攻撃はそれそのものが拒絶行為だと思うので、使える。
「使徒もヒーローを目指しているのか?」
『ああ。私もヒーローを目指している。マンダレイというヒーローに、私はヒーローになれると言ってもらった。私が生まれた瞬間からこの地域の犯罪発生率が低下しているからと』
「……負けていられないな。遠目にお前を見た時からヒーローに向いていると思っていたが、だからこそ負けられない」
常闇は創作で見かける親友みたいな友達のようだ。サキエルが最も欲しかった種類の友達だ。
『私も全力でヒーローを目指す。より強くなるために』
常闇のライバルになるため、サキエルはそれに応えるように自らの心情を伝える。
「? 強くなるため? ヒーローになるためではなく?」
『ああ。私は完全な生命を目指している。故にそれに最も近いヒーローを目指す』
「……なるほど。そのような考え方もあるのか」
常闇はオールマイトを想像し、ヒーローは完全な生命に最も近いという考え方に同意を示した。
数年後。
「常闇さんと水野さんは雄英志望ですね。頑張ってください」
「サキエル、お前が推薦を蹴ったことは知っている。絶対に合格するぞ」
『推薦のこと、知っていたのか…………だが、それはお前と勝負したいという私の我儘だ。ツクヨミだけ受かっても気にするな』
「おおおお! 流石は我が円扉中の中二病コンビ!」
「ぜってー受かれよー!」
「騒々しい……お前たちもやることがあるはずだろう?」
使徒は常闇にサキエルというあだ名をつけてもらい、雄英を受験することを決めていた。
推薦を蹴ったのは、今言った通り。
そして、常闇の影響を受けてサキエルは重度の中二病になっていた。
元々完全な生命体になるという、中二病満載な目標を掲げていたことを考えると、そこまでおかしくはないのかもしれないが。
現在のサキエルのスペックはもう、他の使徒など相手にならないレベルに突入した。
ナノマシンを参考に全身を改造したことによって、武装の構築速度や耐久、再生能力、さらに適応能力も跳ね上がった。
弱点であるコアは一年をかけて複製を体内に作成し、お互いに補完し合うことで、更なる思考能力とコア再生能力を獲得した。
同じく重要機関であるS2機関は一瞬で複製を作れるレベルで構造を理解し、平時はS2機関でS2機関を作るというよく分からないことを実行し続けている。
そして、物理攻撃や熱線、光のパイルが通じない、または効果的でない個性を想定して、虚数空間の展開や加粒子砲や高周波ブレードなどの形態、浸食能力や精神攻撃、瞬間移動能力を獲得した。
個性社会という参考にできるものが身近にある社会と、サキエルの能力の賜物だ。
もちろん、このことは常闇も知らない。全ての実験は分体を使い虚数空間で行っていたからだ。
「サーチ」などの情報系個性もATフィールドで遮断できることを考えると、誰にも知られず永遠の出番がないこともあり得た。
だが、サキエルは入試を突破するためにこの全力を出すことを決めた。
常闇との約束を果たす。
ハッキングして集めた情報でも、思ったより人類の危険度は低かった。入試で切り札を一つ切るぐらいは問題ないはずだ。
飛行し、雄英高校の門を越える。異形型に配慮していると言っても、校舎並みのサキエルは意味がない。
案の定、筆記試験は一人だけ外で行われた。正座でサイズは共通な試験用紙に丁寧に記述していく。
『……終わった。実技演習試験、先に一人だけ受けさせて欲しい。一瞬で終わらせる』
まだ筆記試験の時間は半分以上残っているが、記憶を遡り答え合わせをする限り間違いはない。
「……実技試験の内容を知らないのにか?」
『ああ。救助でも戦闘でも構わない。満点を取る』
私の担当をしている黒いくたびれた男にそう言い放つ。
「……確かに、その体なら合格は確実。一瞬という言葉が嘘ではないなら、お前と一緒になった受験生には流石にもう一度試験を受けてもらうことになる……いいだろう。ついてこい」
10分間の模擬市街地演習。時間からして他の受験者と同時にやることになるだろう。
私の体はそれだけで、他の受験者の邪魔になる。その上私は全力で受ける。文字通り一瞬で終わることも私には予想できるのだ。
ならば、こうするべきなのだろう。
アンチヒーロー行為とされて、入学できなかったら目も当てられない。やらせてもらうかは別として、言う必要はあったはずだ。
使徒に知恵と時間を与えたら、これぐらいできそう。
人類=使徒と考えたら、生命の実を持つサキエルができてもおかしくはないはず。というか、少なくともどれか一つはやると思うので全部やらせました。
このサキエルはやってないけど、人間を食べたら個性も手に入れられると思う。
一応、魔改造タグも追加します。