東郷海斗は勇者である   作:しぃ君

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 ネタバレ注意!


花結(はなゆい)の章
Happy Halloween~仮装パーティーにようこそ~


 吹く風が、肌寒く感じるようになってきた。十月三十一日、世の中はハロウィンという季節のイベントに浮かれているだろう。現に勇者部もそうなのだから。

 

 

「暇だな~」

 

 

「ああ、ホントに暇だ」

 

 

 学校の屋上。少年二人はある時間になるまで、ここで暇を潰していた。今日は、下級生である小学施組&中一組にハロウィンパーティーに招待されていたのだ。だが、まだ準備が終わっていないのでこうして待っているのだ。

 勘のいい人はお気づきだろう、ここは神樹様の中の世界。造反神という神に奪われた四国の土地を取りも出す為に、あらゆる時代から勇者が集められた世界なのだ。

 

 

 空は青く、木枯らしが吹く。秋にしては、今日は気温が寒く冷え込んでいるが二人はあまり気にしていない。というか、全然寒くないのだ。彼らは鍛えている為に、この程度では寒さなどは感じてはいない。

 海斗が時間を確認するために、スマホを取り出す。その瞬間、耳に鳴り響く嫌な音。

 

 

「樹海化、か」

 

 

「海斗!直ぐに出るぞ」

 景夜が屋上のフェンスから身を投げ出す。

 

  -----------

 

 そして、海斗も後を追い飛び降りる。

 二人が飛び降りたと同時に樹海化が始まり、数瞬の内に世界が書き換えられる。二人が地面に衝突する数秒前に樹海化が終わり、二人は急いで変身をする。

 運が悪ければ死んでいたかもしれないが、そんなことは関係ない。二人は誰よりも早く戦場に着き、敵を屠り始めた。

 

 

「せやぁ!」

 

 

「おらぁ!」

 二人の声が響く。景夜は、浮いている槍の穂先で相手を複数体同時に倒す。海斗は、銃で遠くの厄介な敵に牽制しつつ刀で敵を捌く。

 

 

 五分もしない内に、全員が合流する。

 

 

「二人とも、ゴメンネ。遅れたワ!」

 

 

「別に大丈夫ですよ。そんなに待ってませんので」

 

 

「おっ!何か今の会話女子力高い感じするワ!」

 会って早々に、こんな会話をするのは風だけなのだが、他のメンバーも位置に着き戦闘を開始している。

 

 

「行くよ!ぐんちゃん!」

 

 

「任せて!高嶋さん!」

 友奈(高)と千景が、完璧なコンビネーションでバーテックスは殴られ、切り刻まれていく。

 他の勇者も各々連携を行い、敵を倒して行くが一向に敵の勢いが収まらない。

 

 

「何か!イベントごとになると何時も決まって出てくるよね~。」

 

 

「そうね、そのっち。何か理由があるのかしら?」

 辺りを見回しても、明らかに敵がいつもより多い。だがそれ以上に、気付くことがあった。

 

 

「…そういえば。中一組と小学生組が居ないが?どうしたんだ……?」

 棗が疑問の気付き、風が答えた。

 

 

「あの子たちには準備に集中できるように、樹海化のアラームが鳴らないようにしたのヨ」

 

 

「でも風先輩、亜耶ちゃんが一緒に居るんだったら信託が行くんじゃ?」

 

 

「そうよ、風。巫女の亜耶ちゃんが居るから周りの時間は止まらないけど、信託はどうにもならないでしょ」

 

 

 友奈(結)と夏凜の指摘は最もだ。この世界では、巫女の周りの時間は止まらない

が、それでも信託は届く。なら、どうやって小学生組と中一組が来ないようにしたのか。

 簡単だ、巫女が信託を伝えなければいい。信仰強い亜耶に信託を言わせないのは酷だが、けれど折角上級生の為に頑張っている彼女たちの為だと言い、風が命令と言うことで納得させた。

 

「亜耶ちゃんに、口止めさせたのヨ。ちょっと心苦しいけど、アタシたちの為に頑張ってるんだがら。戦いの方は、アタシたちが何とかするわよ。勇者部ー!ファイトー!」

 

 

「「「「「「「「「「「オオ―!」」」」」」」」」」」

 みんな声が重なり、一体感が増す。そんな中一人、スマホを操作してメールを送る者がいた。

 

  -----------

 

 園子(小)は少し感づいていた。だが、ある人からのメールを見てそれに気づかない振りをした。

 

 

「おーい!園子!スマホ見てないでこっち手伝ってくれー!」

 

 

「わかったよ~、今行くねミノさん」

 スマホをしまい、銀の方に動き出す。少し頬が緩んでいて、明らかに先程より機嫌が良さそうだ。

 

  -----------

 

 戦いが終わり、急いで部室の方に向かう。部室の前には、ひなたと水都が出迎えた。

 

 

「お疲れ様です、皆さん。早速で悪いのですが、別室で着替えて来てください」

 

 

「みんなの衣装はこっちで、景夜さんと海斗さんはこちらの部屋で」

 水都に案内されて部屋に入る景夜と海斗。

 

 

「サンクス、みーちゃん!」

 

 

「分かった、ありがとう。ひなた」

 女子たちもそれぞれ部屋に入り、着替えを始めた。

 

 

 数分が経っただろうか、景夜と海斗は着替えを終えて外に出た。景夜は狼男、海斗は奇術師に扮して出てきた。

 

 

「何だかな~、この服凄いしっくりくるんだよ。どうしてかな?」

 

 

「さぁ?俺に聞くなよ」

 

 

 海斗は黒い正装を着てシルクハットを被り、短めの黒い杖を持っている。対する景夜は、上下の服は何てことのない私服で、頭の上に獣耳とお尻から尻尾が出ている。時たま、耳が動いているので海斗も少し驚いていた。

 

 

「その耳、どうやって動かしてんの?ちょっと触っても良い?」

 

 

「ダメだ。この耳は高性能で、脳の神経と連動して動かせるし、耳自体にも疑似的に神経を付けてるらしいからな」

 

 

 ちぇ~、と海斗の声が響くと同時に女子の方が、出て来た。

 みなそれぞれ、仮装をしていてどの子も可愛らしい。その仮装の中でも、千景は群を抜いていた。小悪魔のコスプレだろうか、とても綺麗で景夜の心に印象深く残る。

 

 

 そして、風が合図を出してみんなで中に入る。

 

 

 「「「「「「トリックオアトリート!」」」」」」

 

 

 中からは可愛らしい、仮装をした中一組と小学生組が出迎え

 

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 パーティーが始まり、景夜の所にもお菓子を求めて人がやって来た。

 

 

「景夜ー!トリックオアトリート!お菓子くれ」

 

 

「景夜さん!トリックオアトリート!お菓子下さい」

 

 

「タマに銀か…、ほらよ」

 こちらに来た球子と銀に、ハロウィン風の紙袋を渡す。中には、チョコタルトが入っていた。

 

 

「おお!流石景夜だな!めっちゃ美味そうだ!」

 

 

「景屋さんの作るお菓子、毎度のことながら完成度高いですねー!尊敬できます」

 笑顔で言われると、気恥ずかしい部分があり景夜は顔を逸らしてしまう。その内に、球子と銀は他の所に行ってしまう。

 

 

 次にターゲットにされたのは……海斗だ。

 

 

「海斗ー!トリックオアトリート!お菓子くれ」

 

 

「海斗さん!トリックオアトリート!お菓子下さい」

 

 

「銀に球子ちゃんか…、はい!これで悪戯は勘弁してね」

 球子の銀の二人に、景夜と同じようにハロウィン風の紙袋を渡す、中には、クッキーが入っている。初歩的なお菓子だ。だからこそ、作り手のお菓子作りの上手さが良く見える。

 

 

「何で、景夜も海斗も男なのにそんなに料理が出来るんだ。タマの立場的には悔しくてタマらん」

 

 

「そうっすか?球子さんはそう思ってるんですか?」

 

 

「まあな」

 球子が少し悔しそうに言っているが、それでも仲間とこうやって過ごせるのは嬉しいのか段々と元の球子に戻っていく。

 

 

「別に言ってくれれば、いつでも教えるよ?」

 

 

「ホントか!助かるぞ海斗」

 海斗からお菓子を貰った後は、また他の所に駆けていく。その姿は、まるで雪が降ってハシャグ子供のように見えた。

 

 

 今度はまた景夜の下に、新しい子が現れる。

 

 

「お兄ちゃん、!トリックオアトリート~!お菓子くださ~い」

 

 

「ちょっと、待ってろ。……はい、園子。 Happy Halloween」

 

 

「うん! Happy Halloween!」

 景夜と園子(小)のやり取りは、まるで本当の兄妹のようで見てて、とても微笑ましい光景だ。

 

 

 だが、そんな楽しい時間にも終わりが来る。

 

  -----------

 

 楽しい時間も終わり、片付けに入っていた。多くの者が片付けに勤しむ中、六人が机で眠りについていた。

 

 

「グッスリだな。良い顔してる」

 

 

「そうだにゃー、みんなやりきった顔してるねー」

 雪花も景夜の意見に賛同して、六人の寝顔を覗いていた。六人とも、とてもいい寝顔をしていた。

 

 

 景夜は、寝ている六人の頭を撫でていた。それには、愛情や慈愛が込められていた。全員が全員、また一段と安らかな表情になっていた。

 景夜の人を撫でる姿には、撫でている人に本当に愛をもって接してることが分かる。

 

 

 景夜は勇者としての適性一は、あまり良い訳ではない。

 だが、その心とその生き方は誰よりも勇者だった。

 

 

「そろそろ、お開きにしましょうか」

 

 

「そうね、寝てる子は誰かがおぶてってやりなさい。それじゃあ、解散!じゃあね~」

 風の指示により、みんなが帰る支度をする。須美を海斗が、銀を園子(中)が、園子(小)を景夜が、樹を風が、杏を球子が、亜耶を夏凜がおぶって行く。

 全員が全員を送り終わる。

 

 

 今日も一日が終わり、幸せな時間が過ぎていく。

 

  -----------

 

 景夜の部屋には、ひなたが居た。相も変わらず、景夜は隠し事が苦手らしい。

 

 

「何か、あったんですか?」

 

 

「別に何でもないことだよ」

 流そうとして、でも流せなくて、結局今回も全てを語る。

 

 

「この日常を、もっと過ごしたいと思った」

 

 

「…そうですか」

 

 

「明るい未来を生きる奴らを見て、俺たちの時代での出来事は無駄じゃなかったと証明された」

 

 

「…その通りですね」

 

 

「この世界で、みんなと過ごしたい。でも、ダメなんだ。こんな世界はホントは出来ちゃいけなかった。だってそうだろ。この世界は、造反神なんて言うのが居て今は危機的状態なんだがら」

 

 

「…そうでしょうね」

 

 

「でもさ、もっと見ていたいんだ。明日に希望を持っている、あいつらの顔を」

 景夜は呟くように言った。ひなたはその言葉に、相槌を打つ程度で他には何も言わなかった。

 

 

 一日一日が楽しく感じた、こんな感覚は久しぶりだと景夜は思った。

 




早めのハロウィンものです!
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