prologue「昔と今」
幼き日の夢、大切な人とのかけがえのないオモイデ、もう叶わないやくそく。
「海斗君!大きくなったら私を娶ってね!」
「うん、わかったよ!美森ちゃん!」
昔はこの言葉の意味が良く分からなかった。でも、美森ちゃんが俺と一緒に居たいと言う事は何となく分かっていた。
「やくそくだよ!」
「やくそく!」
そのまま笑顔で指切りをしたのを覚えている。忘れられないやくそく。
これは、少年の過去の夢であり思い出であり、そしてやくそくだ。
美森の朝は早い、家の誰よりも早く起き調理の支度をすませる。
少女は中学二年生、この歳から朝早く家事をするのは将来有望だ。
周りの子に比べれば少し変わっているが、それでも居たって普通の少女。
ある一点を除けば、そう少女が足が動かず車いすに乗っていること。
だが、少女はそんなことも気にせず黙々と調理を進める。
「そろそろ、かしら」
料理を完成させて、数分待つと縁側を歩く音が聞こえる。
「おはよう、美森。今日も美味しそうだな」
「おはよう、美森ちゃん。朝ごはん任せてごめんね」
「ううん、大丈夫。私が好きでやってるんだから。…海斗は?」
寝坊しがちな、
「まだ、起きてないみたい。起こしに行ってあげてくれる?」
「分かったわ。先にご飯を」
「ああ、先に頂いてる」
両親にそう伝え縁側に出る。奥にある私の部屋の隣、そこが海斗の部屋だ。
「海斗!そろそろ起きなさい。もう朝食出来てるわよ」
「もう起きてるよ、うるさいなぁ」
私が襖を開けて中に入ると、海斗が制服姿で机に向かい勉強しているのが分かった。
「起きてるなら、早く来なさい。父さんと母さんはもう来てるわよ」
「分かってるよ、姉貴は一々うるさいなぁ」
見て分かる通り、私の弟は反抗期なのか少し態度が悪い。昔は違ったのに如何してこうなってしまったのか、理由は分からない。
こんなになったのは、約1年前からだ。
私は交通事故に遭い、足が不自由になった。
足が今後動かないかも知れない、ということを知って私は少し弱気になっていた。
そんな時、友奈ちゃんに支えられて何とか今の状態まで戻すことが出来た。
海斗は病院に見舞い来た時や家に帰って来た最初の方は、もう少し柔らかい感じだった。
それから少し経った頃から、海斗が私に対してあんな態度を取り始めた。
最初は直ぐ終わって、昔の様に笑って喋る事が出来ると、信じていた。
約1年の時が経っても、海斗の態度は直らず。
私も姉として接しようとするせいで、私たちの溝は深まった。
戻れるなら幼馴染だったあの頃に戻りたい。
幼馴染であり、姉弟でもある。これは、姉弟の物語。恋と勇気の冒険譚。