東郷海斗は勇者である   作:しぃ君

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第十二話「その時、終わりの(満開)がした」

 放課後の部室にて、

「この大量のサプリは何だ?」

 夏凜がテーブルの上に大量のサプリ等を持ってきていた。

 

 

「何かたくさんある~」

 海斗や友奈からしたら、何故かいきなりテーブルの上に置いてあったので驚くのは当たり前だ。

 

 

「そう!喉に良い食べ物とサプリよ。マグネシウムやリンゴ酢は肺に良いから声が出やすくなる、ビタミンは血行を良くして喉の荒れを防ぐ、コエンザイムは喉の筋肉の活動を助け、オリーブオイルと蜂蜜も喉に良い」

 

 

「詳しい……」

 

 

「流石です!」

 

 

「夏凜ちゃんは健康食品の女王だね!」

 

 

「夏凜は健康の為なら死んでも良いって言いそうなタイプね」

 何やかんやで、夏凜も樹の為に頑張ってくれたのだろう。

 全くもってお人好しである。

 

 

「言わないわよ、そんなこと。さぁ、樹、これ全種類飲んでみて。グイッと!」

 

 

「へっ!?ぜ、全種類!」

 

 

「多すぎだろそれは、夏凜と違って樹ちゃんは初心者なんだぞ。それに、この量は流石の夏凜でも無理だろ」

 

 

「無理ですって!」

 海斗の言葉に反応して火が付いたのか、危ないことを言い始めた。

 

 

「良いわよ、お手本を見せて上げるわ!」

 火のついた夏凜を止められるものは居らず、そのまま持ってきた物を片っ端飲み始めた。

 絶対に用量を守っていない服用の仕方に呆れる者が一名。

 それ以外の部員たちは「オー!」と言って感心した様子を見せている。

 だが――

 

 

「ど、どう」

 全部飲み終わった夏凜は段々と顔が青ざめていく。

 

 

「うう~~!」

 言葉にならない声を残して手洗い場に走っていった。

 

 

「夏凜ちゃん!大丈夫ー!」

 友奈が心配そうに叫んだが、当の夏凜は気付いていないのか振り向かないまま去っていった。

 

 

 その後、帰って来た夏凜が言った言葉は、

 

 

「樹はまだ初心者(ビギナー)だし、サプリは一つか二つで十分よ!」

 

 

 そう笑顔で言っていた。

 くれぐれも普通の人間が真似してはいけない、訓練して飲み慣れている夏凜だから手洗い場に行くだけで済んだのだ。

 最悪の場合、樹はテストの日を病院で迎えることになる。

 

 

「――――――」

 少しサプリを飲んで歌を歌うやはりと言うべきか、樹の声は緊張の所為か震えてしまいあまり上手く歌えていない。

 

 

「やっぱり、緊張するのがいけないんだから。喉よりリラックスの問題じゃない?」

 風の的確な意見が冴える、その通りである。

(もう少し、何かできればいいんだけどな)

 

 

「それもそうね、次は緊張を和らげるサプリメントを持ってくるわ」

 

 

「やっぱり、サプリなんですね」

 残りの時間も歌の練習をしたが、中々上達はせず一日は終わってしまった。

 

  -----------

 

 時が進むのは早く、樹の歌のテストまで数日を切ってしまっていた。

 今日は部活に居る海斗、いつもなら個人の依頼で部を開けることが多々ある。

 今部室に居るのは、海斗と友奈だけだ。

 

 

「今日は個人依頼来てないんだね」

 

 

「まぁな、最近は樹ちゃんの為に家で出来る依頼しか受けてないんだ。そのせいで、柳橋に薄情者呼ばわりされたよ。全く」

 怒った風に言ってるが、その実凄く嬉しそうな顔をしている。

 

 

「そうだ!海斗君、これ書いて欲しいんだけど」

 友奈から渡されたのは一枚の紙。

 

 

「なるほど、この紙に応援メッセージを書くってことだな。任せとけ!」

 友奈から紙を受け取り素早く文字を書く。

 書く内容は、勇者部五箇条の一つ「なせば大抵なんとかなる」と「自信もって行こう!」だ。

 

 

「海斗君らしいね!」

 

 

「そうか?まぁいいや……上手くいくとイイな」

 二人の部活はすぐに終わり、樹が来たのだが。

 それまでは、二人の間にはぬるま湯のような空間が広がっていた。

 

  -----------

 

 あの手紙のお陰なのか、樹は無事に合格を果たしたらしい。

 そんな話を聞いた放課後、海斗と樹は二人屋上に来ていた。

 もうそろそろ下校時間、赤い夕焼けが二人を照らす。

 

 

「海斗先輩、手紙のやつありがとうございます!」

 

 

「それは、もう聞いたよ。それにあのテストを合格できたのは樹ちゃんの実力だ、君自身が頑張ったからこその結果じゃないか」

 海斗は自分たちのお陰だとは思わない。

 

 

 手紙程度では人間が格段に成長するなど有り得ない。

 彼女には元々力があったのだ、それを十全に発揮できていなかっただけ。

 今回はあくまで緊張と言う枷を取って上げる手伝いをしたにすぎないのである。

 

 

「それでも、ありがとうございます!後……ですね、夢が出来たんです!」

 恥ずかしそうに言う彼女に自分まで恥ずかしくなりそうになる海斗。

 

 

「夢って言うのは何なのかな?言いたくなかったら別に良いんだけどさ」

 

 

「か、歌手になることです!私……いつもお姉ちゃんの背中に隠れてました。でも、もう隠れてるだけは嫌なんです。だからお姉ちゃんの隣に立てるような立派な妹に成るために、歌手になりたいんです!」

 まだ少し恥ずかしさが抜けてないのか、顔が赤いがそれでもはっきりと胸を張って夢を語っていた。

 

 

「そっか、なれるといいね歌手に。もしなれたらファン二号にしてくれる?」

 

 

「二号?一号じゃないんですか?」

 

 

「だって一号は風先輩でしょ?だったら二号だよ、樹ちゃんが歌手になるの待ってるから」

 

 

「は、はい頑張ります!それで……もし私が歌手になったらもう一度、頭を撫でて貰っていいですか?」

(上目遣いはズルいでしょ、こんなん断れないじゃん。断るつもりなんてないけど)

 海斗はゆっくりと手を上げて、優しく樹の頭を撫でた。

 

 

「やって欲しくなったらいつでも言いな、いつでもやってあげるから」

 

 

「ありがとうございます!でも……癖になってしまいそうなので、控えめにします」

 こんな当たり前の日常は終わらないと思っていた。

 海斗は分かっている、いつか終わることだと。

 でも、終わって欲しくなかった。

 

 

 終焉が音を立てて近づいていた。

 

  -----------

 

 樹のテストから間もなく、樹海化の発生。

「残り七体、全部来てんじゃないのこれ……」

 

 

「総攻撃か、最悪の襲撃パターンだな」

 

 

「やりがいあり過ぎて、サプリも増し増しね」

 「お前は何時でも常人より、サプリ増し増しだろ!」とツッコミたい気持ちを、海斗は静かに押し込めた。

 

 

「樹もキメとく?」

 

 

「その表現はちょっと……」

 

 

「言い方を考えろよ!覚❍い剤やってる奴みたいな言い方だぞ!」

 結局ツッコンでしまった。

 ちょっとした寸劇をしている海斗たちに、友奈が素朴な疑問を投げかけた。

 

 

「あれ、何ですぐ攻めてこないんだろう?」

 

 

「さぁ?どの道、神樹様の加護が届かない壁の外に出ては行けないって教えがある以上、私たちからは攻め込めないけどね」

 本当は違う、出て行けない理由はもっと他にある。

 それを、彼女たちは知らないのだ。

 ある一人を除いては……

 

 

「敵さん、壁ギリギリの位置から攻めてくるみたい。決戦ね、皆もそろそろ準備を」

 風の言葉を聞いた樹が緊張しているのか顔が強張る。

 そんな顔をしていた樹に友奈が悪戯をした。

 

 

「あははははは!何ですか友奈さん」

 くすぐるというのは、案外人の緊張や心配と言った感情を吹き飛ばしてくれる。

 それを友奈がやると、更に効果が上がる気がするのは海斗だけではないだろう。

 

 

「緊張しなくて大丈夫!みんないるんだから!」

 

 

「はい!」

 友奈のお陰で緊張は吹っ飛んだのか、樹の気持ちのいい声が響いた。

 

 

「それじゃあ!勇者部一同変身!」

 

 

「「「「「はい!」」」」」

(みんなにとっては、これが最後の変身になる。……そうであって欲しい)

 海斗は複雑な感情を抱きながら、夕顔の花が写るボタンをタップする。

 

 

 数瞬の間に変身は終わり、いつもの勇者装束に着替え終わる。

 夕顔の花言葉は「はかない恋」、「夜」、「夜の思い出」、「魅惑の人」、「罪」、「罪深い人」、「逆境を克服する力」。

 彼は「はかない恋」をしている、彼は「夜の思い出」がある。

 彼は「魅惑の人」でもあり、彼は「罪」を作り「罪深い人」になろうとしている。

 そして彼は「逆境を克服する力」を持っている。

 

 

 本当に神樹は人のことを良く見ている。

 他の誰が見ても「似合ってる」程度にしか思わない。

 だが、彼の場合は違う、最初から知っていてようやく本当の意味に気付いた。

(ホント、つくづく合ってるな夕顔(こいつ)は……)

 

 

「敵ながら圧巻ですね」

 

 

 一体一体だけでも迫力があるのに、今回は七体も出て来た。

 流石に、前までとは比べもものにならない。

 

 

「でもさ、こいつら殲滅すれば戦いは終わったようなもんでしょ」

 「それは違う」、そう言いたいが言えない。

 大赦だからではない、言いたくないのだ。

 海斗にしてみればこれから自分が背負うことなのだから。

 勇者部は優しいからきっと助けてくれる、それでも海斗は話す気にはなれなかった。

 

 

「ここは、あれいっときましょう」

 

 

「あれ?()()?」

 風がそう言うと、夏凛以外の全員が肩を組み円形に並ぶ

 

 

「円陣?それ必要?」

 

 

「決戦には気合が必要なんでしょ~?」

 風の言葉に若干戸惑う夏凜、それも友奈によって絆される。

 

 

「夏凛ちゃん!」

 

 

「しょうがないわね……」

 少し顔を赤くしながら、渋々と言った感じで円に入る。

 

 

「アンタたち、勝ったら好きな物奢ってあげるから。絶対死ぬんじゃないわよ!」

 

 

「よーし!美味しい物いっぱい食べよっと、肉ぶっかけうどんとか!」

 

 

「言われなくても殲滅してやるわ」

 

 

「わ、私も、叶えたい夢があるから」

 

 

「頑張って、みんなを、国を護りましょう!」

 

 

「俺だって、まだやりたいことがいっぱいある!」

 みんながみんな、同じ思いがあるわけじゃない。

 だが、心の方向はしっかり未来に向いていた。

 

 

「よーし‼勇者部ファイトー!」

 

 

「「「「「「おおー!」」」」」」

 声と心の足並みを揃えて、敵を向かい討つ。

 

  -----------

 

 最初は順調だった、アリエス・バーテックスの高速自転する御霊を友奈と東郷が連携して破壊。

 問題はその後だった。

 頭上の鐘の音で攻撃するタウラス・バーテックスに翻弄される。

 

 

「くっ!動けねぇ……」

 

 

「これ位勇者なら!」

 

 

「何よこの気持ち悪い音!」

 タウラスの音の攻撃により、前衛五人の動きが止まってしまう。

 

 

「あのベルか!」

 美森は気付くものの、自分の背後に迫って来たピスケス・バーテックスに援護の邪魔をされてしまう。

 

 

「狙撃が……」

 美森の援護は期待できない状況に追い込まれる。

 

 

「このままじゃ……」

 

 

「不味い……」

 五人が動きを封じられてる中、樹が動き出す。

 

 

「音は、音はみんなを幸せにするもの。こんな音……こんな音はーー‼‼」

 樹のワイヤーによるベルの拘束、そのお陰で生理的嫌悪感を生み出す音が消える。

 

 

「樹!」

 樹の行動を見た風は、大好きな妹のことを抱きしめたくなるがその気持ちを抑え跳躍する。

 

 

「まずは、お前らー!」

 武器である大剣を、高層ビルも圧倒するような大きさにして、後ろに居たライブラ・バーテックスとアクエリアス・バーテックスを横一線に斬る。

 

 

「お姉ちゃん!」

 

 

「頼りになります!」

 

 

「ナイスです風先輩!」

 後輩と妹たちの称賛の声を聞きながらも、指示を忘れない。

 

 

「よし!三体纏めて――」

 

 

「わああああ!な、何!?」

 

 

「樹ちゃん」

 先程まで大人しくなっていたタウラスが動き出した、樹のワイヤーをものともせず力づくで引っ張って行く。

 

 

「樹!ワイヤー解いて!」

 

 

 風の助言により、樹が引っ張られて行くことは阻止できた。

 だが、少し様子がオカシイ。

 

 

「こんの!」

 

 

「待って、様子がオカシイ!」

 追い掛けようとした友奈を夏凜が止める。

 夏凜も気付いたのだろう、何故かさっきまで居た三体のバーテックスが後退し始めたのだ。

 

 

「後退……?」

 風も不思議に思ったのか、三体を後ろに下がらせてしまう。

 

 

 そこには、

 

 

「レオ・バーテックス……」

 レオが太陽にも似た球体に変わっていく。

 余にも大きい、先程の()()()()()()()()()()()()()()()()()

 三体のバーテックスが、太陽のようなものの中に取り込まれていく。

 

  -----------

 

 一方で美森は、ピスケスの対処に追われていた。

 先程から何発も撃ち込んでいるが、致命傷になるようなものはない。

 早く済ませてみんなの援護をしたいと思っているが、中々に手応えのある感じはしない。

 何を思ったのか、ピスケスが地面の中を潜り始めた。

 

 

「潜った、今の内に援護を……」

 美森がスコープを除くと、そこには先程とは違う形に変化したレオが居た。

 

 

「あれは……合体している!」

 そして、レオの近くにいる友奈たちはと言うと。

 

 

「ちょっと、あんなの聞いた事ないわよ!」

 

 

「俺も聞いた事ない、ヤバイな。危険個体かもしれない!」

 

 

「でも、三体纏めて倒せるよ」

 

 

「ええ~!」

 三者三様の声が聞こえるが、風は全員に届くように声を出す。

 

 

「友奈の言う通り、纏めて封印開始よ!」

 全員が動き出す。

 

 

 動きしたその時、レオが円の形に小さな火球を作る。

 小さいと言っても、一つ一つが勇者の身長程あるものだ。

 それが、放たれると次々に勇者を狙い始める。

 

 

「これ、追尾すんの!」

 追尾火球、海斗が春信に貰った資料の中にそんなものはない。

 一人、また一人と堕ちていく。

 

 あれは、もう正確にはレオではない。

 星崩し、レオ・スタークラスター(星崩し)とでも呼ぶべきだろう。

 残ったのは二人、海斗と美森。

 しかし、美森も

 

 

「おのれ……」

 

 

 ライフルによる狙撃、並大抵のバーテックスだっただそれなりにダメージが入る。

 

 

 それではダメだ、並大抵程度ではスタークラスター(星崩し)の足元にも及ばない。

 美森の攻撃は、新生レオに掠り傷さえ与えられなかった。

 

 

「なっ!?効かない……」

 

 

 そして、レオの気を引いた所為で直系十メートルはあるだろう火球を喰らってしまう。

 美森の機動性は今代勇者の中で一番下だ、何せ足が動かず足代わりのリボンも機動性があるとは言い難い。

 

 

「姉貴!」

 

 

「小僧!今は戦いに集中しろ、全員死ぬぞ!」

 海斗は信長の声により、冷静な感覚を何とか取り戻す。

(満開しないと殺される!)

 いくらバリアがあると言っても、死ぬときは一瞬だ。

 運が良いのか悪いのか、すでに満開ゲージは溜まってる。

 

 

「こうなりゃやるしかねぇ!模倣満開、サツキ!」

 

 

 海斗がそう叫んだ瞬間、神樹の根から枝のようなものが伸び海斗を包む。

 そして、一輪の花が咲いた。

 大きな夕顔が咲き、その後ろにサツキが咲く。

 神官が着るような白い着物を羽織り、背後には四本のマシンアームが現れる。

 上にある両手が巨大な火縄銃を持ち、下にある両手が刀を持つ。

 

 

 本来、満開は固有のものであり、一人一人の個性を生かしたものになる。

 だが、海斗は男の勇者。

 それもあってか彼には固有の満開は存在せず、誰かの満開を模倣(コピー)する模倣満開と言うものが備わっている。

 しかし、模倣は模倣、扱いが難しく常人には扱うことなど出来ない。

 けれど、海斗は初見でそれをやって見せた。

 

 

「みんなを傷つけた分、しっかり返させてもらうぞ!」

 海斗の怒涛の攻撃が始まる。

 満開によって得た空中浮遊の能力で火球を避け、時には刀で叩き斬る。

 近づいたら、刀による間髪入れない連撃と火縄銃による銃撃で火球を生成させる暇を与えない。

 

 

 強かったレオと対等以上の力。

 だが、強き力は時に慢心に繋がる。

 

 

「しまった!」

 

 

 前面に集中し過ぎて、後方で生成されていた水球に気付けなかった。

 その水球は立ち上がろうとしていた風を取り込み、空に上がっていく。

 

  -----------

 

 直系五メートルはある水球が風を取り込む。

 出ようとして大剣を振り回すが、意味がない。

 でも、諦めない。

(ダメ!ダメだ、樹を置いて、皆を巻き込んでおいてさっさとくたばるなんて、出来る訳がないでしょう―‼)

 諦められない理由が幾らでもあるのだから。

 

 

 そして、大きなオザキリスが咲いた。

 海斗と同じ白い着物を羽織り、大剣を構える。

 違うのは、背中に輪っかのようなものがあるということ。

 

 

「ため込んだ力を開放する、勇者の切り札」

 風はそのまま、突っ込みレオに蹴りを喰らわせる。

 レオはその衝撃で倒されてしまう。

 

 

「これなら……いける!海斗、時間稼いでくれてありがとね」

 

 

「いえいえ、風先輩こそ無事で何よりです」

 そんな会話をしている内に、後方で朝顔が咲く。

 

 

「もう……許さない」

 

 

「東郷さん、あれって――」

 美森が満開をした、その事実が海斗の上に重くのしかかる。

 

 

 風先輩の時は実感がなかった、それより無事で良かったとしか思わなかった。

 だが、美森の満開が、させないと誓った筈の海斗の心を蝕んでいく。

 神託で分かっていたとは言え、もしかしたら変えられるのではないか?

 そう思ってしまった自分を憎んだ。

 

 

「我、敵軍ニ総攻撃ヲ実施ス!」

 

 

 美森の満開は戦艦、大量の砲台を使った面的攻撃を得意とする。

 それ以外にも、元の美森の攻撃方法故か精密な攻撃も難なくこなす。

 

 

 それもあってか、向かって来たピスケスを瞬殺。

 封印の儀なしで、御霊を破壊してみせた。

 

 

「この程度の敵なら、封印の必要もないみたいね」

 

 

 攻めて来たバーテックスは七体、レオで四体分、ピスケスとアリエスで二体。

 ()()()()()なのだ。

 

 

「風先輩、レオをお願いします!ジェミニ・バーテックスが神樹様の方に!」

 

 

「分かったわ、アンタは早く行きなさい」

 美森が迎撃しているが、ジェミニの特徴は早さと小ささにある。

 小さいということは、美森のような戦艦型の場合大きすぎる為迎撃がし辛いのだ。

(クソ!間に合わないか……)

 そう考えた時、目の前に鳴子百合が咲いた。

 

 

「い、樹ちゃん!」

 

 

「私たちの日常を壊させない」

 樹の背後の輪っかから、武器であるワイヤーが比喩ではなく無数に飛び出す。

 

 

「そっちに行くなーー‼‼」

 美森と同じ圧倒的とも言える、面制圧攻撃。

 ものの数秒で美森が手間取っていた相手を捕まえてしまった。

 

 

「お仕置き!」

 その言葉と共に、ジェミニがワイヤーによって細切れにされる。

 出て来た御霊を破壊したのも束の間。

 

 

 レオがその名に相応しく、星をも崩しかねない巨大な火球を作り始める。

 

 

「何?このヤバそうな元気っぽい球?」

 

 

「いけない!」

 

 

「風先輩!」

 

 

「お姉ちゃん!」

 満開中の為、頑張れば追いつけないこともない。

 その思考は、風の一言で掻き消された。

 

 

「勇者部一同!封印開始!私がこいつの相手してる内に早く!」

 風が大剣を使い火球を受け止める、だがその強さはまさに格が違う。

 風も後数分もしたら押し込まれてしまうだろう。

 その前までに決着を付けなければいけない。

 

 

「うん!」

 

 

「分かりました!」

 

 

「了解!」

 

 

「何とか踏ん張って下さいよ!」

 

 

「私にも良いとこ残しておきなさいよね!」

 五人が封印の儀を開始する。

 

 

 レオもこちらの作戦に気付いたのか、火球を爆発させ風の満開を散らした。

 

 

「風先輩」

 

 

「お姉ちゃん!」

 

 

「そいつを、そいつを倒せ―‼」

 封印の儀は成功したが……

 

 

「嘘だろ……」

 

 

「何から何まで規格外過ぎるわ」

 

 

「何より、あの御霊出ている場所は宇宙……」

 

 

「大きす……過ぎるよ。あんなのどうやって……」

 

 

 あまりにも壮大過ぎる、全員が呆然とする中。

 

 

「大丈夫!御霊なんだから、今までと同じようにすればいいんだよ。どんなに敵が大きくたって、あきらめるもんか。勇者ってそう言うものだよね」

(ホント、お前には助けられてばっかだな)

 

 

「その通りだ友奈!諦めんな!」

 海斗の言葉もあってか、みんなの士気が戻り始める。

 

 

「姉貴、俺の残りの満開の力を渡す。それで何とか持つはずだ、後は頼んだ」

 海斗は美森の胸にある朝顔の形をした満開ゲージに、自分の右手の手の平にある満開ゲージをかざす。

 ゲージに残ってた残量が全部、美森のゲージに送られる。

 

 

 送り終わった瞬間、体を信じられない程の虚脱感と睡魔が襲う。

 海斗は、後のことを仲間に託した。

(出来るなら、みんなの欠損する箇所は日常生活に支障が出ないところが良いな)

 出来る事なら、そう思った彼の願いは誰も聞いてはいなかった。

 

  -----------

 

 目が覚めると見知らぬ天井が見える。

 ここが何処なのか分からない、と言うより()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 急いでベットの近くを漁る、するとテーブルの上にスマホが置いてあった。

 スマホのカバーには付箋が貼られている。

 書かれていた内容は「写真の記憶と言う名前のフォルダを見ろ」その一言だけ。

 

 

 過去の海斗が書いたものだ、春信に今回の戦いが終わったらこの付箋が貼ってあるスマホを病院に届けて欲しいと頼んでいた。

 そのスマホは、海斗が書いたWordで書いた日記のデータや昔の写真が入っている。

 と言っても、今の海斗には分からないが。

 

 

「記憶……記憶……あった!」

 

 

 急いで読み始める、自分の記憶はないのに何故かそれを美森たちに知られるのは不味いというこは覚えていた。

 

 

 Wordで書かれた文書の中には、子供の頃から今に至るまでの話、知り合いの名前の呼び方から接し方。

 事細かに書かれている、そして今後にある自分のお役目についても。

 

 

「よしよし、何となく俺っていう奴の人となりは分かってきた」

 そんな時、人が入って来た。

 

 

「海斗、来たわよ。あら、もう起きてたのね大丈夫だった?」

 

 

「か、母さん、うん全然平気だよ!ほら、こんなに動けるし」

 

 

「そう、ならよかったわ。美森ちゃんの所に行くけど、海斗も来る?」

 

 

「え!?部屋から出て良いの?」

 「起きて間もないのだが、外に出るのはいいのだろうか」、そんな考えもあったが海斗はそれよりみんなの無事を確認したかった。

 

 

「もちろん、どうせ起きてても暇になっちゃうかもしれないし。外に出てお友達に会えた方が良いでしょ?」

 

 

「それもそうだね、じゃあ付いてくよ」

 母である東郷美冬(みふゆ)は知っている。

 記憶を失ってない海斗だったら気付けただろう、振り返った美冬の瞳から涙が零れ落ちたことに。

 

 

 海斗は知る由もない、日常がもう壊れかけているということを。

 




 急展開過ぎますが、今回のお話は終わりです

 次回もお楽しみに!

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