東郷海斗は勇者である   作:しぃ君

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 五千UA記念作品です!


閑話「勉強会とお風呂タイム」

 期末テストが迫って来た今日この頃、部活動は中止になり日守の家で勉強会が開かれていた。

 日守の家は東郷の家の隣にある、所有者は一様海斗となっているが諸々のことは東郷家の人たちがやっている。

 

 

「にしても、広いわね。東郷の家と大差ないわよ」

 

 

「そうね、海斗~アンタ案外良い家持ってんじゃない。何でこっちで暮らさないの?」

 風の言葉に海斗が一瞬言葉を詰まらせる、だが何でもないように笑って返す。

 

 

「いや、こんな大きい家に一人はキツイですよ。それに、今の俺は日守じゃなくて東郷ですからね。日守に戻る日が来たら、帰って来ますよ」

 

 

「ま、そうよね」

 

 

「でも、海斗先輩。あんまり来てない割には凄く綺麗ですけど、定期的にお掃除なさってるんですか?」

 今度は樹から質問が飛んでくる、さっきから質問の嵐だ。

 

 

「大赦の方からお手伝いさんが来てくれて偶にやってるよ、今回は昨日の内に姉貴と友奈に手伝って貰って掃除したんだ」

 

 

「そうなんですね、呼んでくれればお手伝いに来ましたよ?」

 

 

「大丈夫だよ、別に。昨日は少し掃除して買い物しただけだから」

 みんなからの質問の嵐を避けきり、リビングに入る。

 

 

 懐かしい匂いがした、まだ家族が三人だったころにここで両親と過ごした記憶がフラッシュバックする。

 なんてことのない日常だった、きっと終わらないと信じていた。

 これからもこの二人に愛されて育っていくんだと海斗は疑わなかった。

 海斗は知っている、日常と言うものは簡単に壊れてしまうということを。

 

 

「海斗、大丈夫かしら?」

 

 

「っ!?……ああ、大丈夫だよ。ほらほら、早く座ってみんな。今お茶出すから」

 みんなを座らせた後、昨日の内に冷蔵庫に入れて置いた麦茶とビニール袋から紙コップを取り出す。

 

 

「紙コップしかないけど、我慢してね」

 

 

「別に大丈夫だよ海斗君、気なんて遣わなくても」

 

 

「そうよ、別に昨日今日知り合った訳じゃないんだから」

 友奈と夏凛の考えを聞きながらも、呆れた顔をしていた。

 

 

「あのなぁ、親しき中にも礼儀ありって言うだろ。そういうとこだぞ」

 

 

「そうよ、友奈ちゃん」

 

 美森の加勢もあり、海斗の言葉に信憑性が増す。

 これが、勉強会の入りだった。

 

  -----------

 

 今日は平日と言うこともあり、放課後の五時頃から勉強会を始めた。

 最初の一時間はみんな集中していた、樹ちゃんは最年少なので質問を多くしていたし、友奈もあまり勉強が得意ではないので美森や海斗や夏凜に聞きながら勉強をする。

 二時間が過ぎた頃だろうか、友奈がうずうずし始めた。

 

 

「もうダメ~、疲れちゃったよ~」

 

 

「友奈、こんな所で躓いてたら後々苦労するぞ。今の内に覚えちゃった方が良いから頑張ろう、な?」

 

 

「でも、難しいんだもん!」

 友奈が手間取ってるのは連立方程式だ、簡単に言うと少し難しくなった筆算だと思えばいい。

 

 

「友奈、こういうのはな無理に理解しようとしなくていいんだ。何で掛けないといけないの?とか考えてたら何時まで経っても分からない」

 

 

「う、うん」

 

 

「だからな、友奈。型を覚えろ」

 

 

「か、型?」

 困惑する友奈、大抵の人がこんなこと言われたら最初は困惑する。

 でも、海斗が言いたいのは結構当たり前なことだ。

 

 

「数学はパズルだと思え、公式って言う型に問題の数をピースのようにはめていく。そうすれば簡単だ、何たって型覚えればいいんだからな」

 

 

「な、なるほど!流石海斗君、何だか急に簡単に感じてきたよ!」

 

 

「よし!その意気で頑張れ」

 海斗は友奈の問題を解決すると、自分の作業に戻っていく。

 彼は一人黙々と国語の勉強をしている、苦手ではないが一番点数が低いのが国語らしい。

 

 

「海斗は頭良い方なのね、意外だわ。てっきり脳筋で頭悪いイメージあったわ」

 

 

「おい!酷い言われようだな、そんなに頭悪くないぞ俺は!」

 折角集中して勉強出来そうだったのに、今度は夏凜に妨害されてしまう。

 そうやって、少しお喋りもしつつ時を過ごしていく。

 

 

 時計が八時を回った頃だろうか、海斗が立ち上がり台所に立つ。

「みんなご飯食べてって、昨日の内に色々終わらせといたから」

 

 

 そう言うと景夜は、炊飯器から何時の間にか炊いていたご飯をよそう。

 

 

「因みにカレーです」

 

 

「カレーね、海斗の腕が分かる良い料理ね」

 美森から強烈な視線を受けているが、海斗は気にしないようにした。

 

 

 人数分よそいテーブルに持っていく。

 

 

「海斗、何故カレーにしたの?」

 

 

「え、だって作りやすいし。それに、毎日うどんじゃかわり映えしないなかな~と思って」

 

 

「そう……今度からは和食にして欲しいわ」

 美森の呟きが怖い、海斗は久しぶりに美森に恐怖を感じた。

 

  -----------

 

 料理は大好評だった、風は三杯はおかわりしていただろう。

 

 

「今日はありがとね、海斗色々助かったわ」

 

 

「海斗先輩のお陰でテストは大丈夫そうです!」

 風と樹を見送る、海斗は「送ります」言ったが「大丈夫ヨ」と言われあえなく退散。

 夏凜は既に帰宅している。

 

 

「友奈も早く帰れよ、おばさんたち心配するだろ?」

 

 

「大丈夫だよ、今日はこっちに泊まるって言ってあるし」

(え!?今こいつ何て言った?)

 友奈の発言に驚きを隠せない海斗、美森の方は全く驚いていないのを見ると彼女には知らせていたらしい。

 

 

「姉貴は知ってたの?泊まるってこと」

 

 

「知ってたわよ、友奈ちゃんとのお泊りを楽しみにしてたわ」

(クソっ!だから友奈は鞄やらなんやら荷物が多かったわけだ)

 海斗は諦めたような顔をした後、二人と一緒に家の中に戻る。

 

 

 風呂掃除昨日の内に済ませてある、後はシャワーで少し水を流せばすぐにお湯が沸く。

 海斗はその作業をさっさと片付けてリビングに戻る。

 

 

「二人とも、お風呂の方お湯沸かしてるから、先に入ちゃって」

 

 

「ありがとうね海斗、一番風呂じゃなくていいの?」

 美森の優しさは嬉しい海斗だが、流石に中学生だ。

 男女の関係は弁えているつもりなので、潔く二人に先を譲った。

 

 

「レディファーストって言うだろ、それに二人とも男が入った後のお湯何て嫌でしょ?」

 

 

「私は別に良いのに……そうだ!海斗君も東郷さんと私と一緒に入ればいいんだよ」

(こ・い・つ・は・何・を・言・っ・て・る・ん・だ!)

 今、海斗が究極の選択を迫られている。

 

 

 友奈からしたら「小学校の時までは一緒に入っていたから大丈夫」、この考えがあるのだろう。

 だが、海斗からしたら昔から現在進行形で好きな人と最近女子らしさが出て来た幼馴染と入るのはレベルが高すぎる。

 

 

「ゆ、友奈、それは流石に不味い気がするんだけど……」

 

 

「海斗君は……嫌なの?」

 少し目を潤ませてからの上目遣い、友奈は分かっているのだこうすれば海斗は断れないと。

 

 

「ああもう!分かったよ入ればいいんだろ!姉貴もそれでいいんだよな?」

 

 

「え、ええ、大丈夫よ!」

 美森からしても、友奈の提案は予想外だったのだろう動揺して声が上ずっている。

 

 

 「先に入ってて」の一言から数分、美森の着替えを待ってるのか中々入って来ない。

 海斗は安心して体を洗っている。

 日守家のお風呂はデカい、大きさは二㎥程度で底の深さは六十㎝程になっている。

 普通の家のお風呂は長方形だが、日守家は財力があるため何故か正方形のお風呂だ。

 バスルーム自体も広いため、快適なお風呂タイムが確約されるだろう。

 今回のような事案が無ければ。

 

 

「さ、流石に、タオル位は巻いてくるよな……」

 

 

「海斗君お待たせー!」

 

 

「は、入るわよ海斗」

 海斗の目の前に写るのは一糸纏わぬ二人の少女。

 美森のことを友奈が抱えて入って来る、普通なら海斗がやらなければいけないことだが、如何せん刺激が強すぎる為NGだ。

 友奈がそっと美森のことを風呂椅子に座らせる。

 

 

「ありがとう、友奈ちゃん助かるわ」

 

 

「ううん、どういたしまして。そうだ海斗君、背中まだみたいだから洗って上げようか?」

 友奈の誘惑お断ち切りしっかりと断る。

 

 筈だった。

 

  -----------

 

(どうしてこうなった……)

 今海斗は、電車の様に縦一列に並び背中洗いっこをしていた。

 友奈が海斗の背中を洗い、海斗が美森の背中を洗う。

 終わったら向きを交代してもう一回、その後は髪洗いも待っている。

 友奈の方は大丈夫なのだ、海斗にとってはまだ安心できるレベルに収まっている。

 友奈の女の子らしい小さい手に、少しドキッとしたが何とか耐えられる。

 

 

 問題は……

(意識するな、意識するな、意識するな!)

 美森の方だ、きめ細かく透き通るように白い肌、しかもすべすべなのだ。

 海斗からしたら、手触りが心地よ過ぎて今にも鼻血が噴き出すレベルだ。

(頼む、早く終わってくれ!)

 その願いが通じたのか、

 

 

「じゃあ、交代しよっか!」

 友奈の一言に救われる。

 

 

(友奈!お前天使か!いや、最初にこれ提案してきた悪魔お前だったわ……)

 交代して友奈の背中を洗う、美森と違い少し筋肉質に感じるが、それでも赤ちゃんのようにツルツルな肌でこっちもこっちで危険性が出てくる。

 

 

「海斗、背中失礼するわよ」

 

 

「う、うん」

 友奈の手慣れた感じの手ではないが、優しさが伝わってくる手で和むことが出来た。

 

 

 それも束の間、いきなり背中の方に明らかに手ではない柔らかい感触を感じた。

 

 

「ご、ごめんなさい!海斗、重心が傾いてしまって!」

 

 

(じゃあ、もしかして。今俺の背中に当たってるのは……)

 海斗は少しだけ目線を後ろに送る、そこには顔を真っ赤に染めた美森の姿と、自分に押し付けられた年に不釣り合いなほど成長した双丘が見えた。

 海斗の思考はそこでショートし、目の前が真っ暗になった。

 

 

「えっ!?か、海斗、大丈夫!」

 

 

「海斗君!」

 二人の声は届いていない、彼の意識は既に闇の中に沈んでいた。

 

  -----------

 

 海斗が目が覚めると、目の前に美森の顔があった。

「あ、姉貴!そう言えば、風呂に入っててそれで……」

 

 

「起きたのね、あなたお風呂で上せてしまったのよ」

 

 

「そうだったんだ」

 美森の言葉に納得して、起き上がる。

 この後の展開としては、普通に少し駄弁って寝ただけなのだ。

 

 

 因みにだが、美森が「重心が傾いてしまって」と言ったが。

 美森はもう一年以上車いすなのだ、体幹が常人よりあるはずなのである。

 まぁ、言わずもがなだろう。

 勿論、美森はワザとやりました。

 

 

 二人がそのことに思い出して、悶絶するのはまた別の話。

 




 時期的には、前回の話の少し前ですね。

 次回もお楽しみに!

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