東郷海斗は勇者である   作:しぃ君

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 今回もお楽しみに。




第五話「姉弟のコンビネーション」

 変身を終えた後の美森の心は安定していた。

(どうしてだろう?変身したら落ち着いた。武器を持っているから?)

 疑問を残したままではあるが、美森は攻撃を始めていた。

 彼女の隣には精霊である刑部狸が浮かんでいる。

 武器はハンドガンなのだろう、放った弾丸は的確にスコーピオンの尻尾を破壊していた。

 

 

「もう、友奈ちゃんには手出しさせない」

 

 

 言い終えた、美森の手からハンドガンと刑部狸が消える。

 次の瞬間にはまた別の精霊である、不知火とショットガンのような散弾銃が二丁現れる。

 スコーピオンの額ともいうべき部分に散弾銃特有の広がるような、小さい弾が当たっていく。

 二丁の銃を何の迷いもなく撃っていく、撃つごとにコッキングという銃身を回転させて銃弾をリロードする動作を入れて、出来るだけ間を入れず銃を撃つ。

 

 

「凄い東郷さん、これなら……」

 

 

「何で、コッキングなんて動作をさも当然のように出来るんだよ……」

 

 

 友奈からは羨望の眼差しが美森に送られる。

 対して海斗からは呆れと諦め交じりの視線が送られてくる。

 こんなことを言っている海斗も大赦の訓練施設で、火縄銃を片手で扱うために訓練をしていたので人の事はあまり言えないのだが……

 

  -----------

 

 一方でサジタリウスとキャンサーに苦しめられていた。

 それもこれも、キャンサーの反射板を中々攻略出来ないのが問題なのだが。

 バーテックス二匹の猛攻の中、何とか二匹の攻撃を躱しつつ樹海特有の太い幹に逃れる。

 

 

「ああ、もう!しつこい男は嫌いなのヨ」

 

 

「モテる人っぽいこと言ってないで、何とかしようよお姉ちゃん」

 

 

 犬吠埼姉妹が敵の攻撃を隠れてやり過ごす中、明後日の方向から物凄い音を立てながらキャンサーの反射板にスコーピオンが落下してくる。

 大方、誰かに吹っ飛ばされたか投げられたか、こんな事するのはこの部に少なくない。

 

 

「そのエビ運んで来たよー!」

 

 

「サソリでしょ!」

 

 

「どっちでもいいから」

 友奈の発言に風がツッコム、そんなアクションを挟んで間もなく美森と海斗が友奈に追いつく。

 

 

「東郷先輩!」

 樹の声が樹海に響く、その声はいつもより少し高く「嬉しいんだろうなぁ」なんて感情を海斗でも読み取ることが出来た。

 

 

「遠くの敵は、私が狙撃します」

 美森の声には覚悟が満ちている、戦って守るという覚悟が。

 

 

「東郷……、戦ってくれるの?」

 風の問いに確かな頷きをもって返す美森、部室で言い争っていた時のような暗い空気はもうない。

 

 

「援護は任せて下さい!」

 その言葉の通り、美森は3体の精霊を従えてスナイパーライフルをもち狙撃の体制に入る。

 

 

「わかった。手前の二匹纏めてやるわよ。散開!」

 

 

「「オーケイ!」」

 

 

「了解!」

 風の号令に反応して海斗、友奈、樹が返事をする。

 

 

「不意の攻撃には気を付けて!」

 

 

「「「「はい!」」」

 美森の警告に風以外の三人が返す。

 

 

「アタシのより返事が良い」

 風に嘆きはみんなには聞こえていなかった。

 

 

 美森が見据えるの後方に陣取る、サジタリウス。

 少しの間見つめ合うとサジタリウスが大きな口の部分から大きな矢を射出する、美森もそれに合わせて引き金を引く。

 銃弾と矢が衝突した瞬間激しい爆発が起こる。美森はそれに動揺せず次弾を打ち込む準備をする。

(あいつがみんなを苦しめた。……大人しくしてて――)

 美森が冷静にサジタリウスに対処する中で海斗たちは封印の儀に入っていた。

 

  -----------

 

「出たー!」

 

 

「こっちも」

 封印の儀が始まり、スコーピオンとキャンサーが大人しくなり、御霊が外に吐き出される。

 いつみても変な形だ、何故か決まって逆四角錐の形で現れる。

 

 

「私、行きます」

 

 

 友奈がキャンサーが出した御霊に向かって突っ込む、だが――

「あれ?」

 

 

 紙一重な感じで、すいすいと避けていく。

 

 

「せい!…やぁ!……この!」

 

 

「絶妙に避けるな、あの御霊」

 海斗も銃で援護しようとするが、絶妙に避ける御霊に上手く標準を定められない。

 

 

「躱して、友奈!」

 風の声を聞き、友奈が少し後方で支援をしていた海斗の方まで退いてくる。

 風は大きく大剣を振りかぶりそのまま振り下ろす。

 だが、その攻撃もヒラリと躱してしまう。

 

 

「点の攻撃をヒラリと躱すなら、面の攻撃で押し潰ーす!」

 

 

 風は犬神の力を借り、大剣を更に巨大化させる。

 

 巨大にした大剣の刃ではなく腹の部分で吹っ飛ばし、吹っ飛ばした御霊をそのまま力任せに押し潰した。

 御霊を破壊した風は嬉しそうに呟く。

 

 

「ひとーつ!」

 御霊を潰されたキャンサーは砂になって消える。

 

 

 もう一方の、スコーピオンは御霊を分身?させることで撹乱を狙いに来た。

 

 

「何か増えたー!」

 

 

「数が多いなら、まとめてー!」

 木霊の力を借り、ワイヤーを最大限増やして多くなった御霊を全部捕縛する。

 「えーい!」と可愛い掛け声を掛けてワイヤーで増えた御霊を切り裂き、最後に残った御霊も腕を上に引っ張るようにしてワイヤー引き切り裂いた。

 スコーピオンも御霊を破壊されて、形が崩れ砂に変わっていく。

 

 

「ナイス!樹!あと、ひとーつ!」

(樹ちゃんの攻撃方法って、案外エグイな……)

 妹を褒める風と、内心樹の攻撃方法が一番エグイんじゃないかと思う海斗が居た。

 

 

「風先輩、部室では言い過ぎましたごめんなさい」

 

 

「東郷…」

 美森の心からの謝罪だった、それを受け止める風。

 

 

「精一杯、援護します!」

「心強いは東郷…。アタシの方こそ……えっと、ホントゴメンナサイ、はい」

 美森の余りの銃の腕と実力に困惑していた。

 最後が情けなくなければ、完璧だったのにと思わずにはいられないシーンであった。

 

 

「封印開始だ!」

 

 

 海斗が力強く叫ぶ。花吹雪がサジタリウスの周りを舞う。

 そして大きな口の部分から、御霊が出で来る。出てきた御霊はバーテックスの周りを回り始める。

 

 

「この御霊!」

 

 

「早い!」

 

 

「くっ!?」

 

 

「姉貴、合わせて!」

 

 

「ぶちかませ、小僧!」

 

 

 海斗が信長の力を借りる。

 動体視力、情報処理能力、五感や腕力や脚力。身体に関する全てが飛躍的に上昇する。

 そのお陰で、海斗には本来なら高速で動き回っている御霊がまるで止まっているように見える。

 そこから、自分の銃弾の速さと御霊が動き回る速さを計算し、タイミングと予測する。

 

 

(…1、2、3――今だ!)

「イッケェ!」

 

 

 海斗の銃弾が御霊に当たり、その攻撃で隙が出来る。

 美森はこの隙を見逃すはずもなく正確に銃弾を当てた。

 

 

「海斗先輩!」

 

 

「撃ちぬいた!」

 御霊は徐々に動きが遅くなり、バーテックスの体は砂に変わっていく。

 

 

「状況終了。みんな無事で良かった…」

 樹海化が解け、世界は下に戻っていく。

 

  -----------

 

「海斗君も東郷さんもカッコよかったなぁ。ドキッとしちゃった。」

 友奈は美森に抱き着きながら、先程の戦いを思い出していた。

 高速で動く御霊に対して海斗が足止めし、美森がフィニッシュ。中々のコンビネーションだった。

 

 

「でも、本当に助かった。東郷、それで――」

 

 

「覚悟は出来ました、私も勇者として頑張ります。」

 風の言葉の先が分かっていた美森は、その言葉を遮り自分の決意を口にする。

 

 

「東郷…ありがとう。一緒に国防に励もう!」

 

()()…はい!」

 美森に国防と言う言葉は響く。

 護国思想の強い美森からすれば、国防に励むと言うのはパワーワードに近い。

 

 

「そう言えば、友奈ちゃん課題は?」

 この言葉が一気に、友奈を現実へと巻き戻す。

 

 

「課題明日までだった!アプリの説明テキストばっかり読んでで」

 

 

「抜けてんな、友奈は」

 

 

「そこは守らないから頑張ってね!」

 

 

「そんなぁ~!」

 

 

「勇者も勉強も両立。」

 そんなこんなで、今回の戦闘も終わりその日はお開きになった。

 

  -----------

 

 その日の夕方ごろ、海斗の部屋で。

 海斗はパソコンで今日あったことをWo❍dに纏めていた。

 ベットの近くのテーブルで友奈と美森が話しながら課題に取り掛かっている。

 

 

「海斗君また、日記書いてるの?」

 

 

「そうだよ。一様今回の戦闘での不安点とかかな?」

 

 

「大赦に送っているの?」

 美森の声が少し下がったのが分かる。

 

 

「まぁね、後は少しだけ勇者システムの違法アップデート」

 

 

「違法なのを堂々と宣言していいの?!」

 

 

「いいんだよ別に、弄るのは些細な部分だし。」

(ホントは、全然些細じゃないけど…まぁいいでしょ)

 ノリが軽い、そんなこんなで時間は過ぎていく。7時を過ぎるころには、友奈の課題も終わり三人とも駄弁っていた。

 

 

「本当に今日の二人のコンビネーションはカッコよかったよ!」

 

 

「別に…あんなのは普通だ。」

 

 

「いきなり、合わせてと言われた時は驚いたけど。案外何とかなるものなのね。」

 いきなりカッコイイと言われると、流石に照れてしまう。

 海斗もまだまだ子供なのだった。

 

 

「そう言えば、海斗君の信長ってどんなサポートしてくれるの?」

 

 

「補助か~?簡単に言うと身体強化かな。細かくすると、動体視力だったり情報処理速度、五感とか脚力や腕力を全般的に強化するんだ」

 

 

「勇者になるだけでも、十分に強化されてると思うけど?」

 美森の言葉は正解だ。勇者になるだけで、超人なんてなんのそのみたいな化け物じみた身体能力になる。

 

 

「それじゃあ、足りない時もある。今回だって、あの状態の御霊を撃ち落とすのは至難の業だ」

 

 

「私は出来たわ」

 

 

「だろうね、何となく分かってた。でも、協力できるときは協力すべきだろ。姉貴もみんなも」

 

 今回の戦いでも改善点は残っている、それを減らせるようにしようと彼は奮起した。




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 p.s.
 何で持久走ってこの世から無くならないの?
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