東郷海斗は勇者である   作:しぃ君

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第十一話「末来に向けた布石」

「この写真はー、ここで!うんうん、バッチリだー!」

 友奈の嬉しそうな声が響く中、海斗は美森と一緒にパソコンを使い勇者部のホームページを見ていた。

 

 総合アクセス数 299841

 今日のアクセス数 10532

 

 

 美森と海斗で運営しているホームページは、相も変わらずとてつもないPV数を叩き出していた。

 

 

「わぉ!今日も閲覧者数すごーい!」

 

 

「後は、子猫の写真と学校の連絡先を乗せて……こんなところかな?」

 

 

「良いと思うよ、姉貴」

 

 

「完璧!」

 海斗と友奈の称賛の声を美森が浴びる中。

 

 

「ああん!もう!ストーリーが思いつかん!」

 風は劇のシナリオ作成が上手くいかず頭を抱えていた。

 みんなが何かしら作業をする中、夏凜はドアに寄りかかり煮干しを食べていた。

 女子中学生が部室内で煮干しを食べる光景、何かとシュールなものだ。

 

 

「何食べてるの?」

 

 

「ニボシ」

 夏凜の中では日常なので、「何でそんなこと言うの?」とでも言いたげな顔をしている。

 

 

「学校でニボシを貪り食う中学生は夏凜位だな」

 話を聞いてたのか、海斗も会話に入って来る。

 

 

「アンタも、学校で柿ピー食べてんじゃない」

 

 

「イイんだよ、柿ピーは」

 

 

「それなら、ニボシは健康に良いのよ」

 そんな会話をしていると、風が悪戯を思いついた子供のような顔をし始める。

 

 

「じゃあ、これから夏凜のことにぼっし―って呼ぶわね!」

 

 

「ゆるキャラに居そうなあだ名付けるなー!」

 この通り、今日も勇者部は平和である。

 

 

「そう言えば、にぼっしーちゃん……」

 

 

「待って、そのあだ名定着させる気?」

 

 

「それより飼い主探しのポスターは?」

 友奈にも弄れれる夏凜を若干スル―して、美森が夏凜に任せていたポスターがどうなったかを聞く。

 その問いに、夏凜は得意げな顔をして答える。

 

 

「そんなのもう作ってあるわ!」

 そう言って夏凛が出したポスターをみんなが見る。

 「イイ出来だ」、みんながそう思った。

 この絵さえなければ……

 

 

「えっと……妖怪?」

 

 

「猫よー!」

 絵心が無くてももう少しマシに見えるだろうと思える絵の出来栄えだった。

 

 

 その時、小さく誰かのため息が聞こえた。

 

 

「はぁ~」

 

 

「樹?」

 

 

「な、何?」

 どうやら樹のようだ。愛用のタロットカードを見つめて少し苦い顔をしている。

 

 

「どうしたの?ため息なんかついて?」

 

 

「あ、うん。あのね、もうすぐ音楽で歌のテストがあってね。上手く歌えるか占ってたんだけど……」

 手に持っているカードは、「死神の正位置」だ。

 

 

 

「死神の正位置、意味は破滅・終局……」

 風は少し悩んだと思ったら、すぐさま樹をフォローした。

 

 

「当たるも八卦当たらぬも八卦って言うし、気にすることないでしょ」

 

 

「そうだよ、こういうのってまた占ったら全く違う結果がでるもんだよ!」

 友奈も加勢してフォローに加わる。

 だが――

 

 

 三回やっても結果は変わらなかった。

 

 

「だ、大丈夫だ樹ちゃん!フォーカード、これはいい役だ!」

 

 

「死神のフォーカード……」

 

 

「はっ!?」

 海斗の渾身のフォローも虚しく、樹の雰囲気は更に暗いものに。

 

 

 結局、

「アタシたち勇者部は、困ってる人を助ける。もちろんそれは、部員だって同じよ」

 風によって部活動として、樹の歌の試験の為に手助けをすることになった。

 

 

「歌が上手くなる方法か~」

 友奈が真剣に考える中、美森は全力でボケに回る。

 

 

「歌声でアルファ波を出せるようになれば、勝ったも同然ね」

 決してふざけている訳じゃない、これがデフォルトなのだ。

 

 

「アルファ波……?」

 

 

「良い音楽や歌と言うのは、大抵アルファ波で説明がつくの!」

 変な手の動きも交えつつ説明する美森。

 

 

「そ、そうなんですか!」

 

 

「なわけないでしょ!」

 

 

「なわけないだろ!」

 そこに、海斗と夏凜によるダブルツッコミが飛ぶ。

 

 

「樹、一人で歌うのは上手いのにね。人前で歌うのは緊張するってだけじゃないかな?」

 姉からの何ともありそうな意見を貰う。

 

 

「だったら!習うより慣れろだろ」

 左手を盆の様にして右手を握って置く動作をする、「閃いた!」と言わんばかりの様子だ。

 

  -----------

 

 カラオケや『MANEKI』にて、

 

 

 

「みんな~、聞いてくれてありがとう!」

 風の熱唱が終わり席に着く。

 風の前に海斗も歌っている。

 因みに曲名は「君にできるなにか」である、ちなみに点数は九十七点という高得点をマークしていた。

 

 

 

 

「お姉ちゃん上手!」

 

 

「へへ!ありがと」

 姉妹のやり取りを見守る中、海斗に電話が入る。

 

 

「ワリィ、電話だわ」

 みんなに断りを入れて外に出る。

 

 

『もしもし、日守です』

 掛かって来たのは大赦用の電話だったので「日守」の名を使って電話に出る。

 

 

『私です』

 短い言葉で返事が返ってくる。

 感情を出さないまるでロボットのような話し方をしているこの声の主は、海斗の元先生であり大赦に中で二人しかいない海斗に頼み事を聞いて貰える人物。

 

 

『何かありましたか?安芸先生』

 安芸、それが彼女の名前だ。

 

 

『最悪の事態を想定せよとのことです、くれぐれも油断なきように』

 

 

『分かりました……スイマセン、この後会えますか?』

 少しの間、間が開く。

 

 

 返答に困っているらしい。

『分かりました、今いる場所に車で向かいますのでしばしの間お待ちを」

 了承と受け取っていい言葉が聞こえ安堵した。

 

 

『お願いします、それじゃあ……』

 プツリと電話が切れると、みんなに先に帰ることを伝えるために中に戻る。

 扉の前には夏凛が居た。

 

 

「今のが、アンタの言う安芸先生ね……」

 

 

「そうだよ、どうした?何か気になることでもあったか?」

 夏凜が海斗に詰め寄る。

 

 

「アンタ、何するつもり?」

 

 

「別に~、ただの相談事だよ」

 「違法アップデートのだけどな」と最後に呟いた。

 その不穏な言葉を抜きにしても、まだ話がある。

 

 

「樹が頑張っているのに帰るの?それってどうかと思うわよ?」

 

 

「アイツらを死なせない為に行くんだよ……良かったは、夏凜もそんなこと言うようになったんだな」

 

 

「べ、別に、そういうわけじゃあ」

 夏凛が照れてる間に、ドアを開けて中に入る。

 

 

「海斗遅かったわね?友奈ちゃんと夏凜ちゃんのデュエット凄かったのよ」

 

 

「そうだったのか~、それは聞きたかったな」

 美森の言葉に驚きつつも、海斗は手短に帰宅することを伝える。

 

 

「ゴメン、みんな。用事で先に帰らなくちゃいけなくなったから先に帰るね、樹ちゃんは歌の練習頑張ってね」

 海斗がバックを持ち帰ろうとすると、樹が海斗の袖口を引っ張った。

 

 

「あの、用事って何ですか?」

 海斗は笑顔で答える。

 

 

「みんなが笑顔でお役目を終えられるために必要な用事……かな?」

 

 

「そう、ですか」

 

 

「大丈夫、歌のテストまで時間あるし。今日出来なかった分は明日にでも付き合うからさ」

 海斗は昔、母にされたように樹の頭を撫でる。

 優しく、けど強く、壊れないように。

 

 

「は、恥ずかしいですよ~!」

 

 

「ゴメンゴメン!つい、ね」

 最近は、海斗も素の自分を出すようになってきた。

 と言うより、元の自分に戻りつつあるのだ、あと何か一つ切っ掛けがあれば戻れるだろう。

 

 

「海斗、あまり女の子にそういうことはダメよ。もっとデリカシーを持って行動しなくちゃ」

 

 

「了解、多分帰るのは少し遅くなるかもしれないから、そこら辺はよろしくね姉貴」

 海斗は美森にそう言い残すと足早に部屋を出て行った。

 

 

「ねぇ、東郷。アイツに弟か妹いたとかって聞いてる?」

 

 

「海斗に兄妹ですか?いいえ、義姉()位しかいないはずですけど。それがどうか?」

 風が首を傾げて、美森の質問に答える。

 

 

「何て言うかさ、撫でる時の手つきが慣れてたように見えたのよね。まぁ、気の所為かもしんないけど」

 風の言葉で何か思い出せそうなにった美森だが、何故か霞がかったように記憶が曖昧だ。

 「これも失った記憶の中に答えがあるのだろうか?」、そう考えたが深く考えすぎるのは良くないと思考を切り替えた。

 

 その後、美森が歌ってる時にみんなが立って敬礼してるのに夏凜が驚いたり、牛鬼がみんなのお菓子を食べちゃったりと色々あったが、美森は心の底から楽しむことが出来てないような気がした。

 

  -----------

 

「それで、要件は何ですか?」

 

 

「嫌ですね、恩師に会うのに理由が必要ですか?」

 海斗の発言にまたも押し黙る安芸、この二人は教師と生徒と言う関係から上司と部下のような関係になっている。

 もちろん、上司は海斗だが。

 立場が逆転してるように見えるが、実際には変わっていない。

 海斗は今でも安芸のことを「安芸先生」と呼んでいる。

 安芸は「海斗様」と呼んでいるが。

 

 

「まぁ、話はそんなに長くないですよ……精霊降ろし実装の許可を下さい」

 

 

「……何とも古い所から情報を持ってきましたね、ですがそれは許可しかねます。それに、私の独断で許可するようなことは出来ません」

 機械のような無機質な声に僅かに怒気が混ざる、少し怒っているのだろう。

 それでも、海斗は引かない。

 

 

「実装の準備は済んでます、後は許可さえ貰えれば」

 これまでの、違法にも近いアップデートは春信にお願いして組み込んでもらっていた。

 

 

 春信は、勇者システムにバグが発生しないレベルの物だったので許してくれていたが、今回は訳が違う。

 システム上の問題はない、何せ西暦時代の初代勇者たちは全員これを使っていたのだから。

 海斗はそのことを、大赦が大社を名乗っていたころの機密書類から偶然発見した。

 システム的に凍結されてるだけで、システム内には残っている。

 海斗はそこのプロテクトを突破し、プログラムを発見した。

 そこからは改良を加えて、負担を出来るだけカットできるように細工した。

 

 

 だが、負担が減らせたのは精神面だけだ肉体面の負担は一切変わってない、それどころか精神面の負担を肉体面に押し付けているだけでプラスマイナスで言えばプラマイ零なのだ。

 こんな欠陥だらけのシステムが安芸から許可など貰えるわけ訳はない。

 だから、少しだけ嫌な作戦を考えた。

 

 

「安芸先生、また前みたいな結果にしたくないんです!結界の外の世界(真実)を知りました、だからこそ精霊降ろしが必要なんです。あれなら体の機能の損失はないでしょう?」

 

 

「……ですが……いいのですか?精霊降ろしを行使している間はバリアは張られません、なぜなら自分の持ち精霊を体に直接宿してるのですから。下手を打てば死んでしまうのですよ?」

 

 

「それでも構いません、効率は悪いですが体の機能の損失が無ければ俺一人で戦っていてもバレませんから」

 海斗の覚悟の籠った言葉を聞き、安芸も諦めがついたように息を吐く。

 

 

「分かりました、こちらでも準備を進めておきます。ちなみに今の会話は録音してありますので、それを散華後のあなたに聞かせるということでいいかしら?」

 

 

「ありがとうございます、手際が良くて助かります」

 最後の方は昔の口調に戻っていた、海斗の心はそれだけで何だか嬉しくてハシャイでしまう。

 

 

「では、私はこれで……ご武運を」

 帰り際に一言言って去ってしまう。

 

 

 時は着々と進む、(勇者)は成長し続けなければいけない怪物(バーテックス)に殺されない為に。

 

 




 何だかオリジナルな話が多くてすみません。
 まぁ、二次創作何でそこら辺は許してください。
 海斗君の視点にそって作っていますのでアニメの話は中々にカットしてるかもしれません。
 もし、私の作品から結城友奈は勇者であるを知った方はぜひアニメの方をご視聴下さい。

 それと、もうすぐで五千UAに届きそうなので記念としてこの作品内で短編を書きたいと思っていますので、何かリクエストなどあったら活動報告の方にリクエスト箱を作りますのでよろしくお願いします。

 来週もお楽しみに!

 誤字脱字などがありましたらご報告お願いします!
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