ただ、自爆とか4号機の爆発はマテリアルバーストに負けていると思うんです……使徒の構成物質が光のような性質を持っているからか……?
サキエルは普通の小学生になった。
「大丈夫? 学校でいじめられていない?」
『大丈夫だ。むしろ、学校に馴染めるかどうかが不安だ』
迎えに来た母親にサキエルはそう応える。
学校の校舎には入れず、全て窓の外からの参加だったが、彼は小学生になった。
彼の両親の「普通の子供と同じように育てよう」という方針によるものだ。病院で見てもらったところ、構成物質の差こそあるものの、信号の配置と座標はほぼ人類と同じものだと言われ、両親は凄い個性を持った自分たちの子だと再度認識したのだ。
サキエルの拙い会話がそれの後押ししたのもある。
父親の個性は、体表が水を弾く「撥水」。
母親の個性は、酸素を必要とせず生きていける「酸素不要」。
そして、その子のサキエルの個性は「使徒」。
個性届には、あらゆるものを防ぐ不可視の防壁を周囲に展開し、強靭で巨大な体となる異形型だと書かれた強個性だ。
もちろん、使徒の個性はそれだけではない。
その巨体を支える永久機関、S2機関。そして、その体を作り変える能力だ。この世界には個性があるので、S2機関の需要は低いかも知れないが、その出力は一国の電力生産量に匹敵しうる。
体を作り変える能力は、本能のままにミサイルと同等以上の遠距離攻撃を可能とする程だ。
もちろん、サキエルは話していない。サキエルの目的は完全な生物になること。そして、それが果てのないことだと知ったサキエルは、自らの邪魔をされにくいよう、かつて自爆しサンプルを取らせなかった時と同じように情報の隠蔽を図り、今現在も実行し続けていた。
もちろん、今の彼はばれたときのことも想像している。この5年間で彼は考えるということを学び、ばれた時のリスクと隠した場合のメリットを天秤にかけた上で、この結論を出したのだ。
迎えに来た母親を肩に乗せ、サキエルは家やペット、そして人を踏まないよう重力をATフィールドで拒絶し空を飛ぶ。
「使徒ちゃん。もし他の学校に行きたくなったら、ちゃんと言ってね? それぐらいの手続きはすぐできちゃうから」
『母上には、たくさんのものをもらっている。しかし、学校とはそのような苦難を経験するための場所ではないのだろうか? 無論、困ったことがあったら相談させてもらうが』
「ちゃんと相談してよ? まだ子供なんだから」
『わかった』
しかし、彼は学校を人の子供の活動を観察する場としか捉えていなかった。
彼はそれだけで個性とされる程の視力とATフィールドでタイピングすることでインターネットから知識を得ていたが、それ故に人の子供が学ぶ知識は既に習得済みだった。
そして、友達というものも、無理矢理通わせられた幼稚園で得られなかったことで諦めてしまっていたのだ。
「このヴィランめー! よくも佐々木を泣かせたなー!」
こんな感じで、幼稚園児に泣かれるか個性で攻撃されるかで、仲間である友達というものは欲しかったが幼稚園を転々としても誰も友達を作れなかった。
ちなみに、両親はこのことを知ってより一層子供のことを愛すことを誓ったそうだ。あらゆる手を尽くしても友達を作らせられなかった、一般家庭の域から出ない両親の苦渋の決断である。
なお、その時サキエルはS2機関のエネルギーを使い、人間の知識に沿ってより効率的に自己進化を続けていた。
だが、翌日のこと。
「…………その顔からビームとか出せるのか?」
窓から、一人のカラスのような頭の少年に話しかけられたのだ。
! 何故ばれた!
『……情報系の個性か。情報を抜かれた感覚はしなかったが、そういう個性もあるのか。もう一度やってくれないか?』
最も警戒していたATフィールドを無視する情報系個性に驚き、それを肯定してしまう。
「え、その、俺の個性はこの
それが失敗だと気づいたのは、少年の黒い影のようなものが申し訳なさそうに頭を下げているのが見てからだった。
『情報系の能力は?』
「使えない」
…………予測というものは難しい。
「そうだったら、かっこいいと思ったんだが……すまなかった。未来のヒーローとして、誰にも言わないことを誓おう」
『いや、これは私の早とちりだ。代わりと言っては何だが、友達になってくれないか? 友達とは秘密を共有するものだろう?』
「もちろんだ」
使徒には常闇踏陰という初めての友達ができた。
これで親を心配させずにすむ。
そう、知らず知らずのうちに人の心を得始めていた本人?は、これでより人に近づけると自らの心に気付かなかったが。
相性良さそうだったので。
ただ調べてみると、ワイルド・ワイルド・プッシーキャッツとか出水洸汰くんが近くにいるらしい。
大きすぎるのも色々大変。