ブレイヴ×スクランブル   作:しばりんぐ

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 マカ錬金おばあちゃんハァハァ。




ストライクゾーンは狭めです。

「ねぇおばあちゃん。クエストこなしてたらこんなに(たま)支給されたんだけど、これ何に使えるの?」

「あいあい。どれどれ」

 

 調査拠点、アステラ。

 この新大陸を調査するために派遣された『新大陸調査団』。その調査団が調査を円滑に進めるために建設されたのが、このアステラだ。

 およそ五十年前に第一期団が派遣され、それから着々と作られたここは、現在では調査の重要な拠点となっている。俺たち第五期団を含め全てのハンターが全力で活動できるのも、このアステラと、そしてそれを作り上げた先人たちのおかげなのだ。

 そんなアステラの玄関口。通称『流通エリア』にて、大きな壺を掻き回すおばあちゃんが一人。老齢の竜人である彼女は、マカ錬金の技術を有した技術者の一人。全ハンターがお世話になってやまない人だ。

 

「ほうほう……いろんなものがあるけど、大体は雷光珠だねぇ」

「雷光珠?」

「雷属性のエネルギーを秘めた部品みたいなものよ。武器に装飾すれば、その属性をさらに伸ばせるのよぉ」

「うーん……俺、大剣使いだからなぁ。属性はあんまり関係ないや、はは……」

 

 おばあちゃんの鑑定によると、他にも防水機能を高める耐水珠であったり、防具の分厚さを増させる防御珠などがあるらしい。

 とはいっても、どれもこれもあんまり使わない。そんなものより、もっと有用な装飾品が欲しいなぁ。

 

「無撃珠っていうのはないの、おばあちゃん」

「あれま、あんたそういうのが欲しいのかい」

「いやほら、大剣は威力重視だし。この武器属性とか特にないし。それよりも、無撃珠っていうのは属性のない武器の威力を大きく高めるって聞いたことあるんだけど」

「なるほどねぇ。それじゃ、イチかバチかで錬金してみるかい?」

「え? 錬金?」

「いらない装飾品は、このマカ壺に溶かして混ぜ合わせる。すると化学反応を起こして変質するのさぁ。何ができるかはアタシも分からないけど」

「へぇ……十四代目のマカ不思議~ってやつ? うん、どうせこの装飾品使わないし、試してみようかな」

「お兄ちゃん、初回みたいだしねぇ。今回はアタシのサービスよぉ」

「流石お姉さん、すてき!!」

 

 手持ちの装飾品を、ありったけ手渡す。それらをおばあちゃんは快く受け取って、壺の中に注ぎ始めた。

 現大陸では、素材はいくらでもある。そのため装飾品の生産は非常に簡単で、工房にいけば手軽に用意することが出来た。しかし、新大陸だとそうはいかなかった。

 素材こそ充分にあるものの、その用途は不明なものが多く、現大陸ほど開拓出来ているとも言い難い。つまり、装飾品を大量に生産することは、現状とても困難なのだ。

 だから、総司令をはじめとしたこの調査団のトップたちが、クエストの働きに応じて報酬として配布する。クエストの報酬で、価値のある調査結果を残した者へと贈られる。そういう形がとられているのだ。

 

「さぁ、出来たわよぉ」

「おぉ……っ!」

 

 物質の解析が充分でないために、思いがけない物質になることも少なくない。

 防具の傷が少ないほど、性能を充分に発揮する無傷珠だと思いきや、ただ滑りやすくする滑走珠である、なんて。そんなことが日常茶飯事だ。

 なんといっても、鑑定するまでその効果は分からない。おばあちゃんが生み出したこのいわば原石も、磨き上げるまでどのようなものなのかは分からないのだ。

 

「無撃珠……無撃珠、来い!」

 

 とにもかくにも、鑑定だ。

 おばあちゃんから手渡せれた三つの珠。手持ちのものをありったけ使ったその珠を、俺は必死に磨いた。

 付着した錬金液のその奥から、まぶゆい光が溢れ出す。まるで後光のように、その珠は輝き始めた。

 

「おお……!」

「おやまぁ……」

 

 正体を現したそれは、黄金の輝きを放っている。

 まさか、これはまさか────

 

「おばあちゃん、これ!」

「うんうん、こりゃ雷光珠だねぇ」

 

 は?

 

「変質しなかったのかねぇ。まぁ、こんなこともよくあるわぁ。ほいじゃ、またきてねぇ」

「いやちょ、えっあの」

「またきてね」

「えっあっ、でもこれ」

「ま・た・き・て・ね」

「……あっはい」

 

 ニタァ、なんて擬音語が最も似合う笑顔。そんなババアを前に、俺は思わずたじろいだ。

 あっ、このババア悪い奴だ──

 なんて口から漏れそうだったけど、我慢し切った俺を誰か褒めて欲しい。なんだか、とても泣きたい気分だよ。

 

 

 

 ◆  ◆  ◆

 

 

 

「──ってことがあってさぁ」

「はぁ……アンタってほんとアホよね……」

 

 アステラの第四階層に位置する食事場。大柄のアイルーが切り盛りするその店の前で、俺は涙ながらに愚痴を溢した。無念の狩人ビールが、弱々しい泡の音を立てている。

 そんな俺の前で、呆れたように頭を抱える女の子が一人。ハンターである俺と組んでいる編纂者ちゃんだ。

 

「ねぇーフレイ、ひどいと思わない? すっごく酷くない?」

「ええい寄るな酒臭い! あとしつこい! その話もう三周目よ!」

 

 薄い色の茶髪を軽く編んで、それを左肩へと流したその少女──『フレイ』は、か細い腕で僕を振り払う。振り払って、その青い瞳を憂うように伏せた。

 

「アンタの話はいっつも女ばっか。もっと他の、まともな話出来ないの」

「あんなババアは守備範囲じゃないよぉ……大体他の話ってなに」

「うーん……例えば、狩りの話とか?」

「えー……。てかさ、フレイだって一緒に猟区に出てるんだからさ、キャンプにこもってないで見に来てくれればいいのに。そしたら話す必要ないし、むしろ俺、もっと頑張っちゃうよ」

「私は狩りの算術で忙しいの! 環境把握とか物理計算とか、色々考えてんの!」

 

 フレイは、とても優秀な編纂者だ。俺はバカだから詳しいことは分からないけど、なんか凄く頭が良いらしい。

 なんでも、ツタによる罠の利用法や、落石の速度と落下位置とか。そういうのを素早く計算して、有効利用する方法をよく提出しているんだって。

 ただ、インテリ気質なのかキャンプにこもりがち。フィールドワークは得意じゃないらしい。

 

「でもこの前は狩りの話したじゃん、プケプケの」

「あの話、酔った勢いの作り話なんじゃないの?」

「いやいや、本当だって! 俺がプケプケを討伐したんだって!」

「ハッ。熔山龍捕獲作戦、及び誘導作戦でのアンタの動き、私はっきり見てたんだからね。見え透いた嘘はつかないの」

「えっ……?」

 

 熔山龍。ゾラ・マグダラオスと名付けられたその古龍は、あの老山龍三頭分は余裕であるほどの巨体を誇る、なんかもう物凄いモンスターだ。

 この新大陸に古龍が呼び寄せられる、俗称『古龍渡り』の代名詞的な存在とも言える。なにせ、俺ら五期団もかの龍の動向に応じて召集されたのだから。

 

「アンタのやってたことなんて大砲ぶっこわすか、誤って海に転落したかくらいでしょ」

「嘘っ、見てたの!?」

「翼竜に殴られて落ちてたよね。他のハンターに助けられてたのも見てたんだから」

「……あちゃー。そうなの……恥ずかしい」

「アンタがそんなに強くないってのは分かってるの。だから、そんな見栄を張ろうとしないで。それで怪我なんてしたら、本当に……」

「いや違うんだって。あの時は周りがおっさんばっかだったし、なんかやる気出なかったんだって」

「……何よその理由」

 

 呆れたように、フレイは手に持っていた本をパタンと閉じて。それで軽く俺の額をチョップしつつ、彼女は立ち上がった。

 

「とにかく! アンタは無理しないこと。背伸びせず、やれることからコツコツと────」

「あっ、救難信号だ!!」

 

 そんなフレイの、その背後から。古代樹の森の奥より顔を出した救難信号の狼煙に、俺は思わず声を上げる。

 あの色の信号弾を持っているのは、よく流通エリアで買い物をしているあの女の子じゃなかろうか。これは、これは助けに行くしかない!

 

「ちょっ、待ってレイヴン! 話はまだ……っ」

「ごめんフレイ! 行ってくる!」

 

 スリンガーからワイヤーを伸ばし、止まり木で首を掻いている翼竜の足に絡ませた。

 その拍子に浮き上がり、僕は空へと走り出す。駆け寄るフレイに謝りつつ、とにかく出発だ。

 うん、なんかテンション上がってきたぞ!

 






 あの錬金ババアはマジでオドガロンの巣に放り投げたい。


 主人公のレイヴンさんはとにかくモテたい男の子。お酒が飲めるくらいには大人ですが中身は子どもです。濃い茶髪に焦げ茶の眼。背はそんな高くない。以下、描いてみたイラスト↓↓↓ イメージ崩したくない人はノータッチでお願いしますm(_ _)m

【挿絵表示】

 フレイちゃん(ヒロイン)。薄い茶髪を緩く三つ編みにして、左肩へと流してる子。レイヴンの二つ上のお姉さん。可愛い。以下、描いてみたイラスト↓↓↓

【挿絵表示】

 以上だ!

 ……デジタル難しすぎる(´・ω・`)

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