東郷海斗は勇者である   作:しぃ君

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 お・ま・た・せ!


第九話「最悪の神託で終着点を知る」

 夏凜が部活に顔を出した翌日、六月初旬ともなれば気温も高い。

 なので、体育はプールだ。

 半分を男子が使い、もう半分を女子が使う。

 プールと言えば水着、シスコンが酷い海斗は美森の胸に視線を送っている奴がいたら即刻排除する気でいた。

 

 

「誰も居ない……か。まぁ、それもそうか」

 今、男子の視線は夏凛に向いている。

 

 

 女子のレーンの一つを使い泳ぐ夏凜、速さはプロも顔負けだ。

 フォームも綺麗で、文句の付けようがない。

 水泳部の女子が驚いていた。

 

 

「すっごーい!三好さん!これ、水泳選手並みじゃない!」

 

 

「鍛えてるから……」

 水泳部からの称賛の言葉を、当然だと言わんばかりに素っ気なく言い放つ。

 

 

「ね!ね!三好さん!うちの水泳部に入らない?」

 

 

「興味ない」

 

 

 部活勧誘の言葉も静かに切って捨てる。

 そんな彼女に臆せず話しかけるられる者がいるとしたら、底抜けのバカかポジティブな天然のどちらかだろう。

 因みに、海斗の知り合いには思い当たる者がいた。

 

 

「凄いね夏凜ちゃん!」

 結城友奈である。底抜けのバカでもあり、ポジティブな天然でもある。

 

 

「みんなビックリしてるよー、すっごいねーって!」

 

 

「結城友奈……。いい勇者はね、すっごくないと世界を救えないのよ。勇者の戦闘能力は本人の運動能力に、大きく左右されるの!あんたも勇者なら、自覚を持ちなさい!」

 褒めただけなのに、何故か怒られる友奈。

 バカっぽいことを言った友奈が悪いのか、はたまた夏凜が堅すぎるだけなのか。

 

 

「先月勇者になったばかりだから…えへへ~」

 

 

「あんた、よくバカだって言われるでしょ?」

 

 

「実はそうなんだよね~」

 海斗からしたら、見ていて面白い光景だった。

 

 

「アンタ、よくそれで勇者に選ばれたわね……」

 偶然などない、全ては必然の基に起こるのだ。

  

  -----------

 

 「今頃、夏凜が煮干しのことやらバーテックスの出現周期について話してるんだろうな~」と思いながらも、海斗は生徒会室で呑気にお茶を啜っていた。

 

 

「お前さぁ、ここ一様生徒会室なんだけど?」

 

 

「まぁまぁ、俺と柳橋の仲じゃないか。生徒会の活動ブログの更新やってやってんだから、文句言わないでくれよ」

 

 

「だけどさぁ。はぁ~、しょうがねぇな俺が部活に行く時には出てけよ?」

 

 

「了解了解!」

 当たり前だが、こんな会話をしている二人だが。

 動かしている手は休むことを知らず、世話しなく働き続けている。

 

 

 陸斗の方は四時にはここを出る為、その前には行こうと決めて仕事に集中する。

 この時間の居心地の良さを、海斗は嬉しく感じていた。

(満開……みんなも聞いたんだろうか。言っても無駄だろうから、何も言わないが。きっと風先輩は、後悔するんだろうな……)

 夏凜が説明するであろう情報は、当然海斗も知っている。

 バーテックスの出現周期は基本的に、二〇日に一体らしい。

 そんなことを海斗は春信から聞き、資料でも見ていた。

 

 

 最悪の事態が起こるまで、そう時間は掛からないだろう。

 

  -----------

 

「と、ゆーわけで、今週末は子供会のレクリエーションをお手伝いします」

 

 

「具体的には?」

 美森の自然な質問が樹に飛ぶ。

 

 

「えーっと、折り紙の折り方を教えたり、一緒に絵を描いたり。やることはたくさんあります!」

 

 

「それは随分と楽しそうだな」

 何故か窓から海斗が現れた。

 

 

「海斗!どこから入って来てるの!」

 

 

「ごめん、姉貴!いやぁ、緊急事態でさぁ。今、追われてたんだよね~」

 

 

「何をしてたんですか?」

 誰かに追われるほどの緊急事態など、一体何をすればいいのか。

 

 

「三又も掛けてたやつのスマホにウィルス仕込んで、遠隔操作で浮気をバラした」

 

 

「何かとんでもないことしてますね、海斗先輩!」

 海斗は、別に三又の彼に興味があった訳じゃないのだ。

 ただ、三又野郎の彼女に最近浮気してるかもしれないので、個人的に調べて欲しいと言われたからやったまで。

 

 

 携帯を授業中に使った罰として没収された時に、こっそりウィルスと言うかアプリを入れて遠隔操作をして浮気の証拠を掴み、又を掛けられていた女子たちにそのことをバラしたのだ。

 依頼された女の子にだけ言えば良かったのだが、ムシャクシャしてやったらしい。

 何とも言えない空間が出来ていた。

 

 

「俺も、ああなる前に気付けてよかったなぁ~」

 

 

「海斗先輩のことはスルーして、依頼の方を進めましょう」

 無視である、何故か最近は樹からの言葉がキツイと感じているのは海斗だけではないだろう。

 

 

「夏凜にはそうねぇ――暴れたりない子のドッチボールの的になってもらいましょうか?」

 

 

「はぁ!て言うか、私もなの?」

 風が夏凜に向かって入部届を見せる。

 

 

「昨日、入部したでしょう?」

 

 

「け、形式上」

 夏凜の顔には少し戸惑いの色が見られる。

 

 

「ここにいる以上、部の方針に従ってもらいますからねぇ」

 

 

「そ、それも形式上でしょう!私のスケジュールを勝手に決めないで!」

 風の飄々とした態度に、夏凜が食って掛かる。

 それを友奈が諫めるように、話しかける。

 

 

「夏凜ちゃん日曜日用事あるの?」

 

 

「いや……」

 

 

「じゃあ、親睦会も兼ねてやった方がいいよ!楽しいよ!」

 

 

「何で私が子供の相手なんかを!」

 

 

「嫌ぁ?」

 友奈の訴え掛けるような上目遣いにより、夏凜の心の壁(ATフィールド)と言う名の砂の城壁は簡単に崩れ落ちた。

 

 

「分かったわよ、日曜日ね。丁度その日だけ開いてるわ」

 

 

「よかったぁ」

 

 

「良し!みんな揃ったぁ!」

 友奈と風の嬉しそうな声が響く中、夏凜は一人だけ気難しそうな顔をしていた。

 

  -----------

 

 六月十一日土曜日、午前一〇時ごろ――

 

 

「ここが、上里本家……。で、デカすぎないか」

 

 

 園子の家に行ったことがある海斗からしても、上里本家はそれと同等かそれ以上に感じていた。

 私服で良いと言われたので私服で来ているが、自分が場違いに見える。

 まぁ、実際場違いなのだが。

 

 

「あなたが、日守家の?」

 

 

「は、はい!日守家の次期当主で、現在は勇者のお役目に着かせて頂いてます。日守海斗です。真名のことに関しては、申し訳ありませんがお答えできません。何分、両親が真名を授ける前に他界したものでして」

 

 

「はい、そのことは聞いています。面をあげなさい、ふむふむ中々にカッコいい顔をしてますね」

 最初の少し堅かった声が途端に柔らかい声になる。

(え!?上里の今の当主様って、俺とあんまり歳が変わらない気が……)

 

 

「あなたのことは、優希さんから聞いています。とても頼りになる方だと。」

 

 

「優希から!?……はっ!そうか、優希も七家の子孫の一人だもんな……」

 

 

「それは、あなたも似たようなものですよ?あなたは、上里の血筋の一人なのですから」

 あっけからんと言う彼女は、メガロポリスな胸を持ち、綺麗な黒髪で毛先はメッシュのように少しだけ金色が混じっている。顔は幼さが残りつつも柔和な笑みが似合う年上の女性に見える。

 だが、それでもパッと見は同世代か一個上位にしか見えない。

 

 

「そう言えば、まだ名乗っていませんでしたね。上里陽奈(うえさとはるな)といいます、歳は海斗君と同じ一三です。気軽にハルナとお呼び下さい!」

 何とも明るい人だ、多分同じ学校に居たら必ず友達になれるタイプだ。

 その明るさも、今の状況がなければ最高なのだが。

 

 

「あなたたちは下がっていいですよ?」

 

 

「ですが、陽奈様……」

 

 

「私の言葉が聞こえなかったんですか?」

 意識を向けられていない海斗でさえも、背中に冷や汗が流れる。

(これが、一三歳で上里家をまとめ上げている人か……。ヤバイ、変な汗かいてる!)

 

 

 少しして、神官たちが去った後ようやく話が始まった。

 

 

「あなたを呼んだ理由は、私が授かった大切な神託を伝える為です」

 

 

「分かってます、それでハ、ハルナさん……神託というのは……?」

 

 海斗は緊張している、この神託一つで何かが変わるわけではないかもしれないが――

 恐ろしい、神樹からの神託は予言に等しい、これが外れることは先ずないだろう。

 それを十分に理解しているからこそ、海斗は緊張している。

 

 

「落ち着いて聞いてくださいね」

 

 

「はい」

 少し大げさに呼吸をして、心を落ち着ける。

 

 海斗は知る、最悪の地獄を。

「この次の戦いで六人中五人が満開」

 

 

「っ!?」

 重たすぎる真実、重たすぎる未来。でも、まだ希望はあると思った。

 そして――

 

 

「日守海斗、いえ。東郷海斗が――」

 少し間が空く、言うのを躊躇うように。

 

 

(ここで未来を知れたんだ、何とかして軌道修正すれば――)

 だが、甘い見通しは呆気なく潰えた。

 

 

()()()()

 

 この日、彼の人生は終着点を示した。

 

 死と言う、逃れようのない終着点を。

 

 




 このオリ展開が今後に関わってきます!

 では、恒例のオリキャラ紹介

名前:上里陽奈
外見:身長は150前半で、藍色の眼、顔は童顔。髪は綺麗な黒髪で毛先はメッシュのように少しだけ金色が混じっている。
誕生日:10月5日
血液型:A型
星座:天秤座
好き:優希などの七家の子供たち。
嫌い:神官
趣味:耳かき、写真撮影
特技:写真撮影


  7日には樹ちゃんの誕生日回もありますのでお楽しみに!

  来週もお楽しみに!

  誤字脱字などがありましたらご報告お願いします!

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