バレンタインデー、カップルや友人同士で親愛の証としてチョコを贈る行事。
今日がその日だ、二月十四日。
海斗はこの日、二つのチョコを持ながらため息を吐いていた。
「はぁ~~」
「どうしたんだよ?そんなため息吐いて」
隣に居るのは、自分と同じ勇者にして歴代最強勇者とも言われている存在、柊景夜だ。
「チョコを誰に贈るか悩んでてさ、良いよな~景夜は贈る相手が決まってて」
「そうでもないぞ、今回は前回以上にいい物を渡さないとヤバイことになる」
「……お前も意外と大変なのな」
「かもな……そう言えば海斗は去年誰に渡したんだ?」
景夜の言葉で海斗は去年のこの日、誰に渡したかを思い出す。
「美森ちゃんと園子だな……なんやかんやで二人とは色々あったし。友奈にも後でこっそり渡したんだけど……」
海斗からしたら、本当は感謝の念を込めて全員に渡したいところだが、園子がそれを許さない為断念した。
「だったら、今回も同じでいいんじゃないか?」
景夜なりに考えてくれたのだが、如何せん海斗からしたらそれはダメな感じがして断った。
「じゃあ、どうするんだよ?早く渡さねぇと本命に渡せねぇぞ」
景夜の言葉が海斗の心に刺さる、まったくもってその通りだ。
早く何とかしなければいけない、そう考えるうちに次第に心はある人物を見つけた。
「……そうだ、亜弥ちゃんに渡そう!」
いつも癒しになってくれる後輩にして、心配をかけることが多い子。
誕生日の時の詫びも兼ねればより渡しやすい。
「いいのか、それで?」
「園子には後でちゃんとしたのを贈るし、友奈やみんなにもおやつって名目で配るし大丈夫だよ」
これが海斗だ、善意が溢れ出る時が稀にある。
今回もそのいい例だ。
みんなに良い顔がしたい訳ではなく、純粋に日頃のお礼がしたいのだ。
今回渡すのが亜耶だったのは、誕生日の件や日頃心配を掛けているため、その返礼のようなものである。
それに亜耶のことは、妹のように思って接してるのが海斗だ。
妹にチョコを贈るのは少し不思議な気分だが、それでも亜耶の喜ぶ顔が見られるのは海斗にとって嬉しいものに変わりはない。
「そうと決まれば即行動!じゃあ行ってくる!」
「おう、行ってら~」
海斗が屋上の扉を閉めていくのを見てから、景夜も行動を開始した。
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海斗が構内を探し周っていると、家庭科室付近で亜耶を発見した。
「亜耶ちゃん~!こっちこっち」
亜耶を見つけた海斗は嬉しそうな笑顔で名前を呼ぶ。
「か、海斗先輩、どうかされましたか?」
言葉が少し詰まったように聞こえたが、ただの聞き間違いだろうと判断して海斗はチョコを渡す。
「はい、チョコレート。亜弥ちゃんには心配掛けることも多いからね、そのお礼ってことで」
海斗がチョコを渡した瞬間、嬉しそうな顔を見せたのが一転。
言葉を聞いた瞬間、亜弥の顔は悲しそうなものになっていく。
「そうですよね……何を期待してたんだろう、私。その、ありがとうございます」
海斗は、亜弥の小さな声を聞き逃さなかった。
自分の言葉が不適切だったことを反省し、急いで代わりの言葉を言う。
「ええと、お礼ってのもあるけど。でも、亜耶ちゃんのことが大好きだから渡したんだよ。そこは忘れないで欲しいかな?」
出来るだけ優しい声で、出来るだけ明るい笑顔で、亜弥に想いを伝える。
その言葉を聞いた亜耶は表情を一変させ、輝く笑顔で海斗に可愛らしい包装がされたチョコを渡す。
「その、ええっと、私も海斗先輩のことは大好きです!これ受け取って下さい!」
「何だか、告白のようになってしまったなぁ」と、思いながらもしっかりと亜耶からチョコを受け取る。
「ありがとう、ハッピーバレンタイン」
「はい!ハッピーバレンタイン!」
その言葉を最後に、亜弥と別れもう一人の下に向かう。
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「ごめんね美森ちゃん待ったかな?」
「いいえ、海斗はちゃんとチョコを渡してきた?」
「もっちろん!……これ、美森ちゃんに」
美森に対しては素直に、言葉を言える。
これが互いを想い合ってきた年月の差なのだろう。
「『大好き』、これまた正直な言葉ね。海斗らしいと言えば海斗らしいのかしら?」
「そういうこと、チョコなのは我慢してよ?」
「そこら辺は去年から弁えてるわよ……私からはこれを」
海斗のチョコが大きいハート型なのに対し、美森は小さなハート型のチョコが沢山入った物を渡す。
「このチョコの意味はもしかして……」
美森が試すような視線を向ける中、海斗はチョコの意味を考える。
「海斗が思ってる回答が正解だと信じて言うけど、その意味は小さな好きを多く伝えたいと言う意味よ?」
美森が思っていたのと同じ回答だったのか、海斗は嬉しそうに笑った。
「やった!正解したから、ここで一つ食べていい?」
「駄目よ、家に帰ってからになさい。お茶淹れる上げてるから」
息の合った会話をしながら、二人は学校を後にしていく。
時刻は放課後で、今日の部活はなしなので当たり前と言えば当たり前だ。
だが、校舎には未だ人影がちらほらと……
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「二人とも今日はお疲れさま、ほれチョコレート」
景夜は、今日一日園子ズを見張っていた若葉とひなたにチョコを渡す。
「ありがとう景夜、寮に帰ったら食べさせてもらう」
「ありがとうございます景夜君、私も寮に帰ったら食べさせてもらいますね」
二人からいい返事が貰えたので、景夜の機嫌は最高潮に達していた。
「そりゃあ良かった、食べたら返事聞かせてくれ。何となく想像は付くが、お返しに期待しておく」
そう言って、景夜は部屋を出ようとするが……
「景夜、夜の十一時ごろお前の部屋に行く」
「鍵は開けておいて下さいね♪」
二人の言葉によって、自分が今日寝ることの出来ないことが確定した。
「オオ~~~‼ご先祖様たちが、ご先祖様たちが!」
「わかちゃんとひなタン、そしてヒイラギンの濃厚な絡み合――」
園子がその先を言おうとした瞬間、頬の横を風が撫でた。
「園子……それ以上言ったら……分かるよな?」
「はい!もうしません」
こんな日でも、勇者たちは日常を謳歌していた。
約三名、一線を越えている者がいるが見なかったことにして欲しい。
これが、勇者部の日常だ。
約三名が一線を越えていますが、お気になさらず。
因みに、この作品内でのゆゆゆいに来ている人たちの時系列ですが。
ひかゆ組:戦いが終わった後、所謂最終回の少し後の時代から来てます。
ひなたと若葉が積極的なのもそのためです。
小学生組:ゆゆゆい通り、遠足前から。
とかゆ組:こちらもとかゆ最終回の少し後からの参加です。
防人組:とかゆ組と同じ。
棗さん:言わなくても……分かるやろ。
と言うことで、次回もお楽しみに!
誤字脱字などがありましたらご報告お願いします!