流行りにのっかかってみました。


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 ツイッターで流行ってるネタに乗っかってみました。



ワガハイは。

 宿敵だ。

 奴は、マリオは、ワガハイの宿敵だ。

 

 ピーチ姫といちゃこらしたい! あの美しい姫さんとワガハイだっていちゃいちゃしたい! カメ族だっていいじゃないか! ワガハイだって良い思いをしたいのだ。

 

 でも、そうやって姫を攫えば必ずと言っていいほど、あの髭のオヤジがついてくる。いい年こいて、髭面で、未だに将来性の低い配管工で、腹だってビールの飲み過ぎなのか出っ張ってしまってるおっさんだ! それでも毎回、我がクッパ軍を押し退けてこのクッパ城にまでやってくる! 本当に、本当に不愉快だ!

 

「ヤッフゥゥゥゥッッ!」

 

 けたたましい掛け声と共に、あの髭面が現れた。セットに一体何時間使っているのか無性に気になる、妙に整えられた髭だ。あぁ腹立たしい。

 

「マリオ! 今日という今日は逃がさんぞ! この城の溶岩の一部にしてやるわ!」

 

 我がクッパ城の深奥の、斧が立て掛けられた架け橋。この光景も何度見てきたか分からぬが、今日という今日はやられる訳にはいかぬ。今度こそにっくきマリオを倒して、ワガハイはピーチちゃんとバカンスに行くのだ!

 

 渾身の力を喉に込めて、燃え盛る火球を撃ち放つ。まるで虫のようにぴょんぴょん跳ねるマリオを燃やし尽くさんと、全力で炎をばら撒いた。

 

「ホッ! ヒョオォ!」

 

 しかしマリオは、相変わらずの身のこなしだ。ワガハイの炎をものともせず、火と火の間をくぐり抜けるように迫ってくる。

 いかん、このままじゃ奴を仕留めれん。かくなる上は────

 

「ガハハハ! 炎だけじゃないぞ、ハンマーだってたんまりあるのだ!」

 

 木箱に大量につめたハンマー。ハンマーブロスからありったけ掻き集めたそれを、マリオに向けて全力で投げた。もちろん、炎を吐くことも忘れない。

 

「フゥオオォォッ!」

 

 それでも、マリオは止まらなかった。ハンマーを増やしたところで、まるで奴の動きが変わった様子がない。炎もハンマーも、奴にとってはまるで関係ないとでもいうのか!?

 あぁ、ダメだ。このままじゃ振り切られる。ワガハイの背後の斧を、外されてしまう。

 ──いかん、いかんぞ! ワガハイはピーチちゃんとお月見もしたいんじゃ! そんなこと、認めんぞ!

 

「うがっ?」

 

 懸命にハンマーを投げていた手に、何かが引っ掛かる。ハンマーの山の中に埋もれた輪っかのような何かが、ワガハイの爪に絡まっていた。

 まったく、ハンマーを集めろと言ったのに。一体何を間違えていれたんじゃ部下どもは。ええい、邪魔じゃ! これは一体なんなのだ!

 

「……かんむり?」

 

 我が手に収まったのは、綺麗な装飾のなされたかんむりだった。そう、それはまるで。まるでピーチちゃんがつけている王冠のような────

 

「ィヤッッッゥフウウウゥゥゥゥェイアッッッ!!」

 

 しまった! 思わず手が止まった隙に、マリオに越えられてしまった!

 頭上を跳んで超えていくマリオに火を吹こうとするが、もう時すでに遅し。奴はワガハイの背後にあった両刃の斧へと辿り着いてしまう。

 

「や、やめろぉ!」

 

 アレを外されれば、この足場が崩れ落ちる。ワガハイが立っているこの足場が、音を立てて消えてしまうのだ。

 そしてその下には、煮え滾った溶岩がいっぱい。マリオを落とすはずの罠が、ワガハイに牙を剥いている。

 

「うがっ……!」

 

 慌てるあまり、もつれた脚。体が前へと引っ張られて、視界が大きく反転する。

 なんてことだ。マリオの前に辿りつくその前に、足をもつらせて転んでしまうとは。

 なんて情けない。カメ族の王が、このクッパ大王ともあろう者が。おぉ、なんてことだ────

 

「……ぬっ?」

 

 丁度、マリオが斧を外す瞬間だった。

 あのかんむりが。転んだ時に手からすっぽ抜けたかんむりが。ワガハイの頭の上に落ちてくる。すぽっと、ワガハイの頭を包み込む────

 

「なっ、なんじゃ……ッ!?」

「オォウッ!?」

 

 瞬間、ワガハイの視界は眩しい光に包まれた。

 なんじゃ、なんなのだこれは。なにも見えん。おのれマリオ! まさか最後の最後の我が視界まで奪おうというのか! 本当に血も涙もない奴だ!

 怒りのあまり吠えたくなる。えぇい、もういい! どうせ最後だ! 精一杯吠えてやる!

 

「うがーーっ!!」

 

 ──?

 おい、ちょっと待て。何だ今の声。

 ワガハイ? ワガハイか? 確かにワガハイは今吠えたけど、今のワガハイの声か?

 いやいや、今のはどう聞いても女の声だ。ちょうどピーチちゃんのように、可愛らしい女の声だった。あのヒゲオヤジから出るような声とも思えない。でも、ここにはピーチちゃんはいない。

 ど、どういうことだこれは。

 

「なっ、なっ……なんじゃこれはああぁぁ!?」

 

 あの斧が外れ、ワガハイを支えていた足場が消える。その反動でワガハイの体は跳ね上がり、もつれながらも宙返り。同時に、わしの体が視界に入ってきた。

 毎朝丁寧に整えている我が自慢の頭髪は、長く長く伸びていて。ピーチちゃんの如く、美しい金色に染まっている。

 ワガハイの誇りともいえる甲羅に至っては、まるで飾りのように背中にくっついているだけ。全身を覆っていたはずなのに、今ではまるでドレスのような姿に変貌している。

 そしてなにより、そこから伸びているワガハイの手足。細くて、白くて、柔らかそうで。カメ族特有のごつく太いそれらは、今ではまるでピーチちゃんのような姿になっていた。

 

「……ワガハイ、どうなって────」

 

 喋ったのに、イメージしている声じゃない。なんだかとても高い声が出てしまう。

 あぁ、ダメだ。ワガハイはもうダメだ。なんかもう、何がなんだが分からない。

 おのれマリオ! 最後の最後にワガハイを人間の女にするとは! なんて卑怯なのだー!!

 

「フォオォッ!」

 

 重力に掴まれて、いよいよ溶岩の中にダイブする寸前だった。

 唐突に、腕を掴まれる。

 マリオが、ワガハイのか細い腕を掴んでいる。

 

「……マリ……オ……?」

 

 ギリギリのところでワガハイを持ち上げて、そのまま宙へと跳ね上げて。

 再び宙に浮いたワガハイを、今度はマリオが優しく抱き上げた。

 

 ──え? 

 なにこれ。

 こいつ何してるのだ。

 

 奴の大きくて丸い瞳に、ワガハイの顔が映り込む。頭から長く伸びた角と、とんがった耳。それ以外はどう見ても人間の女の姿をしたワガハイが見えた。頭に乗ったかんむりも相まって、まるでピーチ姫のような出で立ちだ。

 

「えぅ……なに、これぇ……」

 

 さっきまではまるで見せなかった、妙に決めた表情をしてくるマリオに戸惑いながら、ワガハイはいよいよ混乱する。

 

 えっ?

 ワガハイは。

 ワガハイは────

 

 ────姫である?

 

 






 ツイッターで何やら流行っているクッパ姫ネタにのっかかっただけの短編。
 クッパ姫とかいう子どもの性癖歪ませるネタやめろぉ(建前)ナイスゥ!(本音)
 見直してみても我ながら頭のおかしい短編です。お目汚し失礼しましたm(_ _)m


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