東郷海斗は勇者である   作:しぃ君

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 しずくちゃんとシズクちゃんの誕生日回です!


 遅れてスンマセン!


子犬のようなあなたと、猛獣のようなあの子

 東郷海斗の朝は早い、五時には起きて景夜や若葉、夏凜などの鍛錬大好き組と朝練……なのだが、今日は朝練は休み。

 そのため、朝は有意義に過ごそうとしていた。

 だが………

 

 

「なぁ、しずく。何で俺の腹の上に跨っているんだ?」

 

 

「海斗が……起きなかった……から」

 

 

「そうか……お前との約束は午後からだった気がするんだが?」

 今日は二月四日、山伏しずくと山伏シズクの誕生日。

 

 

 解離性同一性障害……所謂多重人格で、しずくは両親からの虐待から心を守るためにシズクを生み出した。

 いや、生み出したと言う表現は正しくない。

 正確には生まれたのだ、壊れかけた精神を防衛する機構として。

 シズクはしずくを恨むこともできる、だが恨む気はない。

 シズクにとってしずくは自分が守らなければいけない存在で。

 

 

 しずくにとってシズクは大切な理解者兼家族のようなものだ。

 

 

「……うん、でも暇だったから」

 

 

「今日はやけに素直だな、まぁ誕生日ぐらい自分に素直になってイイと思うけど」

 

 

「だろ!ほらなしずく、海斗は最初からこう言うって言っただろ!」

 シズクだ。

 男勝りな口調に好戦的な態度、体中に針でも仕込んでるんじゃないかと言うほどに棘がある少女だ。

 

 

「シズクか……ほら、さっさと退いてくれ。支度するから」

 

 

「分かった」

 しずくに戻った。

 海斗はしずくが退いたことをちゃんと確認して、着替えを漁り始める。

 

 

「しずく、着替えるから外で待っててくれ」

 

 

「…………」

 コクリと頷いて、しずくが出ていくのを見送る。

(胃が痛い、ここの会話も全部美森ちゃんに筒抜けだと思うと……考えないようにしよう)

 

 

 海斗は静かに考えるのを止めた。

 

  -----------

 

 来たのはいつものデパート、イネス程ではないにしろ大抵のものは揃ってる。

 

 

「見るものは決まってるのか?」

 

 

「……これと、これ。楠たちに勧めてもらった所」

 しずくが取り出した案内の地図を見て、そこがどこか確かめる。

 

 

「しずくさんや、俺の目に狂いがなければ女性用下着店って見える所がメモされてるんですけど。マジで行くの?」

 

 

「マジで……行く」

 

 

「そ、そうですか」

 急に敬語口調になった海斗に疑問を抱きつつも、しずくは目的の場所を目指す。

 

 

 その時……

 聞きなれた警報が響き、世界の時間が止まる。

 

 

「樹海化……」

 

 

「へへ、敵ってわけか!上等、しずくの誕生日をぶち壊したお礼をしてやる!」

 シズクに変わったのか、好戦的な目つきになり敵を今にも屠らんとしている。

 

 

「落ち着けシズク、お前一人じゃき――」

 

 

「うるせぇ!海斗は引っ込んでろ」

 彼女の言葉が響くと共に、世界が光に呑まれて切り替わる。

 

 

 感情的になった者を止めるのは至難の業だ。

 今日に限ってシズクは特に気性が荒い、海斗は少し面倒くささを感じつつもシズクを追いかけた。

 

  -----------

 

 シズクは目の前にくる敵を銃剣で切り伏せ、遠くから迫る敵を銃弾で狙撃し、近遠攻撃を可能としている。

 

 

(シズク、みんなと合流した方が……)

「しずくの誕生日を邪魔されたのに黙ってられるか!」

 

 

 怒りは視野を狭くする、その所為で――

 

 

「くっ!退けよ!」

 バリアのお陰で致命傷にはならなかったが、大勢の敵によって出来た死角からの奇襲によって体制を崩されてしまう。

 

 

 こうなったら、意地でも止まらない。

 そんな意志を見せるシズクの下に来たのは、芽吹たち防人メンバーではなく。

 東郷海斗だった。

 

 

「たくっ、こんな危ない戦い方するなよ。視ててヒヤヒヤするぞ」

 

 

「海斗、お前なんで来た」

 

 

「そりゃ、仲間を助けんのは当たり前でしょ?シズクだって芽吹達が危険な状態だったら助けるでしょ?それと同じさ」

 シズクにそう言いながらも、敵を殲滅させていく海斗を見た二人の感想は。

 

 

「やっぱ、海斗はチートだな。歴代最強勇者に認められるのも分かるぜ」

(うん、凄く強い。……強すぎて少し怖いけど)

 

 

「そんなか?!景夜に比べたらまだマシだろ!」

 

 

「比べる基準が可笑しいんだよ!」

 結局、この後は応援も来てすぐに敵を倒すことに成功した。

 

  -----------

 

 樹海での戦いから数時間――

 寮の方に帰宅してきた二人はしずくの部屋でお茶を飲んでいた。

 

 

「今日は……ありがとう海斗」

 

 

「いいえ、別にお安い御用だよ。……あ、後少し待ってくれる」

 海斗は先程の店でこっそり買った袋から、一枚のパーカーを取り出す。

 

 

「ほい、プレゼント」

 そのパーカーは外側は白いフワフワの毛で覆われていて、内側の生地も保温性が高いものだ。 

 まだまだ、寒さが続く季節ではあるので丁度いいかと思い購入していた。

 

 

「しずくもシズクもなんだか白が似合う気がしてな、一様来てみてくれ」

 

 

「……ありがと」

 しずくはすぐに着替えてパーカーを着た姿を見せてくれた。

 

 

 パーカーを着たしずくは一言でいえば……

 子犬だ、庇護欲をとてもそそらせる。

 

 

「どう?変じゃない?」

 袖が少し長いのか、手がちょっとしか出で居ない所謂「萌え袖」で、フワフワの白い毛がしずくの綺麗な卯の花色の髪にベストマッチしている。

 

 

 海斗の心を正直に伝えるなら、

 

 

「メッッッチャ!可愛い!撫でさせてって言うか撫でさせろ!」

 

 

「海斗だったらいいよ?」

 その後は、心の赴くままにしずくの頭を撫でまくった。

 特徴でもある癖毛がピコピコ動いている気がしたが、気のせいだろう。

 

 

 途中で、シズクに変わったのは気付いていたが、それでも止められず。

 最終的に、何故か窓から侵入してきた美森に拘束されて部屋から出ていった。

 

 

 

「今日は良い日だった、ありがとう海斗」

 この呟きを聞いたものは誰も居ない、シズク以外は。

 そして、この後は防人メンバーに誕生日を祝って貰い一日を終えたそうな。




 次回もお楽しみに!

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