蓮も星も同じように信じられないようだ。

 

「俺だって最初は信じられないよ。でも実際に目にしたし」

 

ジャンヌ・オルタやルルハワにチェイテピラミッド姫路城。聖杯によって様々な奇跡が発生しているのだ。信じたくなくても見てしまえば認めるしかないのである。

 

「じゃあこの大陸の天下を獲ると願えば天下取れたりするのか」

「出来ると思う。でもどのように叶えられるかは分からないけどね」

「どのように?」

「願えばもう天下を獲っているのか。それとも天下を獲るために十分な力が手に入るのか。それは願った人しか分からない」

「なるほど」

 

聖杯に願えばどうなるか。それは確かに願った者にしか分からないというものだ。

 

「じゃあ立香はもしその聖杯というのを手に入れたら何を願うんだ?」

「願いかぁ…特に思いつかないな」

「何でも願いが叶うのに思いつかねえのかよ」

「うん」

 

考えれば叶えたい願いはある。もしくは既に願いはあるのだ。

 

(また…会いたい)

 

消えてしまった大切な人たち。その顔を思い出す。

 

「欲が無さすぎだろ」

「前に平和を願ったら欲張りって言われたけどね」

「なんだそりゃ」

 

平和を願うのは誰もが思うことだ。しかしそれが欲張りとは人によっては様々な意味があるのだ。

 

「逆に聞くけど炎蓮さんと星だったら何を願うの。やっぱり天下?」

「そうさなぁ…」

「そうだな…」

 

やはり天下を願うかもしれないがあまり実感が湧かない。

 

「ふむ…天下に関しては自分の足で登りたいものだな」

「ああ。天下は自分自身で掴み取ってこそだからな」

 

彼女らも天下は願いの1つであるが自分の手で手に入れたいようだ。

 

「願うなら大量の美味であるメンマを願うな」

「確かに美味いもんを願ったほうが早いな」

 

人間は欲張りである。必ず叶えたい願いはあるものだ。

ただその願いをどのように叶えるかは人それぞれである。自力では叶えられないならば願望器に願う。自分に力があるのあらば自身で手に入れる。

楽をしたいものならば願望器に願うだろう。最も願望器を手に入れるまでの過程が大変ではある。

自力で願いを叶える者ならば自らの力と誇りで叶えるだろう。それはやはり自分自身に自らの願いを叶える程の力を持っていると自負しているからだ。

過去の英雄や偉人たちの中には自らの力に誇りを持って突き進み大成したした者がいるのだから。

 

「ま、本当にそんなもんが目の前にあったら考えは変わるかもしれんがな」

 

 

238

 

 

北郷一刀は藤丸立香たちに出会ってこの世界について考え直す機会が訪れた。それは藤丸立香の仲間である諸葛孔明と呂布奉先と出会ったからである。

最初に北郷一刀がこの世界に来た時、ここは過去の世界か並行世界かと思っていた。その理由は三国志の時代という事と武将たちが全員女性だからだ。だからこそ実は三国志の武将たちは女性だったという事実に驚いたのである。

しかし、藤丸立香の仲間である諸葛孔明と呂布奉先に出会ってしまえば考えは変わる。北郷一刀のいるこの世界は本当に自分の知る歴史なのかと。

この世界の呂布奉先をチラっと見た事があるが藤丸立香の仲間である呂布奉先の方が彼が知る呂布奉先のイメージにピッタリである。

 

「まずこの世界についてだが、ここは我々の世界の過去ではない。ここは恐らく三国志と似た世界だ」

「三国志と似た世界?」

「ああ。この世界は間違いなく三国志だが我々の知る三国志の歴史ではない」

 

北郷一刀と藤丸立香たちがいる外史という世界は三国志という歴史を元によって生み出された世界だ。

 

「分かりやすく言うならば…そうだな。北郷は三国志のゲームを知っているか?」

「ああ無双系のゲームが有名だし、三国志のゲームなんていくらでも…あ」

「どうやらピンと来たようだな」

 

現代だと三国志を元にしたゲームはいくらでもある。他にも三国志を元にした漫画や小説などもある。その数だけ三国志を元にした世界が複数存在する事になるのだ。

彼らはその三国志を元によって創られた世界にいるようなものである。

 

「俺はその三国志を元にしたような世界にいるって事か。ある意味異世界ってことかな?」

「ああ。実際にこの世界はゲームの世界ではない。もしかしたら本当に異世界かもしれないがな」

 

この外史が藤丸立香や北郷一刀の世界の過去や並行世界でないことは確かである。だがこの外史が彼らの世界のゲームや漫画の世界というわけでもない。

もしかしたら本当に異世界なのかもしれない。その答え合わせは今の段階では分からないのだ。分かるのはこの外史が三国志を元によって生み出された世界であることだ。

 

「藤丸たちに出会わなければ俺はこの世界が本当に過去の世界か並行世界の過去と疑わなかったな」

「それは誰もが北郷の立場になれば思うだろう」

 

北郷一刀は藤丸立香と諸葛孔明の2人からこの世界について聞かされていた。

 

「補足しておくが私のこの話は仮定にすぎないからな。此方の世界の者からしてみれば私たちの方が逆に物語の世界の住人かもしれんのだからな」

「胡蝶の夢みたいなもんか?」

「まあ、そんなところだ」

 

どちらが三国志の世界として本物か。それはその世界に生きる住人からしてみれば平行線の話である。

 

「我々からしてみればこの世界は三国志を元にした世界であり、武将たちも三国志に登場する武将たちを元にした存在なのだろう。しかし、それだけだ。彼女たちは間違いなく三国志の武将であることは間違いない」

「だな。俺も桃香たちは三国志に登場する劉備たちだと信じてるし、本物だよ」

「偽物、本物なんてない。桃香さんや愛紗さんたちは劉備で関羽だと俺も思ってる」

 

藤丸立香も桃香たちが三国志の劉備たちであることは間違いないと思っている。世界が違えど桃香は劉備で愛紗は関羽で鈴々は張飛なのだ。

 

「で、ちょっと気になるのがあんたなんだけど」

「私か?」

 

北郷一刀はカルデアの諸葛孔明を見る。

 

「あんたが俺らの世界の諸葛孔明ってのが信じられないんだけど…だってスーツ着て何処からどう見ても現代人じゃん。てか英国人じゃん」

「そこのツッコミは分かる。では孔明先生説明を!!」

「まあ、自分自身の事だからな…私は特殊なケースでね。疑似サーヴァントなんだ」

「疑似サーヴァント?」

 

諸葛孔明という英霊が魔術師ロード・エルメロイⅡ世の肉体を依り代にすることで疑似サーヴァントとして召喚された存在だ。

簡単に言うと英雄や偉人が他の人間の身体に憑いたようなものである。

 

「ってことは、あんたは俺や藤丸と同じ現代人だけどその身体に諸葛孔明が憑いているってことなのか?」

「ああ。だが諸葛孔明の人格は表に出てこない。私の場合は諸葛孔明の力をそのまま貸してもらったようなものさ」

「へ、へー。でも何で人格が表に出てこないんだ。1人より2人の方がいいじゃん」

「諸葛孔明は合理主義の怪物だ。自分の計略を十全に使える者がいるならば自分自身が活躍する必要はないとさ」

「へー…」

 

ここで北郷一刀は気付く。諸葛孔明が「自分の計略を十全に使える者がいるならば自分自身が活躍する必要はない」と言うのならば目の前にいる諸葛孔明の依り代になった人間は諸葛孔明と同等の軍師としてのレベルがあるということである。

 

(…天才ってことか!!)

 

本人は自分なんか天才でも何でもない凡人だと言うが、英霊の諸葛孔明に選ばれたという事だけでも十分すぎる。

 

「なるほど。今ので納得がいったよ」

「理解が早くて助かる」

 

今まで考えもしなかったこの世界。藤丸立香たちの出会いによって他の外史にいる北郷一刀とは別の考えを持つようになった北郷一刀。

この出会いだけでもこの外史もまた特別な外史となっていく。

 

「しっかし話を聞くと俺らの世界の諸葛孔明ってそんなに合理主義なのか」

「ああ。先ほど言ったが合理主義の化け物だ。疑似サーヴァントになる時に会話したが…はっきり言って人間と話している気がしなかったぞ」

「どんだけなんだ。俺らの世界の諸葛孔明…」

 

とても自分の世界の諸葛孔明が気になる北郷一刀であった。

 

「その点、この世界の諸葛孔明。朱里ちゃんは全然違うね」

「この世界の諸葛孔明。はわわ軍師……はぁ」

「何だって?」

 

藤丸立香の言う通り外史の諸葛孔明こと朱里は今話された諸葛孔明のイメージとは全く違う。天才であることは誰もが認めているが、まだ幼く愛らしい少女であるからだ。

 

「正確には違うが…別の自分を見るというのは不思議な感覚であるよ」

「まあ、別の自分が愛らしい少女ってのは妙な感覚だよね」

「そうだろうな。てか、あんたは朱里のこと知ってたのか。そんな風に感じたんだけど」

「初対面だ」

 

間違いなく初対面のはずなのだが何故か知っているような気がしたのだ。

 

「あ、ご主人様。それに藤丸さんに……こ、孔明さん」

 

噂をすれば何とやら。

件の諸葛孔明こと朱里がトコトコと歩いてきた。

 

「やはり私の名前は呼び辛いか?」

「い、いいえ!!」

「まあ、自分と同じ名前を呼ぶのっては不思議な感覚だしな」

 

自分と同じ名前を呼ぶと言うのは確かに不思議な感覚だ。

 

「そのうち慣れるよ。実際にカルデアでも同じ名前の英霊…人が多くて9人。いや12人か?」

「多すぎだろ」

 

全員アルトリア・ペンドラゴンである。特別枠として謎のヒロインXとかだ。

 

「似たような顔の人は本人たちを含めると確か約27人います。もっといたかな?」

「だから何だそりゃ!?」

「まだ増える可能性はあります」

「増えるの!?」

 

主にアルトリア顔の人たちである。

 

「私は気にしない。慣れてくれ朱里」

「は、はい。こ、孔明さん!!」

 

前に諸葛亮と諸葛孔明という名前で分けたが真名を預からせてしまえば問題なさそうである。

 

「ところでどうしたんだ?」

「実は孔明さんとお話がしたくて…」

「私とか?」

「は、はい。実は星さんから孔明さんはわたしと同じで軍師と聞いたので…同じ軍師として話してみたくて」

 

軍師として他の軍師と話がしてみたいという現れ。軍師を目指していた朱里にとって身近に軍師がいなかった。だからこそ他の軍師に出会えば相手がどんな考えや策を持っているか気になるのだ。

あわよくば他の軍師の考えを参考にし、知識を吸収しようと思っている。軍師とは新しい知識があればあるほど新たな策を作り出せるものなのだ。

 

「諸葛孔明と諸葛孔明が話し合い」

「言ってて混乱しそうになるな」

 

外史の諸葛孔明である朱里とカルデアの諸葛孔明は別人であるが三国志の諸葛孔明としてはどちらも本物である。

ある意味本物同士が策などについて話し合うというのはなんとも不思議な光景である。

 

「……まあ、良かろう。最も私の今までの経験が朱里の力になるかは分からんがな」

「い、いえ。話を聞くと孔明さんの策はどれも効率的で良かったと星さんが言っていました!!」

 

前に短期間だけ旅をしていた星とは諸葛孔明の策を見せたことがあった。その情報がそのまま朱里に渡ったのだ。

 

(いや、話す必要あるのだろうか?)

 

どちらも諸葛孔明であるならば策に関していえば朱里自身が最終的に到達する可能性がある。

外史の諸葛孔明もカルデアの諸葛孔明も本物。性格や信念は違えど作り出される策は歴史とほぼ同じになるのだ。

この世界は三国志を元にした世界だ。ならば外史の諸葛孔明もカルデアの諸葛孔明が作り出していった策を歴史通りに同じように自分で作り出すはずである。

 

(この外史の彼女はまだ未熟であるがいずれ私を依り代とした諸葛孔明と同じように様々な策で活躍させるのだろうな)

「あ、あと雛里ちゃんも一緒に…」

「構わないがその彼女は?」

「雛里ちゃんはちょっと買い物に行ってます。たぶんすぐに帰ってくると思いますので」

「なるほどな」

 

恐らく新しい兵法書でも買いに行ったのだろうと予測する。本当に兵法書かどうかは分からないが。

 

「で、では…」

 

ドサリと兵法書を出した朱里。

 

「その大量の兵法書は何処から出した」

 

諸葛孔明は朱里と兵法書を見ながら軍師対談すると分かった事がある。それは朱里がやはり才能ある軍師であることだ。

彼女はとても呑み込みが早く知識を吸収している。最も諸葛孔明同士であるからある意味自分自身で考えた策ようなもので、すぐに理解できるというものかもしれない。

 

(彼女も諸葛孔明なのだから当然なのだがな)

 

まだ幼く未熟であるがいずれ化ける片鱗は垣間見えたのだ。

 

「ではこういう場合はこうでしょうか?」

「そうだな。その場合はその戦術で良いだろう。だがもし敵がこのように攻めてきたら?」

「わたしならこう攻め直します」

「私も同じ考えだ。流石だ」

「さ、流石だなんて…はわわ」

 

諸葛孔明同士の軍師対談。ある意味レアな光景であり、その様子を見る藤丸立香と北郷一刀は空気になっていた。

彼らは静かに小さく「俺たち空気」と呟いた。

 

「それにしてもこ、孔明さんは話が上手いというか教えるのが上手いですね。もしかして天の国では先生だったりしてたんですか?」

「まあ、そうだな」

「そ、そうなんですね!!」

「ああ。生徒たちはどいつもこいつも癖のある奴らばかりであったがな」

 

諸葛孔明は教え子の中でも問題児を思い浮かべるとため息を吐いた。

 

「ど、どうしました?」

「いや、問題児を思い出しただけだ」

「も、問題児ですか…」

「ああ。問題児のくせに才能だけはどこの奴らよりも上だった」

 

天才すぎた人間というやつである。どの国や地域にも時たまに天才より才能のある人間が生まれるものだ。

 

「天才すぎたって…どんな人なんでしょう?」

「…そうだな。鈴々が天然のまま物凄く頭が良くなった人物だと思えばいい」

「な、何となく分かりました」

「更に鈴々より自由奔放で大雑把な奴だ。そのくせまるで直感だけでどんな問題も解いてみせるからな…これだから天才は」

 

その教え子が物凄く気になるのであった。それは空気になって聞いていた北郷一刀も藤丸立香もである。

 

「き、気になりますね」

「もし仮にここに居て、話をしても何にも知識にならないからな」

「な、何でです?」

「アホで天才すぎるからだ」

「よく意味が分かりません…」

 

閑話休題。

 

「それにしても勉強になりました。孔明さんは凄い軍師です」

「いや、私なんて」

「謙遜がすぎますよ」

「本当だ。私なんかよりも朱里の方が才能がある。いずれ私より上を行くだろう」

 

諸葛孔明同士ならば同等だ。しかし朱里とロード・エルメロイ2世と比較した場合だと軍師の才能は朱里の方が上である。

 

(はあ、それにしてもいつの間にか私がこの世界の諸葛孔明に勉強を見てやるとはな…変な感覚だ)

 

諸葛孔明が諸葛孔明を育てる。どんな状況だろうと心の中でツッコミを入れたくなるのであった。

 

(それにしてもまだ慣れんな)

 

諸葛孔明はロリっ子の朱里を見てため息を吐きそうになるのを我慢する。今だになれない別世界の自分。

こればかりは何度も言うが朱里は悪くない。カルデアの諸葛孔明の勝手な感情の問題である。

 

(そもそも何で私は朱里に対して複雑な感情をしてるのだろうか)

 

それは別の世界線の自分自身に何かあったという事なのかもしれないだけである。それについては何故か玉藻の前を見ると記録として思い出せそうになるのだが、また別の話である。

 

「そう言えば雛里ちゃんは?」

 

ここで藤丸立香がポツリと呟く。

鳳統こと雛里が買い物からなかなか帰ってこないのだ。

 

「確かに遅いです。何かあったのでしょうか?」

 

大切な友人の帰りが遅い事に心配になる朱里。

 

「…迷子じゃね?」

「「「………」」」

 

皆の心が1つになった。

 

「俺探してくる!!」

「では、ご主人様。ついでに警邏をお願いしてもよろしいでしょうかー!!」

 

正しくは警邏の警邏。朱里と雛里の献策により街の治安改善には国を挙げて取り組まれており、自警団を設けられているのだ。

その視察ついでに迷子になっているであろう雛里も探すのである。

 

「任されたー!!」

 

北郷一刀は雛里を回収しに行くのであった。

 

「あわわ…」

「見つけたー!!」

 

本当に迷子になっていた雛里であった。

 

 

239

 

 

「うっふぅぅぅぅぅん!!」

「いきなり、うわああああああああ!?」

 

北郷一刀はいきなり貂蝉が出てきたので悲鳴を挙げてしまった。

 

「平気か北郷?」

「ぎゃ、逆に何で平気なんだよ藤丸」

「慣れたから」

 

藤丸立香は既に貂蝉たちと旅をしているのだから慣れたのである。北郷一刀もいずれ慣れることになる。

 

「うふふ。可愛いわねぇん一刀ちゃん!!」

「うう…何だこの威圧感は」

 

絶世の美女だと言われている貂蝉が筋骨隆々の大男という事実だけで驚きだが、謎の熱視線を送られて背筋も凍りそうである。

無意識に何故か両手で自分の尻を抑えてしまう。

 

「貞操の危機!?」

「同じく!!」

 

こればかりは2人とも同じ思いだ。

 

「うふふん。お尻なんか抑えちゃってえ…大丈夫よん。一刀ちゃんと立香ちゃんならアタシの初めてを」

「いらん!!」

「もう、恥ずかしがっちゃってぇ!!」

 

本気なのか冗談なのか分からないが発言は気をつけた方がよいのは確かそうである。

 

(それにしてもやっと出会えたわご主人様)

 

貂蝉が言う「ご主人様」とは北郷一刀のことだ。最初の外史と言うべき世界で貂蝉は北郷一刀に仕えていたのだ。正確には彼のところにいつの間にか上がり込んだという方が正しい。

最初の外史というべき世界で貂蝉は北郷一刀と共に敵対勢力と戦ったのだ。その結果、外史は滅んだが新たな道への未来は手に入れたのである。

 

(この外史のご主人様はアタシの事を知らない。それは悲しいけどしょうがないわよねぇ)

 

全ての並行世界の自分自身の記憶を引き継ぐ、もしくは視る事ができるような能力がなければ北郷一刀は貂蝉の事なんて分からない。

北郷一刀が貂蝉を分からないというのはどうしようもなく仕方がないことなのである。だが貂蝉は辛くなんてない。

それは外史の管理者として、恋する漢女として強いからである。そうでなければ貂蝉は外史の管理者なんてやっていられない。

 

(ご主人様はまだまだこれからね)

 

北郷一刀の事を知っている貂蝉は彼の活躍と強さも知っている。この外史の一刀はまだこれからという発展途上レベルだ。

 

(こればかりはまだ経験が足らないわねえん。そればかりはしょうがないけど。でもぉ、立香ちゃんとの出会いがご主人様に良い刺激を与えてくれるでしょうね)

 

壮大な旅路を走り抜けた藤丸立香とこれから大陸の戦乱を走り抜ける運命にある北郷一刀。この2人が一緒にいるのならば互いに何かの刺激を与えあう関係になること願う貂蝉であった。

藤丸立香との出会いは北郷一刀に刺激を与え、この外史の流れも変化を与える。三国志の歴史通りに進むことは間違いないが何かしら良い方向に過程が進むはずである。

 

(良い方向に進むのは良いんだけど…それは難しいでしょうねん。なんせこの外史には于吉ちゃんが何か企んでるし)

 

一番の懸念が于吉の存在だ。今のところ藤丸立香たちと于吉の策を全て破っているがまだ于吉はいくつも策を張り巡らしている可能性がある。

そして気になる点があり、それは于吉に仲間がいることである。

 

(左慈ちゃん…まだ姿を現してないのよねえ)

 

更に懸念なのが于吉の仲間である左慈という存在だ。彼もまた于吉と同じように貂蝉と卑弥呼に敵対している。

左慈と于吉は最初の外史で戦った。戦いには決着がつき、もう二度と外史に手を出させないようにしたがもうそれは瓦解した。

于吉はこの外史で様々な策略で乱していったのだ。特に洛陽では張譲を悪龍にし、揚州では炎蓮を鬼神にしたりしたのだから。

特に揚州では今までの中でも酷かったのだ。まさか過去に飛ばして解決させないといけない程であったのだからだ。

 

(いずれ左慈ちゃんも現れるかもしれないわね。気を付けないとねえ)

 

左慈は武術の熟練者であり道術の使い手だ。于吉と違って好戦的である。

戦闘面では于吉よりも上で、外史にいる戦闘に特化した武将たちとも引けを取らない。

 

(恐らく英霊とも戦えるでしょうね。実際に于吉ちゃんは戦えたらしいし。なら于吉ちゃんよりも戦闘面が上な左慈ちゃんなら…これは気を付けないと)

 

更に于吉も左慈も貂蝉の知らない力を使ってくる可能性がある。実際に于吉には貂蝉の知らない力を使っていた。

 

(今回ばかりは何か違うようねん)

 

漢女の勘が訴えてくる。この外史では今までに無いほどの何か大きな戦いが起きそうなのだと。

 

「どうしたの貂蝉?」

「んーん。何でもないわよん立香ちゃん」

「変なこと考えてないよな?」

「んま、酷いわ一刀ちゃん。アタシは2人を肉食植物になって愛でたいくらいなのにぃ!!」

「どういう意味だそりゃ!?」

 

もうすぐあの戦いが始まる。それまでは英気を養うことしかできない。

 

(そろそろよねえ……反董卓連合)




読んでくれてありがとうございました。
次回は2週間後予定。もし早く更新できたらします。



孔明同士の話はまたいずれ。今度は雛里も加えて物語を展開させたいです。
星との日常編は…今度はやはり華蝶仮面を展開させたいなあ。
次回で日常編は終了です。次々回からはついに反董卓連合編に入ります!!

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