最近は何かと投稿できていますが、年内の投稿は明後日で終わります。
どうか、良いお年を。
※すいません、年内の投稿は31日が最後です
数分も歩けば美森が居る病室に着いた、彼女の部屋には友奈も居た。
「美森ちゃんに友奈ちゃんまで、元気そうでよかったわ」
「はい、元気です!」
「母さん、心配掛けてごめんなさい」
美森は申し訳なさそうな顔をして謝り、友奈は元気に返事をする。
二人らしい返答の仕方に、美冬は少し笑ってしまう。
「友奈に姉貴も元気そうでよかった、風先輩と樹ちゃんは?」
「あの二人なら、まだ検診中よ」
海斗の問いに答えたのは友奈でも美森でもなく夏凛だった。
何処からともなく現れた夏凛にたじろぐ海斗だったが、別段変わった様子のない夏凜を見て安堵の息を漏らす。
「美森ちゃんも大丈夫そうだし、私は帰るわね。後は任せたわよ海斗」
美冬はそう言い残すと、すぐに去ってしまう。
本当に顔を見に来ただけなようだ。
「それにしても、海斗部屋を出て良かったの?あなたが一番長く眠ってたのよ」
「へっ!?そうなの?」
「そうだよ、海斗君のことみんな心配してたんだよ?」
言われてみれば、犬吠埼姉妹は検診中だし、友奈は美森の部屋に居た。
夏凜は分からないが、それでも今さっき起きた感じは無いように見える。
「身体に問題はないよ、至って健康体だし。それだったら姉貴や友奈や夏凜こそ大丈夫なのか?」
海斗は遠回しに散華の影響が何処に出たか聞こうとした。
だが、虚しくもその作戦は失敗に終わる。
「私は特にないわよ、アンタたちと違って鍛えてるし」
夏凜は何故かドヤ顔で言ってくるので、海斗はスル―して友奈と美森に向き合う。
「で、二人は?」
「私も特にないよ、海斗君と同じで健康体!」
「私の方も大丈夫よ、それより海斗……一つ聞いていいかしら?」
美森が何でもない風に話を切り替えた、海斗はみんなの散華の影響が分からないことが不安なのか、美森の不自然な話の切り替えも気にならなかった。
「どうかした?」
(目に見えるものじゃないのかな?でも、あの日記の通りなら俺を含めてあと四人満開してる筈なのに……)
他の物事を考え始めて、美森たちの方に気が回せていない。
「あなたさっきから態度が変よ?何を隠してるの?」
「はっ?い、いやいや、何も隠してないよ。第一隠す事なんて……」
海斗は満開の真実である散華のことが脳裏に過った。
「何かあんのね?話しなさい、聞いてあげるから」
「海斗君?お願い全部話して」
夏凜や友奈にも疑われているらしい、海斗はつくづく嘘が下手な奴だった。
「別に何でもないって、そんな疑うなよ」
「じゃあ海斗、私の質問に答えて頂戴。昔、私たちが小さい頃にしたやくそく覚えてるかしら?」
(確か、美森ちゃんを娶るだっけ?これで合ってるはずだ)
海斗は心底感謝した、記憶補填用のフォルダを作った過去の自分に。
「確か、大きくなったら姉貴を娶るってやくそくだろ?忘れてないよ」
「そうね、合ってるわ。でも……やっぱり昔から嘘が下手ね海斗、あなたは私がこの話をすると決まって話を逸らしていたのよ?」
嵌められた、海斗は確実に美森の掌で転がされていただけだった。
「騙すなんて酷いと思うんだけど?」
「嘘をついたのはあなたでしょう?」
(クッソ、結構細かい所まで書いてあった所為で少し見逃したか)
フォルダの中には細かいところまで書いてあったのだが、如何せん細か過ぎて見逃したらしい。
何とも運が悪い、海斗からしたら一番バレたくなかった秘密は守れたがいいが、「少し面倒なことになった」と心の中で愚痴を吐いた。
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結局、大きなテレビの置いてある談話室で、みんなに記憶を失ったことを話した。
「――、こんな感じで今の所は日記で補填してる。日記を書いておいて正解だったよ」
「そうネ、まぁ良いわ。みんな一様は無事ってことで、今は楽しみましょう」
そう言う風は、左目に眼帯をしている。
断じて中二病などではない、左目の視力が落ちているらしく療養すれば治るらしい。
樹も、勇者システムの長時間使用による疲労で声がでないらしい。
海斗は先程からチラチラと樹の喉や風の左目を見ている。
(風先輩は左目で、樹ちゃんは声……か。クソが!何で声なんだよ、もっと違う場所でもよかっただろ)
海斗は一人、神樹に対して怒りを燃やしていた。
その後は、みんなでお菓子を食べながら駄弁って自分たちの病室に戻った。
帰る途中、美森の指摘で友奈に味覚が無いことが分かり、海斗は知らず知らずの内に自分に重圧を掛けていた。
みんなには、新しく端末が配られた。
その端末にはもう勇者アプリやNARUKOといったアプリは登録できない仕様になっていて、友奈が牛鬼に会えなくなるのを少し残念がっていた。
ある一人を除いては、
「はぁ、俺の新しいお役目は日守家のお役目である勇者の保護か」
勇者の保護、護衛と言ってもいい。
元々日守の家は勇者の少女たちを陰ながら護衛することや彼女たちの援助になっている。
しかし、今回のお役目は特殊で、海斗が勇者に成れることを利用して、今代の勇者の少女たちにもう戦わせないことがお役目の内容だ。
フォルダの中にあった資料の中には、バーテックスの種類や攻撃方法を書き記したものや、神樹の寿命が残り少ないと言う大赦の上層部しか知らない事実まで書いてあった。
神樹の寿命が短い所為か、今後は完成体ではなく星屑や進化体が多く出てくるらしい。
資料にはそう書いてあった。
「……どん位いんのかなぁ~、信長はどう思う?」
「俺が知るか……少ないことを祈ってろ小僧」
何やかんやで会話してくれるのが信長の優しさなのだろう、その優しさに少し甘えつつも自分の部屋に戻った。
だが、ベッドに入り休もうとした瞬間。
耳障りな音がスマホから鳴り響く。
「うっそだろ、まだ前回の戦いから一日しか経ってないぞ!」
「来るぞ小僧!構えろ!」
辺りが光に包まれる、数秒で光は消えて海斗の視界には――
今の海斗からしたら初めて見る樹海が広がっていた。
張り巡らされた巨大な神樹の根、草が生い茂っている所も見える。
「ここが樹海、何だか異世界みたいだな」
「似てるかもな、これは結界に似ている。けど、この樹海化は神樹の力を使っている。こいつにダメージが入ると神樹の方にもダメージが入るし、現実世界にも影響を及ぼす。気引き締めろ小僧」
視界の先には、目算で一万を優に超える程の数が見える。
そのどれもが、資料で見た星屑と呼ばれるものたちだが、完成型より一回り小さく御霊がない進化体も僅かに確認できた
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「あれ、ヤバくないか?」
「ヤバイな、最初から全開だ!俺を使え」
「了解!降りろ、第六天魔王・織田信長!」
海斗が精霊としての信長の名前を叫ぶ、すると先程まで隣に居たマスコットのような容姿した信長はピンク色の粒子になって消える。
そのピンク色の粒子は海斗を包み、海斗の勇者装束を少し変化させる。
いつもの勇者装束の上に信長が着ていた、「天下統一」と言う言葉の書いてある羽織を着ている。
「何かあんま変わってないな」
『しょうがねえだろ、ほら小僧敵来てるぞ』
「やっべ」
目の前に来ていた星屑を適当に蹴り飛ばす。
蹴られた星屑は内部から爆発したかのように飛び散った。
その光景はあまりにも凄惨で、SANチェックが入る予感がした。
「お前ホント強いのな」
『まあな。小僧、
「よし来た!」
海斗は自分の後ろに敵が居ないのを確認し、詠唱に入る。
「これは天下分け目の大決戦、さぁ
詠唱を一度句切り、片手に持っていた火縄銃を空中に放り投げた。
「喰らいやがれ!鉄砲十段撃ち!」
「長篠の戦い」、この戦いの中で信長は「鉄砲三段撃ち」と言う戦法を使って戦いました。
鉄砲三千丁を用意して兵に配布して絶え間なく撃ち続けると言う、余にも斬新な戦い方により勝利を納めたという。
海斗の「鉄砲十段撃ち」で使用する
桁が可笑しいが、今回のような集団戦にはうってつけだ。
事前に信長に詠唱の内容を聞かされていて正解だったと、海斗は一人安堵した。
銃弾が絶え間なく撃ち続けられる、一分もしない頃には全ての敵を倒し終わっていた。
「信長、これ強すぎない?」
『気にすんな、この技は結構疲労が溜まるから数が少ない時はやるなよ』
戦いが終わると、信長が海斗から出ていく。
ピンクの粒子から実態を象っていき、すぐに元のマスコットのような姿に戻る。
そして、次の瞬間には樹海化が解けて元の世界に戻る。
送られた場所は病院の屋上だ。
海斗も変身を解き、何故か思い出したように手を叩く。
「あっ!?まだ新しい精霊出してなかった、出てこい
海斗が呼ぶと端末から、体が神々しい炎に包まれた赤い孔雀が出てくる。。
容姿はいつもの通りマスコットチックだ。
伝承上では中国の四霊に類される霊鳥である。
稀に
「私を呼んだのは君かい、人の子」
「えっと、そうです。これからの挨拶みたいな感じて呼んだんだ、よろしく鳳凰」
「よろしく頼む人の子よ。どれ、少し体力が消耗しているな癒して見せよう」
鳳凰が自身に纏っていた火を、海斗に纏わせる。
最初は暑がっていた海斗も段々と慣れて、数分の間に体の疲れが吹っ飛んだ。
「凄い!ありがとう鳳凰、これからは世話になりそうだ」
「任せておくと良い。信長と言ったか、そちらの方もよろしく頼む」
「ああ、こちらこそな」
挨拶が済んだ所で、信長と鳳凰を端末に戻す。
屋上を後にし、ある病室に向かう。
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「かーくん来てくれてありがとう」
「どういたしまして、銀の部屋を見て来た。バリアがあるのが本当に幸運に思えるよ」
先代勇者乃木園子らの時代、精霊バリアや満開はない。
それどころか封印の儀すらない状態があった、その所為でバーテックスは追い返すことしか出来ず、倒すことなどは出来なかった。
それも、三ノ輪銀の事があり見直されて今の状態になっている。
「初めてのお役目お疲れさま~、どうだった?」
「う~ん、特にはないかな。少し疲れるけど、これで勇者部のみんなやお前が戦わなくて済むんだったらそれで良い」
これは紛れもない本心だ、日記を見てどれほど過去の自分が家族や友達や仲間を大切に思ってるか知った。
それ以前に、東郷海斗と言う人間は基本的な心の在り方は勇者のそれだ。
だからどれほど傷つこうと、それで大切な人が傷つかないならその方が善いと考えている。
「そう言うことを本気で言ってくれるかーくんのことが大好きなんよ~」
「ありがとな園子、もし何か俺に可笑しい所があったら言ってくれ。今の状態じゃ良く分かんないからさ」
大好きと言う園子の言葉に頬が緩むが、それではダメだと思い気を引き締める。
「りょ~かい!任せて欲しいんだぜ。後、偶にここに遊びに来てね」
「あいよ、分かりましたよお嬢様」
そんな軽いやり取りをしながら病室を出る。
自分の部屋に帰る途中、何か心の中にドロリとした黒い感情が湧き出てくる。
海斗はそれを特に気に留めなった。
信長は最上位に位置する精霊だ、その辺の精霊とは格が違うのだ。
海斗は知っている筈だ、精霊降ろしのデメリットは肉体的な面だけでなく、精神面にも負荷が掛かるということ。
記憶を奪われた海斗には分からない感情、憎悪や憤怒と言った不の感情のことを。
彼はまだ気付けずにいた。
次回もお楽しみに!
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