デザコン大剣強すぎィ!
「おっ……おおおぉぉぉぉっ!!」
俺の手の先で、轟々と燃える一本の剣。
もはや規格外なほどの大きさの刀身に、武骨ながらも研ぎ澄まされた刃。そしてその背には獄炎石を利用した発熱機関を搭載したという、最先端技術を盛り込んだ一品。
工房のおっさんが試作品として作ってくれたそれは、まるで鋼の翼のような、とてもかっこいい大剣だった。
「すっ……すっげぇぇ……!」
「ふむふむ、出力及び継続放出機能も問題なし……」
「おおぉ……すげぇ圧だわこれ!」
「刀身の強度、耐熱コーティングも問題なし。メンテナンスさえしっかりすれば、長持ちしそうだなぁ」
「おおお……あっ、あちっあちちちちッ!」
「……使用者への火傷の注意喚起の必要性あり、と」
トレーニングエリアで剣を握る俺の横で、おっさんが挙動のひとつひとつをメモしている。メモに火が移らないか心配だ。
──先日のパオウルムー討伐。それをこなした俺は、彼からとあるクエストを紹介された。
クエスト内容、モンスター二頭討伐。対象、パオウルムーとリオレウス。狩猟場所、闘技場。
なんでもハンターとしての腕を見たいとのことで、そのような場を設けたらしい。彼曰く、パオウルムー討伐はその参加チケットだとか。
そんなこんなで、人に見られながらクエスト開始。加工屋のおっさんはともかく、あの大食い編纂者さんやマイも応援に来てくれた。あんな風に女の子に応援されながら戦うのも悪くないなぁって思いながら、俺は自分の腕を証明出来たのだった。
それで、これだ。信用出来る腕だとかなんとかで、俺にこの試作大剣を試してほしいのだと。
「どうだレイヴン、この握り心地は」
「良い感じだよ。飾り気なくて、ひたすらまっすぐで……すげぇ渋いじゃんこれ」
「へへっ……武器に詳しいハンターからもらった設計図を基に造ったから、どんなもんかは俺も分からなくてよ。こうやって試してくれて、感謝するぜ」
「へぇ、おっさんが設計した訳じゃないんだ」
「恥ずかしながらな。まさか、刀身に出力機関を搭載するなんてなぁ……機能面で不安なところが多過ぎる。こうやって実験データを集めないと、どうしようもないんだよ」
「それで、俺にお呼びがかかったと」
「お前さんくらいの腕前なら、こいつも本望だと思うぜ」
轟々と、剣はより大きく叫ぶ。なんだかおっさんの言葉を肯定してるみたいだなぁ、なんて考えながら、より一層肩に力を入れた。
「普通の大剣はその重みを生かした一撃重視の武器だが、こいつはまるっきり違う。その背についた放出口から火を吹かせ、斬撃を加速させるんだ。同時に、凄まじい負荷がかかる。刀身はもちろん、使用者にもな」
「……やっぱ? 腕、すっげぇミシミシ言ってる。火を吹かせながら体勢維持するの、結構キツイよ」
「そこなんだよ。この大剣のミソは、構えながら火を吹かせ、最高速度の一撃を叩き込むんだ。ということは当然、今にも吹っ飛びそうな剣を何とか留めなきゃならん。誰でも使えるような武器じゃねぇ」
「……だから、被験者を選別してたんだね」
「そういうこった」
少しでも気を抜いたら、剣が飛んでいってしまいそうだ。構えを維持することはもちろん、振り被った時も剣を手放さないようにしなきゃいけない。これ、なかなかきっついぞぉ。
「よし、そこの丸太を斬ってみてくれ」
「……あーい」
柄のグリップを回し、火の通りを弱める。グリップを通して栓が閉められ、背から溢れる火は勢いを弱めていった。そうして力を失った剣を構えながら、二、三歩進む。
目の前には、このトレーニングエリア中央に聳え立つ丸太が一本。多くのハンターが、武器の使用感を確かめるために殴打しまくった、ボロボロの丸太だ。
とはいえ元々は古代樹の一部を利用して育てられだけあって、この丸太はとても頑丈である。傷だらけだが、それはほとんど表面だけで済んでいるのがいい証拠。機関竜弾らしき痕が今最も目立っているけれど、それも皮数枚分くらいのへこみしかない。
「……前まで使ってたジャグラスの大剣じゃあ、切り込み入れるだけで精一杯だったけど……こいつはどうだろ」
とりあえず剣を構え、グリップを捻る。
すると背後から、凄まじい音がした。大剣が火を吹いて、早く俺を解放しろと言わんばかりに暴れ回る。
「うっ……すげぇ力……」
とはいえ、まだフルパワーではない。
もう少し、もう少しこの体勢を維持しながら、最大出力になるまで溜めなければならないんだ。
「ぐっ……」
背中が熱い。両腕が悲鳴を上げた。俺の体ごと、吹っ飛んでしまいそうだ。踏ん張る両脚にも、想像以上の負担が掛かる。
ボッと、破裂音のような音が響いた。獄炎石が燃えに燃えて、最大の力を発揮した瞬間。最高火力に達したことを知らせる、重々しい音だった。
──今だ。
「うらぁッ!!」
全力で解放。背中に積もった粗大な資材を振り払うように、俺は背中の剣を振り下ろした。
直後、凄まじい勢いで剣が走る。柄が俺から逃げ出そうして、それを必死に抑えつけて。かと思えば、切っ先は大きくぶれながらも地面に向けて走り出す。
「……あっ」
縦斬りのつもりが、袈裟になっちゃった。丸太に縦一文字を入れるくらいのつもりだったのに──上半分が、なくなっちゃった。
斜めの傷痕を露わにしながら、上半分の丸太が行き場をなくして転がっていく。
あれ? この古代樹丸太──斬れちゃった?
「……おぉ……」
「……おっさん。これ、やばくね?」
なんだか、とんでもない武器が生まれてしまったような気がしないでもない。
──試作型『竜熱機関式【鋼翼】』、かぁ。こいつはいいもんもらっちまったぜ。
早速、フレイに自慢してみよう。多分、アステラのどっかにいるでしょ。俺実力認められて、こんな凄い大剣ゲットしたんだよって。
絶対フレイ驚くぞ。そしたら、そしたら──メェリオに変わって、戻ってきてくれるかな?
◆ ◆ ◆
「いたっ!」
伸びた珊瑚の凸凹に体が擦れて、少女は悲鳴を上げる。
陸珊瑚の大地を、不慣れな様子で歩く影が一人。周囲を警戒しながらも、どこか頼りない足取りは、彼女がハンターではないことを如実に表していた。
「はぁ……なによこれ」
思いがけない痛みに顔を顰めながら、服についた汚れを少女は落とす。
レイヴンの相棒役の編纂者──フレイは、小さな溜息をつきながらも右手をペンに添えた。それを、そのまま探索手帳へと走らせる。
──あの子、頑張ってるから。今凄く頑張ってるわ。陸珊瑚の大地、苦手なんですって。
──よく分からないから苦手、とかなんとか。だから、克服するために色々頑張ってるみたいよ。
──早く、アンタに戻ってきてほしいのよ、きっと。
いつか聞いたメェリオの言葉が、彼女の脳内を駆け巡った。
今一時的に距離を置いているレイヴンは、陸珊瑚の大地が苦手。慣れておらず、地理も把握していないために、ここを苦手としているらしい。
けれど、自分に早く戻ってきてほしいから頑張ってくれている──とフレイは考えて、少し顔が熱くなるのを感じた。
「……ちっ、違う違う! そんなんじゃ、ないし! 私はあいつに態度を改めてもらいたいだけでそんな……って、なに一人で言い訳してるんだろ」
騒ぎながらも彼女は歩き続ける。頭を抱えながら歩き続けた結果、陸珊瑚の中心に広がる大きな崖へと出た。
「わっ……なんだこりゃ?」
そっと覗き込むと、淀んだような空気が珊瑚の色に溶けている。美しい珊瑚の世界とは一転、まるでゴミ捨て場のような世界が広がっていた。
「……もしかして、あのゾラ・マグダラオスが向かってたっていう瘴気の谷? これが……」
その非現実な光景を前に、彼女は思わず見惚れてしまう。休憩しようとぼやきつつ、細い腰をそっと下ろした。
少し落ち着くと、思い返されるレイヴンの顔。
距離を置くと伝えたらその目を丸くさせた、レイヴンの顔。
「……はぁ、なんであんなこと言っちゃったんだろ」
別に好きで距離をとったんじゃない。レイヴンのことが嫌いだからとか、そんな訳じゃない。
彼女はそんな風に考えるけれど、じゃあどうすればよかったんだろうと考えると余計に頭をもやもやとさせた。
「……女の子なら、身近なところにいるのに」
そう言って、折り畳んだ膝に顎を埋めるけれど。
──背後から響く、砂利をなぞる音。
「──誰っ!?」
はっと振り返った先に、赤黒い肌。
四本足で、剣のように鋭い歯を並べる一匹の獣──いや、竜の姿が、そこにあった。
「……あ……っ」
慌てて彼女は立ち上がり、スリンガーを構えながら後ろに下がる。下がって──半分浮き上がる、踵。
背後は崖。彼女の後ろに、逃げ場はない。
カロロロ、なんて悍ましい唸り声を上げる。フレイの前に立ち塞がったそのモンスター──オドガロンは、旨そうな獲物だと言わんばかりに喉を鳴らした。
「……そん、な」
──少しでもレイヴンが狩りをしやすいように、この陸珊瑚の大地のマッピングを、予め綿密に済ませてあげよう。
そう考えていたフレイに、非情な現実が襲い掛かる。
八方塞がりな上に強大な捕食者を前にして、彼女は死を感じ取った。
マム武器、大剣ばっか出るんですけど。賊ヘビィくれ。
デザコン大剣マジ強いっすよね。ほんとこれさえあれば充分っていう一本で、もう……。こやつ、アングイッシュ作った矢先に追加されてとても悲しかった。費やした素材返して(切実)
ただ、軒並み他の大剣が喰われてるっていうのも問題なんですけどね。XXは大剣ごとに適した運用法があって色々使えたのがよかったなぁ、と時々思ったりします。お気に入りは島津刀でした。あとアカム。
それではでは。