ブレイヴ×スクランブル   作:しばじゃが

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 アイルーフェイクすき。




まぎらわしい名前は苦手です。

「──レナさぁーん! 助けに来ましたよー!」

 

 滑空の装衣を脱ぎ捨てて、俺は陸珊瑚の大地へ降り立った。青いクラゲとピンクの珊瑚が、俺を快く迎え入れてくれる。

 陸珊瑚の大地。それは、新大陸を覆う大峡谷を越えた先にある、摩可不可思議な猟区だった。その特徴は、なんといっても珊瑚。海ではなく、この陸の上を、びっしりと珊瑚が覆っているのだ。

 そんな幻想的な光景の中で、撃ち出された信号弾。誰かが、この美しい世界の中で助けを呼んでいる。

 

 

 

 ──今回の、信号弾の主。それは、俺の知らない人物だった。

 

「ねぇお姉さん、救難信号なんか出てる?」

「……アンタ、研究基地まで来て……」

 

 フレイと共に辿り着いたのは、アステラから離れ、この新大陸を見渡す船。

 三期団の拠点にして、陸珊瑚の大地を漂う奇抜な拠点だった。俗称、研究基地。

 そのトップである三期団の期団長。とても妖艶で、なんだか蠱惑的な感じがするそのお姉さんに、俺はそう話しかけた。背後からは、フレイの呆れた声が聞こえてくる。

 

「今のところ……ないわネ。何? 貴方、わざわざ信号を待ってるの?」

「はい。俺、人助けが生き甲斐ですから」

「よく言うわ全く……不純な動機でしょうが」

「全然不純じゃありませーんもちのろんでー。俺は正義の心に燃え滾ってありますからゆえー」

「そんな心があるなら、もっと調査に貢献してよね……アンタの調査実績、期団長に見せてあげようかしら」

「アッ待って! 俺真面目に働きます許して!」

 

 最近の記録なんてジュラトドスと泥浴びしたことや、ボルボロスと一緒に泥風呂に浸かったくらいしかない。あっ、リオレイアに巻き上げられた泥定食一気食いもあったっけ。なんか、常に泥だらけだった気がする。

 

「アンタのドロブランゴっぷり、むしろ一周回って芸術よね」

「誰がドロブランゴじゃ」

「ふふ、貴方たち、仲がいいわね。夫婦漫才みたいよ」

「やめてください、こんな奴と夫婦なんて。怖気が走ります」

「口が悪すぎる」

 

 愉快そうな様子で、期団長は笑った。

 美人の微笑み、これまた綺麗。ぎゃーぎゃーうるさいフレイとは大違いだ。

 

「……黄金魚と、ドス大食いマグロ」

「なんか言った?」

「いえなんでもありません」

 

 怖い。やっぱりフレイさん、怖い。

 

「とにかく、今は特に信号は……あっ、外見て」

「え?」

「はっ、救難信号!」

 

 この空飛ぶ船のバルコニー。外を一望できるその景色の向こうで、空に瞬く橙色の光。

 間違いない、誰かが放った救難信号だ。

 

「……あの光は、レナね。何かあったみたいだワ」

「あっ、レナさん? もしかしてネコ好きの?」

「レナ? 誰?」

「よくここに来てくれるハンターよ。彼女が言う通り、とってもネコ好きなの」

 

 レナさん。可愛らしい名前だ。

 ネコ好き。アイルーと女の子。可愛いものの相乗効果。

 ──俺の勘が言っている。レナさん、絶対美少女だ!

 

「フレイ、俺今から行ってくるよ!」

「はっ、ちょっと待ってよ! そんな何も聞かないで──」

「俺人助けが生き甲斐だから、うん! 行ってきます!」

 

 慌てて身に纏った滑空の装衣で風を鳴らし、俺はそのまま空へと飛び出した。

 瞬間、顔を風が吹きつける。頬がぶるぶると震えて、耳がキンキンと鳴った。けれど、そんなの関係ない。俺は今、猛烈にテンションが上がっている!

 

「──レナさんは、アンタの思ってるような人じゃないからぁーっ!」

 

 そんなフレイの叫びが、痛む耳の奥で反響し続けた。

 

 

 

「……確かに、思ってたのと違う」

 

 目の前で武器を振っているハンターは、確かにネコ好きだ。いや、俺はこの人と今会ったばかりだから、そう判断するのも変な話だけど。でも、この人は絶対にネコ好きだろう。そうに決まっている。

 ──だって、わざわざアイルーフェイクまでつけて猟区に出るなんて。相当なネコ好きか、ただの変態かのどっちかだから。

 

「むぁっ! 信号を見て人が来てくれたにゃあ! 嬉しいにゃあ!」

 

 その変態的なマスクの向こうから、やけに野太い声が響く。媚びたようににゃあにゃあと語尾につける──男?

 

「わし、とっても嬉しいですにゃあ! よろしくですにゃあ!」

「うっ……うわああっ! うわあああぁぁ!! もっもっ……モンスターだ……っ!!」

 

 怖気が走る。今の感覚に名前をつけるなら、まさにそれだ。

 だって、俺よりデカいおっさんが、アイルーフェイクをつけてネコっぽい話し方をしているんだよ。どう見ても化け物じゃないか。

 けれど、そんな俺の悲痛な叫びも、モンスターの咆哮に掻き消された。

 この陸珊瑚の大地の主。風漂竜──レイギエナに。

 

「むっ、怒ってるにゃ。でも君が来てくれたなら、なんとか切り抜けられ──」

「帰る」

「むにゃっ!? なんでですにゃ!?」

「だって『むにゃっ!?』とかおっさんが言ってるんだもん! 思ってたのと違う!」

「おっさんとはなんですにゃ! わしには、レナードという立派な名前があるんですにゃ!」

「じゃあレナなんてまぎらわしい愛称認めてんじゃねぇよぉ!!」

 

 もはや半狂乱になって叫んだ。

 うん、今までの人生でこんなに悲痛な声出たの、今が初めてだわ。たぶん。

 レナでしょ? 絶対女の子の名前だと思うじゃん!?

 レナード? 男だろその名前! 

 

「むっ、くるですにゃ! 四の五の言ってられないですにゃよ!」

「こんなの、詐欺だ……!」

「ふにゃー! あの錐揉み回転はかなり強烈ですにゃー!」

 

 ぐるぐると回転するレイギエナに、レナードは慌てて退避する。

 同時に振り撒かれる、紺碧の風。あの飛竜が身に纏っていた(ひょう)が、風に乗って辺り一面を覆い尽くした。

 

「閃光弾……閃光弾はありますかにゃ!?」

「えっあー……ちょっ、光蟲! 待って!!」

 

 ハンマーを握って氷を滑る、このレナードとかいうモンスター。そいつがそう吠えるから、俺は仕方なくポーチからスリンガー閃光弾を取り出すものの──

 かぱっと、弾が割れちゃった。同時に、その隙間から逃げ出す光蟲。閃光弾、あえなくパーだ。

 

「やべぇ。過去最高にやる気出ない」

「なに言ってるんですかにゃ! ふしゃーっ! 来ますにゃあ!」

 

 空中で翻って、その長い尾を叩き付けるレイギエナ。それに彼は果敢に飛び込むものの、あっけなく吹っ飛ばされた。

 もうこれ、撤退でよくない? 無理に危険を冒してまでこいつと戦う必要、ある?

 もっと実力あるハンターに任しつつ、俺たちは安全考慮で撤退。それでいいでしょ。

 

「撤退しましょ、撤退」

「にゃっなんでですにゃ!?」

「俺もアンタもそんなに強くないじゃん。でもあの飛竜、ここの主だよ。流石にキツいって」

「むっ……むうぅ……」

「そもそも、なんでそんな頑なに狩ろうとしてるんすか。もっと強い人に任せればいいじゃん。推薦組とか、さ」

「……故郷でわしを待つ娘に、是非とも奴の翼膜で作ったお衣装をプレゼントしたくてにゃあ」

「は?」

「奴を捕獲して、その翼膜を丁寧になめして。きっと喜んでくれるから、是非ともわしの手で──」

「よし、帰ろう」

「ちょっ、ちょっと待ってほしいにゃ!!」

 

 なんだその理由。くそっ、こいつこんな変態みたいな恰好してる癖に、ちゃんと奥さんいて子どもまでいるのかよ。

 あーはいはいお幸せに。でも生憎、そこに俺がわざわざ手助けする理由はございませんので──

 

「──救援、遅れました! だ、大丈夫ですか!?」

 

 そこへ、唐突に響く高い声。

 ここよりさらに上に設置されたキャンプから、白い人影が滑り込んできた。

 

「増援です、援護は任せてっ!」

 

 そう言いながら、巨大な笛を背に担ぐ人物。

 白い髪に、蒼い角があしらわれたカチューシャ。露出多めな白黒の模様に、白銀の霊毛を湛えた鎧。

 俗に言うキリンシリーズに身を固めた少女が、そこに立っている。

 俺よりもきっと年下なのに、毅然と笛を構える可愛らしい女の子が、そこに立っている。

 ──超可愛い。

 

「……おっさん。娘さんのために服作るんだろ? こんなとこで諦めてどうする」

「にゃ?」

「レイギエナ、狩るぞ! よっしゃあやってやらぁ!」

「おぉ……なんだかよく分からないけど、やる気になってくれましたかにゃ……! 恐悦至極感謝の極みですにゃあ!」

 

 アイルーフェイクのせいで分からないが、なんか中で凄い涙流してるんだと思う。怖い。おっさんの嗚咽響いてる。

 上擦ったような声ながらも、レナードは鎚を強く構え直した。その一連の動作は、なんだかとても軽やかだ。

 

「支援、回復はボクに任せてください。お二人は、攻撃に集中をっ!」

 

 そう言いながら、キリン装備の少女は笛を振り回す。その度に笛は不思議な音を鳴らし、一つ一つ音色を重ねていった。

 ボク──ボクっ娘かぁ。めっちゃ可愛いんだけど。是非ともギルカ交換したいなぁ。

 

「……テンション、上がってきたきたァ!」

 

 笛の音色に乗せられるままに、俺のテンションは急上昇。傾斜に身を任せて剣を擦らせ、斬り上げからの振り下ろし。同時に奴の頭を踏んで、空中からの縦回転だ。

 さながら満月のような軌跡が、レイギエナの頭を荒々しく砕く。いつもより鋭さを増したそれは、彼の角を粉々に粉砕した。というか、その下の頭蓋まで、粉砕してしまった────かも?

 

「あっ……やりすぎた」

 

 撃墜され、呻き声を上げて。そのまま、ゆっくりと動かなくなっていくレイギエナ。なんともか細い断末魔が、この陸珊瑚の大地に木霊した。

 

「……てへ」

 

 いっけなーい、捕獲捕獲。レナードのおっさん、捕獲したいって言ってたなぁそういえば。

 でも、翼膜は傷つけてないし──大丈夫だよね! たぶん!

 






 部位破壊(頭蓋骨)。


 ワールドのリアル調アイルーフェイクも、あれはあれでよさがあります。頭アイルーあとドラケンで重ね着してる人がいたら、もしかすると私かもしれません。
 レナードさんの声のイメージはにゃんちゅう。う"に"ゃ"あ"あ"あ"あ"ん"ん"ん"!!
 ぶっちゃけ彼は(今のところ)一発屋キャラですが、キリンちゃんはメインの一人。詳しくは、次回にて~。
 あとちなみにですが、構想段階ではレイヴンの名前がレナードとなってました。クソどうでもいい情報。
 閲覧有り難うございました~。
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