「じゃあ、パパっと結果発表。トータルは、単純に各種目の評点を合計した数だ。口頭で説明するのは時間の無駄なんで一括開示する」
上体起こしの8点が足を引っ張ったか……
一位は八百万という女だ。個性がこのテストに向いていたのだろうが、二位常闇、三位轟と全てにおいて10を取ったものが並び、5位。
…………ATフィールドで重力を消したが、手も足も使えない以上この結果は仕方ない。しかし、上体起こしとはいえ、これは欠陥だ。
回避は瞬間移動を解禁し不足していないとも言えるが、能力を使ってなおこの記録なのはダメだ。いつか瞬間移動を使えない状況で、素早く上体を起こす必要が出てくる可能性もある。
確かに、一応弱点としているコアは胸にあるのだ。対策は必要だろう。
普通なら腹筋を鍛えるのだろうが、私は胸と背中に飯田のようなエンジンを作った。所要時間10秒だが、緊急時なら、この時間も遅い。無論、外から見えないように偽装済みだ。緊急時には、距離を取ったり衝撃を殺したりできるできるはず。
図らずも切り札が増えるとは、流石ヒーロー科。
「ちなみに除籍は嘘な。君らの最大限を引き出す、合理的虚偽」
「「「はああああ!?」」」
「あんなの嘘に決まってるじゃない。ちょっと考えればわかりますわ」
「そういうこと。これにて終わりだ。教室にカリキュラム等の書類あるから目を通しとけ……緑谷、リカバリーガールのとこ行って治してもらえ。明日からもっと過酷な試練の目白押しだ」
皆が教室に向かう中、私は緑谷に声をかける。
『緑谷は何故、個性の制御ができていない? 指先だけであの威力は凄まじいが、ヒーロー科に入るというのなら、調整を試し怪我をして爆豪に知られていてもおかしくないはずだ』
「あ、えっと、最近発現したばっかりなんだ」
…………怪しいが、詮索はよそう。隠し事下手そうだから、わざわざする必要もない。
『……そうか。リカバリーガールに手伝ってもらって、早く個性を慣らすといい。指を治せると言っても、世の中には治せないものもある。ダメージは蓄積していくだろう。呼び止めてすまなかったな』
「……! なるほど。最小限のダメージで感覚を掴めばいいのか。怪我が小さければ体力の消耗も減る。きっかけぐらいは掴めるはず。でも、確かにダメージはダメージだ。できるだけ怪我は減らさないと。リカバリーガールにもどれぐらいなら許容範囲か聞いてやれば大丈夫か? ……あ、サキエルくん! ありがとう!」
……好感度を稼いだら、正方向で聞き出せそうだ。
ふと、オールマイトが相澤先生に話しかけるのが聞こえた。
「───君は去年の1年生……"1クラス全員除籍処分"にしている。『見込みゼロ』と判断すれば迷わず切り捨てる。そんな男が前言撤回っ! それってさ! 君も緑谷君に、可能性を感じたからだろう!?」
「……君も? ずいぶん肩入れしてるんですね? 先生としてどうなんですか、それは…………というか、水野にも聞こえてますよ」
「むむっ。それはまずいな。水野少年! 今のは聞かなかったことにしてくれ!」
『了解した』
「……危なかったぁ」
「…………」
オールマイト。その戦闘能力、意思どれも常軌を逸している。例え、衰えもう私には太刀打ちできないとしても、その経験は何物にも代えがたい……と、正式な合格通知で知った時は思ったのだが。
まぁ平和の象徴といえ、人の子。安全地帯で油断しても仕方ない、か。
そして、その日は何事もなく終わった。他の生徒は疲れていたのだろう。
次の日は、普通の授業から始まった。
必修科目である普通の授業。それをプロヒーローの教師陣が教える。
それなりに進行速度は早いが、中学と同じように既に習得済みだったので、ここの教師と生徒の観察に努めた。
本当は地球全域を観察したいが、そこまでのデータはコストパフォーマンスが悪い。折角インターネットやニュースというものがあるので、それの閲覧だけで済ませている。武装やATフィールドの研究の方が優先度が高いのだ。
まぁこのコアの私は、ヒーロー方面から最強を目指すのだが。
昼休み。
「サキエルくんはご飯食べないの?」
『必要ない』
「個性?」
『ああ。何もなくても生きられる。恐らく、宇宙のどこかにいるエイリアンの個性なのだろう』
そして、皆が食堂に行ったりしている中、私は情報の整理をして昼休みを終えた。私は何かを忘れるということをしないが、思い出すのには少し時間がかかる場合がある。その解消は暇なこのコアでやるべき仕事だ。
「わーたーしーがー!!! 普通にドアから来た!!!」
オールマイトは昼休みが明けると教室にやって来た。数人を除き、クラスは熱狂する…………確かにオールマイトの心象は良くなるかも知れないが、彼から学べることの方が大事ではないだろうか。
彼からのサインが命を救……うこともあるかも知れない…………だが、彼から学んだことの方がその確率は高いはずだ。いや、目的が違う以上、仕方ないか。
「ヒーロー基礎学! ヒーローの素地を作る為、様々な訓練を行う課目だ!! 単位数も最も多いぞ! 早速だが、今日はコレ!! 戦闘訓練!!」
オールマイトがBATTLEと書かれたプレートを見せる
「そして、そいつに伴ってこちら!! 入学前に送ってもらった個性届と要望に沿ってあつらえた……戦闘服コスチューム!!!」
オールマイトがリモコンを操作すると壁が動き、ライトグリーンの番号の振られたアタッシュケースの入った棚が飛び出してきた。
「「「おおお!!!」」」
興奮する声に紛れて今の音と同じような音が左下から聞こえたので、見ると10mはあるだろうアタッシュケースが下から飛び出してきた。
被服控除には、瞬間移動、浮遊、怪力、ATフィールド、飲食不要など今まで使った能力を書いたのだが、どうなっているのだろうか。
「着替えたら順次グラウンド・βに集まるんだ!!」
「「「はーい!!!」」」
私は本当に必要ではないと判断したが、あるということは私に足りないものがあるということ。
…………眼帯?
いや、これは巨大なコンピューターか。
【コスチュームはなくても構わないとのことなので、強力な送受信機付きの眼帯型コンピューターです。目の前の景色も映し出せます。キーボードなどがある方が内側です】
確かに遠隔の情報を把握するには最適だ。私なら負担も許容範囲、強度のATフィールドで補えると。
何か、悪いな。
説明書を見ていくが、これだけでおおよそ何でもできてしまう。ドローン付きとか、いくらかけているのだろうか?
サキエルはサポート会社のプライドを刺激してしまった。なお、充電式。
これぐらいなら、大丈夫なはず。