Fate/Grand Order 幻想創造大陸 『外史』 三国次元演義   作:ヨツバ

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正月明けからの投稿一話目!!
もう正月も終わって一週間。早いものです。

さて、今回から第4章です。
どんな物語になっていくかはゆっくりとお待ちくださいね。
今回から新たなカルデア勢も加わっていきますので!!


4:歪な群雄割拠 編
徐州での日常1


327

 

 

反董卓連合の戦いが終わった後、桃香たちは平原から徐州に移った。彼女は陶謙から後継として選ばれて徐州のトップとなったのだ。

陶謙という方はとても話が分かる人であり、月と天子姉妹を匿うという事実を知った時は大笑いをした程だ。天子姉妹と天下の大逆賊を匿うのが楽しい悪巧みなんて言う始末である。

そんな陶謙はご高齢であった。自分の死期は分かっていたのだ。だからこそ後継として誰にしようかと探していた時に聞いた名前が劉備こと桃香であったのだ。

桃香は陶謙から貰い受けた徐州をより良くしていくために努力していくのであった。

 

「桃香こっちに来てたんだ」

「あ、ご主人様」

 

桃香が徐州のトップになった事で陶謙からの引継ぎを行い、徐州での政権交代はつつがなく進んでいた。

それに徐州に来てからは別れだけではなかった。

 

「一刀さん、関羽さん。こんにちは」

「そっか、陳登が来る日だったのか」

 

桃香と一緒にいる彼女は陳登。徐州の隣にある豫洲一の農業の研究家で、陶謙がいた頃から徐州の農地改良に力を貸してくれていたのだ。

 

「うん。前に来てくれた時に仕込んでおいた肥料の結果を見てたんだよ」

「どんな調子?」

「今のところは想定通りだよ。最終的な結果は来年か、もう少し先にならないと分からないけど、問題無いと思う」

「なんとも気の長い話だな」

「土地を育てるっていうのはそういうものだよ。わたしが畑を耕してた頃もそうだったから」

「…ふむ、桃香さまがそうおっしゃるなら、そうか」

「うむ。畑仕事は大変だぞう。1年を通してやっていくんだからな」

 

俵藤太が鍬を持って歩いてきた。見る限り畑仕事をやっていたのだ。

 

「藤太さん。手伝ってくれてありがとう」

「うむ。このくらい構わんさ陳登よ」

 

俵藤太と陳登は知り合いだ。そもそも前に藤丸立香が旅をしていた時に豫洲に寄って出会ったのである。

陳登が徐州に訪れた時に俵藤太たちに再会した時は驚いたくらいである。

 

「これからもよろしくね、陳登ちゃん」

「実際に働くのは村の人たちだけどね。でも…ボクは話の通じる州牧さまで助かるけど、何かと畑の様子を見に来るんじゃ、関羽さんや一刀さんは大変だね」

「まったくだ」

「はあ…」とため息を吐きそうになったが我慢する愛紗。しかし周りからはバレバレである。

「えええ…ひどいよう!!」

 

田畑の開発は国の根っこに関わる重要事業である。

もともと桃香は軍事よりも内政志向であり、陳登への期待が大きくなるのも仕方ない。

 

「そういえばご主人様、わたしにご用?」

「ああ、そうだった。陳珪さんが陶謙様のお墓に挨拶に来ててさ。桃香にも挨拶がしたいって」

「母さんが?」

 

自分の母親が来ていると知って、気になりだす。

 

「劉備さま、ごきげんよう。ご挨拶が遅くなってしまって申し訳ありません」

「陳珪さん、こんにちは」

 

陳珪の噂をしていればご本人の登場だ。

実は陳珪は陶謙に陳登を紹介した張本人だったりする。

徐州のすぐ隣の豫洲は沛国の相は陳珪だった。要するにご近所付き合い出来る距離だった事も含めて豫洲が曹操の領地になった今でも個人的な付き合いがあるようなのだ。

 

「あら、喜雨も来ていたのね」

「うん」

「陳登ちゃんには、いつもお世話になっています」

「なら少し休憩にしようか。母さんは劉備さんと話があるんでしょ?」

 

陳珪が来たということは桃香に何か大事な話があると予想して陳登は休憩を提案する。

政事の事は分からないが自分の母親に行動は少しくらい分かるものだ。

 

「陳登よ。陳珪に何か話す事は無かったのか?」

「大丈夫。話がしたければいつでも話せるし」

「そうか。ならいいさ」

 

陳登と陳珪の親子関係は複雑だ。しかし藤丸立香たちが関わった後は少しは変化したのである。

少しづつだがお互いに距離を縮めているのだ。

 

「おい瑞姫。あれは、劉玄徳ではないか。それと何か見覚えのあるのが…」

「別に気付かれたりしないわよ。堂々と村娘のフリをしてれば大丈夫だってば」

 

彼女たちは何進と何太合である。実は生きており、洛陽から脱出してからは避難民に紛れて、そのまま徐州まで逃げてきたのである。

見覚えがあるというのは俵藤太である。しかし、何進と何太合が諸葛孔明たちに見つかった時は視線が燕青や諸葛孔明に向けられていたので俵藤太はあまり覚えられていなかったのだ。

彼女たちを見つけた張本人は俵藤太であったのにだ。やはりその時の緊迫した状況などの影響によるかもしれない。

 

「ぐぬぬ…どうして大将軍まで登り詰めたこの私が、こんな所で鍬などを振るうハメに…」

「死ぬよりはマシって洛陽から逃げたのは姉様でしょ。劉備が州牧になるとは思ってなかったけど」

 

もしも彼女たちの正体が分かっていれば桃香だってあの漢の大将軍と天子様の妻がいるとは思わないだろう。

 

「それはそうだが…袁紹のいる冀州へ向かえていれば、こうはならなかったものを」

「避難民に紛れるならこちらしかなかったわ。住み心地もさほど悪くないし、判断は間違ってなかったと思う」

「そ、そうか。それならよかった」

「そこの二人。その辺りの草抜きが終わったら、向こうもお願い」

「はーい」

「しかし…あのような田舎臭い小娘にあごで使われるなど。瑞姫、いつかお前をまたあの玉座の脇に立たせてやるからな…」

「ふふっ。楽しみにしてるわ、姉様」

 

彼女たち何姉妹が藤丸立香たちとまた再会するのはもう少し先の話である。

陳珪、桃香、そして護衛代わりの美花を残して北郷一刀たちは村の方へ戻って来た。

 

「ぐー」

 

戻ったら戻ったで畑の脇の木の上でのんきに寝息を立てていたのは鈴々であった。

器用に木の枝に横になった寝ている。よく落ちないものだと変に感心してしまう。

 

「鈴々!! お前は…見ないと思ったら、こんな所にいたのか!!」

「はれ…愛紗。もうお昼?」

「まだお昼には早いよ」

「で、何してたの鈴々は?」

「かんがえごと…」

 

絶対に考え事していないだろ、と全員の心が一致した。

鈴々から出るとは思ってなかった答えに、一瞬だけリアクションに戸惑うが流石に愛紗は慣れたものであった。

 

「それより、桃香さまの護衛はどうした。何事もなかったから良かったものの…」

「大丈夫なのだ。愛紗は心配しすぎなのだ」

「お前が緩すぎなんだ」

「まあまあ、鈴々だって、何かあったらすぐ動けるもんな?」

「うん。鈴々にお任せなのだ!!」

 

実際、城の近くに賊が出るほど今の徐州の治安は悪くない。

その平和は愛紗や鈴々たちはもちろん、桃香たちが徐州に来る前から電々や雷々たちの頑張りがあってこそだ。

 

「変わってるね…徐州の人たちって」

「それは私も入っているのか…」

「もちろん。そもそも二人はボクが華琳さまの間諜だと思わないの?」

「…それ、自分から言っちゃうかぁ」

 

陳珪と陳登は曹操の元に降っている。

昔から豫洲と徐州には近所付き合いの如く仲良くしているとはいえ、豫洲の後ろに曹操がいるのなら前とは違う。

この事は秘密にされておらず、陳登が今発言するまで暗黙の了解の如く聞くことはしなかった。

 

「こんな所で探り合いをしても仕方ないでしょ。そういう、母さんみたいなの…苦手なんだよ」

「それは、怪しいと思うに決まっているだろう」

 

愛紗もまた正直に口にした。

 

「愛紗も失礼だよ」

「正直でいいと思うよ。きれい事で誤魔化して、裏でコソコソ言われるよりはずっと気分が良いよ」

 

土地の生産力は経済力につながる。すなわち、動かせる軍の規模や装備に直結するのだ。

そもそも曹操の陣営に所属している陳登が、その根本に携わって他勢力に繋がりがあるというのが大問題である。

 

「ぶっちゃけ聞くけど、どうなのさ?」

「母さんの思惑は知らないけどボク自身は中立のつもりだよ。政治的な事に肩入れするつもりは一切無いし、劉備さんも華琳さまも、それでいいって言ってくれてる」

「だが、真名は預かっているではないか?」

「苑州の開拓で成果を上げたから、その褒美でもらっただけだよ。預かったのに呼ばないのは、それはそれで失礼だし」

「そんなものなのか」

「華琳さまの下に入った時、徐州にはもう来るなって言われるとばかり思ってたんだけどね」

 

しかし、陶謙はもちろん彼女から徐州の主の座を引き継いだ桃香もそんな事はしなかった。

 

「ああ。そういう意味じゃ、華琳さまも変わってるのか」

「曹操の思惑は知らんが…桃香さまは民の事を一番に考えておいでだからな。土地が豊かになれば、民も楽に暮らせるだろう。それ以外はあまり考えておられてないのだ…多分な」

「お腹がいっぱいで、安心して寝られる所があったら、だいたいは幸せなのだ」

「お前は腹いっぱいならだいたい幸せだろう」

「そんな事ないのだ。お姉ちゃんとか、お兄ちゃんと一緒にいるのがいいのだ」

「愛紗が抜けてない?」

「愛紗は一人でも大丈夫だから、どっちでもいいかなぁ」

「お前なぁ…」

「…ほんと、変わってるよ」

 

愛紗たちのやりとりに陳登は驚き半分、呆れ半分って感じでクスリとほほ笑むのであった。

 

「でも…お腹いっぱいで安心して寝られるなら幸せっていうのは心理かもね」

「そうだな。腹いっぱいにご飯が食べられる。それだけでも幸せなものだ」

 

うんうん、頷く俵藤太。

ご飯がお腹いっぱい食べられる。そんなのは当たり前だと思っている人がいるのなら、その人は平和な国に生まれた人だろう。

平和でない国ではご飯はおろか水すら飲めないなんて事があるのだ。ご飯も水も口に出来ない。それは死を意味する。

鈴々の言う通り、ご飯をお腹いっぱい食べて安心して寝られるというのはまさに幸福の1つだ。

 

「なになに? 何のお話?」

 

陳珪との話は終わったのか桃香が戻って来た。

 

「母さんは?」

「陶謙様のお墓詣りも終わったから、帰るって。今は美花さんが送ってくれてるよ」

「そう。分かった」

「で、何の話をしてたの?」

「桃香が、どうして曹操とも仲の良い陳登を重用するのかって話をしてたんだよ」

「だって、陳登ちゃんの研究が上手くいけば徐州の人たちはもっとたくさんご飯を食べられるようになるでしょ?」

「他は?」

「他…?」

「……こういう子なんだよ」

「なるほどね」

「なんだか、褒められてる気がしないんだけど」

 

首を傾ける桃香に苦笑するしかなかった。

 

 

328

 

 

束の間の平和と言うべきかもしれない。

藤丸立香たちは徐州に来てからゆったりとしていた。反董卓連合の戦いが終わってから、コレといった大きな異変は起きていない。

三国志の内容をある程度は知っている彼はこれから起きるであろう大きな変化を予想できるが今は特に何も無い。

桃香や北郷一刀たちは平原から徐州に移った際に引継ぎやら何やら忙しそうであったが客将の扱いを受けていた藤丸立香たちは特に関係が無い話であったのだ。

 

「何故か孔明先生は手伝わされてたけど」

「何でだろうな…」

 

諸葛孔明は貴重な葉巻を吸っていた。一本だけでもいいから吸わないとやってられないのだ。

手伝わされた発端は朱里である。

彼女から「あの…孔明さん。ちょっといいですか?」という声を掛けられてから、あれよあれよと手伝わされていたのだ。

案外、彼女は人をうまく動かさせるのが上手なのかもれない。外史という世界だが、彼女もやはり諸葛孔明だということだ。

 

「でも、大助かりだったって言ってたよ」

 

実際に諸葛孔明が手伝ったおかげで確かに大助かりであったのだ。全て彼のおかげというわけではないが、徐州の引継ぎもスムーズにいったのである。

 

「流石は孔明先生。頼れる先生!!」

 

本当に頼れる先生である。周回やら高難易度で本当にお世話になっている。

 

「過労死サーヴァントの1人に認定されてるからな」

「いや、本当にお世話になってますし、助かってます」

 

何度も言うが本当にお世話になっている。

 

「確かに孔明さんは有能よね。曹孟徳様も貴方を見つけたらすぐに陣営に入れるでしょう」

 

気が付けば陳珪が藤丸立香の横に座っていた。

 

「アサシン!?」

「あさしん…って何かしら?」

 

藤丸立香はこれでも危険察知能力が磨かれているが、悪意の無い者の接近にはなかなか気付けない。

だからマイルームに清姫やら静謐のハサンやら源頼光やらが侵入していても気付けないのだ。

静謐のハサンに関しては気配遮断スキルは持っているが清姫と源頼光は持っていない。静謐ハサンに関しては気付けないのはしょうがないとして、清姫と源頼光に気付けないのはおかしい。

スキルは後から覚えられるものなのかと疑問で思ってしまう。

 

「久しぶりね。反董卓連合では色々とあって話が出来なかったのは残念だったわ」

「お久しぶりです」

 

理由は分からないが陳珪は藤丸立香の横に座っていた。しかも距離を詰めてピッタリと密着している。

柔らかい感触に甘い香りが鼻をくすぐる。たたでさえ陳珪は大人の魅力が高すぎるのだ。健全な青少年である藤丸立香には刺激が強い。

動揺を隠そうと頑張るが陳珪のような女性には丸分かりだろう。

 

「徐州にきてたんですね」

「ええ。陶謙殿の墓参りと劉備殿に挨拶にね」

 

先ほど桃香と挨拶は終わり、陶謙の墓参りも済ませた。

あとは帰るだけなのだが桃香たちの元には藤丸立香たちがいるのを思い出して彼らにも顔を出したのである。

そもそも藤丸立香たちに会ってある事を聞きたかったのだ。

それは妖術や妖術の道具関連の情報だ。

 

「そう言えば孔明さんは妖術師だったのね」

「何故、私が妖術師だと?」

 

陳珪には諸葛孔明が魔術師とは言っていない。だがすぐに思い付く。

反董卓連合の戦いの時である。

恋との戦いで諸葛孔明は宝具を放ったのだ。その時の戦いを見ていたということだ。

 

「あんなものは初めて見たわ。妖術って実在するのね」

 

宝具だけでない。亡者やスケルトンも見てしまえば妖魔といった存在を嫌でも信じるものだ。

 

「実は曹操様は妖術関連を調べているのよ。反董卓連合で起きた事を踏まえて対処しようとしてるの」

 

曹操は反董卓連合が解散後にすぐさま妖術や妖術の道具関連の物を探し始めたのだ。

「曹操さんが集めてるんですか?」

「ええ。それに元々、曹操様は大平要術の書というものを探していたみたいだし」

「大平要術の書を!?」

「あら、やっぱり知ってるのね。教えてくれるかしら」

 

ニッコリと笑う陳珪。

 

「……大平要術の書は燃えた。黄巾の乱でな」

「でも、それは1冊だけ。大平要術の書は他にもあるのよ」

「そこまで調べてるのか」

 

大平要術の書に関しては調べはついているのだ。

 

「だが大平要術の書は何処を探してもないぞ」

 

大平要術の書は全て于吉が所持しているため何処を探しても見つからない。

 

「成る程。大平要術の書は全て于吉という者が全て……」

「そうなんです。それに于吉は本物の妖術師です」

 

于吉は本物の妖術師もとい方師だ。

何の知識も持たずに大平要術の書を奪うことはできない。

「だけど、なんか曹操さんなら于吉から奪えそう」

 

ただの何となくである。

 

「確かに曹操様なら奪えそうと私も思えるわね。あの方は何でも出来る自信にみなぎってますもの。ですが、何も準備していないわけではないわ」

 

実は既に曹操は妖術の道具や妖術師を見つているのだ。

「まあ、ほとんどが偽物なんだけどね」

取り合えず妖術関連の物は全て集めているのだ。本物、偽物問わず。

曹操も本物が簡単に見つかるとは思っていない。百撃てば当たるの精神だ。

 

「偽物ばかりなんですか?」

「ガラクタや偽物の妖術師ばかりよ。それに本物だと思って雇ったとしても偽物の妖術師だと分かったら……」

「分かったら?」

「…………」

 

無言で真顔になった。

 

「その間は何ですか!?」

「ふふっ、冗談よ」

 

本当に冗談なのか疑わしいところだ。

 

「だが、ほとんどと言っているところから本物も見つけたのだろう?」

「ええ。ごくわずかだけど。私はまだ顔を会わせていないけれど、本物の妖術師を見つけたという知らせを聞いているわ」

 

ここで何故か諸葛孔明は悪寒を感じた。

 

「あら、どうしたの?」

「いや、なんでもない…」

 

何故か義妹の顔を思い浮かんだが、すぐに頭から振り払う。さすがにそんな事はないだろうと何度も思うのであった。

 

「でも、こっちも本物を見つけているけどね」

 

陳珪は諸葛孔明を見る。

 

「そういえば立香くんは妖術師なのかしら?」

「一応…妖術師かな?」

「一応?」

「才能が無いんです」

 

苦笑いの藤丸立香。勉強はしているがイマイチである。礼装を使って魔術が行使できるレベルなのだ。

 

「でも道具を使って妖術が出来るってことよね」

「まあ、そんな感じですね」

 

それだけでも十分だ。曹操ならそれだけでも使えると判断するはずである。

 

「ねえ、二人とも…」

「悪いが曹操に仕える気はないぞ」

「孔明殿…私はまだ何も言っていないわよ?」

「どうせ、曹操に仕えてみないか…なんて話だろう」

 

諸葛孔明の予想通りで陳珪は藤丸立香と諸葛孔明を曹操の陣営に引き込もうとしているのだ。

曹操が妖術関連の物を集めているのと、藤丸立香たちの人材の高さは噛み合っているのだ。陳珪的にも藤丸立香たちとは個人的に繋がりは持っておきたいのである。

 

「まあ、確かに孔明殿の言う通りなんですけどね」

 

キッパリと断られて残念がる陳珪。

 

「駄目かしら…立香くん?」

「あ…」

「こら、此方の主を色香で落とそうとするな…まったく」

 

陳珪の手が藤丸立香の胸を辺りに置いた瞬間に諸葛孔明が睨みつけて釘を刺す。これに対して悩ましくため息を吐いて、手を引くのであった。

 

「残念」

「残念がってるように見えないがな」

「その代わり、少しは何か妖術関連の事を教えてくれると嬉しいけど」

「さっきも言いましたが于吉という妖術師には気を付けてください」

 

于吉は様々な場所で策を巡らしている。黄巾の乱を起こした本当の元凶であったり、洛陽で張譲を利用したり、孫呉で黄祖を利用したりもした。

反董卓連合の怪異は張譲が起こしたものであるが結局の元凶は于吉である。藤丸立香たちが遭遇した異変は全て于吉が起こしているのだ。

まだ捕まっていない于吉がこれから何か起こす可能性があるのだ。曹操が妖術関連の物を集めているというのなら于吉には気を付けた方がいい。

 

「曹操様にも伝えておくわ。では、またお会いしましょう」

 

聞きたい事を聞いた陳珪は帰っていくのであった。

 

「ふう…」

「…マスターも女の色香に気を付けろ。ああいう女は自分の使い方を分かっている。更に頭の使い方もな」

 

陳珪とは別ベクトルの油断ならない女性を知っている諸葛孔明はマスターに気を付けるように釘を刺すのであった。

カルデアには陳珪のような女性はいないので藤丸立香も初めてな経験である。

 

「そもそもマスターは女性に慣れていないのか? カルデアではよく女性英霊をとっかえひっかえ部屋に呼んでいるだろう」

「誤解を招く言い方しないで先生…!!」

 

マイルームにはランダムで様々な英霊が訪れてくれるだけである。

 

「俺は健全な青少年なんです…」

 

藤丸立香は男性女性の英霊問わずグイグイとコミュニケーションを取っている。

イベントや特異点を一緒に駆け抜けて絆も深めていけば親密度は上がるのは当然だ。絆が深まれば友情や愛情が育まれるものである。

その愛情の中には『恋』もある。実際に藤丸立香に対して恋をしている英霊だっているのだ。

 

「フラグをよく立てるからなマスターは」

「フラグを立てた覚えは無いんだけど…」

「そういうとこだぞマスター」

 

ゲームとかをやっているので諸葛孔明はマスターの行動を見て一級フラグ建築士だなっと思っている。

自分の小悪魔義妹ですら藤丸立香の事を弟子認定するほど気に入っているほどだからだ。

勝手な補足だが諸葛孔明の好きなゲームは戦略系のものである。

 

「それでもマスターは清姫や静謐のハサンからベッタリだろう。それで女性には慣れていないのか? そもそもマスターは大胆になったりするではないか」

 

藤丸立香はマシュに対してはよく可愛いって言ったり、源頼光にはハグを求めたり、アタランテの耳や尻尾を触ったりと大胆な行動をしたりするのだ。

そんな大胆な行動をするくせして時折、初心な反応もしたりしてよく分からなかったりするのだ。

 

「マスター…キャラがブレブレじゃないか」

「…なんでだろうね?」

 

自分でも分かっていないようだ。

 

「でも、大丈夫。色香には気を付けてるから。だってキアラさんで修行してるからね!!」

「まあ…アレに耐えれたらほとんどは大丈夫か」

「カーマにも頑張って耐えてるし!!」

「アレは修行にならんだろ」

 

この時、カルデアにいるカーマは何故か分からないイラつきが襲ったという。

 

「何はともあれ女の色香には気を付けとけ。ただでさえマスターはコロっと落ちそうだからな」

「…否定は出来ないかも」

 

相手が敵もしくは怪しいと思っていれば藤丸立香も耐えられる。しかし仲間からの誘惑は案外弱いものだ。

藤丸立香の中で大丈夫だと思っている状況だとガードが弱くなって色香に負ける。彼も健全な青少年だから。

 

「…本当に気を付けろ」

「はい」

 

 

329

 

 

バシンと背中をいきなり叩かれた。

痛みと驚きが背中から伝わって、何かと思ってすぐさま後ろ向くと炎蓮が酒瓶持って立っていた。

 

「よお立香。反董卓連合での話を聞かせてくれよ」

「炎蓮さん…普通に声を掛けてください」

「いいじゃねえかよ。つーか、説明してくれなきゃわけが分からねえぞ。何で董卓がいんだよ。てか、天子までいるし…どういうことだ?」

 

炎蓮は藤丸立香たちの仲間であるため、彼女に月や天子姉妹たちの事は聞いている。しかし、それだけでどういう経緯によって連れてきたかまでは分からないのだ。

 

「ったく、帰って来たかと思えば今度は徐州に行くって…急すぎんだろ。反董卓連合での話を聞きそびれちまったからな」

「もちろん説明します。でも炎蓮さんが聞きたいのは雪蓮さんたちの方でしょ」

 

ニヤリと笑う炎蓮。

 

「酒でも飲みながら話そうぜ」

「酒飲めません」

 

場所を変えて酒瓶から器に酒を注ぐ。

 

「で、どうだった娘共は?」

「元気でした。今は袁術に飼いならされてるけど…すぐに鎖を食い千切るって言ってました」

「ククッ…そうでなくちゃな」

 

機嫌よく酒を口を含む。

孫呉は着実に袁術の鎖を引き千切ろうとしていた。しかし孫呉の目標は袁術の鎖から脱出ではない。

本当の目標は天下だ。雪蓮は母親と天下を取ると約束したのだ。だからこそ目標を到達するために未来に向けて足を歩めている。

 

「孫呉が袁術のやつから自由になったら様子でも見に行くか」

「やっと生きてるって伝えるんですね」

「いや、見に行くだけ」

 

雪蓮たちに会いに行くようではないようだ。

 

「素直になればいいのに」

「だから言ったろ。今更、生きてるなんて言えるか」

 

ベシリと軽く頭を叩かれた。理不尽である。

 

「雪蓮さんたちもそうですけど…雷火さんも相当辛かったようですよ」

「婆か…長い付き合いだからな。それに反董卓連合での出来事で漢も完全に墜ちた。それも相まって心情は辛いだろう」

「なら……」

「だが、会いに行かん。こっぱずかしいし」

 

ガクリとしてしまった。

やはり相当頑固者だ。炎蓮が実は生きているという真実が雪蓮たちに伝わる時はまだまだ先のようである。

 

「つーか、お前は帰ってこないと思ってたんだがな」

「どういう事ですか?」

「いや、なに。反董卓連合が終わったらそのまま雪蓮たちに連れていかれるかと思ったからな」

「ああ…それですか」

 

実は炎蓮が予想した通り、藤丸立香は雪蓮に建業に連れていかれそうになったのだ。

元々、孫呉の天の御遣いなのだから建業に戻るのは当然だと言われたのだ。確かに藤丸立香は孫呉の天の御遣いをしていたので否定はできない。

藤丸立香が連れていかれそうになった時はひと悶着があったものである。

なんせ大岡裁きさながら事が起きたのだから。片方は雪蓮や小蓮が引っ張り、片方は秦良玉と武則天が引っ張るという事態が起きた。

 

「ふーん。雪蓮とシャオに引っ張られて腕が千切れなかったか?」

「いや、見てください。ちゃんと腕あるじゃないですか」

 

炎蓮は藤丸立香の腕を見る。

 

「おお。こっちの手の跡は雪蓮で、こっちシャオか」

 

腕にはクッキリと手の跡が残っていた。

 

「……痛かったです」

 

藤丸立香は困った顔をした。

 

「ああ、そうだ。他にも聞いておきたい事がある」

「何ですか?」

「雪蓮の元に戻らなかったって事は種くらいは仕込んできたんだろうな?」

「またその話ですかーーーー!?」

 

藤丸立香は一段階上げた困った顔をするのであった。

 

 

330

 

 

実は平原で張三姉妹が人気爆発していた。

 

「やっぱ凄いんだな」

 

まず桃香たちが反董卓連合に参加する事が決まった時、平原の民たちは不安がっていたのだ。

民が不安がるほど桃香は信頼を得ていた。だからこその民の不安なのだ。もしかしたら反董卓連合で桃香たちが戦死するかもしれないという不安である。

結局のところ何とか説得して反董卓連合に参加したのだ。だからこそ帰って来た時の民の喜びは大きかったものである。

しかし、その間は不安がある。その間の不安を消したのが張三姉妹の活躍だ。

 

「あー、立香がやっと帰って来たー!!」

「天和さん…うぐっ」

 

いきなり張三姉妹の長女の天和が藤丸立香に突撃の如く抱き着いてきた。

 

「えーん、寂しかったよー!!」

「元気そうでなによりです天和さん」

「寂しかった割には盛況だったみてえじゃねえか」

「まあね~」

 

天和の後ろから遅れて歩いてきたのは地和と人和。

彼女たちは桃香たちが反董卓連合に参加した後の平原でライブをおこなったのだ。

民たちの不安を無くそうという心意気もあったし、歌で大陸を制覇するという野望の1歩としての気持ちもあった。

結果的には大成功だ。流石は歌で黄巾党を結成させたアイドル。

平原の民たちを盛り上げて、ファンとして心を掴んだのである。

 

「帰ってきたみんなは驚いていたよ。それに天和たちを正式に雇おうかなんて朱里が考えていたほどだよ」

 

その言葉に人和は静かにガッツポーズ。今の張三姉妹は再スタートを切っている。今の段階ではただの旅芸人と変わらない。しかし、何処かの陣営が援助してくれれば更に良い。黄布党のような二の舞はならない。

 

「もしも正式に決まったらお世話がかりは立香がお姉ちゃんいいな~」

 

何故かエリザベート・バートリーのことを思い出す。

 

「なら、ちぃなら燕青と蘭陵王をお世話係に指名するわね」

「……」

 

嫌そうな顔をした燕青。

 

「なんで嫌そうな顔をするのよ!?」

 

燕青がお世話をするのはマスターだけであるからだ。

 

「じゃあ、ちぃも立香に頼むもん!!」

 

エリザベート・バートリー(ハロウィン)を何故か思い出した。

 

「はいはい。まだ正式に決まってないんだから姉さんたち」

 

夢を見るのは構わないがまだ先の話しである。

 

「まあ、でもそこまで先の話じゃないかもだけど」

 

そもそも桃香も張三姉妹のファンなのだ。藤丸立香たちは知らないが青州で桃香たちと張三姉妹は出会っている。その時に桃香は彼女たちの歌に惚れてファンになったのだ。

 

「トップがファンみたいだからな」

 

陣営のトップがファンというのは何かと融通してくれるかもしれないのだ。間違いなく桃香なら色々と融通してくれるだろう。愛紗とかは恐らくしないだろうが。

 

「それに感謝もしてたしね」

 

平原の民たちを歌で盛り上げてくれたことに感謝していたほどである。

 

「まあ、ちぃたちだけじゃなくて、あの炎蓮さんって人も色々とやってたみたいだけど」

 

実は炎蓮も平原の民を安心させる働きをしていたのだ。本人はそんな事をしていないと言うが、ゴロツキや盗人が現れた時は颯爽に現れてぶちのめしたらしい。

今では民からも顔を覚えられて「炎蓮の姐さん」なんて呼ばれていた。

 

「あの人ちょっと怖いけど、悪い人じゃないし。ちぃたちが悪漢に襲われそうになったときは助けてくれたの」

「ま、本人は暴れたかっただけだなんて言ってたけどね」

「なんだか炎蓮さんらしい」

 

この事を炎蓮に詳しく説明を求めたら「五月蠅い」と言われそうだ。

 

「それはともかく、平原から徐州に来るなんて本当に急だったわね。私たちとしては各地に周れるから良いんだけど」

 

平原では張三姉妹の名は轟いた。次は徐州で名を轟かせようとしているのだ。

こうやって今度こそ歌で大陸を制覇しようと一歩一歩と近づいている。

 

「天和さんたちなら本当に歌で大陸を制覇しそうだ」

「もっちろんよ!!」

 

地和は自信満々に胸を張ってみせる。

 

「で、ここでの公演なんだけど…」

「あ…これ手伝わせる気だ」

 

本当に手伝わされ、張三姉妹の公演を大成功させたのはまた別の話である。そして公演を大成功させた後の打ち上げに荊軻や星たちが乱入して大混乱したのもまた別の話である。




読んでくれてありがとうござました。
次回の更新はまたも未定です。


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原作の流れとあまり変わらない感じです。

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藤丸立香、諸葛孔明、陳珪のちょっとした雑談。
曹操が妖術関連を集めているという情報ゲット。そして本物の妖術師を見つけたというが…その人物とは。孔明先生の悪寒と予想はたぶん当たってます。
そして藤丸立香の女性耐性について…どうなのかな?
彼はまだ純情なのか? それとも多少は慣れたのか?
マタ・ハリとかの色香にはオロオロしているくせに、お栄ちゃんのお餅には反応しているし、どうなんだろう

328
久しぶりの炎蓮の登場。
彼女の活躍はまた4章でも考えてます。彼女が生存している情報はいつ雪蓮たちに伝わるのやら。

329
こちらも久しぶりの登場の張三姉妹。
彼女たちの活躍もはやくさせたいものです。
エリザベートやネロとかも本編にいれば色々とネタが出てくるんだけどなぁ

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