Fate/Grand Order 幻想創造大陸 『外史』 三国次元演義   作:ヨツバ

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今回も洛陽での話です。
そして物語も次の段階に入る手がかりを得ます。
どんどんと物語は進んでいきますよ。


手掛かり

37

 

 

張遼たちとの食事会で客将をしてみないかという誘いがあった。似たような事は紫苑の所でやっていたがまさか官軍から直々に誘いがくるとは思わなかった。

最初は断ろうとしたが、諸葛孔明から一旦考えさせてくれと割り込まれる。どうやら何か彼に考えが有るのだろう。

食事が終わった後、ちょうど荊軻と燕青が帰ってきたのでこれからカルデア会議だ。

 

「どうだった?」

「そうだな…まあ色々と分かった事が有ったよ」

「そうそう。まさか霊帝に献帝、何進にはたまた趙忠も女だったぜ」

 

またも今まで男性だと思っていた人物が女性であったという事実。そろそろ慣れたいくらいだがやはり、虚を突かれるというかツッコミたくなるというか。

しかも色々と史実と違う部分がある。確か霊帝と献帝の関係は父と子だ。しかし荊軻たちの話を聞くと姉妹の関係だと言う。この部分で既に史実と違う。

この並行世界の時代はどうやら何かが違う。

 

「その中で怪しいのは居たか?実は英霊だったりとか」

「ないな」

「ああ、居ない」

 

彼らが見てきた人物の中に英霊は居なかったようだ。ならば他に情報が無いのか。

 

「うーんと…そうだな霊帝はまったくもって治世に興味が無いみたいだ。ただ美食に浸るだけの毎日っぽい」

「ふや、皇帝のくせしてか!?」

「まあ尤も霊帝をそうしたのが超忠のようだがな」

「他には?」

「やはり歴史通りなのか張譲が黄巾党と繋がっているらしい」

「歴史通りだね」

 

幾つか提示された情報はやはりこの時代にとって歴史通りの情報で在った。もっともこの時代からしてみれば大きな情報なのだが。

張譲が黄巾党と繋がっているという情報なんてそれは大きすぎる。

 

「あと何か気になるのが有るとすれば…その張譲が道士と関わりが有るとか」

「道士?」

「ああ。何でも太平要術の書とか何とか」

「太平要術の書か…気になるな」

 

道士に太平要術の書。確かに気になる部分だろう。

そもそも張譲が道士と繋がっているなんて聞いたことが無い。これはもしや何か有るのかもしれない。

そうなるとこの情報収集も無駄では無い。

 

「じゃあ、これから張譲と太平要術の書を調べてみる?」

「そうだな。やっと次の目的が明確に成ったな」

 

そうなるとどうするか。それは張譲と接触する事と、太平要術の書について調べる事に成るだろう。

 

「もし太平要術の書とやらが太平清領書ならばおそらく黄巾党の首魁である張角の手にいずれ渡ることになるだろう。ならば結局は黄巾党と戦わねばならない」

「本当にどっちにしろ張遼の誘いに乗るってかぁ。ま、いいがな」

「余計な戦いに為るかもしれないが…如何せん数が多い。最終的には張角に接触すれば良い。だがその前に太平要術の書を調べてみたいのだがな」

「張角の手に渡る前にか…そうなると太平要術の書が今どこに在るかだね」

「もうちょっと内側に入って調べてみるか」

 

 

38

 

 

霞の誘いをどうやら藤丸立香たちが了承してくれた。だが彼等にも旅のなか目的があるので、自分たちの好きな時に抜け出させてもらうという条件付きでだ。

元々旅人なのだからそれくらいは詠としても了承する。恋が彼等は強いと言っていたらしいから霞の案に乗ってみたがまだ様子見だ。

彼等が本当に力になるかどうか。今の状況として人材不足は否めないが、それでもいきなり何処の出か分からない奴等を雇うなんて普通はでき無い。

使えない様ならすぐにでも叩き出すつもりだ。こんな忙しい時に使えない者は要らない。

 

「…そう思ってたけど」

「おい賈駆。終わったから此方のを確認してくれ」

「くっふっふ妾の方も終わったぞ。ほれ、次のは有るか?」

 

物凄く助かっている。

正直に言って正式に雇いたいくらいだ。そして特に諸葛孔明という男に全て任せたいくらいである。

もし正式に雇えたならば彼に重要な案件まで任せることが可能だろう。

 

「あの、これ出来る?」

「任せろ」

「任せるのじゃ」

 

彼らでも手伝わせる事ができる案件はすぐさま処理していく。溜まっていた面倒事が順調に処理されて詠としては頭痛がなくなりそうだ。

今まで殆んど1人で処理してきたがやっぱり有能な部下って必要だと思った瞬間である。

 

「あと我らの主から連絡が来ているぞ」

「え、なんて?」

「指示された場所の黄巾党の軍勢を倒したから戻ってくるそうだ」

「ああ、なら次は此所に向けて移動してもらって。今度は其所に黄巾党の軍勢が現れたみたいだから」

「分かった。主にはそう連絡を出しておこう」

 

黄巾党との戦いもまた彼等のおかげで助かっている。よく霞から連絡を受けているが相当な武らしい。

恋が認めた事は本当で彼等の実力はまさに恋と同じ域に至って居るとの事。特に同じ名前である呂布奉先はまさに天災が通ったというのに相応しいらしい。

将として李書文や燕青達は性に合っていないようで一番槍として戦っている。だが俵藤太は将として的確な指示を出していつの間にか兵達に認められている。豪快かつ爽やかで気前が良く、料理上手で面倒見のいい兄貴肌な分、兵達と仲良くなるのはすぐであったのだ。

もっとも俵藤太は生前は武将であり兵を率いた経験があるのだから当たり前である。

 

「さあ、戦が終わったから飯だ!!」

 

そして黄巾党を倒した後は俵藤太主催で飯を食うのはもはや恒例である。そして移動の最中にて恋や霞達と合流すれば宴会騒ぎに成る。

 

「いやはや、流石は三国時代最強の英雄。呂布という名前に嘘偽り無し」

「だな。あんなポケーっとした顔のくせに戦場に立ったら恐ろしいぜ。たった1人で黄巾党の軍勢を倒したしな」

 

この時代の呂布、恋はその名に恥じぬ戦いを李書文達に見せてくれた。まさに一騎当千の将で今まで出会ってきたこの時代の武人とは圧倒的に開きがある。

李書文は自分の血が騒ぐのが抑えられない。武人として彼女と戦ってみたいという気持ちが止められないのだ。彼としてはいずれ戦ってみせると決めている。

 

「ありゃいずれは英霊になるんじゃね?」

「そうなの?」

「その可能性は有るなぁ。つーか並行世界でも呂布奉先だろ。なら成るだろうよ」

 

まるでこの時代の特異点に成りそうな位の強さだ。でも彼女が特異点という訳では無い。

どの並行世界でも三国志の『呂布奉先』という名前はとても圧倒的なのかもしれない。

 

「どや、ウチの恋は強いやろ~!」

 

いつの間にか酔っぱらった張遼が絡んできた。荊軻と酒盛りでもしてデキ上がったのだろう。まだまだ昼間だというのに。

 

「ああ、流石だ。これはこの大陸最強の称号は彼女のものだな」

「本当にな。もし恋が敵だったらなんて考えたくもないわ」

 

そんな黄巾党が恐れる呂布だが、俵藤太の美味しいご飯を頬いっぱいに掻きこんで食べていた。

本当に彼女はスイッチの切り替えがはっきりしている。今の彼女が黄巾党の軍勢の一角を1人で壊滅させたとは誰も思えない。

 

「…美味しい」

「おかわりならいくらでもあるぞ!!」

「…おかわり」

「おおとも!!」

 

デンっと白米のお代わりを恋に渡す。そして恋が頬に掻きこむ。その繰り返しが何度も続いて居る。

 

「ところで兵糧ってこんなに在ったっけ?」

「あ、自分ら持ちなので」

「魚やら肉やらまで…」

「それもこっち持ちです」

 

どっからこんなに兵糧が出てきたのかと疑問に思ったが酒に酔っているのですぐに忘れる。

 

「張遼~。酒のお代わり~!」

「お、荊軻っち。こっちに有るで~!」

「あ、ヤベ。荊軻の姐さんが傍若無人の手前になりそうだ!」

 

張遼は思う。こんな戦後の馬鹿騒ぎなんて久しぶりだ。洛陽に来てから今まで何進やら張譲やらの事でうんざりしていた。

だからこそ今のこの瞬間が面白い。また昔みたいに月や詠とも一緒に宴会したいものだ。

 

 

39

 

 

藤丸立香達がなんだかんだで董卓の元で働いている間、幾つか情報を手に入れた。

それは太平要術の書についてだ。なんでもある黄巾党が盗んで豫州の沛国に入り込んだという情報を手に入れたのだ。これは直ぐさま回収しに行くしかないだろう。

このまま沛国に向かって太平要術の書を回収しにいくのは良いが、きっと一悶着が起こるだろう。その一悶着で一々町の太守らと言い合うのは面倒なのだ。

前までならば旅人として動いても良かったが、最近は黄巾党が活発に成っているので町や州ごとに賊退治で動いているのだ。そこを旅のならず者が解決したという事に成ると彼らの面子に関わる。

ただでさえ、今は董卓の下で客将扱いになって居るので彼女達の為にも問題を起こすわけにはいかないのだ。

 

「と、言うわけで沛国の相に官軍である此方側から我々が行くと伝えてもらった」

「流石、孔明先生。仕事が早いです」

「これくらい当たり前だ」

 

早速、次の目的地に行く事が決まったので董卓たちに客将を抜ける事を言わねばならない。せっかく董卓軍の人達と仲良くなったが、この別れはしょうがないだろう。

出会いもあれば別れも有るという事だ。今までだってそうだったのだから。

 

「ーーというわけで、そろそろ洛陽から出発します」

「いきなりね!?」

 

藤丸立香の洛陽からの出発について聞かされた賈駆は彼らを引き留める。彼女からしてみればこれだけ有能な者たちを手放したくない。

特に長髪の男である諸葛孔明は重宝ものだ。

 

「え、出ていってしまわれるのですか?」

「うん。次の目的地が決まったからね」

「そんな…」

 

出ていくという事を聞いた董卓は悲しい顔をする。せっかく仲良くなれたのにだ。

信頼できる人は彼女には少ない。そんな中で信頼できる男性が現れたのにもう出て行ってしまうのは悲しいことだ。

 

「…藤丸。出ていく?」

「うん。俺達にも目的が有るからね呂布さん」

 

今度は呂布までが悲しそうな顔をしてきた。どれも友人の別れを惜しむような顔である。

何だかんだで此所でも信頼を得ているカルデア御一行。

人柄的にもに武力、知識と揃っている彼等を手放すのは軍事的にも私的でも惜しむのは当たり前。

 

「…やだ」

「そんなこと言われても」

「…どっかに閉じ込める?」

「止めてください呂布さん。てか、何で疑問形?」

 

何故か呂布が怖いことを言った。どうも彼女は色々とストレートに言ってくる。

だけど今回の事は彼女達も分かっているはずだ。此方には此方の目的が有るから抜けたい時に抜けると告げていたのだから。

 

「しゃーないよ。藤丸っちは正規の軍じゃないしな」

「はあ…ま、前から言ってたしね。確か沛国に行くんだっけ?」

「うん。そこに目的の物が有るかもしれないんだ。それを回収するのが俺らの役目だしね」

「では、無かったら?」

「また探す。見つかるまで繰り返しだよ」

「では、見つかっても見つからなくてもまたいらしてくださいね」

 

董卓が優しく手を握ってくる。全く持って彼女が本当に暴君になるのか信じられない。

 

「うん。また縁があれば会えるよ」

 

カルデア御一行。今度は豫州の沛国へ。

 

 

39

 

 

何処かの屋敷にて。

 

「ふん。何進め…余計な事を」

 

十常寺と何進との対立は最近どんどんと悪化している。元々仲は良くなかったがお互いに牽制しあっているのだ。

お互いに霊帝との繋がりが深い分、中々出し抜くことができないのだ。

 

「ただの肉屋だった奴が威張りおってからに…」

「ただいま戻りましたよ」

「む、于吉か。最近姿を見なかったから死んだかと思ったよ」

「まさか。冗談が下手ですねえ」

 

気が付いたら気配もなく後ろに控えていた于吉。こういう所も張譲が彼を嫌う要因の1つだ。

誰だって気配無く後ろに立たれていたら嫌だろう。

 

「今まで何処に行っていた?」

「太平要術の書が何処に在るか探っていたんですよ。見失う分けにはいきませんので」

「ふん、燃やされたとなったら最悪だな」

「それはあり得ませんよ。アレはきっとある人物の手に一旦渡ります。そしていずれ此方に戻ってきますので」

「その確信はどこから出てくるんだ?」

「私の占いから」

 

その言葉を聞いて溜息を吐きそうになるが堪えた。やはりこいつも胡散臭い。

名前を忘れたが胡散臭い占い師が『天の御使い』やらなんやらを言ってたのを思い出す。その占い師と同じくらい于吉も胡散臭いのだ。

 

「まあいい。順調なら構わないさ。此方は何進の相手をするので忙しいからな…太平要術に関しては任せた」

「はい。お任せください」

「では、私はそろそろ休む。最近身体の調子が悪いからな」

「はい。お身体には気を付けてくださいね」

 

張譲は頭を抑えながら自分の部屋へと戻るのであった。

完全に張譲がこの場から消えたのを確認してから于吉が口を開く。

 

「ふむ、張譲も利用できるだけ利用しませんとね」

 

特にカルデアと一戦交える事がある場合はできるだけ戦力が欲しい。そして人外筋肉達磨たちの相手をするのもだ。

 

「やっとカルデアが洛陽から出て行ったので一安心ですね…まあもしかしたら感づかれはしてるかもしれませんが」

 

 

40

 

 

紫苑たちはまさかの人物たちと遭遇していた。

 

「紫苑じゃない、黄忠ちゃんね。ということは…ここは」

「あ、貴方たちは一体?」

 

紫苑たちの前には医者が1人と筋肉達磨が2人いる。紫苑たちは気にしていないが焔耶は流石に自称巫女と自称踊り子である筋肉達磨たちに警戒していた。

 

「…どうやら時期的には黄巾の乱辺りなのねん。さて、この外史だとご主人様がどの陣営にいるのかしら?」

 

調べるとしたらやはりあの3陣営だろう。基本的にはよくあの3陣営にいることが多い。だがたまに違う陣営になったりするから外史とは分からないものだ。

 

「ねえ黄忠ちゃん。北郷一刀って名前の人知ってる?」

「北郷一刀……いえ、知りません。ごめんなさい」

「そう。ありがとねん」

 

どうやらこの陣営にはいないようだ。やはり3陣営を調べるのが一番のようだ。

それともう1つ調べなければならないことがある。この外史の異常についてだ。

 

「他に変わったことって有ったりする?」

「変わったことね…いえ、特には」

「いや、有ったじゃないですか紫苑様。ほら、前に出会った彼奴ら」

「もしかして…立香さん達の事?」

「リツカ?」

 

聞いたこともない名前だ。今まで幾つかの外史を見てきたが『立香』なんて名前は聞いたことも、会ったことも無い。

 

「どんな人なの?」

「とても良い人よ」

「まあ、藤丸を合わせて2人は変わった服を着ていたけどな」

 

そう言って厳顔は器用に地面に藤丸立香と諸葛孔明の服をスイスイと描く。その服はこの時代的な着物等ではなく、現代的なスーツや洋服である。

それを見た筋肉達磨達はお互いを見て頷く。

 

「名前は何ていうのかしら?」

「藤丸立香という名前よ」

 

更に他のメンバーの名前を聞いて筋肉達磨たちは目を見開く。

 

(なあ、貂蝉よ…)

(ええ、どうやら早速この外史でのイレギュラーの情報を得られたようね。それにしてもまさか正史の偉人たちも来ているかもしれないとはね)

「どうしたの?」

「いえ、何でもないわん。ところでその人達は今どこに?」

「確か洛陽に行くって…」

「なぁるほどねぇん」




読んでくれてありがとうございました。
次回もゆっくりとお待ちください。

今回の物語で出てきた『太平要術の書』。まずは、それを巡る事になっていきます。
于吉も貂蝉たちも立香たちがいる外史にて動き始めてます。
そして貂蝉たちは藤丸立香たちをロックオンしたようです・・・

次回は豫州の沛国へ。そうなると登場する恋姫キャラはあの親子ですね。

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