東郷海斗は勇者である   作:しぃ君

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 遅れてスマンねぇ。



第七話「偶然の再会」

 先日の対談から一週間、姉弟の仲も自然と昔のようになってきた。

 いつも通りの日常。

 学校に行き、友達と喋り、授業を受け、部活をする。

 そんな当たり前のような日常。

 けれど、今日だけは何かが違った。

 

 

「神樹館学校からの依頼?」

 

 

「そうなのヨ、何か飼育小屋で飼ってたウサギが脱走しちゃったらしくってさ~」

 

 

「そうなんだよ、でね私たちの所に依頼が着たんだ」

 

 

「でも、それだったらあっちの奴らに任せればいいじゃないか。何でうちなんかに?」

 

 

「それには理由がちゃんと書いてあったわ」

 

 

 美森が全員にパソコンに届いた依頼書の内容を見せる。

 そこには、依頼主である中等部生徒会長の優希の名前が見えた。

 

 

「依頼主は優希なのか…はぁ、分かったその依頼を受けよう」

 

 

 依頼の理由は、校舎が広すぎて人手が足らないことからの救援要請のようなものだ。

(運が良かったら…()()()に会えるかもしれないしな)

 

 

「そうと決まれば早速準備をして行きましょう!」

 何だかとても乗り気の樹を見て、少し驚く海斗なのだった。

 

  -----------

 

 電車に揺られること数十分、歩くこと数分ようやく校門が見えて来た。

 校門の前には、懐かしい顔を見る。

 銀色の髪に碧色の瞳、茶目っ気のある笑顔が特徴的な美少女。

 名前を柊明(ひいらぎあかり)と言う。

 

 

「久しぶりー!海斗ー!すm――」

 

 

「よう!明!久しぶりだな!」

 海斗は会った瞬間、不味い事を口走りそうになった明の声を自分の声で掻き消した。

 

 

 海斗は明に近づき耳打ちをする。

(おい!明、美森ちゃんのことをその名前で呼ぶな!今は美森で良い)

(了解、了解!それにしても海斗背へ伸びた?)

 こんな感じで昔のような会話をしつつみんなの所に戻った。

 

 

「お待たせしました!神樹館学校中等部二年!生徒会副会長の柊明です!どうぞよろしく」

 

 

「ご丁寧にどうも、讃州中学勇者部部長。犬吠埼風よ!こちらこそよろしくネ!」

 風と明の挨拶が終わり、その後に明が美森に声を掛ける。

 

 

「久しぶりだね、ミモリン」

 

 

「久しぶりね、アカリン」

 二人ともあだ名で、呼び合う。久しぶりの再会に花を咲かせていた。

 

 

「あのぉ、海斗先輩?あの柊さんって言う人と東郷先輩や海斗先輩ってお知り合い何ですか?」

 

 

「うん、俺が昔神樹館に行ってたことは知ってる?その頃の知り合いなんだ、アイツはあんな性格だけど柊家は一応七家の一つだからね、中々友達が出来なくてさ」

 

 

「それで、最初に仲良くなったのが海斗先輩と東郷先輩な訳ですね!」

 

 

「まぁ、そんな感じかな?」

 疑問形なのは明自身、友達がいないことを何とも思ってなく偶然最初に声を掛けて遊ぶようになったのが海斗や美森だったというだけなのだ。

 

 

 今まで会話に入って来なかった友奈が、いきなり会話のなかに入る。

 

 

「何か、そういうのっていいよね!」

 

 

「だな、俺もそう思うよ」

 あまり言葉がなくても、心は通じ会っているのが分かるそんな会話だった。

 

 

「友奈!海斗!樹ー!早くしないと置いてくわヨ~」

 風の声を聞き、三人は校門を跨ぎ神樹館学校の中に入った。

 

  -----------

 

 移動はしたものの、時刻はまだ四時前。

 外にはまだ太陽がいて、「まだ仕事は終わってない!」と言わんばかりに輝いている。

 海斗たちは一度、生徒会室に荷物を置いてから捜索に掛かるということで、明に生徒会室まで案内されていた。

 出会う生徒が口を揃えて「御機嫌よう」だの「こんちゃー!」だの個性の強い挨拶を受けて、埃一つ落ちてない綺麗な廊下を歩いていた。

 廊下に飾ってある、生け花や絵巻はそれだけでも相当の価値がありそうなものばかりだ。

 

 

 神樹館に通っていた海斗と美森は落ち着いているが、初めて来た風、樹、友奈は辺りを不自然な位キョロキョロ見渡していた。

 それも好奇心によるものなので、しょうがないといえばしょうがないのだが流石にやりすぎだと海斗は思っていた。

 

 

「着きました、ここが生徒会室です」

 

 

 扉を開くと、そこにはまるで都会にあるオフィスのような空間だった。

 一人一人が自分のスペースをちゃんと確保できるようなデスク、事務仕事用に揃えられたであろう最新式のデスクトップパソコン、更に更に給湯機やティーカップに茶菓子などの物があり、最終的には書類が入ったタンスの横に薄型テレビと家庭用ゲーム機という明らかに私物の物まである。

 

 

 はっきり言おう、明らかに生徒会室と呼べる代物ではない。

 だが、そこにはつい一週間前に顔を合わせたメンバーがいることを認識し、海斗はここが生徒会室だと実感した。

「よお!久しぶりだな海斗!」

 

 

「久しぶりですね、海斗さん」

 

 

「久し…ぶりね、東郷君」

 

 

「久しぶりだね!海斗君!」

 

 

「…ああ、久しぶり」

(ヤバイ!美森ちゃんの視線が痛い!何かもうその視線だけで俺のこと殺せそうなんだけど!)

 

 

 その後は、自己紹介をして一通り依頼内容の確認もした。

 美森は生徒会室に残り書類整理の手伝いをする、ということで捜索メンバーは友奈・海斗・風・樹・明の五人となった。

 球音も行きたいと駄々を捏ねたが、優希から捌ききれない量の書類を渡され「それが終わったら行ってもいいよ」と言われ奮闘している。

 海斗は、この学校のことはそこそこには詳しいので一人で捜索していた。

「脱走したのは昨日って言ってたし、ここの土地の広さ的にまだ出てないと思うんだけどな…」

 

 

 神樹館学校の敷地は兎に角広い。

 ここの生徒でもあまり敷地に関して詳しく知ってないと、最悪学校内で行方不明者が出る。

 歩き回ること五分程だろうか、突然電話が鳴った。

 海斗は急いで電話を取る。

 

 

『海斗君!今どこ?』

 

 

『友奈か…今は中等部校舎の一階にいる。正面玄関の辺りに居るぞ』

 

 

『今ね、ウサギちゃんを追いかけて正面玄関の方に向かって廊下を走ってるの!そっち

に行ったら――』

 

 

『捕まえて、だろ?分かったよ!任せとけ』

 

 

『うん!』

 

 

 友奈との電話が切れた後、海斗は持ち前の視力の良さを生かし友奈が来る方向を見極めどっしりと腰を下ろし構える。

「海斗!そっちにいったよー!」

(友奈と一緒に捜索してた明の声も聞こえた、こっちの方向で間違いねぇな!)

「任せとけ!」

 目前まで迫って来たウサギは、海斗のことを飛び越えようとして跳躍した。

 だが、海斗もそうなることは予測済みだ、タイミングを合わせて跳躍する。

 

 

 そして――

 

  -----------

 

「痛ってー!姉貴!染みる、傷に染みてるから!」

 

 

「男の子でしょ!これくらい我慢しなさい」

 

 

 結局の所ウサギを捕まえるのには成功したが、運ぶ時に盛大に顔をや腕を引っ掻かれてしまったのだ。

 運び終わった今は、美森に手当てを受けている。

 

 

「相変わらず仲イイね!ミモリンと海斗は」

 

 

「まぁ、最近はな」

 

 

「そうね、やっと少しづつだけど戻れてきたのよ」

 

 

「うんうん!何か最近の二人は息ピッタリだよね!」

 そんな話をしてるちに、依頼完了の報告を風と優希が職員室に行った。

 

 

「にしても、昔の三人ってどんな感じだったんだ?」

 

 

 球音の問いに明が答える。

「ただの親友だよ、本当に大切な私の親友」

 

 

「…何か、そう言われると素直に照れるな…」

 

 

「そうね、アカリンにそう言ってもらえて嬉しいわ」

 この後も少しこの話が続いた。

 

 

 二〇分程で話は終わったのか、職員室に行った二人が帰った来た。

「今日はもう撤収するわヨ!」

 

 

「もうそんな時間なんだ、もう少し梓ちゃんとお話ししたかったのに…」

 

 

「じゃあ、連絡先交換しよ!樹ちゃん」

 このやり取りを見守る風は「家の妹もこんなに逞しくなって」と呟いていたがみんなは聞かなかったことにして流していた。

 

  -----------

 

 家に帰って来たら、海斗は速攻で美森の部屋に連行された。

 

 

「で!何で私が怒っているか分かるかしら?」

 

 

「……えっと、女の子の知り合いが増えたのを言ってなかったから?」

 

 

「それもあるけど。私に何か隠していることがあるんじゃない?」

 

 

「っ!?……どうしてそんなことを?」

 

 

「勘よ」

 それだけで、ここまで分かってしまう美森がおかしいのか。

 それとも、分かりやすい海斗が悪いのか。

 

 

 恐らく、両方の可能性が高いが。

 

 

「何にもないよ」

 

 

「本当に?」

 

 

「ああ」

 

 

「そう、ならいいわ」

 美森の許しが出たので、夕飯までは自室で寛ぐことにした。

 

 

「なぁ、坊主?」

 

 

「どうしたんだよ、急に出てくるなんて珍しいな信長」

 急に出て来た信長に、少し驚きつつもキチンと対応をする。

 

 

「話さないのか?」

 

 

「今話した所で意味がないよ、もっと後にならないと」

 

 

「お前が話さないなら、別にいい。だが、どんな選択も後悔はするなよ」

 信長の言葉が胸に刺さる。

 

 

 ふと、海斗は窓から空を見上げた。

 

 

「月が綺麗だな、坊主」

 

 

「そうだな」

 

 

 変な意味はありはしない、ただ月を見た感想を言っただけだ。

 

 

 時刻は午後七時過ぎ、見えた月は三日月。

 

 海斗にはその月が何故か悲しんでいるように見えた。

 




 二〇日には亜耶ちゃんの誕生日会もありますのでお楽しみに!
 
 誤字脱字などがありましたらご報告お願いします!

 p.s.
 オリキャラ紹介
名前:柊明(誰の子かな~)
外見:身長は150後半で、碧色の眼、茶目っ気のある笑顔がチャームポイント。髪は銀色。
誕生日:8月31日
血液型:O型
星座:乙女座
好き:美森、海斗、生徒会の皆、うどん
嫌い:特になし
趣味:編み物
特技:裁縫

 オリキャラ紹介
名前:柳橋陸斗
外見:身長は160後半で、紺色の眼、イケメン。髪は茶髪。
誕生日:11月26日
血液型:AB型
星座:射手座
好き:海斗、柔道
嫌い:直ぐ諦める奴
趣味:お喋り
特技:柔道

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