正真正銘無個性少女! ヒーロー目指してやったるわぁ!! 作:めありい
もうやばい。今なら筆舌に尽くしがたいの意味がよくわかる…!!
今回、投稿が遅くなった分めちゃくちゃ多いです。
それと、かっちゃん視点結局書けませんでした
期待してくれていた読者がいたなら本当にすまぬ!
それと、お待たせしてしまって悪かった!!
それでは、シリアスドストライクでいってみよう!
あの後、結局学校が終わるまで何事もなかった。
僕はスマホでヒーローニュースのサイトを確認する。どうやら、今朝の事件は今日のニュースのトップになっているようだ。
「家に帰ったら今朝のことをまとめなきゃ」
家に着くまでの間、今朝ノートに書いたメモを読み返しておこうと思い、鞄からノートを取り出す。
すると、突然ノートが手から離れた。
「かっちゃん…」
「あれは何のつもりだ?デク?」
『デク』はかっちゃんのつけた僕への蔑称だ。かっちゃんは昔からいつも僕を蔑んでいる節がある。今回も強烈な自尊心から行動を起こしているのかもしれない。あちらからすれば、無個性でずっと前から弱者として扱ってきた奴が自分と同じ学校を受けると聞いたのだから突っかかりたくなるのも仕方がないのかもしれない。
僕にはかっちゃんに対抗する気なんてさらさらないんだけど、かっちゃんの迫力に圧されてうまく言葉がまとまらない。
「カツキ何それ?」
教室に残っていた取り巻き達が、かっちゃんが取り上げたノートを覗き込む。取り巻き達は表紙を見るなり笑い出した。
「い…いいだろ?なんだって…!返してよ…!————って、ああああー!!」
その言葉を言い終えぬ内にかっちゃんはノートを爆発させてしまった。それを見て僕は悲鳴をあげる。
ノートは原型は留めていたけど所々が焼け焦げて黒くなっていた。それどころか、かっちゃんはそれを窓から投げ捨ててしまった。
「フン……一線級のトップヒーローは大抵学生時から逸話を残してる。俺はこの平凡な私立中学から初めて、唯一の雄英進学者って箔をつけたいわけよ————っつう訳で、一応さぁ…雄英受けるななぁ?デクゥ?」
なんだかもうみみっちいとしか言いようがない。別に僕が受からないと思っているなら脅す必要なんてないはずだ。要はただの愉快犯だろう。
僕の肩に置かれたかっちゃんの手から制服の焦げる匂いがする。短いようで長いその間、僕はかっちゃんから目を逸らす事しかできなかった。
かっちゃんは僕の小さい頃からの夢を知っている。そのために僕が努力しているのも知っている。それでも彼はそれが叶わなないものであると疑わない。
言いたいことはたくさんあるけど、今日はどうも口論などする気になれない。かっちゃんが怖いって言うのも少しはあるが、他に気になることがあった。
「いやいや…流石になんか言い返せよぉ」
「言ってやんなよ、かわいそーに————彼はまだ現実が見えてないのです。」
…
「———現実なら、見てるよ。痛いほどに。…僕は本気だ、かっちゃん。記念受験なんかじゃないよ……絶対、ヒーローになるって決めたんだ。それに——「それになんだよ」——ッ」
ようやく途切れ途切れに話し始めた言葉を遮られる。
「言っておくが今俺がテメェに声掛けたのはただの愉快犯じゃねえ、暇つぶしでもねぇ。」
そこまで話して、彼は声のトーンを低くする。
「——どうせテメェのことだから何年前の無個性の奴のことでも引きずってんだろう?夢見てんじゃねえよ。まだあんなの信じてんのか?ああ?」
弾けるような感情は感じられず、寧ろ底冷えするような響きに思わず身を震わせた。いつもの彼なら怒鳴り散らしたような声を出すはずだ。
「ッそれってどういう…」
「あの無個性はハッタリだっつってんだよ。大方、国のお偉いさんかなんかが無個性差別をどうにかしようとしてやった、でっち上げだ。」
…え…
あり得ないことじゃ、ないかもしれない。
今までのことを思い返す。確かにあの事件は不可解な点が多かった。目撃者も多い大きな事件だったはずなのに情報は全然手に入らなかった。
…でもあの動画は?…いや、最近の映像加工技術はすごい。それこそ超常のお陰で発達した技術なら、あの程度全く難しいことではないだろう。
だけどそれだったら僕はすぐに分かったはずだ。
じゃあ何で今まで気づかなかった…?いや、違う。本当はうっすらと気付いていたのかもしれない。きっと気づきたくなかったんだ、僕は。
あまりにも輝いて見えた虚実に縋りたかっただけだったんだ。
頭がガンガンする
考えれば考えるほど辻褄が合ってしまう
いやだ、認めたくない。
あれが嘘だったなんて。
だって、あの出来事のお陰なんだ、全部。
あれがなかったら今まで僕は、
あの子はあの日からずっと僕の心の支えで、
「…そもそもあんな奴いなかったんじゃねーの?」
—————ッ!!!!
* * *
あの後、頭がぐらぐらしてしばらく教室で机に突っ伏していた。
もう何もかも壊されてしまった気分だ。
…いや、実際何もかも壊されてしまったのかもしれない。
……考えていても仕方ない。
そう思った僕はフラつきながら席を立った。
と、そこで、先生に呼び出されていたことを思い出した。時計を見ると、もう随分と待たせてしまっている。僕の担任の先生は、基本生徒に優しい先生だ。それは無個性の僕に対しても変わらない。僕がよく努力しているということも考えて、授業中に僕がうとうとしてしまっていた時もそっと起こすような配慮をしてくれた。今日の会話の誘導は、さり気なく僕のことをみんなにアピールしてくれようとしただけかもしれない。決して悪い先生ではないから。…まあ今回は裏目に出たわけだが、そこまで気にしていない。今日の呼び出しはきっと先生からの謝罪だろう。
でもなんだかもう行く気になれなかった。
「…帰ろう」
正直もう必要のないものかもと思いながらノートを拾いにいった。鯉の溜め池に寂しげに浮ぶノートを掴む。
ノートは冷たかった。
家までの道中、まとまらない思考を無理やり隅に追いやった。
今は何も考えたくなかったから、オールマイトを真似して大声で笑った。側から見たら相当変な人だろう。でもほんの少しだけ気晴らしになったかもしれない。
僕は不幸にも近づいてくる水音に気がつかなかった。
「…Mサイズの隠れ蓑…」
背後からした不気味な声を聞いてようやくその存在に気づく。反射的に荷物を全て散らばして、振り向かず逃げた。すごい悪寒がしたのだ。予感は当たっていて、距離を十分にとってから見てみると、それは悪臭を放つ泥のような何かだった。それはビチャビチャと動き出す。僕に危害を加えようとしているのは一目瞭然だった。
いくら筋肉をつけたといっても力が多少上がっただけで、戦闘慣れなんか全くしていない。ヴィランに直接悪意を向けられたのだってこれが初めてだ。
ここはトンネルの中、周囲からは殆ど見えないし、助けを呼ぼうとしても聞こえないだろう。携帯で通報すればいい話だが、その余裕は与えてくれそうにない。
「…詰んでる…」
今は直ぐに逃げたから、少しの間は相手と距離があるが、相手は流動体。天井や壁をつたってこられたら捕まる。走って距離を取り続けながらそう考えて、とにかくトンネルを抜けるのを優先した。
だか出口まで間に合うだろうか…
今の僕が全力で走っても微妙なところだ。
逃げ切れる保証はないけれど、これぐらいしか今できることはない。こういう時個性があったら、と少しでも考えてしまった自分が嫌だった。
もう少し…!
もう少しでトンネルを抜ける…!
その時、天井をつたってきたヴィランが頭上から襲いかかった。
間に合わなかった…?
しかしそこに思いもよらぬ救世主が現れる。大柄なシルエットがトンネルの出口に泛かんでいた。
「少年、伏せてくれ!!」
必死になってその言葉の通りに伏せる。
「テキサス—————スマァアアッシュ!!!」
直後起きた突風で流動体のヴィランは吹き飛んで飛び散った。
僕は夢を見ているのかもしれない。今日かっちゃんに言われたことがショックで、憧れのヒーローを思い描いているのかもしれない。
トンネルの外からの光が逆光になって、オールマイトの姿がはっきりとは見えない。
それでも確かな存在感を持つその人、憧れの人は、僕のもう一人の憧れだった人を思い出させる—————また頭がガンガンしてきた。
僕は意識を保ちきれなくなって、そのまま倒れ込んだ。
* * *
「————-ey,hey,hey!!!」
…う……
「うおああああああぁ!!!」
「よぉかったぁ!元気そうで何よりだぁ!」
「うお、お、」
「いやぁすまなかったねえ。ヴィラン退治に巻き込んでしまった…怪我はないようだね————って君大丈夫?喋れるかい?」
…間違いない、本物だ…!
さっきのは夢じゃなかったんだ…!
「おっオールマイト…さ、さっきはありがとうございます…!」
「いやいや、君のおかげさ!ヴィランもこうして無事詰められた!」
そう言って彼は変な色をしたペットボトルを掲げる。
思わぬ形で遭遇したため、少しばかり…いやかなり混乱してしまった。でも先程までの経緯を思い出して少しずつ冷静さを取り戻す。
今日は本当に忙しい日だ。
そのあと急いでサインを求めようとしたら既にしてあった。流石、何事もはやい。これには再び興奮してしまい、自分でもやばいと思う速度でお辞儀を繰り返す。
「じゃ、これから私はこれを警察に届けるので———液晶越しにまた会おう!!」
あ…待ってよ、待ってくれ、まだ聞きたいことがたくさんあるんだ、
声が出ない。心のどこかで自分が拒否しているのかもしれない。
それでも、彼が飛び立つ瞬間、僕は懸命に手を伸ばした。
***
こ…怖かった…
高すぎて死ぬかと思った…
「全く…熱狂にもほどがあるぞ…今はマジで時間ないからここからは階下の人に頼んで降ろしてもらいなさい?」
「———ッひ、ひとつだけ———!…一つだけ、聞きたいことがあるんです…」
無個性が発覚したその日からの記憶、今日の出来事がフラッシュバックして、だんだん声が震えて小さくなる。無個性がヒーローになれるのか———今日、たったひとつだけの確証が失われてしまった。
だからこそ憧れのヒーローに肯定してほしかった。もう、縋れるものがこの人の存在以外に残っていなかったから。
「個性が、無くてもッ…ヒーローはできますか——?」
オールマイトが立ち止まる。
「…個性がない人間でも…!あなたみたいになれますか!?」
僕の全てをかけた言葉だった。僕はそのまま自分の今までのことをぽつぽつと話した。様々な思いが巡って言葉に熱が入る。
とそこまできて今一度問いかけるように彼の方を見た。
するとそこには…
* * *
「カツキよぉ、お前緑谷とは幼馴染なんじゃねの?今日のはだいぶ応えてたみたいだったけど大丈夫なのか?」
勝己はあの後取り巻きたちと一緒に帰路についていた。
「俺の道にいたのが悪い」
そう言って足元のゴミを蹴り飛ばした。
「ガキみてえに夢見心地の馬鹿はよぉ…見てて腹がたつ!」
勝己は普段から不機嫌なことは多いが、今日は取り巻きたちでも不自然に思うほど機嫌が悪かった。地面に爆破された空き缶が転がる。取り巻きは気分転換にでもと思いゲーセンに誘うが、これまた眉間にしわを寄せられ一蹴りされた。
——その時だった
「いい個性の隠れ蓑…!!」
* * *
「うおあああああぁぁぁああ!!!!」
本日何回目の奇声だろうか…
かなり裏返った声が出てしまった。
無理もない。目の前で憧れのヒーローが煙を上げながらガリガリになったりなんかしたら衝撃を受けない人なんていないだろう。その後、かなり取り乱しながらもオールマイトの事情を聞かされることになった。
彼の背中を見送りながら思い返す。
それは今の僕には苦すぎる話だった。
『私が笑うのは、ヒーローの重圧、そして内に湧く恐怖から己を欺くためさ』
『ごめんね、出久…ごめんね…!』
『プロはいつだって命がけ、力が無くとも成り立つとは、とてもじゃないが口にできないね』
『無個性のテメェに何ができんだよ』
『夢見るのは悪いことじゃない。だが、相応の現実は見なくてはな、少年』
『そもそもあんな奴いなかったんじゃねーの?』
嗚呼、疲れたなぁ…
今までの努力はなんだったんだろう
ちょっと整理する時間が必要みたいだ。いつもならこの時間はトレーニングをしているけど、1日くらいやらなくたってバチは当たらないよね。
暫しぼんやりと空を眺めていると、大きな物音が遠くから響いた。キョロキョロと見渡せば黒煙が上がっている箇所が目についた。
「ヴィラン!?どのヒーローが現場に…あ、」
はは、いつもの癖だな…
さっきあんなこと言われたばかりじゃないか、
走り出そうとしたが思い直してトボトボと歩き出す
今日一日ですっかりボロボロになったノートを何気なく捲る。ついつい泣きそうになってしまった。
泣くな…分かってただろ…現実さ…
分かってたから今まで気づかないように、見ないようにしてたんじゃないか
「あれ…?ここ…さっきの爆発の…」
…おいおい、癖でつい来ちゃったってか?
やめとけ今は。虚しくなるだけだ。
野次馬の隙間からヴィランが暴れているのが見えた。そしてすぐに理解する。あれは今日僕を襲ったヴィランだってこと、つまりオールマイトが逃してしまったってこと、そしてそれが自分のせいだってこと。
人質になっている中学生がいると聞いて、とてもいたたまれなかった。謝ることしかできなかった。
だって、ぼくには力がないから。
力がなければ人なんて救えやしないんだ。
でもその中学生の顔を見た途端、ぼくは爆発の中心に飛び出していった。
* * *
はぁ…
オールマイトに謝りたかったけど、取材が続いてたし…帰ったらホームページからメッセしてみよう…
今回の事件、突如現れたオールマイトの手によって無事解決した。
あの時、自分でも理由が分からないまま飛び出した僕は、ヘドロの中に自分から突っ込んでかっちゃんを引っ張り上げた。かっちゃんが粘り強く抵抗してくれていたおかげで、引っ張り上げるまでの間にヘドロヴィランからの攻撃を受けることはなかった。
僕にはあそこまでが限界だったけど、そのあとオールマイトが来てくれて本当に運が良かった。
まあ、結局僕はヒーローたちにこっぴどく叱られたわけだけどね。
かっちゃんのことだって…
「デクゥ!!」
あ…噂をすればだ。
「俺は…テメェに助けを求めてなんかねえぞ……! 助けられてもねえ!! あ!? なあ!? 一人でやれたんだ
無個性の出来損ないが見下すんじゃねえぞ
恩売ろうってか!? 見下すなよ俺を!! クソナードがぁ!!」
そこまで言うと彼は踵を返し去っていく。
…本当に彼らしい。
かっちゃんの言う通りだ。
何ができたわけでも変わったわけでもない。
もともと記憶の整理だって気持ちの整理だってするまでもなかったんだ。いくら何に縋ってもなんの意味もなかった。全部嘘だったんだから。
たとえハッタリでも、あの無個性の少年のおかげで、僕は8年間頑張ってこれたのは事実なんだ。だからもういい。夢は十分見させてもらった。
良かったよ。
これで僕もようやく、身の丈にあった将来を————————
「私が来た!!!」
「え!お、オールマイト!? なんでここに…さっきまで取材で…」
「抜けるくらいワケないさ!! なぜなら私はオールマ——ゲボォっ!!!」
「わーーーーーー!!!」
中略
「少年…礼と訂正、そして提案をしに来たんだ。」
「君がいなければ…君の身の上を聞いていなければ、私は口先だけのニセ筋になるところだった——ありがとう」
面と向かって言われた感謝の言葉に、目を合わせることが出来なかった。
「そ、そんな…そもそも僕が悪いんです…仕事の邪魔して…無個性のくせに、生意気なこと言って…」
言っているだけでも暗い気持ちになっていく。どこまでいっても卑屈は拭えない。
「そうさ。あの場の誰でもない、小心者で無個性の君だったからこそ、私は動かされた」
「トップヒーローは学生時から逸話を残している———彼らの多くがこう結ぶ、『考えるより先に体が動いていた』 と」
僕はなぜか、母の言葉を思い出していた。
『ごめんね出久……ごめんね…ごめんね……!』
『出久、あんたはきっといいヒーローになれるよ』
「——君も、そうだったんだろう」
抑え込む間も無く目頭が熱くなる。
「———ッぅん…うん……!」
嗚呼、違うんだ…違うんだ、母さん、
あの時、僕が言ってほしかったのは、謝罪でも、慰めでもない、
僕が、本当に言ってほしかったのは、
「『君は、ヒーローになれる』」
たった、それだけ。
それだけだけど、ぼくにとってはとても大事なこと。
やっと掴んだ、確かな希望だ
次回からやっとつーちゃんが書けます!!
実を言うと、今回のお話の最後の方とか、シリアスに耐えきれなくなって若干ギャグかも怪しいのが入ってたかもです