東郷海斗は勇者である   作:しぃ君

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 はしょってる感が凄いですが。
 後に話で終わります!


 それと、だいぶ遅くなりましたがお気に入り七十件突破&一万UAに到達しました!
 本編が終わっても誕生日回やらの方は続きますので。
 悪しからず。


第二話「足掻く人、嘆く人」

 クリスマスも目前に迫り、美森も退院したある日。

 部活内で友奈が、こんな話をした。

 

 

「ここで問題です。キリギリスがアリの借金をコッソリ肩代わりしたとしたら、その後どんな問題が起こるでしょうか?」

 

 

『うん?』

 

 

 この話には全員が首を傾げた。

 ある一人を除いては……

 

 

「何それ?」

 

 

「私にも分かりません…」

 

 

「はっ?」

 

 

「社会学の事象問題?」

 

 

「ええ~っと、学校新聞のクイズを考えていて~?」

 

 

「ああ~、そういうことか」

 

 

「それ、クイズになってないわよ」

 

 

 みんなが少し苦言を呈す中、友奈がもう一度口を開こうとした瞬間。

 海斗はいきなり友奈の手を掴み、部室を後にした。

 友奈が言葉を発する前に――

 

  -----------

 

 友奈を連れ出した海斗は、出来るだけ人目につかない場所に移動して話を聞こうとしていた。

 当の本人は、自分が何故連れ出されたのか上手く分かってない様だ。

 しかも、不自然に顔色が悪い。

 

 

(嫌な予感がビンビンだな……)

 

 

「友奈、お前なんか隠してることあるだろ?さっきの話で分かった」

 

 

 あの例え話には、何か意味がある筈。

 友奈が遠回しに伝えたかった何かが……

 

 

「多分だけど、アリが美森ちゃんでキリギリスがお前なんだろ?……そうと仮定した場合、起こる問題は……お役目の引継ぎ。こんな所じゃないか?」

 

 

 あの話からここまで割り出せるのは、一種の才能か、当てずっぽうか。

 けれど、彼には確信があった。

 最近の友奈から、何かおどろおどろしい気配を感じること。

 それも、友奈が発してる訳ではなく、他の要因があってその気配が発せられているということ。

 彼は友奈に対し鎌を掛けたのだ。

 

 

 彼女が引っかかることを信じて。

 そして、その思惑は見事に成功した。

 

 

「やっぱり、海斗君には敵わないな……。少し待ってね」

 

 

 友奈はそう言うと、制服を脱ぎ始めた。

 

 

「いやいや!ちょっと待て、ここ外だから!」

 

 

「大丈夫、他には誰も居ないし。海斗君にだったら見られても良いから」

 

 

 上の制服を脱ぎ、ワンピースの左肩に掛かっている紐を少しズラした。

 出来るだけ見ないようにチラ見していた海斗だったが、左胸にチラッと見えた太陽のような模様の刻印。

 それを見た瞬間、海斗の表情は激変した。

 

 

「友奈、もういい。服を着ろ」

 

 

「うん」

 

 

 海斗は見たことがある。

 ある資料の中で、あの模様を。

 太陽の刻印……こう言い換えた方がいいだろう。

 祟りの刻印と。

 日守家の祖先の中でも、この刻印を受けた者は少ないながらにも数名居た。

 

 

 その全てが、祟りによって殺されてしまったが……。

 この祟りはあまりにも危険。

 祟りについて話そうとすると、感染症のように話しを聞いた者に災いが訪れる。

 だからこそ、日守家で諱が採用されるようになったのだ。

 二〇歳になったら表立って真名を使っても良いのだが、使う者はあまり多くない。

 

 

 その所為で、稀に同じ名前が二人いることがある。

 最後に、日守家には今まで隠されていた秘密があった。

 海斗自身もつい最近知った事なのだが、長男以外にも諱が複数用意されていたらしい。

 まぁ、当然と言えば当然なんだが。

 

 

「美森ちゃんのお役目を引き継いだ、ってことで良いんだよな?」

 

 

「多分そう」

 

 

「……このことは誰にも言うな。俺には諱があるから祟りは受けないが、他の奴は普通に受ける。下手を打てば死ぬ確率が低いとはいえ数%とはあるからな」

 

 

「分かった……ねぇ、海斗君?」

 

 

「なんだ?」

 

 

「これ、治るのかな?治らなかったら……」

 

 

「安心しろ、俺が何とかする。苦しい時や辛い時は俺を頼って良いから、何かあったら連絡しろ」

 

 

「ありがと、やっぱり海斗君は優しいね」

 

 

「お前のその言葉いい加減聞き慣れたな」

 

 

 海斗はそう言ってその場を去る。

 美森に手早くメールを済ませ、サボると伝えてスマホをしまう。

 その後は急ぎ足で、大赦本部に向かって走った。

 何かしらの突破口を見つける為に。

 

  -----------

 

 あれから数日、クリスマス当日。

 徹夜に徹夜を繰り返し。

 海斗の身体には疲労が蓄積されていた。

 

 

「お~い、生きてるか~?」

 

 

「生きてるよ、人の貴重な睡眠時間の邪魔をすんな」

 

 

「いや、授業中もバリバリ寝てただろ!」

 

 

「そうよ海斗。居眠りは良くないわ」

 

 

「かーくんお疲れ~?そんな時は私のサンチョを貸してしんぜよう!いっぱいあるからね~」

 

 

「園子~、お前は相変わらずだな~」

 

 

「ホント、東郷の言う通りね。授業中も爆睡してたし」

 

 

「でも、海斗君が居眠り何て珍しいね」

 

 

 勇者部+αの騒々しさは激しい。

 この騒々しい感じも、いつもなら問題ないのだが三徹夜明けの海斗にとっては辛い。

 授業中で補ってはいるが、流石に睡眠時間を削り過ぎたらしい。

 あの日以来、大赦で門限ギリギリまで資料を見て。

 家に帰ってからも、日守の権限で持ち出した資料を見ていた。

 

 

 今だって、みんながいる中で資料を読んでいる。

読んでいるのは、日本神話の天照大神に関するものだ。

祟りや呪い関係の言葉が出てこないか全力で探し、その解決法を見つけようとしていた。

 

 

「海斗?何を見てるの?」

 

 

「ん~、別に。ただの本だよ」

 

 

「まさかエッチィ本?」

 

 

 陸斗の発言により、海斗はみんなからそれはそれは蔑んだ眼を向けられることになり。

 誤解を解くのにそれなりの時間を要した。

 

  -----------

 

 年が明けた。

 新しい年になってみんなで初詣に行った帰り道、海斗は一人別れて上里の本家に向かって歩く。

 大きな門を潜り、中に入る。

 神官たちには通してあるので、スムーズに中に入ることが出来た。

 ある広間に通され、中に入ると陽奈がお茶を飲みながら寛いでいるようだ。

 

 

「お久しぶりですね。新年のご挨拶……だけではないですよね?」

 

 

「ええ。……単刀直入に聞かせて貰いますけど、大赦ではどういう方針で決まったんですか」

 

 

「……神樹様の寿命が尽きかけているのはもう知っていますね?」

 

 

「はい」

 

 

 知っているのは当然だ。

 何せ、海斗は何週間も神樹の中で過ごしていたのだから。

 その時に、景夜に聞いたし、自分でも薄々感じた。

 あの温かさは、尽きかけていた力を振り絞っている故の物だったのだと。

 

 

「神婚。こういえば、何となく分かりますか?」

 

 

「……人間を神の位まで伸し上げる気ですか?天の神が黙ってませんよ」

 

 

「それを止めるのが、あなたたち勇者のお役目です」

 

 

「まだ助かる方法は――」

 

 

「そんな希望論が大人に通じるとでも?冗談はよしてください」

 

 

「……それでも、俺は諦めません」

 

 

「どうぞご勝手に」

 

 

 冷酷な態度を取る彼女に対し、海斗は一末の物悲しさを感じる。

 普段の彼女はもっと明るく、柔和な笑顔が絶えない人だった。

 けど、今は違う。

 今の彼女は、冷酷に無慈悲に、真実を突き付けてくる上里の(トップ)

 

 

「すいませんでした」

 

 

 一言を残し、海斗は上里家を去った。

 彼が去った後、部屋の中から少女のすすり泣く声を聞いた者は居たが何も言わず。

 ただただ、涙が枯れるのを待っていた。

 

  -----------

 

 一月も中頃に差し掛かったある日、海斗は美森に呼ばれ犬吠埼家に向かう。

 今日も今日とて資料を探していた彼からしたら、少しばかり迷惑にも感じたが美森に呼ばれた手前、行かない訳にはいかずとぼとぼと本部から歩いていた。

 そして、マンションに着いて犬吠埼家の中に入る。

 中には、勇者部の面々が居た。

 

 

「遅かったな」

 

 

「色々あったんだよ」

 

 

 銀の言葉に適当な言葉を返し、テーブルの周りに集まっているみんなの輪に加わる。

 テーブルの上には、

 

 

「勇者御記……」

 

 

 景夜に一度聞いた事がある。

 海斗はそう思い、中身の内容を大まかに予想し始めた。

 

 

「これを友奈が書いたってことか…」

 

 

「最近友奈ちゃんの様子が可笑しかった。その原因が掛かれてると思うんです」

 

 

「こんなのが出てくるなんてな……てか、これってアタシたちも書かなかったか?」

 

 

「うん、そうだね。私からも良いかな?」

 

 

 園子の表情がいつもと違う、真面目な雰囲気を醸し出している。

 海斗はこの時点で何となく察しがついていた。

 園子は気付いている。

 友奈の身体に起こっていることを……

 

 

「そのっち?」

 

 

「私もゆーゆが心配になって調べてみたんよ。最近みんなより早く帰っていたでしょ――実は大赦に行ってたんだ」

 

 

「大赦…」

 

 

 やはり、海斗もここ最近は自分宛ての依頼があると言って。

 あまり部活に顔を出していなかった。

 猫探しだったり、みんなでカラオケにも行ったらしいが、彼は何一つ行っていない。

 

 

「結論から先に言うと、ゆーゆの様子が可笑しいのわね。ゆーゆが天の神の祟りに苦しめられているからなんだ」

 

 

「おい、園子。それって……」

 

 

「聞いてミノさん。大社の調べで、この祟りはゆーゆ自身が書いたり話したりすると伝染する。それが分かったの。……だから、この日記は非常に危険な物なんだ。それでも、みんな見る?」

 

 

「見るわ、友奈ちゃんが心配だもの」

 

 

 海斗は止めない――いいや止められない。

 ここまでバレてしまえば、確実に今までやってきたものもバレるだろう。

 

 

「それじゃあ見るよ。ゆーゆの御記を」

 

 

 こうして、勇者部は勇者御記を見ていくことになる。

 

  -----------

 

 はじめに。

 年末に大赦の人たちが私の変化に気付き家にやって来た。

 事情は神託や研究を交えて知ったので神聖な記録として残したいから、この本に日記をつけて欲しいと…。

 続くかな。

 

 

 どうしてこんなことになったのか…。

 自分は大きな戦いで相当無理をしたようで、体中の殆どを散華してしまった。

 さらに、敵の御霊に触れたことで魂が御霊に吸い込まれて気が付くとそこは、東郷さんを助けに行ったあの場所だった。

 どこまでも空が広がる世界…。

 がんばって抜け出そうともがいてみたけど、どこまでもどこまでもどこまでも…。

 そこは広、がっていた…。 

 

 

 東郷さんの声が聞こえて、私はもう一度帰るために足掻き始めた。

 その時、どこからともなく青いカラスがやって来て。

 私の手に留まると一度鳴いて、また飛び出していった。

 そのカラスは、付いて来いと言ってる気がした。

 だから、私はずっとずっと光の方へ進み続けて。

 

 

 戻ってくることが出来たんだ。

 でも、体は違っていた。

 私やみんなは散華から回復したけど、あれは捧げられた供物が帰って来た訳じゃないみたい。

 回復した体の機能は、神樹様が作ったものらしい。

 それが自分の身体になるまで、時間が掛かった。

 強引な満開をして散華した私なんかは、治す為に全身神樹様が作ったパーツになったわけで。

 

 

 大赦では私を、御姿(みすかた)と呼んでるとか。

 御姿は良く言えばとても神聖な存在なので、神様からは好かれるんだそうだ。

 だから、私は。

 私の望んだことが、友達の代わりになることが出来て。

 それで世界のバランスが守られた。

 

 

 あれから大赦は異変に気付いて、私を調べてくれた。

 分かったことは、外の炎がある限りこの身体が治ることはないということ。

 そして、私は今年の春を迎えられないだろうということ。

 とても、怖いし。

 私の為に一生懸命頑張ってくれてる海斗君に申し訳ないし。

 

 

 何だか、トンネルの中に居るような気分。

 

 

 一月七日。

 みんなで初詣に来た。

 みんなといると元気が出るけど、うつさないように気お付けなきゃ。

 やっぱり口数が減っちゃう。

 食欲はなかったけど、甘酒が美味しくて喉が喜んでた。

 

 

 でも、家で吐いちゃった。

 

 

 一月九日。

 吐き気は酷かったけど、部室に居ると体がホワホワする。

 また明日って言葉が最近好き。

 約束すれば、明日が来ると思えるから。

 出来れば、ずっとこの場所に居たいな…。

 

 

 風先輩は温泉旅行を提案してくれたけど、今の私の裸を見たらみんながビックリしちゃう。

 とても行けない、ごめんなさい。

 

 

 一月一一日。

 今日は調子が良い。

 しっかり休んでるのが効いたのかも。

 体を動かせて楽しかった。

 このまま根性で、良い状態が続くかもしれない。

 

 他にも体に良い事を色々試して見よう。

 

 

 一月一三日。

 胸がとても痛くて、なんだか頭がクラクラする。

 多分、みんなと会話が成立してなかったかも。

 体、折角よくなったと思ったのに……。

 

 

 一月一四日。

 いっぱい寝て、体力を回復させなくちゃ。

 でも、電気を消して寝るのが怖い。

 暗いのが怖い。

 そのまま、暗いものに包まれてしまいそうで。

 

 

 一月一六日。

 今日は夏凛ちゃんを傷つけてしまった。

 でも絶対言う訳にはいかない。

 ごめんなさい、ごめんなさい。

 とても苦しい。

 体も痛い、心も痛い。

 

 

 ぐちゃぐちゃになりそう。

 もう可笑しい、私はただみんなと毎日過ごしたいだけなのに。

 

 

 弱音を吐いたらダメだ。

 海斗君に負担を掛けたくない、私の為に頑張り続けている彼に。

 もうこれ以上重しを載せたくない。

 私は勇者だから。

 もう泣かない。

 

 

 頑張れ自分、結城友奈。

 勇者は挫けない。

 

 

 とにかく、夏凛ちゃんと仲直りしたい。

 でも、本当のことを話せない。

 どうすればいいんだろう。

 もう、ここでいっぱい書く。

 

 

 夏凛ちゃん、私夏凛ちゃんのこと大好きだよ。

 夏凛ちゃん、本当にごめんね。

 

  -----------

 

 読み終えて、最初に放った言葉はこれだった。 

 

 

「……ごめん」

 

 

「かーくん……」

 

 

「海斗……」

 

 

「どういうことなんだよ……これ……」

 

 

「治らないってどういうことよ……春は向えられない……」

 

 

 美森は駆けだした。

 行こうとしてる場所なんて大抵検討が付く。

 

 

「待って美森ちゃん!」

 

 

「止めないで!すべて私の所為じゃない!天の神の怒りは収まっていなかった。私が受けるべき祟りなのよ!」

 

 

「日記を見たでしょ!美森ちゃんに移っても、あいつは祟られたままなんだよ!」

 

 

「そんな……」

 

 

「大赦はまた……私たちに重要なことを黙って!海斗!何で言わなかったの!」

 

 

 風の怒りが籠った言葉に答えたのは、海斗ではなく園子だった。

 

 

「迂闊に説明すると、みんなに祟りがいくかもしれないから話せなかったんだよ。でも、かーくんは諱があって祟られる心配はない。私もそうなんだ。祟りについて詳しいことが全部ハッキリ分かったのは、ついさっきだから……」

 

 

 夏凛が自分の言ってしまったことを悔やんで泣いていた。

 それを、樹がそっと撫でで癒している。

 少年は改めて、自分の無力さを知った。

 

  -----------

 

 その日の夜、信長に勧められて海斗はある一冊の資料を持ち帰っていた。 

 本の題名は「精霊降ろしと神霊降ろしによる、メリットとデメリット」。

 読み進めている内に分かったことが一つ。

 それは、神霊降ろしの力があれば天の神の撃退が可能だと言うこと。

 しかも、海斗は神霊降ろしを行使する素養があるということ。

 

 

 だが、

 

 

「いいか海斗、よーく聞け。神霊降ろしを行使する事、それ自体は俺の血を引いてるお前だったら可能だ。だが、お前が神霊の力に耐えられるかは分からない。幾ら、満開ゲージで肩代わりが出来ても。持って二分ちょいだ」

 

 

「っ!?分かってるよ……それでも。それでも、やらなきゃいけないんだ。交渉の方は頼んでいいか?」

 

 

「任せとけ」

 

 

 作戦を変更する。

 例え、この身を賭してでも。

 

 

「お前のことを助ける……友奈」

 

 

 どこかで、そう誓ったから。

 




 次回もお楽しみに!

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