本編の微妙なネタバレと、伏線があったりなかったり。
三月中旬の某日。
海斗は一人机に向かいながら、あーでもないこーでもないと唸っていた。
そんな海斗の部屋に、美森は何でもないように入ってくる。
「海斗?もう遅いわよ、早く寝なさい」
「分かってる……、あともう少しだけ」
時刻は午前一時を周っている。
美森が注意するのも無理ないだろう。
海斗は普段なら、日付が変わる前にはベットに入っているのだから。
彼は注意を聞いてはいるが、机に向かい作業を続ける。
……数日後は友奈の誕生日。
机の上には、綺麗な字でしたためられている便箋が置いてあった。
まだ途中なのだろう、文は便箋の半分ほどで終わっている。
「……あなたらしいわね」
「……そうでもないさ、なんやかんやアイツには結構世話になったから。ただ、お礼がしたいだけ」
そう言って、彼はペンを持つ。
流れるように文字を書き、五分もしない内に全てを書き終えた。
(……美森ちゃんが隣に居たからかな……素直に想いを書ききれた)
大層嬉しいのか、海斗はクシャリと笑う。
それを見た美森も微笑む。
数日後が待ち遠しい。
(笑顔の
願いは届く。
末来は希望に満ちているから。
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数日後、三月二一日。
友奈の誕生日である。
その日は、ピクニックを行い盛大に彼女が生まれてきたことが祝われた。
そして帰路にて、
「友奈。これ」
「これは……お手紙?」
「……プレゼント替わりだ。お前には物を送るより、そういうヤツの方が良いと思ってな。あんまり言えてない、日頃の感謝を詰めといた」
「ありがとう、海斗君。すっごく、すーーっごく!嬉しいよ」
「どういたしまして」
友奈の心からの笑顔に、海斗は少し照れてしまい顔を逸らす。
この二人の関係は、昔と同じだ。
恋人以上で、恋人未満。
美森と同じくらい大切な存在で、同じくらい護りたい人。
例え、この身を賭してでも。
海斗がそんな事を考えている間に時は過ぎ、あっという間に二人の家の前についた。
「お休み海斗君」
「お休み友奈」
美森は居ない。
先に帰ってもらい、友奈と二人になれる時間を作ったのだ。
友奈は家に入り、階段を上がっていく。
自室のドアを開けて、すぐさま机に座って手紙の封を開けた。
『拝啓 おバカな幼馴染へ
いつもありがとう。
感謝の言葉から入るのはどうかと思うが、ゆっくりと見て欲しい。
美森ちゃんを抜けば、俺の中で一番付き合いが長いのは友奈だ。
お前には色々と世話になったし、迷惑を掛けられた』
少女はクスリと笑う。
やっぱり、海斗は手紙の中でも海斗だ。
『美森ちゃんの事があって、落ち込んでいた時にお前が傍に居てくれたお陰で立ち直ることが出来たんだ。
ありがとう。
勇者部に入るって言った時は、少し怒ってしまったこと。
本当にごめん。
お前や美森ちゃんに傷ついてほしくなくて、キツイ言い方になっていたと思う』
「そんなことないよ、海斗君は何時も優しいもん。何となく分かってたよ」
『戦いになってからは、お前たちを守ることで頭がいっぱいいっぱいだった。
でも、友奈。
お前やみんなが思い出させてくれたんだ、本当の自分を。
だから、ありがとう。
そんな友奈が大好きです』
「……私もだよ……本当に不器用なんだから」
友奈の頬に涙が伝う。
嬉しいのに、涙が止まらない。
『最後に。
友奈、生まれて来てくれて本当にありがとう。
俺に出会ってくれてありがとう。
俺と絆を結んでくれてありがとう。
敬具 もう一度手紙の中身を見てごらん』
友奈は書かれている通り、手紙の中身を除く。
そこには、
「……桜の押し花……」
まだ、殆ど咲いてない筈なのに……どうやって。
そんな疑問が湧いたが、少女はその疑問を即座に捨てた。
「海斗君は……やっぱり、私たちの
押し花を持って家を飛び出し、東郷家の前に行く。
そこには、二人の心友が居た。
一人は少し寒いのか、半纏を羽織っている海斗。
もう一人は、今にも友奈に飛びつきそうな体制を取っている美森。
幼馴染と無二の親友、心通じ合う最高の友。
「どうして……?」
「ここに居るかって?」
「友奈ちゃんを待ってたのよ。私たちが友奈ちゃんの行動パターンを予測できない訳ないでしょ?」
「そういうこと。そんで、美森ちゃんが友奈ちゃんを冷やしたらいけないって言うもんだから、こうして待ってたわけさ。まぁ、春は春でもまだ夜は肌寒いしな」
ドヤ顔で言う二人に、友奈も顔を緩ませ笑った。
(やっぱり、なんだかんだ言っても姉弟なんだな……そういう所ちょっと羨ましい)
「もぉ~、今日は三人で寝よう‼お泊り会だよ!」
「偶にはいいかもな……、どうする美森ちゃん?」
「海斗の部屋にしましょうか、布団を敷いてみんなで寝ましょう♪」
美森は軽やかな足取りで家に戻っていく。
恐らく、準備を片付けに行ったのだろう。
しかも、友奈の親にもしっかり連絡を入れる気だ。
「唐突だけど……こういうのも良いよな」
「うん!」
海斗は喜んでいる友奈の姿を見て、言うことを決めた。
「友奈、手紙にも書いてあったと思うけど。生まれて来てくれて本当にありがとう」
「うん!……今の私だったらハッキリ言えるよ。きっと私が生まれてきた意味ってここにあったんだ。こんな素敵な場所でみんなに会ったこと、それが『運命』じゃなくてただの『奇跡』……『偶然』だったら素敵だと思わない?」
「らしくないな、お前がそんな
「もう!真面目に言ったのに~」
頬を膨らませて怒ったような口調で喋る友奈の頭を撫でて、海斗も歯の浮くような言葉を口にする。
『奇跡』や『偶然』と言う言葉が嫌いな頃の海斗だったら、言わなかったような言葉。
「……友奈の言う通り、それが本当だったら素敵だな。俺やお前が会えたのは『偶然』で、でも俺とお前が起こした『奇跡』は『必然』だった」
「うん、そうだね」
「『偶然』と『必然』、『運命』と『奇跡』。この二つが混ざり合って今がある。こんなに素敵なことは、他にはないのかもな」
「きっとそうだよ。ううん、絶対にそうに決まってる」
この会話を最後に、二人は家の中に入っていった。
「その日はとても暖かい夜を過ごせた」と、後日友奈は語っている。
次回もお楽しみに!
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