109番目の女神   作:猫の休日

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あけましておめでとうございます。
今年もよろしくお願いします。

さて、2話目ですね。
1話でさっそく感想、お気に入り登録などしてくださった皆様、誠にありがとうございます。
これからもちょくちょく執筆していくので、よろしくです。

それでは、どぞ。


1 孤児院と噂

イギリス郊外にある、小さな教会付きの孤児院。その玄関前にいつの間にか名前の入ったメッセージカードと共に捨てられていたのが、私だった。

そしてまぁ予想していた通りに、私の3回目の人生の名前は、2回目の名前と同じターニャ・デグレチャフだった。それでは改めまして、ターニャ・デグレチャフでございます。今年で恐らく9歳ぐらいになるでしょう。…あの存在X、面倒くさがったな。

 

 それはさておき、だ。あの悪魔が私を再び転生させるとき、一方的にではあるが、「非科学的な世界で、女で、戦争を知り、追い詰められて尚信仰心が芽生えないのであれば、神を信仰しなければ戦うことすらままならない世界へ転生させ、信仰が芽生えないか試す」とかほざいていたが…これはどうしたことか。

 というのもこの世界、いや、この国か。この国では戦争が起きていないのだ。ならば魔法はあるのかと、幼いながらできる範囲で調べたが、魔法の魔の字も見えやしない。

それは勿論、時代も背景に不思議な話を聞くことはあるが、科学の進歩がまるで魔法のような現代日本から転生した私から見てみれば、原因が何であるかは対外予想ができる。それに2度目の生では魔法そのものを使っていたのだから、たとえ私の知識が乏しく理解ができない所でも、そうですか、という感想を抱くだけで、別段驚くほどのことでもない。

 因みに根も葉もない噂では、人が服だけを残して突然姿を消すという噂や、空を飛ぶ幼女という話が、ここ最近は多い。が、先ほども述べたように少しばかりの興味を惹かれるが、空を飛ぶ幼女など、まさしく前世の私がそうであるからして、特に興味を持つこともない。

 

 もちろん、これから戦争が起こるという可能性は捨てきれないことではあるが、あの存在Xがそんな生ぬるいことをするはずがない。信仰心のために、平気で多くの人間の命を奪うあの悪魔は、決して神などではないのだから。

 しかし気になるのは、あの悪魔が言っていた「神を信仰しなければ戦うことすらままならない」という言葉だ。これは一体どういう意味なのだろうか? もし文字通りの意味であるなら、人類は悪魔とでも戦争をしているとでもいうのだろうか。

馬鹿馬鹿しい…と、切り捨てることが残念ながら私にはできない。存在Xがいるのだ。牛頭の翼が生えた悪魔がいても、おかしくはないのかもしれない。

しかし、もし本当にそう言った存在と戦争しているのであれば、少しくらいはその話題を聞くことができるはずだ。それすらない…ということは?

 

「ターニャちゃん? 食事が進んでいないようだけど、お腹でも痛いの?」

「あ、いえ、大丈夫ですシスター。考え事をしていました」

「そ、そう? 食事中はあんまり考え事はしないようにね」

「はい。ごめんなさい」

 

 分からないことをグダグダと考えていても仕方がない…か。私は一度思考を頭の片隅に追いやって、今は目の前のパンをちぎって口に運ぶことにいそしむことに決めた。

 

 だからだろう。私は周囲の目にまるで気が付くことがなかったのだ。声をかけてきたシスターの様子も、周りの子どもたちの様子も。その目が、少しばかりの恐怖と、不気味で気味が悪いものを見る目であったことなど。子どもたちの目が、何やら監視するような目であったことなど。

 

 

 

 

 

   ◇

 

 

 

 

 

「リナリー」

 

 そう兄さんに呼ばれて、私は配っていたコーヒーをリーバー班長に渡してから、兄さんの元に行く。

 

「どうしたの、兄さん」

「いや、ちょっと任務でね」

「そう…イノセンス?」

「いや、どうやら今回は適合者かもしれないんだ」

「適合者!?」

 

 イノセンスがあるかもしれないと任務に出かけることは多いけれど、適合者かもしれないということで任務に出かけることはそう多くはない。

 

「イギリスの小さな町にね、最近あるうわさが飛び交っているらしいんだ」

「ある噂?」

「そう」

 

 兄さんはもったいぶるように溜を作る。

 

「空を飛ぶ幼女」

「空を飛ぶ幼女?」

 

 空を飛ぶ。その言葉を聴いて、何故私が呼ばれるのかを納得する。

 

「それが本当なら、私が行かないとね」

「そうだね…でも、気を付けてね。既にアクマが侵入しているらしくて、何人かのファインダーと連絡が取れない状況だ」

「なら、急がないとね」

 

 それにしても、幼女…か。

 私が考えていることを察したのだろう。兄さんが心配そうに見つめる。

 

「…できれば、幼女というのがただの噂であってほしいよ」

「…そうね」

「任務は私一人?」

「いや、ブックマンとラビが現地で合流する予定だよ」

「分かったわ。ラビも空を飛べるものね」

 

 私の言葉に、兄さんはそういうこと、とウインクをする。

 私はそれに少しばかり笑って。

 

「それじゃあ、兄さん」

「ああ、ちょっと待ってリナリー」

 

 行ってきます、と言おうとしたところで、兄さんに止められる。

 

「どうしたの?」

「情報なんだけど…」

 

 そう言って兄さんは紙が溢れかえったぐちゃぐちゃな机を漁る。もう、あれだけ掃除するように言ってるのに。

 

「はいコレ」

 

 そういって渡されたのは、古びた教会が映った写真だった。

 

「これは?」

「この孤児院に、適合者がいる…かもしれない」

「孤児院…」

 

 孤児…ということは親がすでに亡くなっているのか、それとも捨て子なのか。

 親がいない上に、もしかしたら伯爵との戦争に参加しなくてはいけない幼女…か。

 

「分かった。ブックマンとラビと合流しだい、この孤児院に行ってみる」

「うん。よろしくね」

「うん。いってきます」

「行ってらっしゃい」

 

 黒の教団本部を出る船の上で、私はもう一度受け取った写真を見る。

 こんなことを願うのは、エクソシストとしてはいけないことなのかもしれないけど…。

 

「どうか、適合者ではありませんように…」

 

 神様、どうか、小さな女の子まで、戦争に巻き込まないでください。

 

 




お疲れさまでした。

ターニャ視点? がむっちゃ短いですが…許して。今回はあんまり書くことがなかったんや…たぶん次辺りは、ターニャ視点は多くなると思われます。

さて、執筆していて改めて気が付いたことですが、このシリーズ書くの楽しいです。
幼女戦記が好きというのもありますが、Dグレは実は私が初めて自分のお金で買った漫画なんですよ。
好きなもの同士のクロス…これは楽しい(確信)
ただ、やっぱり幼女戦記の書籍みたいに書くのは難しく、今回は全然できていないかもです。たぶんこれからも。
努力はしますが、まぁあんまり気にせず、こんなものかと思いながら読んでくださると幸いです。

どうでもいいことですが、リーバー班長をリヴァイ班長と間違える…似てない?(名前だけ

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