Fate/Grand Order 幻想創造大陸 『外史』 三国次元演義   作:ヨツバ

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早く書けたので更新です!!
グイグイと今日は更新しますよ。


徐州での日常5

349

 

今日の徐州での日常は。

 

「目下の最大の問題は軍事力です。各地の勢力の淘汰が進み、大国化が加速している以上、我々にも民を守るための力が必要です」

「それはそうだな。でも新兵の募集は順調なんだろう?」

「そうなんだけど…問題は練度なんだって」

「練度? それは訓練して徐々に覚えていってもらうしかないんじゃないの?」

「もちろんそのつもりです。ですが、問題は教える側の方です。我が軍はまだ将がすくない。その中で調練できる者はさらに限られてます」

 

桃香たちは自軍の軍事力について話し合いをしていた。平原の相をやっていた頃よりも現在の方が圧倒的に軍事力は上がった。しかし、それでも他の諸侯と比べられてしまえばまだ弱いという状況である。

愛紗は自軍の軍事力について一番、考えている。今の時代は軍事力がものを言わす。

力が無ければ国も民も守れないものだ。自分にとっての大切な人を守れない。

 

「私じゃ教えることなんて出来ないし…」

「楼杏が力を貸してくれてるだろ」

「それでもまだたりないのです。練度によって訓練内容も変わってきますし」

「まあ確かに、一人で出来る事には限界があるか」

 

劉備軍も人材も増えたが、それでも足りない。足りないというのが議題に挙がっている武将たちだ。

愛紗や楼杏たちも新兵育成に力を入れている。だがたった数人では教えるのも難しい。

 

「うーん…ご主人様、こう天の力で妙案とか浮かんだりとかは?」

「それが出来たら、俺たちはもう天下統一をしちゃってるんじゃないか?」

「それもそうだよね…」

「ご主人様、もう少し真面目に考えてください。桃香様も、もう少し現実的な案を考えてください」

「うん、頑張る………そうだ、藤丸さんたちにも手伝ってもらえないかな?」

 

カルデアのメンバーならば俵藤太や秦良玉、蘭陵王たちが適任だろう。結構、良い案じゃないかなっと思っている桃香。

 

「……私としては構わないですが、それは良い案ではありませんね」

 

桃香の案を否定したのが案に出ていた人物の蘭陵王だ。実はこの話し合いに参加しているのは彼他、藤丸立香に秦良玉、俵藤太である。

まさに桃香自身がこれからお願いしようかと思っていた人物たちである。

 

「えと…何でですか?」

「私たちはこの国の将ではありませんからね」

 

客将扱いをしているが、正式に徐州の将ではないのだ。前に彼女たちに言っているが藤丸立香たちには、藤丸立香たちの目的があるのだ。

新兵たちを訓練するというのは正式に劉備の陣営に入る場合だ。もしも正式に劉備陣営に入らずに訓練をしたとしても、途中で目的のために劉備陣営から離れる可能性が高いからだ。

兵士たちの訓練を途中放棄をするのと同じだ。そんな無責任な事は出来ない。

 

「そっか…良い案だと思ったのになー」

「桃香様…ちゃんと考えてください」

「うう…ごめんなさい」

 

三人寄れば文殊の知恵なんて言うが、全然妙案が思いつかない。実際はもっといるのだが。そんな時にコンコンとドアがノックされる。

 

「はい、どうぞ」

「あの…失礼します」

 

入って来たのはメイド服の月と詠だ。手には盆と茶器が乗せられている。

 

「お茶をお持ちしました」

「ありがとう月」

「月ちゃん、ありがと」

「へう…」

 

テレテレしている。

 

「まったく…天下の董卓将軍が、お礼を言われたぐらいで顔を赤くしてどうするの。月は偉いんだからもっとどっしり構えないと」

「そんなの…今はメイドの月だもん。詠ちゃんも今はメイドの詠ちゃんだよ?」

「ぐぬ…」

 

どこからどう見てもメイドの月と詠である。今日も今日とてメイド姿が似合っている。

 

「はは、これは月の勝ちだな。それに、お礼を言われて嬉しいのは純情な証拠だと思うぞ」

「へう、ご主人様に言われると恥ずかしいです」

「照れてる月も可愛いね」

 

照れている女性の姿は可愛いと思ってしまう。藤丸立香にとって照れている女性で「可愛い!!」と一番で思っているのがナイチンゲールである。

 

「藤丸の言う通りだ。詠も見習ったらどうだ?」

「うっさい、この色情魔!!」

「いたっ、いたっ!! 人のおでこを何度も突くな」

 

案外、北郷一刀のおでこを突く詠も可愛く見えた。これがグーであったら可愛くないが。

 

「こら、詠。あまりご主人様に無礼を働くようであれば、ご主人様の目の前であろうと容赦はせんぞ」

「なによ、やる気なの?」

 

バチっと詠と愛紗の視線が衝突した。

 

「詠ちゃん、ダメだよぉ。もっとみんなと仲良くしようよ…」

「ふん。こいつらが辛気臭い顔をしてるのが悪いのよ。せっかくお茶を持ってきてやったのに」

そのお茶を俵藤太は貰って早速、口に含む。

「ごめんね。今ちょっと、みんなで悩んでいたんだ」

「何の悩み?」

「実は愛紗殿たちは新兵が増えたのは良いのですがそれをどう配置し、訓練していくかってことに悩んでいるのですよ」

「うむ、話を聞いているとこの国に武将級の者は数が少ないし、それぞれに多くの仕事を抱えている。かと言っても人を増やそうにも優秀なものがそうそう次々に来るわけもない。それでどうしたものかとな」

 

北郷一刀たちは揃ってため息をついた。お茶が美味しくて気分転換には良いが、流石に妙案までは浮かんでこない。

 

「なんだ、そんなことで悩んでいたの?」

 

頭を抱えている彼らに詠は気楽な声で返した。

 

「そんなこと…詠には何か方法があるのか?」

「あるに決まってるから言ってるんじゃない」

 

詠は鼻高々にしている風でもなく、ごく当たり前のことを言ってるかのように言う。

 

「…でも、ボクはあんたのメイドだし、そんな事を言う権限なんてないわよね。聞き流して」

「ええ、それはないよ~」

「詠、私も是非その方法とやらを聞きたい。言ってはもらえないだろうか?」

「なあ、もったいぶらずに教えてくれよ」

 

希望の眼差しで詠を見つめるが詠はそっぽ向いたままだ。これではらちが明かないと思って最終手段を決行。

 

「月からもお願いできないかな」

「ちょっと、それは卑怯じゃないの!?」

 

詠にものを頼む時は月をダシに使うのが一番だ。

 

「詠ちゃん、ご主人様たちに教えてあげようよ。それに、詠ちゃんは軍師でしょ? 妙案があるんだったら、今言えばみんなに認められるかもしれないよ?」

「う、それは…」

 

更に月自身からのお願いだ。詠にとっては効果が抜群。

 

「そうだな、私は詠のことを見なおすと思うぞ」

「私は最初から詠ちゃんのこと、軍師として認めてたもん」

 

愛紗と桃香も詠を持ち上げるように畳みかける。

 

「あー、もう分かったわよ。あんたに教えるのは癪だから、二人に教えるってことで勘弁してあげる」

 

案外簡単に折れた詠。実はチョロイのかもしれない。それでも北郷一刀にはあたりが強い。

そこまで嫌わなくてもよいのではないだろうかと思うが、ここで茶々を入れて話の腰を折るのは止める為に我慢した。

詠は全員の視線に一つ咳払いをすると正対して話始めた。

 

「いい? 配属された兵をいくつかの小隊の分けて、各部隊に旗を持たせ、その取り合いをする演習をすれば良いの。最後まで残ったところから誰が指揮をしていたかを判断し、その兵士を取り立ててあげれば良いんじゃない?」

「…なるほど、それは効率が良いですね。訓練も出来て副官を見出すことが出来ます」

「さすが董卓軍の名軍師~!!」

「ふふん。この程度の案を出すのは朝飯前よ」

 

蘭陵王がすぐさま詠の考えに賛同。そして藤丸立香はヨイショする。

 

「まあ、メイド服で威張っても恰好良くないけど。可愛いだけだね」

 

そして一言多い。

 

「う、うっさい!! 誰のせいでこんなヒラヒラした服を着てると思ってんのよ!!」

「そりゃもちろん、俺のせいだな」

 

北郷一刀のおでこを連続突き。

 

「詠ちゃん、ご主人様に失礼だよ」

「ふん…イヤならされるようなことをしないことね」

 

月に抑えられ、詠はようやく北郷一刀のおでこを突くのを止める。しかし胸の前で腕を組み、その表情は随分とおかんむりのようだ。

 

「それにしても、ホントさすがだ。愛紗、例の件、考えてくれるよね?」

「そうですね。これほどの逸材をそのまま眠らせておくのは惜しい。これからも協力してもらうことにしましょう」

「え…? 何の話?」

 

何の話かと聞かれれば詠を正式に軍師として働いてもらいたいという事である。

 

「その能力を政治に、戦いに役立ててもらおうってことさ。実は少し打診してたんだよ」

 

北郷一刀としてはすぐさま力になってもらいたがったが、いきなり元敵軍の人を登用っていうのは難しい。

今は新兵の訓練をしてくれている楼杏だって最初は雇用するのは難しかった。そもそも兵士たちも言う事を聞いてくれはしなかったのだ。

今は楼杏の人柄と能力を認めてもらって兵士たちは文句なく、彼女の訓練を受けている。

 

「今の件で愛紗ちゃんも納得したみたいだし。良かったね、詠ちゃん」

「だな。で、どうだろう。相談役としてお願い出来ないかな?」

「…ふん、いいわ。手伝ってあげてもいいわよ」

「良かった。ありがとう、詠!!」

「良かった~」

「うむ、これからよろしく頼むぞ!!」

 

もしかしたら難しいかなっという案が通ったのに桃香たちは飛び跳ねそうだ。なんせ先ほどまで悩んでいた問題が解決しそうになるのだから。

 

「ちょ、ちょっとあんたたち、はしゃぎ過ぎじゃないの?」

「それだけ詠に期待してるってことだよ」

「…ま、まあ、この程度でボクの力をわかったつもりにならないようにしてよね。こんなの序の口なんだから」

 

少し照れながら詠はそっぽを向いた。

 

「そこまで言うならみんな期待しちゃうね」

「ま、まあ…見てなさいよ」

「詠ちゃん、嬉しそう」

「そ、そんなことないわよ。今までみんなの見る目がなかっただけなんだから。これぐらいの待遇は当然よ」

「詠ちゃん、あんなこと言ってますけど、内心すごく喜んでいるんですよ? 口の端が緩んでますから」

「ちょっと月、何を言い出すのよ!!」

「なんだ、嬉しいなら素直に嬉しいって言えばいいのに」

「うっさい馬鹿、嬉しいなんて誰も言ってないでしょうが!!」

 

詠はかんかんに怒っているように見えるけど、いつものピリピリした感覚はしない。やっぱり嬉しいのだ。

 

「あ、メイドの仕事も忘れないようにしてくれよ。一応はそっちが本業なんだしさ」

「知らないわよそんなの。ボクは軍師なんだから、あんたの世話なんてやってられないわよ」

 

メイドと軍師。文句を言いながらも詠はどっちもこなしていくのだが。

 

「そうか。詠殿が仕事を手伝ってくれるか」

「お、新しい社畜の誕生じゃな」

 

気が付けば諸葛孔明と武則天が書類を持って部屋を訪れていた。

諸葛孔明は疲れた顔をしており、武則天は愉快そうな顔をしている。

 

「へ?」

「よし、そこの哀れな社畜を確保。酷吏よ」

 

酷吏が数体召喚されて詠を担ぎ上げる。

 

「え、え!? ちょっとっ!?」

「では、地獄の過労死コースへご案内じゃ」

「え、え、な、何なのよー!?」

 

詠は酷吏に連れていかれて、その後に諸葛孔明も付いて行くのであった。

 

「では、妾もお茶を貰おうかの」

「……え?」

 

桃香はポカンと口を開いてしまう。

 

「あれ…うちってそんなにキツイ仕事を頼んでたかな?」

 

社畜とか過労死コースとか聞きなれない単語が聞こえたが意味は分からない。しかし、よくない意味なのは分かった。

 

「いえ、孔明殿にあんな疲れさせるような仕事は頼んでいないはずですが…」

 

何であんなに疲れているのかは謎であった。

 

 

350

 

 

電々と雷々が頑張って鉄製の甕を運んでいた。その様子が気になって北郷一刀はつい話しかけてしまった。

話を聞くと大きな鉄製の甕の中に入っているのは水。ただの水ではあるが彼女たちにとっては大切な商品との事。

彼女たちは今、この城の中だけで商売をしようとしているのだ。彼女たちが店を構えるのは少々問題がある。それは彼女たちが陶謙から桃香の下に移った事が関係している。

簡単に訳すと横流しや賄賂などを疑われやすいということである。商売をするとしても変な噂がつけば店は開きづらいものだ。

特に徐州での二人の担当は兵站。より潔白には気を付けねばならない。

彼女たちにほぼ補給を頼るような事がなくなれば、商店を出せるくらいには悪評が立つことはない。それまでは店を出すのは難しいということである。

それでも商売がしたいということで城の中限定でやっているのだ。

 

「ご主人様、愛紗ちゃんたちは今日もお庭で鍛錬してる?」

「ああ、さっきも派手にやっていたよ」

「よかった。よーし電々、もうちょっと頑張るよ~」

 

電々と雷々はどうやら愛紗たちを探しているようだ。

 

「いや、待った待った。二人で庭まで行くのか?」

 

ふんふん、と二人は揃った動きで頷いた。

 

「みんなが鍛錬しているのはもうちょっと行った所だし、流石に二人で運ぶのは大変だよ。かなり重そうだし、俺も手伝おうか?」

「どうする電々?」

「どうしよっか?」

 

てっきり。「お願い!!」とくると思っていたが予想が外れた。

 

「わたしたちだけで済ませちゃうのが一番いいよねえ。やっぱり」

「うーん、そうなんだよね」

「でも、お店の事を何から何まで雷々たちだけじゃできないし、奴僕を使う感覚も養っておいた方がいいんじゃないかな」

「あ、そうだね。それに…この先も助けてくれそうだし」

 

何やら彼女たちだけしか分からない内容だ。恐らくだが商売に関しての内容だと思われる。

 

「ぬぼく?」

「ふふー、こっちの話。じゃあご主人様、手伝って?」

「雷々と電々で片っぽを持つからね」

「ああ、わかった…?」

 

なんとなく釈然としないことを思いつつ、三人でえっちらおっちら、甕を庭の方へ運んでいくのであった。

庭では愛紗が実践さながらの気迫で恋と打ち合っていた。

武器同士が打ち合われ、金属音が響く。

 

「愛紗…前より少し強くなった」

「恋にそう言われると…流石に、少し心が弾むな」

「でも恋はもっと強くなる。月も白湯もごしゅじ……あ」

 

恋の視線が北郷一刀たちを見つける。

 

「ご主人様…!!」

 

まるでしっぽを振っている子犬のようにぱたぱたと駆け寄ってくる。今の彼女を見ると前に襲撃してきた時とはまさに別人にしか見えない。

その様子を見て愛紗はポツリと「かわいい」と呟いてしまう。

 

「恋、おつかれさま。愛紗も」

「ご主人様!! ところで…その大きな甕はどうされたのですか?」

 

大きな甕に関して聞かれても北郷一刀自身は分からない。中身は水であるのは知っているが。

 

「ふふふ…愛紗ちゃんも恋ちゃんも鍛錬おつかれさま!!」

「鉄の甕のおかげで、とーっても冷えたお水だよ。よかったら飲んでいかない?」

「…おみず」

 

汗だくの恋が甕の方に近づいてくる。

 

「よろしいのですか?」

「いやあ…俺は手伝っただけだから」

「もちろんだよ。みんなのために持って来たんだから!!」

「愛紗ちゃんも飲んで飲んで~。汗かいて熱くなってるでしょ?」

「そうか…なら遠慮なく戴くとしよう」

 

既に恋は甕に突っ込んだ手から直接飲んでいた。

 

「愛紗ちゃん、良かったらこれどーぞ」

一体どこから用意してきたのか、雷々はひしゃくを愛紗に差し出す。

 

「かたじけない」

「ついでに軽く水浴びしていったら?」

「すずしー」

 

またも既に恋は水浴びをしていた。

 

「いや、あれはさすがに…それに」

 

愛紗は頬を赤くしてちらっと北郷一刀を見た。

 

「どうした?」

「な、なんでもありません」

 

ちょっとつっけんどんな言い方をして愛紗はひしゃくを煽る。

勢いよく飲むものだから水がこぼれてしまう。こぼれた水が愛紗の服に垂れた。

それはそうと愛紗の服は白い部分がちょうどボリューミーなところを見えないようにしている。その部分に水が掛かれば透ける。

先ほどの彼女の考えがすぐに理解できた。ちょっと残念と思ってしまうのはやはり男だからかもしれない。

 

「じゃあ愛紗ちゃん。お代」

「おだい…?」

「お代…金を取るのか?」

 

まさかの言葉にポカンとしてしまう愛紗と恋。

 

「何のお代…って、この水のか!?」

 

北郷一刀も予想外で驚いた。

 

「そーだよ。愛紗ちゃんと恋ちゃん、お水あってよかったでしょ?」

「いや、まあそれはそうだが…」

「ここまで運んでくるの、大変だったんだよ~? 電々たちは頑張ってお水をいっぱいにしてここまで運んできたの」

「そ、そうなのか…」

「必要としている人がいるところに必要なものを持ってきたわけ!!」

 

良い笑顔で畳みかける。更に電々たちの頑張りを全面に出している言い方だ。

 

「むぅ…できれば最初に言って欲しかったが……いや、元はといえば私と恋が水に手を出したわけだし……既に世話になったのは事実だし、反論の余地はないな」

 

正直なところ納得はしづらいが、愛紗は上着から財布を取り出して小さな硬貨を雷々に差し出す。

 

「毎度あり~」

「…恋、お金ない。ねねが、お財布持ってる」

「あー、それはねねちゃんの気持ちわかる気がする」

 

恋にお金を持たせたらすぐに食事代と動物の餌代ですぐに消えるからだ。

 

「んーじゃあ、恋ちゃんは私たちのお手伝い二号さんだね!!」

 

代金を払わなければ他で払ってもらうしかない。というわけで恋には働いてもらしかない。

 

「ん、わかった」

(わかっちゃっていいのか、呂布大将軍)

 

そもそも先ほど電々と雷々が行った商法は詐欺に近い。

例えば人から「これを食べてもいい」と言われて食べたら「売り物だからね」と後出しで言われたようなもの。

彼女たちの将来が心配になる。しかもこれが狙ってやっているわけではなさそうなのだから余計に心配だ。

まさか同じ商法で他の人物たちからも金を巻き上げるのかと危惧したが、これ以上の商売ができなくなる。理由はいつの間にか来ていた鈴々が甕の水を全て飲み干したからだ。

これではもはや商売は不可能。だが、飲んだからには何か対価を払ってもらわねば困るというもの。

何だかんだで鈴々から短刀をもらい受ける。刃こぼれはしているが元々は良い短刀のようで研ぎ直せば店によっては売れるかもしれないということだ。

 

「甕の水が刃こぼれした短刀になった」

 

もはや商売というより物々交換である。そう思った矢先、本当に物々交換が続く事になる。

次に出会った詠と月たちは倉庫の片づけをするために短刀が必要だと言う。

短刀を使う理由として、きつく封をされた箱に詰まった本や固く紐で結ばれた本を取り出すのに必要だからだ。

これもまた物々交換という事で月が持っていた書物と交換する事になったのである。

 

(…なんだかわらしべ長者みたいだな。いや、最初の始まりが水だから水長者か?)

 

ならば次の相手は誰かと思っていたらまさかのまさかの天子の白湯の登場である。

彼女との物々交換はお菓子である。天子と交換したお菓子とはある意味、価値があるかもしれない。

 

「食べちゃダメだよ恋ちゃん。これも売り物なんだから」

「でも…お水がお菓子になったって思うと、これを食べちゃってもいいのかも?」

「確かに…それにすっごく美味しそうだもんね」

 

ゴクリと生唾を飲み込んだ。

白湯から交換したお菓子を食べてしまうか、商品として売るか悩んでしまう。

そんな時にカルデアの諸葛孔明が資料を持って歩いてきた。

 

「レディたちに北郷か」

「もしかして休憩かなにか?」

「いや、この資料をこれから朱里のところに渡しに行くだけだ。そっちは何をしていたんだ?」

 

カルデアの諸葛孔明。

最初に出会った時はまさか三国志の軍師とは思わなかった。英霊というのはまだ分からない部分はあるがカルデアの諸葛孔明については説明を受けているから少しは分かっている。

 

(諸葛孔明という存在が人の身体を依り代にして現界しているんだっけ)

 

他人の身体を依り代にしているが実は中身は諸葛孔明ではない。

 

(確か…諸葛孔明は力だけを依り代の人に渡して人格は引っ込んでいるんだっけ?)

少し残念だと思ってしまうがカルデアの諸葛孔明と話をしてたいと思う北郷一刀である。

 

「こっちは商売をしてたんだよ!!」

「商売か…何を売ってるんだ?」

「えーっと今、売っているのはこのお菓子くらい」

 

白湯と交換したお菓子を見せる。

 

「お菓子か……ちょうど糖分が欲しいと思っていたところだったんだよな」

 

諸葛孔明は朱里から様々な仕事を手伝わされている。日に日に手伝わされている仕事量が増えているのだ。

朱里も最初はそこまで仕事量を増やすつもりは無かった。だが諸葛孔明は朱里の望む結果を出してくれるのだ。

具体的には自分が行ったのと同じくらいの結果を出してくれる。まるで自分と同じ考えを持って仕事をしているかの如く。

世界は違えど、どちらも諸葛孔明なのだからある程度、同じ考えを持つのは当たり前だ。だからこそ朱里はついつい仕事を諸葛孔明に追加してしまうのだ。

 

「売っているのなら買いたいが…今は手持ちが無いんだったな」

「なら、物々交換でも大丈夫だよ!!」

「等価交換みたいなものか。しかし、何か持っていたか……今はこれくらいしか持っていないな」

 

諸葛孔明が取り出したのはワインだった。

 

「どっから取り出したんだ!?」

「わいんって何?」

「葡萄のお酒だよ」

「お酒なんだ!!」

 

ワインとお菓子の交換成立。

 

「まさか水がワインになるとは」

 

電々と雷々はワインに興味津々だ。売り物だが正直なところ飲んでみたいと思っている。

 

「確か…孔明さんは藤丸さんと同じ国の人だったよね。そしてご主人様と同じ天の国の出身。ならこれは天の国のお酒だね!!」

「天の国のお酒凄いねー。これいくらになるんだろう?」

「きっと高いよ」

 

ワインはものによっては相当高い。

 

(確か100万するワインもあるからな)

 

流石に北郷一刀でもワインの良し悪しやどれくらいの価値があるかまでは分からない。

電々たちも商品を見る目はあるが初めての物の価値までは分からないのだ。

 

「これが本当に価値があるワインなら…宝石並みの価値があると思うぞ」

「え、本当!?」

「ああ。でもどれだけの価値があるかは分からないけどな。もしかしたら安物かもしれない」

 

ワインにも高級なものから安物まで数多い。交換したワインがどれほどの価値があるか聞けば良かったと思うのであった。

 

「…お水から天のお酒になっちゃった」

(ある意味、水長者は成功か?)

 

これで水長者は終了かと思ったが新たな者が現れる。

 

「あー、それってワインじゃないのかー!!」

「うわっびっくりした!?」

 

顔を赤くした荊軻が星と共に歩いてきた。両脇には酒瓶を抱えている。

何処からどう見ても先ほどまで酒盛りしていたようだ。

 

「…星、昼から酒を飲んでたのか?」

「今日は非番だからな。荊軻殿と様々な酒屋を周っては飲んでいたのさ。しかし荊軻殿も反応してたがそれも酒か?」

「天の国のお酒だよー!!」

「なに!?」

 

ギラリと目を光らせる星。お酒好きとしては無視できない案件だ。

是が非でも飲んでみたいと思ってしまうのは当然の反応である。

 

「私も飲みたーい。ちょーだい!!」

 

へべれけ荊軻がワインに手を伸ばすと電々がすぐに遠ざかる。

 

「駄目だよ。これは商品なんだよ!!」

「えー、みんなで飲んじゃようよー」

「うう…魅力的な提案。でも売り物だからダメ」

「えー……」

「飲みたいなら買って」

「お金無い」

「酒屋巡りで使ってしまったからな」

 

荊軻と星の持つ酒瓶の数を見れば分かる。

 

「むう、マスターを呼ぶしかないか」

「おお、立香ならお願いすれば払ってくれそうだな」

「藤丸頼りかよ…」

 

こういう解決してくれるのも藤丸立香の仕事である。最も、今は居ないのであるが。

 

「お金がないなら物々交換だよ」

「交換といっても私は酒しか持ってないからな。荊軻殿は何か持ってないか?」

「んーーー…」

 

荊軻が懐から何かを出す。

 

「それ何?」

 

荊軻が取り出したのは飴のような物と5色の液体が入った器であった。

 

「本当に何それ!?」

「これはマスターが謎の物質βって言ってたぞ」

「謎の物質β!?」

 

本当によく分からない物であった。そもそも謎の物質と言っている時点で怪しさ満点で訳が分からない。

 

「えっとねー…マスターは飴みたいな物体を5色の液体に順番にくぐらせる事で何かが完成するってー」

「何が完成するんだ!?」

「何かだ」

 

物凄く怪しすぎる。これには電々と雷々も反応に困っている。

恋に関しては興味そうに覗いている。もしかしたら綺麗に見えているのかもしれない。確かに鮮やかではあるが、怪しさは捨てきれない。

全ての液体をくぐらせた場合は見ようによってはグロいかもしれない。

 

「こ、これは…本当に価値が分からない」

「う、うん…」

「安心しろ電々、雷々。たぶん、コレは誰も価値が分からないと思う」

 

この価値が分かるのユニヴァース世界の者だけだ。

 

「じゃあ交換成立ー」

 

荊軻は酔っ払いながらワインと謎の物質βを交換した。

 

「あっ!?」

「よくやった荊軻!!」

 

ワインと謎の物質βを半ば強制的に交換した荊軻を見た瞬間に星は手を引いて何処かへ走り去っていくのであった。

 

「さらばだ!!」

「ドロボーーーっ!?」

「失敬な。ちゃんと物々交換したではないか。では、さらばー!!」

 

星と荊軻は既にもう見えない。

 

「あうう…よく分からない物になっちゃった」

 

わらしべ長者ならぬ水長者は謎の物質になるという結果であった。

 

「こんなオチ!?」

 

こんなオチである。

 

 

351

 

 

陳留にて。

 

「ねえ、秋蘭。華琳様はどちらに?」

「華琳様なら庭でまたあの妖術師殿とお茶をしているぞ」

「なっーーー!? またなの!?」

 

荀彧は悔しそうに顔を歪めた。

 

「最近あの妖術師とお茶ばかり…ずるい!! 私だって華琳様とお茶がしたい!!」

「落ち着け桂花」

 

曹操の陣営では妖術関連のものを集めている。それは反董卓連合での怪異に遭ってしまったからだ。

対策として曹操は反董卓連合が解散後にすぐに妖術関連の物を集めだしたのだ。集めた物がほぼハズレであるが、それでも極わずかにアタリがあったりする。

その1つが今、庭で曹操が一緒にお茶をしているという妖術師だ。

 

「まあ、確かに…最近の華琳様はあの妖術師がお気に入りのようだからな」

「それが羨ましいの!!」

「そもそもここらでは見ない美しさだ。華琳様の趣味にバッチシだったんだろう」

 

羨ましがっているのは荀彧だけでない。夏侯惇だって同じく羨ましく思って悔しがっているのだ。

 

「うう…華琳様~~」

 

件の華琳と妖術師であるが庭で優雅にお茶をしている。

 

「貴女ったらとても綺麗だわ。ここらでは見ない美しさね」

「これはこれは…あの曹操殿に褒められるのは光栄だね」

「それにこのお茶も美味しいわ。今度は私に振舞わせてくれないかしら?」

「曹操殿がお茶を淹れるのかい? 興味はあるが遠慮しておくよ。ちょっと事情があってね」

 

曹操の目の前にはまるで美しい金髪を靡かせた人形のような少女と水銀の従者がいる。

彼女を見つけた時は本当に運が良いと思ったほどだ。華琳自身が自分の目で確認して本物だと認めた妖術師である。

最も水銀で出来た従者を見れば誰もが認める。そしてその妖術師が美しい女性というのが華琳の趣味にストライクだ。

更に妖術師としての力だけでなく、軍師としての能力もあるのも嬉しい誤算であった。人材マニアの曹操ならば本当に嬉しい誤算だ。

 

「今度、劉備と会談をしようと思ってるのよ」

「いいんじゃないか。そもそも貴女が決める事だ。誰も否定はしないだろう」

「その事を劉備に伝える為に珪を徐州に向かわせるのだけれど、貴女も着いていく? きっとお探しの人に会えるわよ」

「いや、ここで待っているよ」

「あら、何でかしら?」

 

妖術師の少女は一間置いてから小悪魔的な笑顔をした

 

「何でって…弟子の方から師匠の元に来るのが当たり前だろう? それに…弟子の困った顔が見たいんだ」

 

それに対して曹操は面白そうに答える。

 

「良い趣味してるわね」

 

曹操もまたニコリと微笑するのであった。




読んでくれてありがとうございました。
次回は今日中に更新!!

349
月と詠の幕間の話の1つですね。
原作に踏まえて藤丸立香たちも雑談に加わった感じになります。
オチに諸葛孔明と詠を使いました。
まあ、洛陽で客将時代にコキ使っていた仕返しの意味も含めてます。

350
電々と雷電たちの水長者の話でした。
そこにカルデア勢を加えてちょいとオリジナルな話になりましたね。
孔明がワインを持っていたのはバレンタイン関係で思いつきました。
荊軻が謎の物質β持っていたのセイバーウォーズ関連のイベントで活躍したから(我がカルデアではですけど)。
後日、立香が謝りと引き取りに行きます。(謎の物質をネタにした話を書くかも?)

351
曹操sideでのちょっとした話。
曹操が見つけた妖術師とは何者なのか。(もはやバレバレですけど)

次回で本編に戻る感じの終わりですが、あともう一回だけ日常編をやります。
私が特に書きたかった日常編ですね。


次回!! 『華蝶仮面:第1羽 蝶 華麗に推参!!』


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