東郷海斗は勇者である   作:しぃ君

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ホワイトデーに甘い声

 三月一四日。

 ホワイトデーと呼ばれる、バレンタインと対をなす行事。

 学校の雰囲気もいつもより浮足立っている。

 そんな中、海斗と景夜は二人して私服で学校に居た。

 これにはとある事情がある。

 

 

 それは一週間前の話。

 

  -----------

 

 

 これはホワイトデーの一週間前の日のこと。

 いつも通り部活に顔を出そうとした海斗は、何故か部室の前で棒立ちしている景夜に遭遇した。

 

 

「……なにしてるんだ?」

 

 

「中を覗けば分かる」

 

 

 景夜に言われた通りに、海斗は部室のドアを少しだけ開けて中を覗く。

 そこには……

 

 

「イケメン5計画始動~~!」

 

 

「いえ~~い‼‼」

 

 

 園子ズが盛り上がっていた。

 イケメン5計画……明らかに面倒ごとの予感。

 そっとドアを閉めようとしたが、時すでに遅し。

 すぐに二人に捕まってしまった。

 

 

「ねぇねぇかーくんにご先祖様~、一緒にやろうよ~」

 

 

「そうだよお兄ちゃん!みんなでハッピーなことをしよう~~!」

 

 

 恐らく、前回のバレンタインが不完全燃焼だったためこうなったのだろう。

 景夜と海斗は露骨に嫌そうな顔をする。

 

 

「……やらなきゃダメか?」

 

 

「俺も同感」

 

 

「やって損はないよ~、ひなタンだってきっと喜ぶよ!」

 

 

「そうそう、わっしー先輩もきっとかーくん先輩にメロメロに~」

 

 

 こう言われてしまったら、二人は断りづらくなる……

 大切な人の為に一肌脱ぐのも悪くない。

 そう思ってしまうからだ。

 

 

「分かったやるよやればいいんだろ!」

 

 

「やった~。それでかーくんはどうする?」

 

 

「俺もやるよ。やらないと、仲間ハズレみたいで嫌だし」

 

 

「流石かーくん先輩!話が分かるんだぜ~」

 

 

「それで、俺たちはどうすればいいんだ?」

 

 

「そうだな……。若ちゃんが和服でお武家様風でリトルわっしーは真面目な生徒会長風」

 

 

「棗先輩は寡黙な執事風で~、千景先輩はワイルドな不良風だよ~」

 

 

 キャラ付の話のようで、海斗たちは会話に参加できない。

 園子ズは少しづつ話を進めていき、やがて結論に至る。

 

 

「お兄ちゃんは、俺様幼馴染風で~」

 

 

「かーくんは、病弱な弟風で~」

 

 

「いや、それいつもと殆ど変わらなくないか?」

 

 

 景夜の意見はもっとも、実際に景夜は俺様程ではないが結構ガツガツだ。

 海斗は正反対も良い所なのだが……

 

 

「いつもの景やんとはぜんっぜん違うんよ!」

 

 

「そうそう、俺様系の話し方もマスターしないとね~。後、かーくん先輩は一人称は僕でお願いします」

 

 

「ああ、何となく分かった」

 

 

 これが、今回のあらましだ。

 それでは、時間を元に戻そう。

 

 

  -----------

 

 

 海斗たちが部室に着くと、既に相手役が来ていた。

 景夜はひなたの方へ行き、海斗も美森の方へ赴く。

 

 

「あっ!景夜君、ちょうどいいところに!若葉ちゃんの写真を撮るの手伝って――」

 

 

「俺の前で、俺以外の奴の話をするな。お前は俺だけを見とけばいいんだよ」

 

 

 いつもより、キザな服装で。

 いつもより、強引な話し方。

 ひなたの心は瞬く間に、奪われていく。

 

 

「か、景夜君?!ど、どうしたんですか、その服に話し方。これも今回の催しの中に――」

 

 

「だから、俺だけを見ろって言ってんだよ。これ以上眼を逸らしたりしたら……俺のことしか考えられないようにするぞ」

 

 

「は、はぅぅぅ……」

 

 

 興奮しすぎて顔を逸らそうとしたひなたに対し、景夜は顎を指で軽くクイッと持ち上げてひなたの眼を見つめる。

 

 

「分かったか?」

 

 

「はい……分かりました……」

 

 

 景夜は、今夜寝ることが出来ないことを確信した。

 そして、海斗の方はと言うと……

 

 

「あ、あのね……僕、美森お姉ちゃんのこと大好きだよ♪」

 

 

 海斗の服装はいつものカジュアルなものではなく、少し落ち着きがあるゆったりとしたものになっている。

 それに加えて、上目遣いからのこの言葉。

 以外にも、海斗の上目遣いは効果が強く。

 美森は一瞬でスマホを取り出し撮影に入る。

 

 

「海斗!最高よ、最高だわ!もっともっと良い笑顔で!そう、そうよ」

 

 

 ……少しやり過ぎた部分もあるが、海斗は概ね満足だ。

 しかし、後ちょっとイタズラしてもいいだろうと思いそれを実行していく。

 

 

「……美森お姉ちゃん、お写真撮るのもいいけど。僕、一緒に遊びたいな……ダメかな?」

 

 

「良いわよ良いわよ!さて、何をして遊びましょうか!」

 

 

 若干所か、もの凄いキャラ崩壊が起きているが……国防芸人だから仕方なし。

 その後、バーテックスの襲撃もあったが放課後は遊んで過ごした。

 

  -----------

 

 

 三月十四日、夜。

 景夜の部屋にて……

 

 

「今日の景夜君と若葉ちゃんはカッコよかったですね~。増々惚れてしまいました」

 

 

「そりゃあ良かったよ。俺と若葉も頑張ったかいがあるってもんだ」

 

 

「景夜の言う通り。しかし……今後はあまりやりたくないな……」

 

 

「俺もそう思った」

 

 

 くだらない話に花を咲かせて夜を過ごす。

 本番はここからなので、ひなたは嬉しそうだ。

 

 

「さぁて、今日は寝ますかね。……そんな目で見られても」

 

 

「言わなくても分かるでしょう?今日は寝かせませんよ?」

 

 

「嫌だ~~~‼!」

 

 

 その日、本当に景夜は寝られたとか、寝られなかったとか……

 真相は闇の中である。

 




 次回もお楽しみに!

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