アニメ的には勇者の章スタートです!
prologue「物語は終わらない」
「春信さん、俺は何時までここに居なきゃいけないんですか?」
大赦本部のとある一室、薄暗い部屋の中で海斗が仏頂面で春信に問いかける。
「もう少しかな、そろそろ園子様が来る頃だからね」
春信は海斗の方を見ながら申し訳なそうな顔で答えた。
「……ホント、神道と呼ばれた天才は一味違いますね」
嫌味がましく言う海斗に、春信も苦笑いで対応する。
海斗が何故こんな場所に居るのか、それは少し時を遡って話す必要がある。
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二学期も半分が過ぎたある日の通学途中。
校門の前で、海斗は見知った車が一台止まっていることに気付く。
誰もが素通りしていく中、海斗・美森・友奈の三人も車の前を通り過ぎようとした瞬間。
唐突に車のドアが開き、中からクルリとターンをしながら一人の少女が飛び出した。
「じゃじゃじゃ~ん!乃木さん家の園子だよ~、驚いた~」
「え、あ、ええと、あの?」
「よっ園子……それに銀」
「流石にバレてるよな~」
もう一人、車から出てきたのは体の重心が少しズレている少女。
義手の所為ではあるが、彼女はそんなことは気にしてない様子だ。
「今日から同じクラスだよ~、よろしくね~」
「よろしくな」
ドッキリに近い二人の友人の登場に、美森は半ば固まってしまっている。
「そのっち……銀……」
「ヘイヘイわっしー、園子だよ~」
「久しぶり須美」
「そのっち、銀」
「驚いてる驚いてる」
「サプライズ大成功だな!」
二人がハイタッチをしようとした時、美森が二人に抱き着いた。
「そのっち!銀!」
感動の再会、そんなところだろう。
海斗はそっと三人から離れて校舎に向かう。
「海斗君はいいの?三人といなくて?」
「良いんだよ、今はアイツらだけで」
眼から零れ落ちそうになった涙を少し耐えて、海斗は校舎の中に入っていった。
そして放課後、
「勇者部入部希望の乃木園子だぜー!」
「同じく三ノ輪銀です!よろしくっす!」
満面の笑みで勇者部部室のドアを潜る園子とそれに続く銀。
「ええ!?乃木園子に三ノ輪銀」
「二年前大橋の方で勇者やってたんだぜ~。改めてよろしくお願いしまーす」
「色々と教えてくれるとありがたいよ」
「またそのっちや銀と勉強できるなんて」
懐かしむような視線を向ける美森に銀と園子も笑顔で答える。
「授業中に居眠りしたら注意してね~?」
「アタシも、アタシも~!」
「しないように気お付けないとダメよ、二人とも」
まるで母親のようだと思ったが、海斗は口に出すことはせず成り行きを見守った。
「なんか東郷がお母さんみたい」
「あっ!それ俺も思ってて言わないようにしてたのに」
海斗達による雑談中、樹はタロットで園子たちの運勢を占っていた。
「運命の輪……」
樹がそのカードを見て、笑みを浮かべた。
「おお~、何かカッコようさそうだな。何て意味なんだ?」
銀の問いに樹が何故か胸を張って答える。
「運命的な出会い」
「「「おお~」」」
三人の声がハモる、少し間延びした声が響く中園子が斜めうえな言葉を出す。
「私、運命の子~」
「そうなると、アタシもアタシも」
「ふ、福徳円満」
手を取り合いながら年相応な笑顔を見せる少女たちを見て、海斗も自然と笑顔になっていく。
そして、その日は自然とお開きになってみんなで一緒に放課後の寄り道に行った。
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今巷で噂の国防仮面。
その正体は御国大好き国防系芸人の、東郷美森だった。
風に捕まった東郷は部室で異端審問にかけられるように、部員に囲まれながら座っていた。
海斗はため息を吐きながらも、態々学校まで美森を迎えに来ていた。
友奈と一緒に。
友奈は国防仮面が美森だと分かっていなかったのか、その正体に心底驚いていたようだが、海斗は当然知っていたので驚くも何もなかった。
そして、訳を話し始めた。
「で?みんなに申し訳ないってどおいうこと?」
「体が元気になったら居ても立っても居られなくなって」
「何が?」
恐らく壁のことだろうと海斗は悟。
彼女は背負いがちな性格をしている為、あの件のことも自分一人の所為だと思っているのだろう。
「私が壁を壊してしまったこと。一時の感情とはいえ世界を危機に陥れてしまったのは事実で、それって許されないことだから。私これからどう償えばいいのか、だから何か罪滅ぼしが出来ないかって考えて……」
「それで国防仮面を引っ張り出してきたのか」
銀もそれなりの事情は知っているので、会話に戸惑うことはない。
「わっしー、随分極端になったねぇ」
園子がからかうように言うので、海斗の笑い声が漏れる。
「か~い~と~」
夏凜が海斗を睨むのを余所に話は続く。
「気持ちは分かるけど突っ走り過ぎよ」
「すみません」
「かっこいいなぁ国防仮面!私もなりたいなー!」
友奈のこういうノリの良さは、湿った空気を塗り替えてくれるので海斗は好きだったりする。
「実は実は私もこう見えて、国防仮面二号なんよ―‼」
「じゃじゃ!私三号になる!」
「三号は銀で四号は俺だぞ!」
「そんなに多いと、何か日曜朝の戦隊もの見たいな感じになってくるな」
友奈に続いて海斗、そのツッコミに銀。
なんやかんやで、銀も結構この感じに馴染んできている。
「全く、夏凜とかが真似してニボシ仮面とか現れたらどうするのよ」
「真似しないわよ!」
一連のコントを経て、少し緩くなった空気の中で友奈が言う。
「東郷さん、みんなのために頑張りたいって気持ちは私たちも同じだよ?」
「そうだよわっしー、なにかあったら私たちに頼って良いんだぜ~」
「出来るなら、俺に一番に相談してくれると助かるかな美森ちゃん」
「友奈ちゃん……そのっち……海斗も……」
「うん、三人の言う通り」
「東郷さん」
樹と夏凜も微笑みながら頷く。
「みんな……ありがとう」
その笑顔を最後に、彼女たちの記憶から東郷美森は……消滅した。
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そして、時は戻る。
東郷美森と言う少女が世界から消えた日から、ある程度日数を開いた頃。
勇者たちは今回の異変に気付いた。
誰も東郷美森の記憶がない、友奈と園子が違和感に気付きようやく思い出したのだ。
「なんで、私たちの誰も東郷の記憶がないの。こんなのまるで最初からこの世界に居なかったみたいじゃない!」
夏凜の言葉に、みんなが顔を顰める。
そして、その日は一度解散し大赦にコネクション出来るもので様子を見ようと言うことになった。
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同日の午後七時頃、大赦に園子はやって来ていた。
ある部屋を探して数分、手にはアタッシュケースを持っている。
……それは勇者専用端末が収められているもので、つい先ほど大赦の神官に出してもらったのだ。
ようやく目的の部屋についたのか、園子は立ち止まりドアをノックする。
「私だよ~、開けてくれると嬉しいな~」
「今開けますので少々お待ちを」
ドアのロックを外しているのか、重苦しい鉄の音が数秒程聞こえてきた。
だが、園子は動じる様子は一切見せず、ただドアが開くのを待つ。
「どうぞ」
ドアが開くと同時に中に入り、手と足を手錠で拘束されている海斗の元へ向かった。
「大丈夫……じゃないよね?」
「まぁな、それより端末貸してくれないか園子?」
「ダメ、今は渡したらかーくん一人で行こうとするでしょ?」
「当たり前だろ!もうお前たちのお役目は終わったんだから、これ以上お前たちに変身はさせたくない……」
海斗が叫ぶように園子に言う。
その顔には焦りと怒りが混ざったような表情が見えた。
「かーくんがそう思うように、私やゆーゆもそう思ってるってこと分かってる?」
「それは……」
海斗が押し黙ると、園子は春信の方を向き頭を下げる。
「ありがとうございます春信さん、かーくんを匿ってくれて」
「頭を下げる必要はありませんよ園子様、私がやりたくてやったことですので」
「じゃあ、私とかーくんはこれで」
「………ありがとう、春信さん」
海斗も小さくそう言って部屋を後にした。
「…………後何度、君たちに重荷を背負わせなきゃいけないんだ……」
春信の言葉を聞いた者は誰も居なかった。
これが、彼が出した最初で最後の弱音だった。
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「海斗!アンタ今までどこに居たのよ!」
「かるーく軟禁されてたんだよ、色々あってな」
海斗が手短に事情を説明していった。
「まず一つ、前回の戦いの後俺は眠ってたよな?あの時、俺の魂は神樹様の中で傷ついた部分を加護で癒してもらってたんだ」
「し、神樹様の中ぁ!?」
「そう。それでその所為か俺と神樹様の親和性が飛躍的に上がったんだよ……分かり易くすると勇者としてのレベルが跳ね上がったと思ってくれ」
「そ、それで、他に何が?」
樹が恐る恐ると言う感じで聞いてくるので、海斗もそれに答える。
(神樹様の寿命の件は……今は言わない方が良いか)
「その昔、勇者の適性が高い者を神樹様に供物として捧げるという儀式があった。それをやることで、神樹様の結界の強度を上げたりなんやりが出来るようになる。神事とも言えなくわないんだがな」
「その儀式って何よ?」
「……神樹様の根に触れて神樹様の中に入る。これがこの儀式の簡単なやり方だ、本当は体を清めたりして祝詞を唱えながらやるんだけどな」
「それが海斗とどんな関係が……あっ」
銀が答えにたどり着く、残酷な答えに。
「何となくこれから先の言葉が読めてくるだろ?今、俺の勇者適性は友奈より高い」
「で、でも、供物って私たちと同じである部分だけとか……」
友奈の考えは間違いだ。
満開は神の力の一部を借りて使うことから、供物を必要としていたが、これは違う。
「友奈……残念だけどそれは違う。身体も魂もすべて捧げる、それこそが生贄の儀だ」
「生贄の儀……」
「で、俺が今派手に動くと俺を供物にしようと考えてる連中から狙われかねないから、春信さんが匿ってくれてたんだ··········軟禁に近かったけど」
「そういうことなんよ~。ついでに補足するとかーくんはね、神樹様からパワーを貰ってるんじゃなくて天の神の父である伊邪那岐神から力を貰ってるんだぜ」
「て、天の神の父親から!?そ、それって大丈夫なの?」
風が驚愕して裏返ったような声で問いかけてくる。
「大丈夫な筈ですよ。まぁ、男の勇者が少ないのはある血筋じゃないとなれ難いからなんですよね」
「ある血筋って?」
今度は夏凜が落ち着いた様子で聞いてくる。
「初代勇者・柊景夜、みんなは聞いた事ないかもしれないけど……。柊家の初代勇者は俺と同じで男だった、伊邪那岐神から天逆鉾を授かり戦ったと言われている」
「それでね~、その代の柊家と上里家と乃木家の当主様たちは恋仲だったんよ。で~、色々あってその三家の中には柊景夜の血が入ってて、か-くんは上里の分家。ここまで言ったら~何となく分かるかな?」
「今、しれっととんでもないことが聞こえた気がするけど聞き流しておきましょう」
夏凜は……ツッコムのを諦めた。
「ええ~っと、なるほど海斗の中に景夜さんって人の血が薄くだけど入ってる訳だ!……あれ?この話だと海斗と園子って……」
「案外、血が繋がってる遠い親戚の可能性はあるな」
「かーくんがお兄ちゃんなのは悪くないかな~」
そんな風に話が逸れかけたが、なんとか落ち着きを取り戻した風が舵取りをして話を戻す。
「それで、海斗のことは分かったから東郷のことを教えなさい」
「美森ちゃんは今、壁の外に居ます」
「か、壁の外ですか……でも、どうして」
「奉火祭、神世紀が始まる前の初代勇者たちの時代に行われた神事。天の神に赦しを請う為の儀式で、そのやり方は……壁の外の炎に巫女を六人送ること」
「おい、それって……」
「……生贄の儀と同じだよ。巫女の力は神の声を聞くこと、巫女ならその逆も出来なくわない。命を対価にな……」
「そして、わっしーは勇者でありながら巫女でもある稀有な逸材。大赦はわっしーにこう言ったんだと思う。「奉火祭で巫女六人が外の炎にくべられます、ですが美森様のお力添えを頂ければ巫女はそのお役目を果たすことはないでしょう」だってこう言われたらわっしーは……」
誰もが分かっていた、もしそんなことを美森が言われたら……
「まず間違いなく引き受ける。そして、その時に眼を付けられたのが俺だ。俺は諱のお陰で神からの不都合な干渉を受けない、だから今回の記憶改竄も俺が受けることはない。美森ちゃんは完全に俺の行動パターンを読んでた、自分が居なくなったら最初に動き始めるのは
「じゃあ、兄貴がアンタを匿ったのはそういう理由もあったってこと?」
「勿論」
ようやく、今回の事件の全貌がみんなに見え始めた。
そして、海斗はここでみんなに問いかける。
「俺は美森ちゃんを助けに行く、例え世界を敵に回しても味方であると誓ったからな。……みんなはどうする?行くか、行かないか。選択肢はちゃんとある、前回みたいに巻き込まれる形じゃない」
どうせ答えなど分かっている、だが海斗は聞かなければいけない。
日守の人間として。
友奈が最初に口を開く、その答えは……
「私も行く!」
その後はみんなが流れるように自分の意志を言っていく。
そして、残ったのは勇者として動くことの出来ない銀だけだった。
「……海斗に園子、須美のことは任せた。アタシはパーティの準備でもして待ってるよ……みんな行ってらっしゃい!」
『行ってきます』
変身を終えた勇者たちは声を揃えて挨拶を返す。
美森奪還作戦、これが最後の変身になる筈だった。
だが、勇者たちの物語はまだ終わらない。
次回もお楽しみに!
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