よくわかりませんが、司令官に選ばれたようです。   作:おいたんだ!

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司令官に選ばれました

「……君を東地区の総司令官に任命する」

 

 俺がいつものように裸になって1階のリビングでオナニーをしていると、中央支部のお偉いさん方がやって来た。

 どうせアイツだと油断し、裸で対応してしまった5分前の俺を今すぐにでも叱ってやりたい。

 

「光栄でございます!」

 

 ちなみに今も裸だ。

 

 当然だ。

 

 ここでもし俺が恥ずかしさのあまり急いで衣服に着替えたとしよう。彼等はどう思うだろうか? わかりきったことだ。

 そんなことをすれば、彼等は俺の事を一貫性のない人間だと判断するだろう。それは俺だけでなく、彼等にとってもマイナスでしかない。それならば最後まで裸を貫き、俺の男気をアピールした方が評価は上がるというものだ。

 俺の一世一代のチャンスがかかっているのだ。ここで下手な真似は出来ない。

 

「…………」

 

 しかし、なんとも奇妙な光景だった。俺と軍服の男3人は、テーブルに対面する形で座っている。

 さらには2階から降りてきた妹が「粗茶ですが」とこの状況に何のツッコミもいれずにお茶を出しているのだ。

 さすがは俺の妹。訓練学校の鬼教官たちから将来を有望視されているだけはある。

 

「……失礼だが、君は2日前に行われた軍法会議には出席はしたのかね?」

 

 2日前に行われた軍法会議。確かあれだ。東地区の総司令官を女の子が殴ったとか何とかだ。

 詳しくは覚えていないが、銀髪の女の子が可愛かったということだけは覚えている。

 

「はい! 出席いたしました!」

 

「では今現在、東地区が空席なのは理解しているね。勿論、その危険性もだ」

 

「はい! 心得ております!」

 

 ここ“アクアマリン”には、4つの地区が存在する。北地区、南地区、西地区、そして東地区だ。これら4つの地区は、資源の宝庫とされる中央支部を守る為に存在する。

 当初この4つの地区がつくられた際には、北地区と南地区が激戦区になると予想されていた。しかしここ十数年、東地区での腐竜発生率が異常なまでに高まっている。

 そのせいもあってか、腐竜の産み落とす卵から発生する巨大な(ブエナ)もそれに比例し、増え続けていた。

 よって、今現在東地区は4区域の中でもっとも危険な場所とされている。

 

「1時間後に迎えの機動部隊が到着する。急ですまないが、身支度を整えて中央支部エントランスホールに向かってくれ」

 

 そういうな否や、軍服の男たちはもう用は済んだと早々に立ち上がった。

 

「か、かしこまりましたっ!」

 

 訓練学校を卒業してはや3年。西地区でのあの事件以降ひきこもりといっていいほどに働いていなかった俺に、まさかこんなチャンスが巡ってくるとは思ってもみなかった。

 お偉いさん方を見送り、俺は妹がいるだろうリビングに颯爽と駆け込む。

 

「妹よ! お兄ちゃんは出世したぞ!」

 

 優雅にお茶なんて飲んでいる妹に、俺は満面の笑みを向けた。

 

 当然まだ裸だ。

 

「さすがは兄さん。明らかに厄介事を押し付けられたというのに、相変わらずポジティブですね。本当にあそこがどういった場所か、理解しているのですか?」

 

 勿論知っている。

 

「ふっ、人はいずれ死ぬ運命。早いか遅いか、それだけさ」

 

「はあ、相変わらず頭ぶっとんでますね。それにしても、上級大将1人に少佐2人が直々にご挨拶に来たというのに裸で対応とか、正直コスプレ物のアダルトDVDかと思いましたよ」

 

 やはり俺の妹といえど、あの光景は衝撃的だったらしい。

 

「あれは俺も反省してる。カナミだと思って油断し」

 

「ちっ、私の前でその女の名前を出さないでください。……まあ大方、東地区の司令官に任命しようとしていた人物に逃げられたんでしょう。じゃなきゃこんな急に、しかも卒業試験で歴代最低点を叩き出した兄さんに話がいくとは思えません」

 

 妹はため息交じりにそういってお茶をすする。訓練学校の卒業試験か、懐かしな。

 

「本当、なんで俺があの卒業試験を合格できたんだろうな。マジで不思議だわ」

 

 というのも、俺の叩き出した点数は筆記試験もさることながら、実技試験もそうとう低かったらしい。

 にも関わらず合格してしまった為、卒業試験に落ちた当時の生徒たちからは連日連夜、学校にクレームがいったという。訓練学校7伝説の中の1つである。

 

「……どうせ、あの女が裏で何かしたんでしょう」

 

 忌々しそうに、妹がそう口にする。誰の事をいっているのだろうか? 妹が嫌っているカナミは訓練学校とは無関係だから違うだろうし、他に嫌っている人物といえば…………うーむ、まあいいや!

 

「じゃっ、そういうことでお兄ちゃんはちょっと東地区に行ってくるから、家の事よろしくな!」

 

「ええ、私も後少しで卒業なので、もしかしたらそっちに就職するかもしれません。その時は優遇して下さい」

 

「あっはっはっはっはっ! この総司令官様に任せなさい!」

 

「……本当に大丈夫かしら」

 

「あっはっはっはっはっ!」

  

 妹の不安をよそに、俺は高笑いを続けた。

 

 数分後。俺は身支度を整え、タクシーで中央支部エントランスホールに向かっていた。見慣れた街並みに「ありがとう! ありがとう!」と手を振りながらお別れをする。

 しかし、運転手が俺の事を完全に危ない奴を見る目で見てきたので、途中でやめてしまった。

 

 30分後、目的地に到着。黒を基調とした中央支部のエントランスホールに足を踏み入れる。

 すると軍服を着た男1人に加え、警備員5人が手錠をされた銀髪の女の子を連れてこちらにやってきた。軍法会議で見たあの女の子だ。

 

「アレン・グレイナード准尉。お待ちしておりました」

 

 手持ちのファイルと俺を交互に見ながら、軍服の男がそう口にする。すると彼に続き、警備員たちも一斉に頭を下げてきた。

 銀髪の女の子も、警備員に無理やり頭を押さえられ、苦々しい表情でこちらに頭を下げてくる。すまん。何かすまん。

 

「時間がありませんので、手短に引継ぎを行います」

 

 軍服の男がそういうと、俺に銀色の指輪をはめてきた。なんだか物凄く複雑な気分だ。

 すると、銀髪の女の子が思わず吹き出した。警備員たちも複雑な表情を浮かべている。

 

「……この指輪は遠隔式になります。この内側のスイッチを入れるだけで、彼女がしている首輪を締め付け、電気ショックを与えることが出来ます。期間は5ヶ月。判断はアレン准尉に一任します」

 

 なるほど、リョナラーなら歓喜するシチュエーションという訳だ。しかし残念なことに、俺にそういった趣味はない。

 これが如何わしいバイブのスイッチであれば歓喜したのだが、本当に残念だ。

 

「では最後に、レイナ・ミリヤードによる忠誠の儀を行います」

 

 男がそういうと、警備員に押された銀髪の女の子が前に出た。膝を付き、こちらを忌々しそうに見上げてくる。

 

 すまん。何か興奮してすまん。

 

「……レイナ・ミリヤード。アレン・グレイナード准尉に、絶対の忠誠を誓います」

 

 こうして俺は、何だかよくわからないうちに銀髪の可愛い女の子に忠誠を誓われてしまった。

 

 軍服の男と別れ、警備員3人と女の子を引き継ぐ。すぐさま機動部隊の集合場所に向かった。数分しないうちに、関係者以外立ち入り禁止の立札がある駐車場に到着する。機動部隊は既に到着していた。

 

「レイナ!」

 

「ミーナ!」

 

 すると、金髪ツインテールの女の子がこちらを見つけるなり、そう叫んできた。間髪入れず、隣の銀髪っ子であるレイナも叫びながらそちらに走ろうとする。

 しかし、警備員がそれを止めた。忌々しそうに、レイナが俺を見る。……うん。どうやら完全に嫌われているらしい。まあ、当然だろう。

 

「……あー、いいよ。行かせてあげて」

 

 俺は警備員に許可を出す。彼等も彼等で自分の仕事をしているだけだ。仕方ない。ここから頑張って、彼女に気に入られていけばいい。半端諦めの境地だ。

 警備員が慌てたように手を放し、レイナが自由になる。しかし、彼女は中々動こうとしなかった。

 な、何か文句でもあるのだろうか。……そういえば、前の司令官は彼女にボコボコにされたんだよな。あの司令官の歯抜け写真を思い出し、ちょっと怖くなってくる。

 

 しかし、そんな俺の心配は杞憂だった。

 

「……ありがと」

 

 レイナは気恥ずかしいように、俺に背中を見せながらそういった。

 

「…………」

 

 め、めちゃくちゃ良い子じゃないか!

 

 レイナが走り出し、金髪ツインテールと仲睦まじく抱き合う。俺はそれを見ながら、百合もいいなと実感した。

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