性懲りもなくまたモンハンでお話書きました。
やる気が出るまで時間がかかります。
ギョロギョロ。
なんて音を立てながら、忙しなく動く眼球。
「ギョアッ!」
短い叫びと共に飛び上がったのは、この新大陸に生息する鳥竜種──通称、プケプケさんだ。
「飛んだぞ! 撃て撃て!」
「おうよ! オラオラオラァ!」
緑色の羽毛に、毒々しい紫色が差している。その体にはあまりにも不釣り合いな大きさの舌は、とても鮮やかなピンク色。それが、俺たちに向けて振りかざされた。
「うわぁ!?」
ライトボウガンに火を吹かせていたハンターが、悲鳴を上げる。太く分厚いそれが薙ぎ払われれば、瞬く間に彼は吹き飛ばされていった。
「ちくしょうがっ……!」
その隙を掻い潜って、片手剣を抜刀したもう一人のハンター。
武器防具ともに骨まみれのもの──確か、ラドバルキンだったかな──で統一している彼は、勢いよく飛び掛かってはプケプケの脚に斬り込みを入れた。この古代樹の森に、赤い軌跡が走る。
「ギョアッ!?」
思わぬ攻撃に驚いたのか、それともその剣に塗りたくられた『毒』が効いたのか。
プケプケは、勢いよく墜落。さらに、そのまま横転。
とても痛そうなその仕草だけど、それとは対照的に彼の表情はとても安らかなものだった。同時に響く、なんとも間の抜けた声。
──いびき?
「……寝た?」
「……寝たな」
回復薬をがぶ飲みしていたライトガンナーがそう溢し、片手剣使いもそれに便乗。
そうして、そのまま俺をじっと見る。
「……え、なに?」
意図が分からずそう返すと、空気が一瞬沈黙し────
その直後、切れた。
「なに? じゃ、ねぇよ!!」
「猟区内だぞ! なにボサッとしてんだよ!」
「お前のそれ、なんのための武器なんだよ!?」
「背中のそれはなんですか? 飾りですか?? おら名前言ってみろよ!」
「え、えーっと……大、剣……です」
「そうだよね? ……分かってんなら使えよォ!」
「お前さっきから逃げ回ってるだけじゃねぇか! 戦って! せめてチャンスくらい把握して!」
「ほらプケプケさん見てみろよ、寝てらっしゃるぞ!? プケプケさんゆっくり寝てらっしゃるぞ!?!?」
「答えはひとつ! 大剣といえば!?」
「た、溜め斬り?」
「分かってんならやってぇ! てかやってくださいっ!」
悲痛な色のこもった叫びに追いたてられて、俺は仕方なく前に出る。
確かに、俺は狩りの最中は逃げ回ってるだけだった。大剣を握ることなく、ただプケプケの様子を見ながら回避していただけ。
でもそれは、臆病だとか、そんなんじゃないんだ。本当に、とても大事な理由からきているんだ。サボりとか、そんなんじゃないんだよ。即興で組んだパーティーだから、彼らには分かってもらえなさそうだけど。
「大剣といえば一撃重視!」
「眠った相手に、渾身の一撃を叩き込む!」
「さぁ、やれ! 今ならプケプケ動かないから!」
「頼む、やってくれ!!」
妙に説明口調な二人に圧迫されて、俺は仕方なく柄に手を添えた。
──別に、動かれると当たらないからとか、そんなんじゃなくてね。
本当は、本当はね────
「……はぁ~……おっも」
ブレブレの切っ先が、振り下ろされる。
溜めもなにもなく落ちたそれが、プケプケの鼻ちょうちんを割った。
「…………」
「…………」
「……た」
「……た?」
「──溜めろよォォォォッ!!」
もはや半泣きの様子で片手剣使いがそう叫び、それを塗り潰すようにプケプケが吠える。目が覚めた奴は怒り心頭な様子で、血走った目を俺らに向けてきた。
「ギュアアァァァァッッ!!」
怒っている。プケプケさん、怒ってる。
そりゃそうだ。突然ハンターに襲われて、しかも唐突に眠らされて。さらにさらに、その眠りを妨げられる。そりゃあ怒って当然だろう。
「ダメだ! 全然食らってねぇ!」
「効いてねぇみたいだ! ちくしょう!」
「誰だチャンス無駄にした奴!」
「お前のせいだぞ! 『レイヴン』!」
わざわざ名指ししてまで、俺を責め立てるライトガンナー。憎々しげに、イライラした様子で、俺を強く睨んでいた。
いやさ、だって。
「……なんか、やる気出ないんだよね」
ぽろっと、本音が漏れちゃった。
「……は?」
「いやぁ、男の前で頑張ってもこう……滾らないんだよね」
「……はぁ?」
「なんか全然ブレイヴが湧いてこないっていうか。あー、やる気出ねぇー」
一瞬の沈黙。からの──
「……ふ」
「ふ?」
「ふっざけんなァァァッッ!!」
怒号だ。呆れと怒りを含んだ、男の野太い咆哮だった。
「なんだそれ!? お前のその理由、なんだそれ!?」
「やる気出ない!? 男の前だと!? なっなっ、何それ何それ!」
「そんな下らない理由初めて聞いたわ! えっ何? 俺らの前じゃあテンション上がらないから、溜め斬りすら出来ないの??」
「うん」
「……ふっ、ふっ──」
「ふ?」
「──ふっざけんなァァァッッ!!」
二度めの悲痛な叫び。それが古代樹の中で反響する。プケプケの咆哮にも負けないそれが、小鳥たちの尻を強く叩いた。
同時に響く、足音。モンスターのような重いものではなく、ハンター特有の軽やかな足音だった。
「──大丈夫ですか!? 悲鳴が聞こえたので、救援に来ました! 四期団のハンターです!」
颯爽と現れた、レイアシリーズで身を包んだハンター。四期団と名乗ったその女性は、俺ら五期団の先輩に当たる、ベテランのハンターだった。
靡く金の髪。白い肌を泥で汚しながらも、健気にヘビィボウガンを握るその姿。
──あっ、めちゃくちゃ可愛いこの子。
えっ何?
俺らの悲鳴が聞こえたから、わざわざここまで救援に来てくれたの?
クエスト終わりか探索中かは分からないけど、危険も顧みないで俺らを助けにきてくれたの?
超いい子じゃん、この子。
────なんか、すっげぇテンション上がってきた。
「──大丈夫です! 俺ら、全然大丈夫ですから!」
そのテンションに身を任せて、大剣を地面に滑らせる。同時に駆け出して、プケプケさんに肉薄。突然目の前に迫ってきたハンターに、彼は驚きの声を上げた。
「ギャゥッ──」
「せいっ!」
直後、斬り上げ。地面を削って火花を上げるその大剣を、奴の首裏に向けて斬り上げた。
ざっくりと皮が破られて、さらに石つぶてを巻き上げられて、プケプケさんは悲鳴を上げる。
「もういっちょ!」
なんだか随分と軽くなった大剣を振り回す。そのまま背後で構え、大きく弧を描いた。溜め斬りのもう一段階上の技──強溜め斬りだ。
それを、奴の目元へと叩き込む。
「ギョッ……ギュアァッ!」
だが、今度の奴は悲鳴を上げるだけでは済まさなかった。口元に、紫色の唾液を貯め始める。
「やべぇ! 毒液だ!」
「レイヴン! 下がれ!」
それが、まるで嘔吐するかのように。大量の吐瀉物の如く吐き出された。
俺を狙った毒液が、大気を染めて。俺の体を、毒に染めて──
「──なんのっ!」
大剣の背を左肩で支えて、身を屈める。そのまま、地面を滑るようにステップした。ちょうど、頬を掠めていく毒液。
「……は?」
「避けてるやん……」
半ば呆れの声が後ろから届くけれど、俺は構わず腕を振る。喉から唾液を吐き切った彼のその首筋に、重い刃を押しつけた。
「とどめっ!」
強溜め斬りの構え、からの踏み込んで振り下ろし。それがプケプケさんの首筋に絶った。
「ギャッ……ァゥ……」
か細い断末魔が漏れて、そのまま彼は倒れ伏す。
全身をびくびくと震わせながらも、立つことはままならないようだ。動かなくなるのも、時間の問題っぽい。
「……ねっ、お姉さん! 大丈夫でしょ!」
振り返って、最大限の笑顔を振り撒いて。
仕留めた獲物をバックに、俺は精一杯の決めポーズ。最高に決まった──と思ったけど、なぜかみんな呆れたような顔をしていた。
「……マジで、女の子来たらテンション上がってるじゃん」
「さっきまでのクソっぷりはなんだったんだ」
「……あのー、私来る必要ありました?」
「……ある意味ではあったけど、ある意味ではなかったかなぁ」
片手剣使いの呆れを含んだその言葉。
なんだか、寒々しい風が、足元を通り抜けたような。そんな感じがした。
◆ ◆ ◆
──狩りをする時、士気はとても重要な要素となる。
そんな
俺? 俺はね、可愛い女の子と一緒に戦う時だと思うんだ。可愛い女の子の前でなら、俺は
モテたいお年頃。
ソロor男しかいない時→常時非ブレイヴ状態
可愛い女の子がいる時→常時ブレイヴな状態
っていう極端な主人公くん。こう、女の子の前だと格好つけたい的な。そんな感じ。
今回はプロローグってことで、詳しいお話は次回から。基本ギャグコメディでいきたいと思います(`・ω・´)
閲覧有り難うございました。