Fate/Grand Order 幻想創造大陸 『外史』 三国次元演義   作:ヨツバ

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FGO2部第五章。まだクリアしていないですけど物語にとても興奮します。
様々なキャラの活躍に胸躍りますね!!
まさかあのキャラが戦闘に参加するとは予想外です。(イベント戦でしたが強い!?)

さて、こちらの本編もついに第3章も終結に向けて最後の戦いです(藤丸立香組)。
どのような展開になるかは本編をどうぞ!!


反董卓連合-怨霊退散-

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「あははははははははは。やったぞ。これで忌々しい董卓は死んだ。さらにボクの邪魔をした小僧も死んだ。あとは反董卓連合の有象無象どもを消せば洛陽はボクのものだ!!」

 

張譲の高笑いが響き渡る。その笑いはまさに勝ち誇ったものだ。しかし、まだ終わってはいない。

 

「あはははは…ん?」

 

何かに気づいた張譲は笑うのを止めて自分が攻撃した箇所を見ると怒りが込みあがった。

 

「おのれ…まだしぶとく生きるか!!」

 

藤丸立香たちはまだ生きている。

張譲の攻撃が放たれた瞬間に秦良玉、哪吒、玄奘三蔵の3人が藤丸立香と董卓たちの前に出て壁となったのだ。

彼女たちはそれぞれスキル『盗賊打破(B)』、『霊珠子(A)』、『妖惹の紅顔(A)』を発動して耐え切ったのである。妖力放出を食らった影響で身体に焼け焦げた跡があるが問題なく構え直す。

彼女たちが構え直すのと同時に藤丸立香は魔術礼装のスキルである『全体回復』を使用する。

 

「ありがとうございますマスター」

「いや、こっちのセリフだよ。守ってくれてありがとう。秦良玉、哪吒、三蔵ちゃん」

 

藤丸立香たちは勝つ気でいる。そんな意思を感じさせる彼らの目がとても気に入らない張譲。

 

「どうしてそこまでするんだ!!」

 

張譲は吼えた。藤丸立香たちと張譲の関係なんて全くもって何も無かった。

最初は董卓がどこからか見つけてきた人材に過ぎないと思っていた。計画の邪魔にすらならないものだと思っていたが悪龍となった張譲を打倒し、怨霊となった張譲の前にまた立ちはだかったのだ。

関係ない者が二度も邪魔してくるという行為に怒りはフツフツと湧き上がる。

 

「貴様らは董卓のなんだ。何故そこまでするんだ。所詮、貴様らは董卓の客将に過ぎなかっただろうに…そして今度は反董卓連合に混じってまで何をしにきた!!」

 

張譲は藤丸立香たちが何故ここに来たのか分からない。反董卓連合に混じってまで来て董卓に何の用があってここまで来たのか。

 

「そんなの月さんを助けに来たに決まっている!!」

 

何故ここまで来た理由なんて簡単だ。助けに来たのである。たったそれだけの理由だ。

 

「な…助けに来ただと。それだけか?」

「そうだ。助けに来たんだ」

「助けに…あははははははは!! 助けに来ただと。董卓は逆賊だぞ。殺されるのが決まっていながら助けにきたのか!!」

 

月は反董卓連合から逆賊として認定されて狙われている。どの諸侯に捕まって処刑される運命しかない。ならば今ここで助けたとしても何も変わるはずが無いのである。

彼らの無駄な行為に張譲は笑いが込み上げてくる。こうも無駄な事をする人間に対して笑いしか出ないのだ。

 

「無駄なことじゃないか。そもそもそんな事をして首を絞めるのはお前たちじゃないか!!」

 

嘲るような笑いが響くが藤丸立香は表情を変えることなく真っすぐに張譲を見る。

 

「確かに無駄と言われてもしょうがないかもしれない」

「何だ分かってるのか。分かっていながらやっているのなら貴様は馬鹿じゃないか」

「でも助けたいという気持ちに嘘はつけないんだ!!」

「なぁっ!?」

 

藤丸立香の月を助けたいという本心は嘘ではない。

反董卓連合という状況の中で月を助け出すのは無謀もいいところだ。

普通は無理だと考えるはずである。しかし藤丸立香だけが助けたいわけではない。他の者たちも月を助けようとしているのだ。

助け出せる可能性は0ではない。可能性があるからこそ助けようと動いているのだ。

 

「やらないで後悔するよりやった方がいいだろ。無駄な行為を意味あるものにするために!!」

「立香さん…」

 

藤丸立香は月の手を握る。

 

「月さん君は生きてもいいんだ。世間からは大罪を犯した者として言われるけど…生きてほしいと心から思う人だっているんだ!!」

 

月は反董卓連合によって大罪を犯した人物になってしまった。真実が捻じ曲げられてしまい誤解を解くことすらできない状態だ。それでも彼女に生きてほしいと願う人だっているのだ。

詠や霞たちがそうだ。月の部下たちだってそうだ。月が今の漢を変えるために自らの手を汚す事を決めたとしても詠たちはついていく事に不満はなかった。

反董卓連合が攻めてくると分かった時も月を守るために戦ってくれている。そんな彼女たちは月が生きてほしいと思うのは当然である。

 

「でも…私は漢を建て直せなかった。詠ちゃんたちを苦しめ、部下たちも反董卓連合で死なせてしまった。献帝陛下も危険にさらしている。私は大きな罪を犯している人間です。そんな私が生きていいだなんて…」

「月そんな…私は苦しんでなんか。それに霞や恋たちだって苦しんでないわ!!」

「詠ちゃん。でも私は…この手は真っ赤な血で濡れて」

 

彼女が粛清したのは腐った官僚だけだ。だが更に反董卓連合で死ぬはずがなかった部下は戦死した。それは自分のせいで、自分が殺したと月は思っている。

張譲に憑りつかれて精神を摩耗させられていた彼女は酷い鬱に近い状態までになっているのだ。

 

「月お願い。生きて!!」

 

詠は月に生きてほしいと心の底から思っている。そのためなら自分がどなってもいいと思っているくらいだ。しかし今の彼女の言葉では月の心の奥までには届かない。今の彼女に言葉を心まで届かせるには彼女が食いつく何かが必要だ。自分が生きても良い理由が必要なのである。

詠は月の横にずっと一緒に居て、同じ罪を被ったつもりでいるが月はそう思っていない。信頼していないからというわけではなく、月自身が全ての罪を背負うと決めたからである。

全て自分のせいにしているのだ。この罪を詠まで被らせるわけにはいかないという優しさだ。

詠がその理由を知ったら月に対して怒るが、今の段階では分からない。

月の心に届かせるには彼女と同じく大きな罪を持ちながらも生きる必要があった者の言葉しかないかもしれない。そんな人物が偶然にもいるのだ。

 

「月さん…あなたは自分が、自分のせいで多くの人を殺して国さえ建て直せなかった罪に対して生きることが耐えられないんだね。その罪を清算するために犠牲になろうとしている」

「立香さん…?」

「それが理由なら俺はもう死んでるよ」

「…え?」

「俺も…自分たちのために戦う旅をしているんだ。それはまだ終わっていない。その旅で俺は月さんよりも大罪を犯してしまった」

 

急な藤丸立香の告白に月は視線を真っすぐに向ける。彼の顔はとても悲しそうであった。

 

「俺は戦う相手の命どころか、何の罪もない人たちまでも殺したんだ。その数は月さんが思うよりも多い」

「え、それは…」

 

まさかの告白に月は自分の負の感情が一瞬だけ消える。彼が嘘を言っているようには感じられないが、言っている内容は信じられない。

短期間ではあるが彼の人柄から罪もない人たちを殺すなんて信じられないのだ。

 

「本当なんだ。俺も月さんと同じだよ。いや、それ以上の罪人かもしれない」

 

彼が罪もない人たちを殺したというのは異聞帯の話だ。汎人類史を取り戻すために異聞帯を攻略するというのは異聞帯に生きる罪のない人たちをも殺してしまう事を意味している。

その事が分からない月にとっては全く理解できない。

 

「俺だってその時は何も考えられなくなったさ。絶望したさ。でも命を賭して俺を救ってくれた友がいたんだ」

 

友がいた、という過去形。その言葉で月は察した。

彼が言う友とはロシアの異聞帯で出会った人物。彼は藤丸立香の事を友かどうか思っていたかは分からない。だが藤丸立香は友だと思っている。

 

「取り戻す旅をする過程で俺は友を無くした。でも月さんはまだ間に合う。友を無くさないで済むんだ」

 

月はゆっくりと詠を見る。自分の大切な友人。今まで一緒に居てくれた親友。

 

「俺にはまだやるべきことがあるんだ。だからこんなところでは死ねないといつも奮起している…こんな俺でも生きてやるべきことがあるんだ月さん」

 

藤丸立香の旅はまだ終わっていない。汎人類史を救うために前に進まなければならないのだ。

 

「月さんにだってやることはまだあるだろ?」

 

月にもやるべきことはある。反董卓連合なんてものが起こってしまったが彼女は献帝を影から支えると決めた。詠たちを守ると決めたのだ。そのために自らが汚れてまでもいいから行動を移したのである。

 

「こんな俺が生きているんだ。なら月さんだって生きてもいいはずだよ」

 

藤丸立香は精一杯の笑顔を月に向ける。その笑顔は無理してのものだと分かる。だがそんな無理した笑顔が月の心に突き刺さる。

 

「同じ大罪を犯した者同士だ。一緒に生きよう。月さんの無事を待っている人がいる」

「り、立香さん…」

 

月の目から涙がポロポロと垂れる。

こんな自分でも生きて良いと言ってくれた。同じ立場の人が一緒に生きようと言ってくれた。

自分だけが同じ苦しみを持っているわけではなかったのだ。寧ろ自分よりも苦しい思いをしている人がいて、その苦しみに耐えながらも未来に向けて歩いている人がいる。

 

「私は…生きてもいいんですか?」

「うん」

 

お互いに手を握る力が強くなる。

 

「月…」

「ごめんね詠ちゃん。私…生きてもいいんだよね?」

「もちろんよ。誰がなんて言おうがボクが月を守ってあげるからね!!」

「あ、ありがとう詠ちゃん」

 

詠も月の手を握る。そのまま守るように抱擁する。

精神が摩耗した者を癒すには友が必要だ。同じ立場からの言葉が必要だ。

彼女は運が良い事に大切に想ってくれる友人がおり、同じ立場でありながら耐え抜き未来へ足を歩めている人がいたのだ。

彼女を苦しめていた張譲の言葉も心の中から消え去っていく。今の月は生きてもいいと、生きようと決めて足掻こうとしている。

そんな彼女を邪魔させるわけにはいかない。そのために彼女を苦しめる原因を倒さねばならない。

 

「秦良玉、哪吒、三蔵ちゃん!!」

「いつでも!!」

「戦闘準備完了」

「月ちゃんのために頑張っちゃうんだから!!」

 

決着をつけようと藤丸立香たちは張譲と巨大骸の妖魔を鋭く見る。

 

「何を言おうがしようが死ぬしかない未来だ。ボクを苛つかせて死ぬとは最後まで癇に障る奴らだ!!」

「死なないよ。まだ死ねないんだ。意地汚くても生きてみせる!!」

 

張譲は巨大骸の妖魔を藤丸立香たちに差し向け、その間に張譲は妖力を溜める。

 

「決めるよ!!」

「はい。マスター、宝具の許可を。あの巨大な骸は私に任せてください!!」

「分かった。頼む!!」

「はい!!」

 

藤丸立香は秦良玉に魔力を送る。

秦良玉は跳んで巨大骸の妖魔へと迫り、宝具『崇禎帝四詩歌』を発動した。

 

「卑小非才の身なれど、この信頼には全てを捧げましょう。『祟禎帝四詩歌』。此処に!!」

 

秦良玉に対し、時の皇帝崇禎帝が送った四つの詩歌がどこからもなく舞い降りる。

 

「ハッ、参ります!!」

 

巨大な骸の手が秦良玉を掴もうとするが身体を捻りながら躱し、トネリコの槍を振るう。

彼女の宝具は様々な能力があるのだ。

 

「ハアアアアアアアアアア!!」

 

秦良玉は巨大な骸の妖魔を全体的にトネリコの槍で突き、薙ぎ払い、振るった。

宝具の能力が巨大骸の妖魔の身体を徐々に侵食していく。その効果はすぐにでも露見するのであった。

 

「そんな棒切れのような槍一本でどうにかなるとで…も!?」

 

たかがトネリコの槍一本で自分が作り上げた凶悪な妖魔をどうにかできるとは思っていなかったのだ。しかし予想外の事が起きたのである。

巨大な骸の妖魔の身体が徐々に崩れ始めていったのだ。更に張譲が与えていた妖力も消え始めている。

 

「何が起きている!?」

 

宝具『崇禎帝四詩歌』の能力には相手の防御を下がらせる効果と強化を消す効果がある。

秦良玉はその能力を駆使して巨大な骸の妖魔の身体を脆くし、崩したのだ。更に妖力による強化を解除し、再生すらもさせないようにしたのだ。

全体的に攻撃しており、既に巨大な骸の妖魔は脆く動いただけで崩れる程にまでなっている。

 

「馬鹿な!?」

 

ただの槍兵かと思えば何か力を持った者だと判断。すぐに溜め込んだ妖力を秦良玉に放とうとしたが真上に気配を感じて視線を上に向ける。

 

「あいつは!?」

 

気が付けば哪吒が張譲の真上で旋回していた。

 

「これで封じる!!」

 

玄奘三蔵がシャンっと錫杖を鳴らすと張譲の周囲に緊箍児が現れて締め上げる。

 

「これは前にもあったやつか!?」

 

悪龍となった張譲を締め上げたのも玄奘三蔵の緊箍児だ。その記憶が蘇り張譲は声を荒げる。

今がチャンスだと藤丸立香は令呪の刻まれた手を翳す。

 

「令呪を持って命じる。哪吒、俺らに勝利を!!」

「了解 ますたー!!」

 

令呪を一画使用し、魔力を回して哪吒に宝具の発動準備をさせる。魔力が回ってきたのを感じた哪吒はすぐさま張譲へと宝具を撃つべく魔力を解放。

蓮の花が開き、完全に宝具が撃てる状態になった。張譲と巨大な骸の妖魔を捉えて一気に降下した。その身に炎を宿して。

 

「な、なんだ!?」

 

張譲の視界には炎を纏った者しか映らない。

 

「これで 決着 怨霊滅殺!!」

「決着も何もあるものか!!」

 

炎を纏って落ちてくる哪吒に対して張譲は無理矢理にでも緊箍児を破って全力の妖力を放出した。

 

「貴様が死ねぇええええ!!」

「死なない!!」

 

哪吒の宝具と張譲の妖力がぶつかり、せめぎあう。

どちらの威力も朝廷内を破壊するほどのものだ。普通だったらすぐにでもその場から逃げ出したいが藤丸立香は逃げない。

どのような戦いでも英霊が戦ってくれるのならば逃げる事はしない。彼は英霊たちと一緒にいる。

 

「哪吒。勝ってくれ!!」

「了解!!」

 

藤丸立香は限界まで魔力を回した応援に哪吒は応えたように張譲の放出された妖力を裂くように突っ込んで行く。

 

「な、なんだと!?」

 

張譲の渾身の攻撃を切り裂いて張譲と巨大な骸の妖魔を同時に炎が飲み込んだ。

 

「怨霊 滅殺!!」

「ぐあああああああああああああああああ!?」

 

哪吒の宝具『地飛爽霊・火尖槍』で巨大な骸の妖魔は炭にすらならず消滅した。

 

「な、何で、今度こそ、ボクは、この国を手に入れるはずだったのにぃいいいいいい!?」

 

張譲との2度目の戦い。

前回は悪龍で今回は怨霊となった張譲は今度こそ完全に消滅したのであった。

 

「張譲……あなたにも夢があったのかもしれない。でも、そのために月さんを犠牲にさせることはできない」




読んでくれありがとうございました。
次回は…今日中です。
次回の内容は北郷一刀組の話がメインですね!!


さて、今回の物語は色々と考えた結果こうなりました。
藤丸立香も別の観点から見れば罪人(個人的な考え)。自分たちの世界を救うためとはいえ、異聞帯の生命を消していますからね。そこが2部の物語でも大きな1つですね。

月を呪縛から救うためには詠や立香の言葉が必要…これはまあ、そう思ったから書きました。
鬱になった事は無いですけど、やっぱ落ち込んだ時は心から許した相手や友人、家族の慰めが一番ですよね。甘えたくなります。


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