Fate/Grand Order 幻想創造大陸 『外史』 三国次元演義   作:ヨツバ

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こんにちは。
早く書けたので、早めの更新です!!
今回はタイトル通り軍議の内容です。
まあ、今回も原作とあまり変わらないかもですね。


反董卓連合-軍議-

252

 

 

無数の陣地や天幕が並ぶ荒野の中央にて他と何倍もある巨大天幕があり、軍議の会場はまさにここだと主張しているほどであった。

 

「…すごい。これが連合」

 

天幕の中に詰めていた将たちは優に百人は超えていた。その中に桃香たちは時間となったので軍議に出席するために顔を出してたのだ。

彼ら、彼女ら一人一人は桃香や公孫賛と同じように袁紹の呼びかけに答えて軍を率いてここまで集まってきたのだ。

袁紹は印象以上に影響力が大きいと嫌でも分かってしまう。

更に燕青と荊軻は気配遮断を駆使して潜入していた。

 

(いやはや…数が多いねぇ)

(さて桃香殿たちは…いたな)

 

荊軻の視線は桃香たちを捉える。

 

「これ、どこに座ったらいいのかな?」

「ふむ、空いている所に適当にってわけにもいかないだろうしな」

「公孫賛殿。お久しぶりです」

「ああ、田豊か。久しいな。これ、どこに座れば良いんだ?」

「幽州の皆さまはあちらにお願いします」

 

袁紹軍の関係者である女性が座席表らしい帳面を持っているのにも関わらず、天幕の一番奥を指してみせる。

田舎者扱いということで一番奥の端っこかと思えば、刺された席は他と比べて一段高く、その隣にはさらに高い席があった。

 

「…おいおい。あんな上座じゃなくていいぞ」

「いえ、我が主からの厳命ですので…ここは、我々の顔を立てると思って、協力いただけますと」

「まあ…そういう事なら」

 

しょうがないと言う感じで了承する公孫賛。

 

「曹操たちは…ってあれ?」

 

実は天幕に入るところまでは一緒だったはずだが気が付けば曹操は姿を消していた。

 

「ねえねえ。馬超さんがいないね」

「ホントだ。馬騰さんが来たのかな?」

 

電々と雷々が再会を待っていた馬超たちがいないのだ。せっかく再会できるかもと桃香だって思っていたが会えなかった。

 

「いや、馬騰殿も見当たらないな。あいつの性格からして来ないとも思えないけど…」

 

涼州から幽州よりかは近い司隷だが、それでも距離はある。西涼の騎馬隊の機動力はよく知っているがそれでも間に合わなかったのかもしれない。

そんな話をしていると天幕の中に袁紹が姿を現した。

 

「皆さん、お待たせいたしましたわ。では、そろそろ始めるといたしましょうか」

 

袁紹は堂々とした姿で天幕に現れて一番の上座に登ると並み居る諸将ぐるりと見回した。

 

「あら。西涼の馬騰さんは結局、間に合わなかったようですわね。もういいお歳ですし、辺境の涼州に引っ込んでいらっしゃるものですから、わたくしも気を使っていの一番にご連絡を差し上げたというのに…」

 

桃香たちに向けていたとは違う嫌味たっぷりな物言いだが、北郷一刀としてはあの機動力の塊みたいな馬家が間に合わないとは思えない。

 

(何かあったのか?)

「ま、いない者は仕方ありませんわね。この場にいるわたくしたちだけで進めるといたしましょう。まずは、わたくしからご挨拶させていただきますわ!!」

 

気を取り直してまずは挨拶から、という感じで袁紹は立ち上がる。

 

「わたくしが、このわたくしが袁本初。三公を輩出した袁一族の当代を預かる者ですわ!!」

「…なんじゃと。袁家の当主はこの妾じゃろうに…」

 

小さく誰かが不満のような声を聞いた気がしなくもないが今の北郷一刀は袁紹を見ていた。

 

「そもそもわたくしが、どうしてこの連合の檄を飛ばしたかと申しますと…!!」

 

会場から巻き起こる万雷の拍手を両手で制すると袁紹は楽しそうに話し始める。

この光景に何故か北郷一刀は見覚えがあった。例えば母校で校長先生が挨拶をする時のような感じである。

 

(なあ…公孫賛。俺、嫌な予感がするんだけど)

(…多分当たってるぞ)

(長い?)

(長い)

 

予想通りで袁紹の挨拶は長かった。はっきり言ってしまうと眠気がピークに達している。

電々と雷々はもはや首がこっくりこっくりとしている。まさかこの世界で全校朝礼の校長先生の長話のような感覚を味わうなんて思いもしなかった。

 

「…桃香も頑張って。そろそろ出番だぞ」

「むにゃ…ふぇ?」

 

彼女も寝てしまったていたようだ。

そんな中でただ1人、朱里だけが各地の将の名乗りに小声で驚いていたり、「なるほど…」なんて呟いていた。各地の名将や実力者のことを調べているようである。

 

(…つまんねえ話ばっかで先に進まねえな)

(一献やりたい気分だ)

 

燕青も荊軻も袁紹の長話に欠伸が出そうな勢いだ。全く軍議にもならない軍議に最早出ていきたい気持ちになる2人。

出ていきたい気分の2人だが我慢して軍議に残る。既に周囲を警戒しながら見ているが別段怪しい人物はいない。

 

(今のところ于吉の手が掛かったような奴はいなそうだな。まあ、上手く潜んでいるだけかもしんねえがな)

 

欠伸をかみ殺して周囲を見ているとようやく袁紹の挨拶が終わって次の人物に移ったようである。

 

「なら、次は妾の番じゃな!!」

 

やっと次の順番になったようで立ち上がったのは先ほど袁紹の呟きに反応した小さな女の子であった。

 

「揚州牧の袁術じゃ。当代の袁一族を預かっておる」

「え、袁一族の当主はこのわたく…」

「副官を務めさせていただいてます張勲と申しまぁす!!」

 

明らかに挑発目的の挨拶に袁紹が噛みつこうとした瞬間、副官の張勲が食い気味に自分の名前を名乗ってみせた。これは完全にわざとだと分かってしまう。

 

「全国に飛ばした檄、我が袁家の当主として礼を言うぞ。ご苦労じゃったな麗羽お姉さま」

「な…っ!!」

「次、頼むぞよ!!」

 

袁術は意地の悪い笑顔でそう言い放って袁紹が何かを言うより早くその場にぽすんと腰を下ろしてしまった。

彼女の顔からはしてやったりというものが滲んでいた。袁術と袁紹はどうやら御家争いの如く面倒な関係かもしれない。

 

(どの時代も御家争いは面倒なものだな)

 

荊軻や燕青にとって面倒以外のなにものではないものだ。そもそも2人からしてみれば縁の無かったものである。

挨拶が進んでいき、ようやく公孫賛の番になる。

 

「幽州の公孫賛だ。今回が幽州と徐州合同で参加させてもらう事になった。こちらが陶謙殿の名代の糜竺殿と糜芳殿。それと副官を務める平原の劉玄徳と軍師の諸葛孔明、補佐の北郷一刀だ」

 

その瞬間、巨大な天幕の中、明らかにダレきった空気で話を聞いていた将たちが同時にざわつき、いくつもの視線が同時に桃香たちに向けられた。

それは値踏みするような視線や田舎者だと囁き、落胆のため息や苛立ちからの舌打ちさえも混じっていた。これではなるべく目立たないようにするというのが難しいかもしれない。

 

「まあまあ、貴方が噂に聞く天の遣いという方でしたのね。北郷なんとかと聞きなれないお名前でしたから、西からいらしたのかとおもいましたけれど…なるほどねぇ。けれど、随分と貧相な恰好ですのね。『天』の御方と名乗るなら、もっとそれらしい装いや身なりというものもあるでしょうに。良ければ、その名乗りに相応しいお着物を仕立てて差し上げてもよろしくてよ?」

「あ…いえ、大丈夫です。お気持ちだけ」

 

貧相と言われたが単に袁紹基準で地味と言われただけのようだ。

持ち上げてから落とすつもりだったのか、ただの牽制か分からない。今のところ、馬騰の時のように露骨に馬鹿にはされていない。

 

「ウチは以上だ」

 

各諸侯の自己紹介が終わったと同時に軍議に顔を出す者が現れた。

 

「そろそろ紹介は終わったかしら?」

「華琳さん。遅刻ですわよ!!」

「どうせ麗羽の長話と覚えきれない袁家関係者の紹介でもしていたのでしょう」

 

正解である。気配遮断で潜入していた荊軻と燕青は同時に曹操の発言にコクリと頷いた。

 

「ぐっ…」

 

図星なので口を閉じてしまう。

 

「行軍の順番や第一の関を誰が攻めるか等は決めたのかしら。本題のそれら1つでも決まっていたら遅刻と認めてあげても良いけれど?」

「ぐ、ぐぬぬ…」

 

実際に曹操の指摘通りだ。まだ本題は何も始まっておらず自己紹介のみしかやっていない。

曹操と袁紹の2人はどこか仲が良さそうに見えないが真名は呼び合っている。どういう関係か今の北郷一刀には分からない。

 

「本題の検討に間に合ったのなら特に問題はないでしょう。苑州牧の曹孟徳よ。知らなければ周囲の者にでも聞いて自らの不勉強を恥じて頂戴」

 

曹操は部屋の入口当たりに残っていたスペースに連れてきた将たちと一緒に腰を下ろす。

 

「で、でしたら、これで紹介を終わりですわね。それでは最初の軍議を始めさせていただきますわ!!」

 

すぐに調子を取り戻す袁紹は早速本題の会議を始める。

やっと始まるのか思って荊軻と燕青は気を取り直して軍議に集中しながら周囲の警戒をし直す。

 

「それでは最初の議題ですけれど…このわ」

「現状と目的の確認だろ?」

「え、ええ。そうですわ。このわたくしが集めた反董卓連合の目的ですけれど…」

「都で横暴を働いているという董卓の討伐でいいのよね。西園軍の任命式の頃は中郎将だったはずだけれど、今はどれだけ官位を上げているの?」

「さあ、どうせ大した役職では…」

「聞いた話だと相国だそうだ」

「なぁぁぁぁぁぁあんですってええええええ!?」

「なんじゃとおおおおおおおおおおおおおお!?」

 

袁紹と袁術が物凄く驚いた。その理由は役職の相国にある。

相国とは朝臣に与えられる中では最高位の官職である。前は高祖に仕えた蕭何に曹参という人物が務めていたが今は空位になっている。

空位になっている理由も、その二人の人物ほどの大業を成した臣がいなかったため誰も与えられずに空位になっているというものである。

この説明を朱里からこっそりと聞いた北郷一刀は心の中で「え、なにそれ封印された伝説の官職みたいなの」と呟いた。恐らく藤丸立香も同じことを思うはずである。

 

「三公より上となると袁家も形無しね」

「ぐぬぬ…なんたる専横、なんたる横暴。これはわたくしたちだけではありません。わたくし達の祖父に対する侮辱ですわ!!」

 

それはどうだろうかと思ってしまう北郷一刀。

 

「ただでさえ空丹さまを玉座から引き下ろし、許せないと思っていた所にこの所業…許せませんわ!!」

 

実は袁紹は霊帝の真名を呼べるほどの関係。恨みも深まるというものである。

 

「なってしまったものは仕方ないわ。理由はなんであれ、朝廷をほしいままにする董卓を誅しなければならない。次の議題は何かしら?」

「ええとね。都までどうやって行くのー?」

「そ、そうですわ。この大軍団をわたくしがどうやって率いるですけれど…」

「後でくじか何かで順番を決めてもいいんじゃないか。どうせ戦闘になれば配置は変わるんだしな」

「良いのではなくて。経路は?」

「け、経…」

「はいはーい。電々、ちゃんと調べたよー!!」

「……」

「ええっと…これだけ人が多いと、裏道とかはダメだから、街道を進むしかないよね!!」

 

電々は天幕の真ん中に広げられた地図を指さすと小さな指でゆっくりと滑らせる。その指の先を見た張勲が口を開いた。

 

「えっと進路がこうでしたら…間の大きな関所は汜水関と虎牢関になりますからー。その辺か。前後の広い土地で戦闘になりそうですね」

「そうですわね。きっと、その辺りで戦闘になるはずですわ。それで…」

「関所の将は?」

「汜水関は華雄、虎牢関は呂布と張遼と報告が入ってます。ただ、この連合が出来る前の調査ですから変わっているかもしれません。間者を放って改めて調べる必要があるかと思いますが…」

「ま、真直さんまで…」

「あのね、白蓮ちゃん。調査くらいなら、わたしたちがやるよ。朱里ちゃんがまずはこの辺りの小さな任務を引き受けて様子を見た方がいいって言ってるし…」

「そうか。なら汜水関の偵察は私たち幽州・徐州連合が引き受けよう」

「なら、汜水関の調査は公孫賛たちでいいわね。さしあたり必要なのは、そんなものかしら」

 

先ほどから何故か怒涛の勢いで袁紹の発言を止めている皆。狙ってやっているのか偶然なのか。

これには「ん?」という感じで燕青は首を傾けた。

 

「ま、まだ大事な議題が残ってますわ!!」

「何だ?」

「汜水関を誰が攻めるか…かの?」

「それは調査のついでに白蓮さんの手勢が攻め落とせばいいんですわ」

「おいおい無茶な…」

「あら、白馬長史の白馬軍団は砦の1つも落とせないとおっしゃいますの?」

「むー、分かった。やればいいんだろ、やれば!!」

 

会議自体はスムーズに進んでいるように見えるが単に袁紹に喋らせたくないようにも見える。そもそも全然連携とかも考えていないのだ。

更には袁紹も最初の相国の件でヒートアップしきっているのか頭が回っていない感じもする。

 

「なら決定ですわね。白蓮さんは頑張ってくださいまし……というか、そんな事はそうでも良いのですわ!!」

「で、何?」

「この連合を誰がとりまとめ、仕切るかですわ!!」

「「「「………」」」」

 

ものすごくどうでもいいものが議題に上がった。

このバラバラの一団を率いるのは寧ろ誰もやりたくないはずだ。総大将になったらなったで連合をまとめるのに苦労するのが目に見えている。そもそもまとまる気なんてなく、どの諸侯も手柄を立てる事しか考えていないのだから。

 

「わたくしはする気はないのですけれど…ただ家柄と地位を考えた場合、候補はおのずと絞られるのではないかしらと想ったりしなくもないのですけれど…」

「な、なら妾が……!!」

「はいはい。麗羽でいいわよ」

 

一瞬で決まった。

 

「よ、よろしいんですの?」

 

とても嬉しそうな顔をする袁紹。そして袁術を見ながら先ほどのお返しと言わんばかりに勝ち誇った顔している。逆に袁術は残念そうで、悔しそうな顔をしていた。

 

「な、なら、仕方ありませんわね。みんながそこまで言うのであれば不肖この袁本初めがお引き受けさせていただきますわ。おーっほっほっほ!!」

「なら大事な議題とやらも終わったし、もう少し軍議を進めるわよ」

 

まず汜水関は幽州と徐州軍が攻める事になった。だがそれで終わりでなく、次鋒はどの軍にするか等まだまだ決めねばならないことは多い。

 

「では次鋒はーー」

 

軍議は遅くまで話される。長い軍議であったがようやく終わりが見えた。

 

「では、軍議はここまでにしますわよ。かい…」

「解散!!」

 

最後の締めくくりまで自然と袁紹の邪魔をするのであった。

 

(……気のせいか薄い軍議に感じたんだが)

(実は中身がバラバラの連合の軍議なんてこの程度のものだろう)

 

それでも藤丸立香たちが、桃香たちがどう動くかは決まった。

 

 

253

 

 

軍議が終わり、本陣に戻った袁術は雪蓮と冥琳を呼び出した。正確には張勲が呼び出した。

雪蓮たちは軍議に参加出来ないでの結果を袁術たちから聞くしかないのだ。

 

「はい。全軍で河南群へ進み、そこから汜水関、虎牢関を抜いて洛陽に進むことになりましたー」

「えええ…何で。河内と潁川から攻めて、洛陽を囲んだ方がいいでしょ?」

「誰でもそう思いますよねー。でも袁紹様は逆賊董卓を討つには正々堂々、正面から正義の戦をするべきだとー」

「正の字が好きね…」

 

反董卓連合の戦いで有名な砦が汜水関と虎牢関だ。洛陽の東を固める難攻不落の要塞である。

 

「先陣は誰になったの?」

「幽州軍と徐州軍じゃ。公孫賛と陶謙の代わりに来ておる…ほれ、劉備とかいう小娘の軍じゃな」

「まさか…幽州軍と徐州軍は連合の中でも最小のはずでは?」

「だからじゃないの。発言力も無いから捨て駒にされちゃったんじゃない?」

「ですねー。突破できるなら良し、できなくても全滅しても敵に痛手を与えれば良しって感じなのでしょう」

「数は少ないが幽州軍と徐州軍は強いそうじゃ。まあ適当に頑張ってくれれば、次鋒が楽に戦えるのじゃ」

「てことはー」

「ふっふっ、次鋒は我らじゃ!!」

 

流石は袁術と思ってしまう雪蓮。こういうところは抜け目が無いのだ。

 

「我らっていうか、要するに呉軍でしょ?」

「うむ。劉備の軍が全滅したら、次にお主が突っ込んで汜水関を落とすのじゃ。妾のために励むが良い」

「はーい、お任せください」

「うむ、近頃の孫策は素直で良いぞよ。勝てばご褒美に呉群のつまらんド田舎の村をひとつくらいはくれてやろう」

「恐悦至極にございます…!!」

 

袁術は気付かないが雪蓮は憎たらしくお礼を言った。

話し合いは終わり、袁術のところから出て本陣に戻ってくる雪蓮と冥琳。教えてもらった軍議の内容を祭たちに話しだす。

 

「公孫賛と劉備とやらもとんだ役目を押し付けられたもんじゃな」

「そうね」

 

祭と粋怜は損な役回りをさせられる幽州軍と徐州軍に同情を向けてしまう。

 

「汜水関の兵力は八万だと聞いている。公孫賛と劉備が優れた将だとしても、どうにもならんだろう?」

「はい。捨て駒にもなりませんね」

 

普通に考えて兵力差があれば戦には勝てない。

恐らく幽州・徐州の連合は汜水関では苦戦というよりはボロ負けする可能性は高いのだ。孫策達は次鋒となっている。

もしも幽州・徐州の連合が敵に損害を与えられなかったら揚州軍が二番手に控えている意味も無くなる。ならば呉軍の五万が加われば袁術の軍勢に頼らなくても汜水関は落とせる可能性はまだあるのだ。

 

「共闘…」

「もしかして共闘するのか?」

「なら公孫賛と劉備の軍はアテに出来るの?」

 

幽州・徐州の連合の兵力は少ないとは限らないが敵は八万だ。戦の基本は数である。

幽州と徐州軍が共闘をするに値するかどうかを悩む粋怜たち。

 

「そこはたぶん大丈夫でしょ。それに劉備の陣営には恩人たちがいるしね」

「恩人?」

「ほら藤太や孔明たちのことよ」

「ほう…孔明殿たちは今劉備のところにおるのか」

 

黄祖との戦いで力を貸してくれた諸葛孔明たち。彼らの実力は知っている。

カルデアのメンバーと劉備陣たちの将を考えれば質は悪くない。後は兵の数だけなのだ。その数は呉軍が加われば勝てる可能性は大いに上がる。

 

「ふむ。雪蓮の考えは悪くないかもな。劉備の拠点はもしかしたらいずれ徐州になる可能性は高い。いつか北の袁紹や曹操と対峙することになれば劉備が味方なのは孫呉にとって有利でしょう」

「なら早速、明日にでも劉備の陣営に行ってみましょう」

「何も雪蓮様直々に足を運ぶことはあるまい。使者の役目であれば、このわしが参ろう」

「いえ、行くとしたら私が自分で行くわ」

 

雪蓮自身で劉備がどのような人物か見極めたいのだ。更に各地の情報で手に入れていた時に劉備の陣営には天の御遣いがいるというのを知ったのである。

同じ天の御遣いがいた陣営として気になるのだ。もしかしたら何か天の御遣いに関して知っているかもしれない。

 

「劉備は不遜にも劉姓を名乗る侠上がりの騙り者じゃ。由緒ある孫家の頭領が会う程の者ではない」

「もう、相変わらず頭が固いですねー」

「頭の問題ではない、格の話をしておるのじゃ。孫家が軽く見られてはならん」

「おっしゃることはわかりますが、劉備さんは徐州軍の大将なんですよー。それに引き換え、雪蓮さまは軍議に出席することさえ許されなかったお立場ですし…」

「たわけがぁっ!!」

「ひゃわっ、あああ…言い過ぎました。つい本当のことを…ひゃわわ!?」

 

怒られてしゅんとした包は何も間違った事は言っていない。実際のところ連合での立場だと雪蓮よりも桃香のほうが上であるのだ。

 

「ふっ…だけど、包の言うとおりね。連合での立場は劉備の方が私よりも上よ」

 

雪蓮は腕を組んで思案するようにうつむく。そして決断した。

 

「よし。明日、やっぱり私が劉備に会ってくるわ。出陣は明後日だし、明日ならゆっくりと劉備の人物を見定めることができる」

 

やはり自分自身の目で劉備という人物は見ておきたいのだ。

 

「冥琳、一緒に行く?」

「私まで本陣を留守にして、いったい誰が出陣の支度をするというのだ?」

「あはっ、そうね…よろしく」

 

雪蓮は「あ、そっかぁ…」という感じになった。

 

「まさか命を狙われるようなこともあるまいが、誰が供をつけねば劉備と会うことは認められんぞ」

「じゃあヒマなの誰?」

「ごめん、私は忙しいかな」

「暇な人間なんて、ここには一人もいませんよ」

「応。しいて言うなら策殿ぐらいじゃな」

 

李晏に粋怜、祭たちはみんな忙しい。

 

「み、みんな手厳しいわね…」

「はい、パオが行きます!!」

「あなたは護衛にならないわよ」

「ひゃわわ…!?」

 

誰もが包は護衛にならないと頷く。彼女の武力ははっきり言うと孫呉の中でも一番弱いのである。

 

「しょーがないな。じゃあ思春に声をかけるわ。今回は水軍の出番も無さそうだし、あの子はそんなに忙しくないでしょうから」

「ふむ。思春であれば安心じゃな」

 

こうして明日の朝一で雪蓮は思春を連れて劉備の本陣を訪れることになった。まさか劉備の本陣である再会になるとはこの時、彼女は思いもしなかっただろう。

 

 

254

 

 

「ただいまー」

「おかえり。そして遅くまでお疲れ様」

 

北郷一刀たちの戻りを出迎えた藤丸立香。

実は彼らが袁紹との顔合わせから戻れたのは相当遅くになったのだ。すぐにでも眠りたい気分だがこれから劉備陣営での作戦会議をしなければならない。

察していたのか孫乾はすぐにお茶を淹れてきて皆の前に出していく。

 

「帰ったか。疲れているところ悪いが早速、我々だけで軍議を始めるぞ。そちらで行われた軍議の内容は既に燕青と荊軻から聞いている」

「え、荊軻殿と燕青から聞いたって…」

 

諸葛孔明からの説明でキョトンとしてしまう。

 

「「潜入してた」」

「おいおい全然気付かなかったぞ…」

 

驚く公孫賛であるが気付かれていてはアサシンとしてやっていけない。

桃香や北郷一刀たちもまさかあの軍議の場に荊軻たちが潜入していたなんて気付きもしなかったものだ。

 

「え、どこにいたの?」

「天幕内にちゃんといたぞ」

「え~何処にいたの…」

 

実は桃香たちの真後ろにいた。気配遮断や霊体化を駆使していたのだ。

 

「既に内容を知っている体で話を進めても構わん」

「えーっと…私たちが汜水関を最初に攻めるんですよね?」

「う、うん。そうだよ朱里ちゃん」

 

あまり目立たないようにするはずが汜水関攻めの一番手という事になった。しかし実は一番手でも構わなかったのだ。

 

「公孫賛殿にもしも一番手を手に入れる事ができるならと頼んだが…本当に一番手を手に入れてくるとはな。流石だ公孫賛殿」

「いやあ…」

 

軍議の流れ的に汜水関の調査をするとなった瞬間に公孫賛と桃香は動いたのだ。まず自分たちは調査をすれば可能性として汜水関攻めの一番手に選ばれる可能性があったからだ。そして実際に流れで上手く汜水関攻めの一番手を手に入れた。

 

「でも孔明さん。何で一番手なんかを?」

「その理由は燕青だ。彼には戦いに紛れて潜入してもらうからな」

「潜入ってどうやって?」

 

燕青は「よしきた」と言わんばかりに桃香の横に移動して大きな布を自分に被せて、出て来た瞬間に藤丸立香たち以外を驚かせた。

 

「と、とと桃香さまが2人!?」

「お姉ちゃんが2人いるのだー!?」

「嘘だろ…!?」

「わたしにそっくりだー!!」

 

瓜二つの桃香が目の前にいる。これは燕青のスキル『ドッペルゲンガー』の能力だ。

変装能力は様々な所で役に立つ。これから起きる戦にも役に立つものだ。

 

「上手く汜水関で敵兵を出させれば燕青を董卓陣営の兵士たちに紛れ込ませることができる。内側に入ってしまえば内情を調べることが出来るし、汜水関、虎牢関でも上手く戦を有利にすることも可能だからな」

「おお、そうか!!」

「で、でもでも燕青さん1人で大丈夫なんですか?」

「あんたが心配する必要ねえよ。心配するなら自分の部下たちを心配しな」

 

桃香が燕青1人でということに心配したがピシャリと言い返された。彼女が心配するのは自分の仲間たちだけでいいのだ。だが今は燕青たちは劉備陣営に入っている仲間である。

心優しい劉備は心配するな、なんてことは難しいのだ。

 

(まったく優しすぎるねぇ、この劉備は…)

 

優しい事は良いことだ。その優しさに救われる人は多い。だが優しいからこそ自分を苦しめる事があるのだ。

異聞帯での戦いで藤丸立香はその優しさで苦しむ羽目になったのである。

 

(周りはそれをいつ伝えるのか…それとも自分で気付くのか)

 

桃香はまだ優しいだけで本当の現実というのに気付いていない。もしくは心の何処かで気付いているかもしれないが目を背けているのかもしれない。

彼女の優しさで自分を苦しめるのはまだ先の話である。

 

「わー凄いのだ。鈴々にも変装できる?」

「おおとも」

 

もう一度、布を被って出てくると鈴々が出てきた。

 

「おー!!」

「鈴々ちゃんとそっくりだよ!!」

「いや、身長まで一緒ってどういうこと!?」

 

体形まで変化している燕青にツッコミをしてしまう北郷一刀であった。

 

「話を戻すが燕青を董卓陣営に潜り込ませるために汜水関では籠城をするであろう敵兵を外に出さないといけない。だからと言って相手がゾロゾロと出てこられては数では負けているからな」

「そこですよね」

 

雛里も朱里も自分たちの兵の数が少ないという部分は先鋒で出るというのに心元無いのだ。

普通に考えて先鋒で出るのは厳しいのである。もしも徐州軍だけであったならば厳しいところの問題ではない。幽州軍と一緒にであるのがまだ救いである。

 

「戦えなくはありませんが…勝つのは難しいでしょうね」

「まあ、勝つのは目的じゃないからね。無茶かもしれないけど出来るだけ被害が少ない方が良いな」

「それは難しいぞ」

「うう…そうだよね」

 

桃香の言ったことは誰もが思ってることだが現実的に考えて難しいものだ。

 

「だが被害を少なくするというのも戦の1つで軍師の仕事だ」

「は、はい!!」

 

諸葛孔明の言葉に朱里と雛里が頷く。

 

「ではまだ軍議を続けるぞ」

 

劉備陣営は遅くまで軍議を続けるのであった。




読んでくれてありがとうございました。
次回は…たぶん今日中か明日中です。

今回は軍議だけでした。
今のところは原作とあまり変わらない流れですが少しずつ本来の流れと変化していきますので。

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