(結局、一睡もすることが出来なかった。)
海斗は学校での授業を真面目に受けつつ、開いた時間に睡眠時間を補っていた。
お昼休み、みんなが机をくっ付けながらご飯を食べ始めているが、彼は一人机に突っ伏していた。
そんな所に陸斗と友奈と美森が寄ってくる。
「おーい、海斗。生きてるかー?」
「生きてるよ、眠いから昼飯はパス」
海斗のぶっきらぼうな返しにビクともしない。
陸斗は海斗の前の自分の机をくっ付ける。
友奈と美森も近くのクラスメイトに机や椅子を借りて海斗の席に付ける。
「いや…、何で要らないって言ったのに机を合わせるんだよ」
「海斗、母さんの作った料理をダメにするの?」
美森の刺し殺す様な視線のお陰で、海斗は完全に目を覚ます。
「分かったよ!…本当は部活前に食べる気だったのに」
海斗の呟く様な囁きを無視しつつ、ご飯を食べる。
「わぁー!東郷さんちのお弁当美味しそー!」
友奈が目を少し輝かせながら、海斗と美森の弁当を椅子から腰を浮かせて覗き込む。
「あ!ごめん!食べ辛いよね」
「別にいいのよ、友奈ちゃん。そうだ、私のおかず少しあげるわ」
「ワーイ!ありがとう、東郷さん!」
友奈と美森が楽しそうにしてるのを尻目に、海斗は黙々と弁当を口に運んでいた。
「女子はいいね~。そうだ!海斗、俺にも何かおかずくれよ」
陸斗がその言葉を言った途端、顔をしかめて明らかに不機嫌そうになる。
「嫌だ。何で柳橋に母さんの作った弁当をやらなきゃいけないんだよ」
「ケチだな~、海斗は。もうちょっと東郷さんの様な慈愛の心をもってだな……」
「ハイハイ、ワカリマシタヨー」
陸斗の声を聞き流し、弁当を食べるのを再開する。
(何で、美森ちゃんはあんな嘘言ったんだ。)
嘘とは、今日の弁当のことだ。
今日の弁当を作ったのは美森なのだ、それなのに何故嘘を着いたのか海斗には皆目見当がつかなかった。
本当は美森はこう思っていた。
(私が作っているのを知っているのに……何で?やっぱり私のことが嫌いなのかしら……)
だから、美森は嘘をついてしまったのだ。
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時刻は変わり、放課後。海斗は掃除当番だったため、少し遅れて部活に来ていた。
廊下を小走り気味に来た海斗の横を美森が通り過ぎて行く、その光景に困惑する彼の下に友奈が現れた。
「あ!海斗君、先に部室に行ってて」
「お、おう、分かった。友奈はどうするんだ?」
「今、出て行った東郷さんのこと連れ戻してくる」
そう言って、彼女は足早に駆けて行った。
海斗はそれを見送りつつも、勇者部の部室である家庭科準備室にスライド式のドアを開けて中に入る。
「東郷海斗入ります。」
部室内は、備品が色々あるが纏まっている。
入った手前には大きなテーブルがあり、その奥には連絡黒板がある。
シンプルな部室だ。
黒板の近くには学校でよく見るようなデスクトップパソコンがあり、勇者部のホームページやらをそれでやっている。
基本的に弄るのは海斗や美森だけだが。
いつもなら、そんな光景が広がっているが今は少しシュールな感じだ。
「如何にして、東郷先輩とお姉ちゃんが仲直りするか……」
樹がテーブルの上でタロットカードを並べて、占いを。風と言えば。
「えっと~、説明足りなくてごめんね~!軽すぎてもっと怒っちゃうかな。本当にごめんなさい!…低姿勢過ぎるな~」
どうやら美森を怒らせてしまったらしく、犬神に向かって仲直りの練習をしていた。
「何か、大変そうですね。犬神とか見えない人からしたら、超シュールな光景でしたよ。」
海斗はバックを椅子に置き、風に話しかける。
樹ちゃんは集中してるのか、まだ海斗の存在に気付いていない。
「そうなのヨ、東郷のこと少し怒られちゃったみたいでさ。樹、どうするべきか占えた?」
「か、海斗先輩、こんにちわ。待ってて今、結果出るよ」
やっと海斗の存在に気付いた樹が少し驚きながらも、挨拶をする。
そして占いの結果がでる。
「何これ!女子力高そうな絵ネ。」
そんなことを言ってる風を見ながら、海斗は少し考え事をしていた。
(風先輩が言ったのは多分お役目のことだな。)
海斗たちのお役目である、勇者は神樹様の力を借りて12体いる星座の名を冠したバーテックスを倒す事。
その際に、神樹様を守りつつ戦うことが大事なのだ。
神樹様は四国の恵みであり、壁を作りバーテックスから四国を守っている。
だが、防衛に力を入れすぎては他の事が疎かになってしまうため。
壁に入りやすい場所を作り、勇者たちが撃退しているのだ。バーテックスは基本的に周期的に訪れる、だが少なからず例外はある。
多分こんな感じの話をしたのだろうと思い、考えをやめるて風達の方を見た。
そこには、不思議な事にタロットカードが宙に浮いていたのだ。
海斗や風達は知っているこの現象の名前を。
「樹海化!」
「まさかの連日?」
世界が塗り替えられていく、花弁が舞うような光景が見えた思えば、すでに樹海の中に居た。
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「三体同時に来たか、モテすぎでしょ」
「モテますね~」
「何かツッコミ入れて下さい!」
3人とも変身を終えて、相手の出方を伺う。
今回のバーテックスはサジタリウス、スコーピオン、キャンサーだ。
海斗は大赦の資料にあった3体の攻撃方法を思い出す。
(キャンサーは反射板を多数持ち、スコーピオンは長い尻尾の毒針での攻撃を得意とする。たしかそんな感じだったはず、サジタリウスは円状の中心から大きい矢を口から大量の小さい矢を繰り出すんだ。ヤバイ!どうりで後方に居る訳だ。)
だが、友奈が来たのを見てそれを知らない風はもう指示を出していた。
「遠くの奴は放っておいて、まずは近くの2体纏めて封印の儀行くわヨ!」
「風先輩ちょっと待って下さい、後方の敵は。」
海斗が言い終える前に、サジタリウスの大きな口の様な部分から大きな一本の矢が放たれる。
「はっ!?」
大剣に当たったお陰で、吹っ飛ぶだけで済んだが直撃したら確実に意識を持っていかれるだろう。
風が着地に成功すると、それから間髪入れず小さい口から無数の針を吐き出して攻撃してくる。
「いっぱい来たー!!」
雨の様に降ってくる無数の矢を前方にいるスコーピオンとキャンサーを避けて跳ぶことで全員が回避に成功する。
回避に成功すると友奈がサジタリウスに目がけて飛び出した。
「撃ってくる奴を何とかしないと。」
友奈の行動に反応して、スコーピオンとキャンサーが振り返る。
キャンサーの反射板でサジタリウスから放たれた針が反射されて友奈を狙う。
「不味い!」
「友奈さん危ない!後ろです。」
「針が反射されてくるぞ、気を付けろ。」
海斗達の言葉に気付き、持ち前の動体視力と反射神経の良さで迫ってくる矢を何とか払いのける。
「あわわわわ!」
海斗は何とか落ち着きを取り戻し、冷静に戦略を練り始める。
だが、考えようと思ったその時に友奈がスコーピオンの尻尾の針で、上空に押し上げられてる様子を見て思わず叫んだ。
「友奈!」
牛鬼が精霊バリアを張ってることが分かるが、それでも海斗は叫んでいた。
友奈は上空に押し上げられた後、スコーピオンの尻尾の上を転がり落ちそのまま尻尾で吹き飛ばされてしまった。
友奈の事も心配だが、目の前に居る敵も危険だと判断しもう一度思考回路を切り替える。
またもサジタリウスの針をキャンサーが反射させて、範囲攻撃を行う。
海斗達は逃げるばかりで中々反撃の隙が出来ない。
(クソ!こんなもたもたしてたら美森ちゃんの方に敵が!)
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「こっちに」
美森は怯えていた、じりじりとこちらに近づいてくるバーテックスに。
だが、それは一瞬にして怯えではなく本当の恐怖に変わる。
友奈がスコーピオンの尻尾攻撃によって美森の近くに落ちてきたからだ。
「友奈ちゃん!」
目の前で友達が化け物に襲われている、精霊がバリアで守ってくれているがそれでももしかしたら死ぬかもしれない。
そんな考えが脳裏に過った。
友奈が死ぬかもしれないと思った瞬間思い出したのは、初めて友奈と会った日のこと。
「あれ!はじめてましてかな?もしかして海斗君のお姉さんだったり?」
「あっ、はい。そうですが。でも義理なんです」
初対面の人に言うのはどうかと思ったが、美森は友奈が海斗の友達だと分かりすんなりと話すことが出来た。
「それ!海斗君から聞いてます。同い年のお姉さんが居るって。歳が同じなら、同じ中学になるよね。」
美森にとって彼女は少し眩しく見えた。
「私は結城友奈!よろしくね!」
それは多分彼女の笑顔がとても綺麗だったからなのだろう。
「そうだ、この辺よく分からないでしょ?何だったら、案内するよ任せて!」
彼女の優しさを美森は忘れることはないだろう。
思い出したことで沸き上がった感情、それは……
(やめろ…)
「やめろ……」
怒りだ。
「友奈ちゃんを虐めるなー!!」
叫ぶと共に、スコーピオンの尻尾が美森に向かって突き刺さる。
「姉貴!」
近くにやって来ている海斗の叫ぶ声が木霊する中、美森の精霊である青坊主のバリアによって守られていた。
彼女はまだ勇者システムを使用していないのに
「私、いつも友奈ちゃんに守ってもらってた」
スコーピオンは美森のバリアを簡単には破れないと判断したのか攻撃を中断する。
「東郷さん」
友奈が何とか起き上がる。
「だから、次は私が勇者になって友奈ちゃんを守る」
美森の周りに朝顔の花弁が舞い始める。
花弁が舞い終わるころには変身は、終了して不自由な足の代わりにリボンを使って立っている。
美森が変身した姿は、とても美しい。友奈と海斗が口を揃えてそう言った。
「綺麗……」
「綺麗だ」
(でも、美森ちゃんが戦いに参加したからには絶対に守らないと!)
決意を固める海斗の傍で美森はハンドガンの様な銃を持って佇んでいた。
今回も、花言葉を弄ったものがサブタイです!分かったなら感想でお答えを!
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