Fate/Grand Order 幻想創造大陸 『外史』 三国次元演義   作:ヨツバ

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あけましておめでとうございます!!
2020年ですね!! 今年も良い年になるといいです!!


反董卓連合-連合の解散-

322

 

 

洛陽の復興からしばらく時が経ち、桃香たちは都を離れてようやく幽州への帰路に着いていた。

 

「じゃあ皇甫嵩さん…楼杏も一緒に来てくれるのか」

「ええ。風鈴さんもいるし、袁紹の息のかかった朝廷に残るのもね。ただ…」

 

楼杏の言いたい事をすぐに分かった北郷一刀。それは都にいる間中ずっと気にしていた事。

董卓もとい月の安否である。その事をずっと気にしているのが桃香だ。

 

「…桃香ちゃん、月ちゃんの事ずっと心配していて」

 

結局、最終日まで色々と情報を集めたが董卓も皇帝も見つからないままであったのだ。

 

「袁紹たちは司隷に残ってるし、捜索の手をどんどん広げてるだろ?」

「私たちの陣地にも調査って言って来たものね」

 

城内にいた所を見つかってマークされたのだ。まさか徐州の陣地まで家捜しに来るとは思いもしなかった。

その時ばかりは風鈴が見つからないで本当に良かったと思うものだ。

 

「やっぱり孫策さんか、曹操さんが匿ってるんでしょうか?」

「あのお二人が見つけてるなら、すぐに朝廷にお戻しすると思うけど…それに孫策さんは

 

玉璽を見つけたっていう情報もありますから。天子様を見つけて玉璽を見つけたならもっと違う動きをすると思います」

雪蓮は朝廷のゴタゴタには興味が無い。曹操なら朝廷に関係者が多いので、そのまま皇帝を担ぎ上げた方が色々とスムーズに進むだろう。

他にも色々な可能性が挙げられるが、結局のところ断定するには情報不足と結論が出るだけであった。

 

「ああ、そうだ。朱里さん。帰り道に知り合いの城があるのよ。糧食の補給もさせてもらえるし、寄ってもらって構わない?」

「楼杏さん。それってもしかして」

「ええ、立香さんが思っているので間違いないわ」

 

皇甫嵩もとい楼杏の口ぶりからピンときた藤丸立香。さらに分かる者たちもピンとくる。

その事が分からない北郷一刀や桃香たちは頭にハテナマークだ。しかし、分かれば彼女たちの心配は無くなるものだ。

楼杏の案内で訪れた司隷の外れにある小さな城。

 

「楼杏さん…風鈴さん」

「月…この人たちは誰?」

 

小さな城の小さな庭にいたのは、ふわふわの人形みたいに可愛らしい女の子と、その子に甘えるもっと小さな女の子。

その彼女たちが自然と口にした真名は何者か推し量るには十分過ぎるものであった。

 

「……月ちゃん。それに天子様まで!?」

 

最初に驚いたのは風鈴であった。

 

「この方が…董卓さん!?」

 

次に桃香も静かに驚いた。

 

「はい。私が…董卓と申します。貴女が劉玄徳殿ですね」

「はい…お会いするのは初めてですね。ご無事で…良かった」

「…ごめん、だいぶ状況が理解出来てない。どういう事? なんでこんな所に天子様と董卓が? 楼杏の手引きなの?」

 

北郷一刀を含めてほとんどの者が頭にハテナマークだ。

 

「ま、そりゃそうだよね」

「馬岱!?」

「ま…追々説明するよ」

「馬超まで…!!」

 

いきなり現れたのは馬超と馬岱という名のものであった。

 

(あの人が馬超…)

 

これで蜀の主要人物の全員に会った事になる。やはりと言うべきが五虎大将は全て女性であった。

 

(まあ、予想してたけど)

 

これから長い詳しい説明が始まる。

まずは馬超たちがここにいる理由だ。彼女たちは元々、反董卓連合に加わるはずだった。しかし、その前に楼杏が接触して月側の事情を全て話したのだ。

事情を全て話して協力を申し出たのだ。こうまでした理由に関しては、やはり月たちの動きが急ぎすぎているということだ。

今回の事はきっと必ず大きな反発があると予想していた。その予想がまさか反董卓連合なんて大きすぎるモノとは予想を大きく上回ってしまったのだが。

 

「理想としては反乱軍を退けて、このまま血の入れ替えを続けることだったけど…それが出来ないって分かったら、月は限界まで事を進めて全部の反感を自分に集めて一緒に退場するつもりだったんだよ」

「…そうすることで次の人が受け入れられやすくなり、当面は人心の安定が図れると」

「ええ。確かに月さんのしたことは称賛されにくいこと。だからといってこのまま死なせていいとも思えない。だから私たちは密かにこの城を用意したのよ」

 

詠たちも月を救うために秘密裏に画策していたということだ。それも月自身も知らせずにだ。

 

「それにしても…恋さんや霞さんにも内緒って。せめて、みんなには心配させないようにしたかったのに」

「この計画は、本当に誰にも知られちゃいけなかったのよ。後で集まる事になって、そこから追われても困るし…」

「そうですね。実際に呂布さんと陳宮さん、華雄さんの逃げた先は、ある程度までは絞り込めていますし」

 

恋たちは南の方へと逃げたと情報がある。その辺りの情報がまとまったのは雪蓮たちが帰った後であり、結局誰も討伐には出ようとしなかった。

 

「まあ、勘の良い霞やねねあたりは気付いているかもしれないけど…ボクも楼杏も馬超に任せていたし、場所は分からないと思う」

「…だな、張遼も賈駆が何か企んでいたみたいだけど、場所まではわかんないって言ってた」

「霞さんも無事だったんですね…良かった」

「ですが、楼杏さんが知っているなんて、全然気付きませんでした」

「私だって漢の中郎将だったんだもの。このくらいの嘘は隠しきってみせるわよ」

 

この程度の事が出来なければ朝廷では生き残れないと言っているようなものだ。

 

「で、こうやって楼杏が来たって事は、ボクたちの処遇が決まったって事だよね。どうするの? 聞いた話じゃ、今の洛陽は袁紹の天下なんでしょ。ボクと月を突き出せば…ううん、先帝陛下いらっしゃるから恩賞はそれこそ思いのままだろうね」

「先帝陛下って…霊帝陛下もいらっしゃるの!?」

「天子様がどうしてもって言うから。大変だったんだよー」

「そりゃそうだろうな…よくもまあ、気付かれずにそこまでやったもんだよ」

「それで? ボクはもう出来る限りの事はしたつもりだから、この後の判断はそちらに任せるよ。ひとつだけお願いがあるとしたら月の命だけは助けて欲しい。出来ればもう、表舞台には出ないようなところで」

 

賈駆がちらりと視線を向けたのは公孫賛だった。

そんな彼女がしばらく考えるように目を閉じる。

 

「……桃香はどうしたい?」

「わたし? でも…決めるのは白蓮ちゃんじゃないの? それか、風鈴先生か…」

「私が白蓮ちゃんに預かってもらってる身だもの。お願いはしたけれど…判断は白蓮ちゃんに任せるわ」

「徐州も今回の作戦では全ての判断を幽州にお預けすると約束していますので」

「あたしは董卓とも十分話せたし、後の事に干渉するつもりはないよ。ここでの事は母様にも話さないつもりだ」

「私も董卓の事は気になってたけど…先生に言われなかったらこんな事までしなかったと思う。けど…桃香は自分から董卓を助けたいって言っただろ。だからお前の意見を一番に考えたいんだよ。桃香はどうしたい?」

「わたしは……」

 

桃香の気持ちはもう決まっている。

彼女は目を閉じる事もなく、ただ言葉を選ぶだけの時間をかけるだけで公孫賛への答えを口にしていた。

 

「董卓さんたちを、もうあの中に帰したくない。連合の中もずっとみんながみんなを利用し合って、すごく息苦しかった。でも朝廷はそんなのが比べ物にならないくらいの場所なんだよね。わたしは董卓さんたちがこれ以上苦しますに済むような…そんな場所を作りたいし、優しい人たちにはずっと笑ってて欲しいって思うよ」

「夢のような話ね」

「うん…自分で言っても、そうだって思う。だけど、そんな夢みたいな場所が本当に作れたら…作れるならいいとも思ってるよ」

 

彼女の夢は絵空事だ。それでも本気で叶えたいと思っているのは絵空事ではない。

 

「愛紗ちゃん、鈴々ちゃん。3人で旗揚げしたわたしたちが、ご主人様を加えて白蓮ちゃんの所に行って、今は平原の相なんだもの。もっともっと頑張れば、そんな場所もできるかもれない。もしわたしがそこに辿り着けなくても…走り続けていれば、きっと誰かがわたしの気持ちを継いでくれるよ」

「でしたら…その場所は、私たちがご用意させていただきますわ」

 

ここで孫乾がニコリと笑う。

 

「…どういうこと孫乾さん?」

「桃香。お前。徐州に行け」

「へ?」

 

それは唐突な申し出であった。

 

「実はな。私も桃香に一つ、隠し事をしていたんだ」

「はい。徐州の我が主、陶謙は玄徳殿を後継にとお考えなのです」

「えっ? また噂の話ですか…?」

「まさか。電々さんと雷々さんのお話や信頼の置ける旅の証人たち、そして青州での活躍を受けての事ですわ。もちろんそれだけでは不十分でしたので、こうして私が見定めを任されたわけですが」

「じゃあ、何かと桃香を気にして素振りって…どこかの間諜とかじゃなくて…」

「ふふっ。陶謙さまの間諜ではありますから、間違ってはいませんけれど」

 

徐州の命運がかかっているから色々と危険を省みずに手を貸して入れくれたということだ。

 

「ですが、それだけではありませんわよ? 私自身が玄徳殿に心を動かされたからこそ、です」

 

北郷一刀がちょいとドキリ。どうやら内心を見透かされたようだ。

 

「でもわたし、平原も預かってるし」

「桃香の夢は相ひとつで収まるものじゃないよ。それにいつまでも私の部下として収まってて良い器でもないしな」

「そんな事…!!」

「もちろん、最後に決めるのは桃香だ。平原に戻っての準備もあるだろうし、ゆっくりと決めるといい」

 

いきなりすぎて本当に訳が分からなくなる。なにせ本当に徐州のトップになると言う事なのだから。

 

「…そういえば立香は董卓がここにいるって知ってたのか?」

「うん。…ごめん。言わないでくれって口止めされてたんだ」

「まあ、先ほどの説明で知ったけどさ。ま、しょうがないか」

 

詠も言っていたようにこの作戦は誰にも知られるわけにはいかなかったのだ。

 

 

323

 

 

小さな城の小さな庭にて。

 

「徐州? そう。また移動なのね」

「次は、もう少し乗り心地の良い車を用意してくださいませ」

「出来る限りのご用意はさせていただきます」

「あの人が…霊帝」

 

楼杏が話しているのはさっきの話で先帝陛下と呼ばれた女性だ。

月の脇にいた今の天子である献帝もいきなりだったが今度は流石に気後れしてしまい、少し離れた所から様子を見る北郷一刀であった。

 

「うん。なんだかふわふわしてて、可愛らしい子だよねぇ」

「ちょっと蒼、天子様に失礼でしょ!!」

「えー。でも、もう天子様じゃないから平伏とかもしなくていいって聞いたよ?」

 

隣にいる2人の女性は馬鉄と馬休。彼女たちも馬超の関係者だ。

 

「北郷さんたちはこれから天子様たちのお名前を真名で呼ぶんでしょ。すごいよねえ」

「普通にお呼びするとすぐに素性が伝わってしまうから仕方なく、よ」

「ええと…君は馬超と馬休の妹さんだっけ?」

「そだよ。馬鉄っていうの、よろしくね」

 

やけに距離が近い人である。

 

「いやぁ…鶸ちゃんたちが恰好良かったとか素敵な人だったとか言ってたからどんな人かなーて思ってたんだー」

 

目をキラキラさせながらグイグイと近づいてくる馬鉄。

 

「え、あの、ちょっと!?」

 

ものすごく近くて息が掛かってる。そして何か良い匂いもする。ドキドキするのは年頃の男性なのでしょうがない。

 

「こ、こら!! そんな話してないでしょ!! あ、いや、北郷さん、北郷さんが素敵じゃないとか、そういう話ではなくって…ですね?」

「あ、うん。分かってるから大丈夫。そんなに慌てなくていいから。ええと…馬家のみんなは、この後どうするの?」

 

そんなテンションの高い馬鉄を引き剥がしてくれた馬休に苦笑しつつ、話題を切り替えてみせる。

 

「しばらくは公孫賛殿の所でお世話になって、ほとぼりが冷めた頃に西涼に戻る話になっています」

「そうだな…その方がいいか。本当だと楼杏と戦って西涼に戻ってるはずだもんな」

「姉さんとしては楼杏さまにもう一度勝負を挑みたい気持ちもあるみたいですけど」

「まあ…聞いた状況だと、思いっきり頭に血が上ってたみたいだしな」

「お姉ちゃん、普段からあんな感じだけどねー」

「…もう。そんな恥ずかしい話、しないでいいでしょ!!」

 

曹家の姉妹は姉の方が大概フリーダムであったが、馬家の姉妹は末っ子が一番自由のようである。

 

「…うーん」

「どうかしましたか北郷さん?」

「ああ…いや。天子様…空丹や月にあの恰好でその辺ウロウロされるとさ」

「性欲を持て余しちゃうう? 董卓さんとか、すっごく可愛いもんね」

「違う!!董卓だってバレない恰好とかにした方がいいかなって思ったんだよ」

 

案外、馬鉄という女性はアレな感じであった。

そんな彼女たちが覗いている場所とは別の場所にて。

藤丸立香と秦良玉も別の場所で霊帝たちの様子を見ていた。正確には霊帝の隣にいる趙忠の様子を見ていた。

趙忠は張譲の部下であった。しかし張譲の方針とは合わず裏切ったのである。

元々は敵であったため、すぐには警戒を無くす事はできない。

 

「…趙忠さんの事どう思うリャンさん?」

「そうですね…油断は出来ない方だと思います。あの方は何と言うかこう……」

「腹黒い?」

「そうです」

 

趙忠の事は会ってみて確かにすぐに信頼出来なかった。

助けて欲しいと言われても罠では無いかと思った程である。だがあの時は選択肢なんて無い。

 

「趙忠は確かに油断出来ない奴だ。あれでも十常侍の1人だったからな」

 

トコトコと歩いてきた諸葛孔明。

 

「あ、孔明先生」

「先ほど詠殿から趙忠の事は聞いた。油断は出来ないが…彼女の目的は霊帝との健やかな生活らしい」

「霊帝との健やかな生活?」

「ああ。それさえ邪魔されなければ危険は無いらしい」

 

趙忠の行動は全て霊帝が第一優先となっている。一番に霊帝であり、二番に自分。

張譲を裏切ったのも霊帝に危険が及ぶと分かったからだ。ここまで逃げてきたのも霊帝に危険が及ばないと判断したからだ。

何もかも全ては霊帝のために。

 

「彼女と霊帝の仲にちょっかいをかけなければ無害だ」

「な、なるほど…あっ」

 

遠くから様子見をしていたのを気付かれたのか趙忠が此方に向かって視線を向けていた。そして優雅にお辞儀をしたのだ。

 

「…どういう意味かな?」

「張譲を倒した事で彼女たちも助けたという結果になったのですから、そのお礼では?」

「なるほど」

 

これから先、趙忠と霊帝たちと関りが無いとは言い切れない。どうなるかなんて分からないものだ。

 

 

324

 

 

今夜は月たちが逃れてきた城で桃香たち幽州、徐州連合は休息をとる事にした。

月明りが明るい夜。桃香は月と献帝と共に話をしている。

 

「桃香さま…」

「二人とも、何見てるの?」

「おや、愛紗殿に公孫賛殿ではありませんか」

 

月と白湯が桃香と話している姿を愛紗と公孫賛が見ていたのだ。正確には覗きみたいなものだ。

そんな2人の様子を見つけて声を掛けたのが詠と秦良玉である。

 

「ボクたちがついてくるのが心配? それとも徐州に行くかどうか不安?」

「私は桃香さまが選んだ先についていくだけだ」

「徐州のことも受けるだろうな。桃香はそういうヤツだよ」

 

愛紗と公孫賛は桃香に対して信頼を置いている。だからこそ愛紗はどこまでも付いて行くし、公孫賛は友人であることを誇りに思っている。

 

「…洛陽の戦いが終わった後、夏侯惇と会ったのだ」

「…何の話?」

 

詠は首を傾ける。急にいきなり魏の夏侯惇の話になれば分からない。

 

「…まあ聞いてくれ。あ奴、曹操の命を果たす途中で片目を失ってな。だが主命を果たした後は曹操から貰い受けた眼帯をとても誇らしそうにしていた。しかしそれを見て…桃香さまは大変悲しまれてな」

「ああ…月も泣くだろうね。あの子、自分は平気で傷付きに行くくせに、ボクたちが傷付くのはすごく嫌がるから。ボクは月が傷付くのが一番嫌なのに」

 

すぐに話の内容が理解できた詠。愛紗の抱える気持ちが分かってしまう。

 

「だから、桃香さまがおっしゃった世界に至るまで、桃香さまがどれだけ心を痛め、涙を流すのかと考えたら…居たたまれなくなってな」

「…つらいよ。それは月も至れなかった茨の道だから」

「……そうか」

 

お互いに優しい人が上にいるというのは苦労するものだ。しかし嫌な苦労ではない。

忠誠が高いがゆえに自分の主の辛さが耐えられないのだ。

 

「でも、ボクたちは何も出来ないんだ。出来るのは、道の半ばで引き摺り降ろす事だけだよ。もう泣かないで良い、傷つかないでいいって。月の脚を引っ張る事だけなんだ」

「…無力だな。我らは」

 

詠と愛紗の纏う空気が暗くなる。

 

「秦良玉殿はどうだ?」

「私ですか?」

「ああ。桃香さまやご主人様と同じように藤丸殿も優しい。ならば我々と同じような事は無かっただろうか?」

「そうね。あいつって確かに優しいか優しくないかで言えば優しいやつだし」

 

藤丸立香は確かに優しい人間だ。そんな優しい人間がここまで至るまでに過酷過ぎる旅をしてきたのだ。

諦めたかった。歩む足を止めたかった。こんな普通の子が耐えられるはずが無い。

もしも諦めたって誰も文句は言わないし、責める事はしない。だが藤丸立香は歩みを止めるわけにはいかないのだ。

 

「…そうですね、主は優しい方です。詠殿の言うようにもう泣かないでいい、傷つかないでいいって言いたいです。しかしそれが言えないのです」

「言えない?」

「はい。私は…私たちは主の歩みを止めないようにする事しかできません。詠殿の言った逆の事をするしかないのです」

 

彼の世界は文字通り真っ白だ。自分たちの世界を救うために旅をしている。

藤丸立香は世界を救うために選ばれたわけではない。彼しかいなかったのだ。彼1人しかいなかったのである。

 

「本当は私も主を休ませてあげたいです。でも、出来ないのです。だから私に出来る事で主を癒してあげたいのです」

 

詠は張譲との戦いで藤丸立香が言っていた事を思い出す。

 

「…あんた達も別の意味で大変なのね」

 

秦良玉まで暗くなってしまう。

 

「お前らなぁ…」

「こ、公孫賛殿?」

「お前ら来い。私が酒でも飲みながら、お前らがどれだけ自分の主に役に立ってる凄い奴らか徹底的に教えてやる!!」

「え、あ…ボク、お酒は…ちょっとー!!」

 

見かねた公孫賛を彼女たちを引き摺って酒を飲みに行くのであった。

 

 

325

 

 

コンコンと扉をノックする音が聞こえた。

 

「あの…月です。立香さん居ますか?」

「居るよ」

 

ガチャリと扉を開けると月がいた。

 

「どうぞ月さん」

「あ、お邪魔します」

「お茶を淹れるから待っててね」

 

すぐさまお茶を淹れて月の前に出す。

 

「どうしたの月さん?」

「改めてお礼をと思いまして」

 

彼女は命を救って貰った身だ。

禁城ではゴタゴタと色々とあった為、ちゃんとお礼が言えなかったのだ。

今夜はちゃんとお礼を言うために藤丸立香が泊っている部屋まで足を運んだである。

 

「私と詠ちゃんの命を救ってもらって本当にありがとうございました」

「月さんが無事で本当に良かったよ」

 

本当に月が無事で良かった。桃香や詠だけでなく、藤丸立香だって心配していたのだ。

月の元で客将をやっていた日は長くは無かった。それで真名を預かった間柄である。もう他人という関係ではないのだ。

今回の事で助け出したいと本気で思うくらいの間柄だ。

 

「劉備さんや風鈴さんたちが助けようとしていると聞いて私は嬉しかったです」

「桃香さんや風鈴さん…みんな頑張ってたよ」

「あと、立香さんが助けに来た時は凄く嬉しかったです」

 

月は頬を赤くしながら笑顔を向けた。

きっと彼女がこういう笑顔をするのは久しぶりなはずである。この笑顔は既に詠も見ている。

朝廷の大粛清を始めてから彼女の笑顔は無くなった。そんな月の笑顔を見て詠は自然と涙を流したものだ。

生きる気力を取り戻した彼女の未来はきっと明るいはずだ。それでも楽な道ではない。それでも生きようと頑張る彼女の歩く道は明るいはずなのである。

 

「あの…ところで立香さん」

「何かな月さん?」

「何で、さん付けなんですか?」

「普通だと思うけど」

 

人の名前に、さん付けはおかしくない。

 

「だって、真名を預けた時は呼び捨てで呼んでたのに」

 

そう言えばと思って昔を思い出すと確かに「月」と呼び捨てで呼んでいた。

気が付けば今は、さん付けをしている。恐らく理由としては無意識か、久しぶりに再会したからつい、さん付けなのかもしれない。

 

「あの…さん付けしなくていいので」

「そ、そう?」

「はい。なので普通に真名を呼んでください」

 

そこまで言われたらっと真名を呼ぶ。

 

「じゃあ…月」

「はい………ふえ」

 

何処かこっぱずかしい気持ちになってしまう。この気持ちは月も同じなのか頬を更に赤くしていた。

最初は恥ずかしい気持ちが出ていたが時間が経つをお互いにクスリと笑ってしまう。

 

「ここまで色々とあったけど…また会えて嬉しいよ」

「私もです立香さん」

 

前に洛陽から出立する時に再会を約束した。その後にまさかのまさかで反董卓連合だったり、怨霊となった張譲だったりと色々な出来事がありすぎた。

それでも再会の約束は果たした2人。藤丸立香と月は夜遅くまでお互いに今まで起きた事を語り明かすのであった。

 

 

326

 

 

翌日。

 

「そうか徐州に行くか」

「うん。平原のみんなにその事を説明して、引き継ぎを済ませてから…改めて徐州に行くよ」

「ありがとうございます。我が主も喜びます」

「よろしくお願いします…美花さん」

「なら、平原の後任も決めないとな」

 

桃香は徐州に行く事が決定した。迷っていたが実は心の中では既に決まっていたのかもしれない。

 

「たまには幽州にも遊びに来てくれよな。先生が寂しがるから」

「ふふっ、そうね」

「それに…徐州と青州が落ち着けば、私たちも助かるしな。桃香の嫌いな言い方で悪いけどさ」

「もう白蓮ちゃんたら…そういうのは、利用じゃなくて協力って言うんだよ」

 

こうして桃香たちは真の目的を遂げ。長い遠征を経て、拠点を徐州に移す事になったのだった。

これにて反董卓連合の幕は閉じた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

次回。

第4章:歪な群雄割拠 編

 

 

「貴女ったらとても綺麗だわ。ここらでは見ない美しさね」

「これはこれは…あの曹操殿に褒められるのは光栄だね」

 

曹操の目の前にはまるで美しい金髪を靡かせた人形のような少女と水銀の従者がいる。

彼女たちは庭で優雅にお茶をしていた。

 

「今度、徐州に行くのだけれど貴女も着いてくる? きっとお探しの人に会えるわよ」

「いや、ここで待っているよ」

「何でかしら?」

「何でって…弟子なら師匠の元に来るのが当たり前だろう? それに…弟子の困った顔が見たいんだ」

 

少女は小悪魔的な笑顔をする。

 

「…良い趣味してるわね」

 

 

・・・・・・・・・・

 

 

戦いは袁紹のある力によって形成逆転していた。

 

「ほーほっほっほ!! 天に認められたこの力はどうですか華琳さん!!」

「まったく、そんな力どこで手に入れたのかしら?」

「もう負けは見えていますわよ!!」

「あら、そんなこと無いわ。こういう事態の場合も想定して準備したもの」

 

曹操は腰に携えていた剣を抜く。

 

 

・・・・・・・・・・

 

 

建業にて。

 

「やっと帰って来たわね立香ー!!」

「雪蓮さん!? 首、首が締まってる締まってる!?」

 

二度目の建業に足を運ぶ藤丸立香たち。

未だに袁術によって鎖でつながれているが、もうすぐ引き千切る事ができるのだ。

 

「ついに孫呉が自由になる時が来るのじゃな」

「絶対に負けるわけにはいかないわよ」

 

 

・・・・・・・・・・

 

 

孫呉に降りかかる異変はまた起こる。

 

「覚悟。袁術!!」

「ぴぎゃああああ!?」

「……そうはさせませんよー!!」

 

あの方士はまだ孫呉に狙いをつけていた。

今度はあるモノを使って孫呉を攻める。

 

「これは…本当なら孫堅に使わせるつもりだったんですがねぇ」

 

 

・・・・・・・・・・

 

 

ついに外史の大陸に舞い降りた皇帝。

 

「三皇を超越し、五帝を凌駕せし覇者。それこそが始皇帝、即ち、朕である!!」

 

 

・・・・・・・・・・

 

 

「華蝶仮面…参上!!」

「な、何者だあ奴は!?」

「いや、あれってどう見ても…」

「こっちでも仮面系の人がいるんだ…」

 

華蝶仮面とは一体何者なのか。

 

「まだまだ甘いわよ…1号ぉ」

「む、お主は!!」

 

華蝶仮面、技の1号と力の2号の会合。

 

「あと3号と4号と5号を見つけなければ…」

 

この外史に華蝶の物語が紡がれる。




読んでくれてありがとうございました!!
次回は未定です。4章に関しては色々と物語の構成を直していきますので。

今回に関してはほぼ原作と似た流れとなっております。
オリジナル部分ががちょくちょくあると言った感じですね。
なにはともあれ、今回で第3章は終了です。やっと反董卓連合篇も終わりました。ごちゃごちゃしていたかもしれませんが何とか完結させました。

次回から4章です。
本編の最後のはオマケ的な次回の予告みたいなものです。
予告の通りになるかは未定ですので。
物語の構成を直していくというのは今年の正月鯖がまさかの楊貴妃だからです。
さっそくガチャりに行きます。楊貴妃も物語に参戦させるつもりです!!
そして二部五章は今年の春なんですね!!

では、皆さま。良いお年をお迎えください!!

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