東郷海斗は勇者である   作:しぃ君

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 弥勒パイセンの誕生日回です。
 もしかしたら、この誕生日回がとかゆの投稿の最期かもしれませんが悪しからず。


お嬢様と執事君

 四月二七日。

 春風も温かくなってきた今日この頃。

 海斗は何故か、執事服を着ながら弥勒夕海子(ゆみこ)に対して給仕をしていた。

 何でも、今日の誕生日のして欲しいことや欲しいプレゼントを聞いたら「今日一日、私のアルフレッドになってくれませんこと?」と言われたのだ。

 アルフレッド、夕海子曰く専属執事(笑)らしいので、その為に態々服を着替えてまでやっているのである。

 

 

「お嬢様、何かご用はございませんか?」

 

 

「そうですわねぇ、お紅茶とそれに合うクッキーでも出して頂戴」

 

 

「かしこまりました」

 

 

 周りに居るみんなには結構な視線で見られているが、もう慣れたのか気にしなくなってきた。

 テキパキと紅茶をティーカップに淹れて、用意していたクッキーを紙皿に出す。

 その後は、流れるような動作で夕海子の前に持って行く。

 中々に骨の折れる作業ではあるが、意外に楽しい。

 海斗は満面の笑みで、夕海子にそれを差し出した。

 

 

「どうぞ」

 

 

「ありがとう海斗。もう下がっていていいですわ」

 

 

「それでは、失礼いたします」

 

 

 少し疲れのある体と、何故か充足感のある心。

 案外、自分は誰かに仕えるのに向いているのかもしれない。

 そう思う海斗だったが、その考えは即座に投げ捨てた。

 

 

(違うか、誰かに仕えるのが向いてるんじゃなくて、誰かを支えるのに向いてるだけなんだ…)

 

 

 案外、今回の体験で自分のまだ浮き出ていない一面が知れたことに笑みが零れるが、それを良しとしない者が居た。

 何を隠そう美森である。

 先程までハイライトが完全に消えた瞳で、海斗と夕海子の事を見ていた。

 今もなお、先程と同様の目で海斗のことを見続ける。

 流石に海斗も気付いたらしく、慌ててフォローに入った。

 

 

「ええっと…美森ちゃん?」

 

 

「どうかしたの海斗?夕海子さんへの給仕がそんなに楽しいのなら、本当に専属執事になってもいいのよ?私を捨てて……」

 

 

「いやいや!そんなこと絶対しないから!やくそくは守るから!」

 

 

「ならいいけど……」

 

 

 何とか美森の誤解を上手く説くことが出来たが、気に掛けることが増えた海斗だった。

 

  -----------

 

 日も暮れた放課後、海斗は夕海子の部屋にお邪魔して料理を振る舞っていた。

 夕海子が高知出身でカツオ好きなのは知っていたので、カツオの揚げ物を主菜にした夕食。

 

 

「まぁ、とても美味しそうだこと」

 

 

「すいませんね、こんな庶民的なもので」

 

 

「良いんですのよ、それにカツオは至高ですので問題ありません!」

 

 

 口調を戻したのは夕海子が戻して欲しい言ったからだ。

 なので、いつも通りの口調で夕海子に喋りかける。

 

 

「案外、執事も面白いかもですね」

 

 

「そうでしょう♪このまま永久就職してくれても良いんですよ?」

 

 

「いいえ、職の方は間に合ってるんで」

 

 

「そうですの……、あなたのような有能で気の利く者が居れば弥勒家復興も夢物語ではなくなるかもしれないのですが」

 

 

 弥勒家、神世紀七二年に起こったテロを赤嶺家やその他数家と協力して鎮圧してみせた由緒正しき家柄。

 その時の当主、弥勒音羽(おとは)は世紀の天才と言われており、弥勒家が相応の地位に就くのは勿論、下手すれば勇者七家にも近づけた筈だが、テロ鎮圧の際に仲間を守って右腕を失くしたため上に上がることはなく、弥勒家の次代当主にして音羽の妹である蓮華が情に厚い人柄の為か廃れていった。

 これが、弥勒家の歴史。

 

 

「……夕海子先輩だったら、出来るんじゃないんですか?きっと先輩の将来はバリバリ働くやり手のキャリアウーマンですよ」

 

 

「そうですわね!何を落ち込んでいるのでしょう!私が居る限り弥勒家を没落させたままではいさせませんわ!」

 

 

「その意気ですよ、もしなにかあったら頼ってください。出来る限りお手伝いしますから」

 

 

「海斗さんは流石ですわね!これからもお互い頑張っていきましょうではありませんか」

 

 

 因みに、二人は知らないだろうが、日守家もテロ鎮圧に貢献していたらしい。

 またこれも、別の話である。

 

 

 

 




 次回もお楽しみに!

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