Fate/Grand Order 幻想創造大陸 『外史』 三国次元演義   作:ヨツバ

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こんにちは。
水着イベント完走しました!!
でも結局マーリンはお迎え出来なかったです。今度のPUはいつになるやら…

さて、平原での日常編も今回で区切ります。
まだカルデア組と恋姫組を組み合わせていいないキャラがいますが、また今度ですね。


平原での日常3

240

 

「やるな秦良玉殿!!」

「愛紗殿もやりますね…いえ、槍をかけたわけじゃないですよ!!」

「う、うむ?」

 

修練場では関羽こと愛紗と秦良玉が稽古という名の試合を行っていたのである。

 

「最初に相対した時に感じていたが…やはり強い!!」

「それは私も感じていました!!」

 

ぶつかり合い、そのままお互いに後退した。

 

「ふー…ここまでにしようか秦良玉殿」

「ですね。休憩にしましょう」

 

乾いた喉に水を流し込む。

 

(世界が違えど流石は関雲長ですね)

 

秦良玉は愛紗と鍛錬して分かったのが関羽という名に恥じぬ強さを見せてもらったからだ。世界は違えど関羽の武力に驚きである。

力強く青龍偃月刀を振るい、敵をなぎ倒す姿が目に浮かぶものである。

 

「それにしてもお強いですね秦良玉殿。繰り出される一撃一撃は洗練されている。特に高く跳んで上からの一撃は驚いたぞ」

 

秦良玉の動きに無駄は無く槍捌きも鋭い。そう思えば大胆に一撃を決めてくる時もあるのだ。

 

「それなら愛紗殿は受け止めて反撃したではないですか」

「いえ、あれはギリギリでしたよ」

 

休憩がてらお互いの反省点や良かったところ褒め合う2人。愛紗と秦良玉はどうやら気が合う仲のようである。

 

「もっと強くならねばな。秦良玉殿、よければこれからも稽古に付き合ってくれないだろうか?」

「構いませんよ。私なんかでよければいくらでも稽古に付き合います」

「感謝する秦良玉殿。私はもっと強くならなくてはならないからな。あの呂布殿よりも」

 

愛紗が思い出す官軍にいた呂布奉先。あの強さを見てしまえば自分などまだまだと思ってしまう。

 

「何故そこまで強さを求めるのですか?」

「それは桃香様とご主人様をお守りするためです。そして桃香様の掲げる目的を達成するためでもありますね」

 

愛紗は桃香の人柄と徳に惹かれて忠誠を誓い、姉妹の契りを交わした。その姉妹の契りに偽りも後悔も無い。

一緒に大陸の平和を目指すと鈴々とも一緒に掲げたのだ。それは茨の道であるが本気で目指している。

 

「大陸の平和ですか」

「ああ、この大陸は荒れている。その結果が黄巾の乱だからな」

「賊は許せませんよね!!」

「あ、ああ…秦良玉殿?」

 

急に賊に対しては反応する秦良玉に少しびっくりした愛紗。

それは彼女が賊には生涯を通じて悩まされたためだからだ。思い出すだけでも地団駄を踏むくらい嫌いなのである。

 

「桃香様はこの大陸に憂いたからこそ心が優しいのに戦いに身を投じたのだ。ならば私がお守りせねばならない」

「なるほど。愛紗殿は桃香殿の事を大切に思っているのですね」

 

大切な人のために強くなる。その動機に何も不純は無い。

愛紗は大切な人たちのためにより強くなる。

 

「当たり前だ。あの人ほどの人格者はいないだろう」

 

とても高い忠誠が感じられる。そこまで忠誠を与えられている桃香の徳が大きいということだ。

愛紗と桃香の間にある絆はとても固いのである。

 

「……ところで話が変わるのだが良いだろうか?」

「はい。何ですか愛紗殿?」

「秦良玉殿はその…藤丸殿をどう思っているのだ?」

「マスター…我が主ですか。それはもちろん大切な主です。忠義をこれほど尽くしたいと思う程の相手ですよ。この私の骨一本、肉一切れ、全てをお捧げいたしています」

 

藤丸立香と秦良玉の間にある絆は愛紗と桃香の絆にも負けないくらいの硬さだ。その結果が今、彼女は恥ずかしげも無く言ったセリフに込められている。

戦闘ではとても頼りにしており、彼女の性格上すぐに藤丸立香と信頼し合える仲間となっている。絆レベルが上がるにつれ忠誠心と彼女の思いのゲージが上限を軽く超えるほどだ。

 

「なるほど……その、先ほど全てを捧げていると言ったが」

「あはは…言い過ぎましたかね。お恥ずかしい」

「全てということは秦良玉殿は藤丸殿に…その、奉仕…伽とか…したり、寵愛を受けたりしてるのか?」

「え?」

「その、秦良玉殿は藤丸殿とそういう関係なのかと」

「ええ!?」

 

いきなりの発言で真っ赤になる秦良玉。まさか愛紗からマスターである藤丸立香との関係を聞かれるとは思わなかったのだ。しかも肉体関係まであるのかと言われてしまえば予想外すぎる。

 

「なななっ!?」

「違うのか?」

 

秦良玉の発言からだとそういう風に思ってしまうのは今の愛紗の気持ち的にも原因がある。最も秦良玉と藤丸立香の関係や発言を傍から見ると確かにそう思ってしまう人がいてもおかしくないかもしれない。

 

「その、いきなり何ですか愛紗殿!?」

「いや、その…藤丸殿はご主人様と似ている部分があるから秦良玉はどのように藤丸殿と仲を深めたのかと」

 

藤丸立香と北郷一刀が似ているというのは誰もが感じている事だ。全てが似ていると言うわけでは無いが優しさや能天気さ、ここぞと言う所での覚悟の決め方は似ている。

そして本人たちは意識をしていないかもしれないが、たらしの才能も似ているのだ。そこは愛紗や秦良玉も苦笑いである。

愛紗は北郷一刀の狙っていないのに数々の女性たちをたらし込んでいるのにどこか心の奥でモヤモヤしているのだ。その気持ちは分かっているが認めようとしていない。

そんな中で藤丸立香たちに出会った。彼は己の主と似ており、秦良玉たちや他の女性たちととても仲が良い。様子を見るに藤丸立香を主と認めている彼女たちはどこか好意的な雰囲気を感じたのだ。

中でも秦良玉や武則天は藤丸立香に対する想いは抜きんでているような気がするのである。

 

「ご主人様と同じ藤丸殿からどのように寵愛を受けているのかふと気になったので」

「ふと!?」

 

ふと、で聞かれるような話ではないと思ってしまう。先ほどまで己を磨く鍛錬の話をしていたのに急に己の主の寵愛云々の話になっているのだ。

秦良玉が混乱しそうになるのは分からなくもない。もしも清姫や静謐のハサンなら嬉々としてある事無い事を話す可能性があるが。

 

「本当にいきなり何ですか愛紗殿……ん?」

 

ここで秦良玉は気になった事がある。それは先ほどから愛紗が藤丸立香と北郷一刀が似ていると言っていることだ。

2人が似ているのは秦良玉も思っている。しかし正確に気になったのは似ているという部分ではなく、北郷一刀に似ている藤丸立香と秦良玉がどのように親密になったかを遠回りに聞いてくることだ。

まるで異性とどのように親密になったかを聞いてくるようである。

 

「愛紗殿もしや北郷殿のことを…」

「わーわーわー!?」

 

いきなり幼稚になったように喚いた愛紗。秦良玉が思った事が大当たりのようである。

 

「なるほど、そういうことでしたか」

 

愛紗は北郷一刀に淡い恋心を抱いている。

彼女はいつからか北郷一刀の事が気になりだしたのだ。それは彼の人柄や優しさに触れあったからである。しかし、彼女はそういう方面はからっきしだ。どういう風に、何をどうしたらいいのかも分からない。だからと言って誰かに相談はしにくいのだ。

そもそも相談できるような人物はいないに等しい。何せほとんどの仲間が北郷一刀に対して想っているからだ。

朱里や雛里たちもであり、更には鈴々もである。そして自分の義姉である桃香でさえも北郷一刀に想いを抱いているのだ。そんな彼女たちに相談が出来るはずもない。

そんな中でカルデアを名乗る藤丸立香に出会ったのだ。その中でも秦良玉とは妙に馬が合う。それは秦良玉の人柄によるものだろう。

秦良玉は上からも下からも慕われるタイプだ。真面目で親しみやすい彼女に愛紗もどこか心を許している。だからつい自分の心の奥に閉まっている想いを話してしまったのだ。

 

「愛紗殿は北郷殿の事が好きなのですね」

「うう…そんな堂々と言わないでくれ」

 

愛紗の北郷一刀に対する想いは本物だ。しかしその想いを他の誰かに口にされるのは何処か恥ずかしいと思っているのである。

秦良玉に遠回しに口にしといてなんだが、こればかりは恋愛に奥手な女性の我儘みたいなものだ。

 

「そういう相談も乗りますよ。最も私もあまりそちらの方面は得意とは言えませんが」

「……その頼む」

「はい」

「で、秦良玉殿は藤丸とはどのような関係なのだろうか。そもそもどこまで…」

「ふえ!?」

 

秦良玉も藤丸立香との関係について話を振られると少しタジタジになる。普通ならば主と従者の固い絆が結ばれた関係なのだが、そこに恋愛要素が含まれると考えは変わる。

それはバレンタインイベントでも少しは露見されたものだ。なにせマタ・ハリから告白を応援されたり、藤丸立香を押し倒すのではないかと予想されたからだ。

マタ・ハリにそう思われていたということは秦良玉が藤丸立香に対して少なからず想いを抱いていると見られているということだ。第三者からそう見られるほど秦良玉は藤丸立香には絆レベルが上がるにつれて想いが募っているのかもしれない。

本人は「固い理性があるから大丈夫、たぶん」と言っている。だがそう言っている時点で少なからず対して彼に対して想っていることが分かる。何故なら藤丸立香に対して何も想っていないのならば「たぶん」なんて予防線は張らないからだ。

 

「わ、私は主と清く固い絆で結ばれている関係です。劣情は抱いていません……たぶん」

「たぶん?」

「はい。たぶん!!」

 

これから愛紗と秦良玉は自分の主に対する想いの物語が始まる。どのような結果になるかは誰も分からない。

そんな中で彼女たちを見て面白がる者が1人。

 

「ふむ…なかなか面白そうだ」

 

星はメンマをつまみながら面白そうなものを見つけた顔をするのであった。

 

 

241

 

 

意外な出会いがあればまさかの再会もあるものである。

北郷一刀は藤丸立香たちの中で久しい顔がいることに最初はまさかと思ってしまったのだ。

 

「無事だったんだな」

「まあね」

 

まさかの再会とは天和たちのことである。北郷一刀たちは天和たちとは顔見知りなのである。

いつ出会ったかと聞かれれば黄巾の乱の時だ。

青州で桃香たちが黄巾党たちと戦っていた時に天和たちは旅芸人として紛れ込んでいたのである。彼女たちは青州を落としたくて紛れ込んでいたのではなく、黄巾党から逃げていただけなのだが黄巾党の者たちは張三姉妹が青州の奴らに捕まったと勘違いして攻めていたのである。

青州での黄巾党の戦いは桃香たちの勝利に終わった。この時すでに北郷一刀と朱里は天和たちが黄巾党の首領と感づいていたのだ。

黄巾党との決戦時に実は北郷一刀は彼女たちの正体に気づいていながらも見逃した過去を持っている。彼女たちとは短い期間であったが青州で感じた人柄から今の朝廷を倒すなんて考えが無いことは分かっていた。

張三姉妹はただ暴走してしまった黄巾党たちに巻き込まれた旅芸人に過ぎなかったのである。

見逃してもらった彼女たちのその後は藤丸立香に捕まって今に至るということである。

 

「なあ藤丸。もしかして彼女たちの正体を知っているのか?」

「知っていたらどうする?」

「特に何も。もう終わったことだしな」

「そっか」

 

彼女たちの正体を分かっていながら一緒に行動している。ならば北郷一刀はもう何も言わない。

何度も言うがもう終わったことなのだ。彼女たちについて掘り返す必要は無いのだ。

 

「ところでそろそろちぃたちの活動も解禁していいわよね?」

「いいんじゃないかな」

 

彼女たちはこれでも元黄巾党の首領だ。死んだことになっているとはいえ目立たないように彼女たちの歌の活動は控えていたのだ。だが黄巾の乱から大分時間も経過した。

そろそろ彼女たちが歌の活動を再開しても良い頃合なのだ。

 

「ならお姉ちゃん早速歌いたーい!!」

「ちぃも。観客いっぱいの前で歌いたいわ!!」

 

という彼女たちの要望があった。

 

「ねえねえまだ着かないの?」

「まったく、天和姉さんは少し浮かれ過ぎよ?」

「ちぃ姉さんも浮かれていると思う」

「期待はしてるけどね~。やっぱ自分たち専用の舞台が出来るなんて聞いたら浮かれない方が嘘でしょ」

 

3人にせっつかれ彼女たちを大々的に売り込むための舞台と事務所を準備することになったのである。

それがようやく完成したため、今まさに連れて行っている途中である。最初は愛紗に「そんなことをしている暇はありません!!」なんて説教されたが何とか説得した。

そもそも桃香や鈴々も天和たちの歌を聞きたいようだったので彼女たちの説得も一役買っていたのだ。

 

「どんなのかな。楽しみだね~」

「広さとか設備とかどんななのかな。お城の半分くらいの広さは欲しいわね」

「おいおい無茶言わないでくれよ。そんなの無理に決まっているだろう」

 

平原で城の半分くらいの広さの舞台を作るのは不可能だ。流石にそれは桃香でも首を縦に振る事はできない。

 

「そうなの?」

「そうだ」

 

天和は不思議そうに首を傾けで見つめてくる。

その仕草は可愛いがもう少し思慮ってものを巡らせてほしいものである。

 

「おっと、着いたぞ」

 

北郷一刀に案内され到着した舞台兼事務所。

 

「……」

「……」

「…ふーん」

 

三者三葉の反応だ。

 

「これが私たちの舞台?」

「兼事務所?」

「まあ、そういうことになる」

「小さな小屋だね」

 

はっきりと言った藤丸立香。正直に言ってしまえば北郷一刀も見世物小屋という方がすっきりときてしまう作りであると思っている。

彼女たちが呆れるのは仕方ないがこればかりは北郷一刀も覚悟をしていた。

それには理由もある。今は戦乱の世であるから治安の良い土地の方が安全に暮らせる。ならば安全を求めて引っ越してくる人が増えると、その分使う土地も増えて自然と用立て出来る土地が減るという事である。

 

「えーやだやだ、もっとおっきいのがいい!!」

「こんなの舞台なんて言わないわよ!!」

「もっと跳んだり跳ねたり走り回ったりできる広さいいのー!!」

 

我儘連発の天和と地和。彼女たちの気持ちも分からなくも無いが無理を通す事は出来ない。

 

「あたしたち3人を舐めてるわけ。こんなところで歌わせようなんて所詮あんたの期待度もその程度ってことね!!」

「俺だって本当はもっと大きな小屋を用意したかったさ。でも今はこれが精一杯なんだよ」

 

今の平原事情では大きな舞台を用意するのは不可能。そもそも小さくとも事務所と舞台を用意しただけでも頑張った方だ。

 

「やーだー。こんな狭いとこで歌えないー!!」

「ちぃも天和姉さんと同意よ。こんなところで舞台に上がるなんて恥をかくだけよ」

「そう?」

「そうよ立香!!」

「小さくて狭くても舞台は舞台だよ」

「そうだ。藤丸の言う通りだぞ地和」

 

まずは3人をデビューさせないことには始まらない。だが最初の段階でスタート以前でつまづいている。

もしかしたらスタート以前の問題かもしれない。だがここで天和と地和を納得させる人物が口を開いた。

 

「ううん、これで十分」

「人和ちゃん!?」

「ちょっと正気なの。ちぃたちの力はこの程度だって思ってたの?」

「違うわ。最初の一歩はこの程度の小屋で十分ってこと。あとは私たちが稼いで大きくすればいいだけ」

 

ここで口を開いたのは人和であった。事務所兼舞台に到着してからずっと周囲を見て周っていたのだ。

彼女は自分たちならば今の小さい事務所兼舞台をより大きくできると断定したのだ。

 

「姉さんたちは私たちにその力はないって思ってるの?」

「そんなことないわよ。ちぃたちならできるわ」

「そうだよね。こんなぼろ小屋、わたしたちが稼いで大きくすればいいんだもんね!!」

 

3人たちは自分の実力ならばすぐに人気になれると疑っていない。実際に彼女たちの歌からファンが増えて黄巾党なんて巨大な賊の集団が発生したのだから。

ある意味、大陸中にファンをつくった張三姉妹ならではの自信だ。

 

「でもなんか見くびられてるみたいでやだなぁ」

「見くびられていると思うなら後でほえ面かかせてあげればいいのよ」

 

人和はそれだけ言うと小屋に荷物を降ろして設備の確認をし始めた。

 

「仕方ないかぁ。人和のいう事ももっともだし」

 

人和の一言であっさりと話が進んだ。

やはり人和は人の扱いというか姉2人の扱いに長けているかもしれない。

 

「それにしても…ほんっとにこんなところにみんな来てくれるのかなぁ」

「来てくれるじゃなくて、来させるのが天和姉さんたちの仕事でしょう」

「そーそー。ちーちゃんの魅力に掛かれば一発コロリでしょ」

 

クネっとポーズを取る地和であった。

 

「3人ならきっとすぐに人気者だよ」

「藤丸の言う通りだ。宣伝の方も手伝うからさ」

「じゃあこれ」

 

人和が眼鏡キラーンとさせると一枚の書簡を突き付けた。やはり眼鏡キャラは眼鏡を光らせる事が出来るのかもしれない。

 

「流石眼鏡キャラの人和。眼鏡キラーンは出来るようだ」

「眼鏡キラーンってなんだ。いや、何となく分かるが…それはともかく何だこれ?」

「宣伝に使った瓦版屋の請求書。必要経費なんだから城で払ってくれるでしょ?」

「ま…まあ、これくらいは。どれどれ…てなんだこりゃ!?」

 

金額を見た瞬間に北郷は目を見開いた。

 

「いくらだったの……おお、これはなかなか」

 

書簡を開いて金額を見た瞬間、思わず尻餅をつきそうになるほどの金額だ。だがこの金額をQPに換算するとスキル強化ですぐに消える。

強化や再臨で物凄い額のQPを使っている藤丸立香はそこまで驚きは無かった。すぐ枯渇するQP問題は何とかしたいものである。

 

「この領収書、桁がいくつか間違ってないか?」

「間違ってないわ。確認したもの」

「こんなに作ったのか。この値段だと軍馬が百頭くらいは買えるぞ!?」

「マジか。じゃあカルデアでスキル強化している金額って…」

 

金銭感覚が混乱しそうになるのであった。

 

「こういうのは最初に大きく風呂敷を広げる方が効果があるもの」

「そうそう。要ははったりだよねー」

「うんうん」

 

事実、こんな小さな小屋からスタートする以上、チラシで人を呼ぶ以外に一気に知名度を上げる方法はない。

地味な活動を続けていては効果が出るのも遅くなってしまう。だが今の彼女たちは自信に溢れている。賭けで初めから大きく大々的に攻めるのも悪くはないのだ。

 

「分かったよ。だけどこれ下りるだろうか?」

「それを説得するのがあなたの仕事でしょ?」

「歌うのはちぃたちの仕事。このくらい簡単な話よね?」

 

まったくその通りであった。

北郷一刀は愛紗たちにどうやって説得するか悩み始めるのであった。だが今回のかかった金額は俵藤太の『無尽俵』で補ったのである。

こればかりは反則級の方法だ。そしてやはりと言うか桃香たちは俵藤太の無尽俵の奇跡に心底驚いていた。なんせ彼さえいれば食料問題が解決するのだから。

 

「じゃ早速取りに行って。そして配っておいてね」

「え?」

「ほら、早く早くー。時間が惜しいんだから」

「まさか俺らが配るのか!?」

「人件費も請求に上げていいのかしら?」

「よし行くぞ藤丸!!」

「任せろ北郷!!」

 

2人仲良く瓦版屋へと走り出すのであった。

その後は何とか愛紗たちを説得し、瓦版屋で引き取ってきたチラシも鈴々や燕青たちに頼んで一緒に全て配り終えた。

そして当日は小さな小屋の周りには予想以上に人だかりが出来ていたのだ。

 

「おおー凄いな」

「だな。俺も驚きだ」

 

予想以上の盛り上がりについ驚いてしまう。

 

「エリちゃんのライブとは大違いだ」

「エリちゃん?」

「エリザベード・バートリー」

「それって吸血鬼カーミラのモデルになった人物じゃあ…」

「正解」

 

本当に北郷一刀は英雄や偉人に詳しい。もしかしたら藤丸立香よりも詳しいかもしれない。

 

「カルデアにいるんだ」

「うん。さらにそのカーミラもいる」

「ってことは過去とある意味未来の自分がいるってことか?」

「そう。そんでもってエリちゃんは4人もいる。いや、正確には5人か。そのうち2人がメカだけど。待てよエリザベートJAPANも含めれば6人か?」

「待ってくれ混乱してきた」

 

誰もが混乱するのは当然かもしれない。

 

「まだ序章だよ。これからチェイテピラミッド姫路城という物語に続くんだから」

 

これで本当に序章に過ぎないのだから困るものである。

 

「今度なんとか時間を作るから一から説明を聞かせてくれ。腹を割って話そう」

「長いよきっと。そして頭痛薬も用意した方がいいかもね」

「本当にずっと気になってんだよ。度々出てくる『チェイテピラミッド姫路城』っていう謎のパワーワード」

「三部作だからね」

「そうか。三部作もあるのか…」

 

度々、出てくる『チェイテピラミッド姫路城』という謎のパワーワード。全三部作のハロウィン物語に北郷一刀が耐えられるかはまだ先の話である。

閑話休題。

 

「じゃあ天和たちのライブを見に行ってみよう」

「だな藤丸。正直なところ黄巾党たちを魅了した歌声を一から聞いてみたいしな」

 

早速ライブ会場に向かう藤丸立香たち。遠くから見ても物凄い盛り上がりは分かった。

近くに来ると観客たちの大歓声で耳の鼓膜が破れるのではないかと思ってしまうほどだ。

 

「凄いな」

「だね。あ、歌が始まるみたいだよ」

 

観客たちに紛れ込んで2人は張三姉妹の歌を聞くのであった。

 

「次は『あいはだってだって最強!』いくわよー!!」

 

彼女たちの歌はとても上手い。聞いているだけで元気が出そうな歌だ。

確かにこの歌を聞けば彼女たちのファンになりたい気持ちは分かる。彼女たちの歌ならば集団の指揮が上がるのも納得である。

気が付けば藤丸立香も北郷一刀も無意識にリズムを取っていた。更に腕を天高く上げての繰り返しでテンションも上がる。

彼女たちが歌い、観客たちはテンションが上がれば上がる程に張三姉妹に合わせてリズムを取っていく。

 

「みんな大好きー!!」

「「「「天和ちゃーん!!」」」

「みんなの妹ー!!」

「「「地和ちゃーん!!」」」

「とっても可愛い」

「「「人和ちゃーん!!」」」

 

張三姉妹と観客たちとの掛け合いも完璧だ。

 

「「「はいっはいっはいっはいっはいっ☆」」」

 

盛り上がりは最高潮に達する。彼女たちの舞台はどこからどう見ても『成功』という二文字しかない。

 

「「「うおおおおおお。数え役萬☆姉妹ーーー!!」」」

 

今回の舞台で彼女たちの才能には驚かせれたものだ。もしも北郷一刀たちの世界でデビューさせたら人気歌手になるのは当然だと思ってしまう程である。

 

「みんなーまだまだ行けるかな~?」

「「「いえーーーい!!」」」

「でもそろそろおしまいの時間だよ~」

「「「ええーーーー!?」」」

「大丈夫、また会えるから」

「「「おおーーーーーー!!」」」

「それじゃあ最後の一曲、聞いてくださいね!!」

 

3人は満面の笑みで大きく手を振りながら舞台の上に立っている。

見ている観客たちも目を逸らしている人は1人もいない、熱気は遠くからも感じられるほど盛り上がっている。

3人がいるのは小さな小屋であるが観客たちのいる場所も含めて、その全てが『数え役萬☆姉妹』のステージになっているのであった。

 

「最後まで聞いてくれてありがとう!!」

「次回もまた見に来てねー!!」

「さようならー!!」

 

最後の曲を歌い終わり、手を振って舞台から下りる間も観客の歓声と喝采は途切れることがなかった。

彼女たちの姿が見えなくなった後も興奮冷めやらぬようでしばらくは熱気が小屋の前に充満していたのであった。

 

「凄いな3人の力は。こんなにみんなを熱狂させることができるなんて」

「本当だよ。最高に盛り上がったね」

 

3人の実力を目のあたりにし、最高な気分である。

 

「あー、疲れた~」

「ちぃもへろへろ~」

「お疲れさん。ほいよ冷たい水の差し入れだ」

「お、気が利くじゃない。んくんく…ぷはぁ!!」

 

 

勢いよく冷たい水を喉に流し込んでいく。それほどまでに喉が渇いていたのがよく分かる。

 

「はい、おかわり」

「私もおかわり」

「わたしもわたしも~」

「はいはい、ちゃんと用意してあるから大丈夫」

 

藤丸立香と北郷一刀は舞台が終わった後に彼女たちの事務所に顔を出していた。

水を汲んでは3人に水を手渡すの繰り返し。それほどまで休憩もなしに歌い続けていたのだ。

 

「それにしても随分と盛り上がってたな。びっくりしたよ」

「俺らも盛り上がったね。とても凄かったよ3人とも」

「でしょでしょ。少しはわたしたちのこと見直した?」

「少しどころじゃないな。正直舐めてた。ごめん」

「ふふん、分かればいいのよ。これからはもっとちぃたちを大事にするように」

「あはは。分かったよ。その分、頑張ってくれよ。俺らも頑張るからさ」

「もちのろんよ。わたしたち、歌うの大好きだからね~」

「男達の熱い眼差しを一身に受けるあの感覚…まるで国中の男共をかしずかせたかのようなあの感覚はいつ受けても快感だわ!!」

「なるほどね…緊張したりしないんだ」

「緊張はするわよ」

「当たり前じゃない。でも、それが嬉しくて心地いいの」

「なるほどな」

 

彼女たちが本当に歌で大陸の1番になるのは不可能ではないかもしれない。その一端を垣間見たのであった。

 

「打ち上げがしたーい!!」

「藤太が美味しいもの作ってくれるって」

「やったー。俵さんのご飯って美味しいのよねー!!」

「じゃあじゃあ早く行こうよー」

 

今度こそ彼女たちは歌で大陸の一番を目指し始めるのであった。

 




読んでくれてありがとうございました。
次回の更新予定は一週間後です。恐らく。

今回は愛紗と秦良玉の話と張三姉妹のお話でした。

これは個人の感想ですが秦良玉って藤丸立香に対して溶岩水泳部に負けないくらいの気持ちがあると思うんですよね。バレンタインイベでもそのような感じもありましたし。
なので今回はそんな感じの話になりました。
次からは愛紗と秦良玉のお互いの主を想う話になっていきます。

張三姉妹の物語もやっと書けた。やっと彼女たちにもスポットが当てられましたよ。
彼女たちのキャラソンの中でも『あいはだってだって最強!』が好きです。

次回からついに反董卓連合篇に入ります!!
全体の物語的にやっと後半に入りますね。

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