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今日は十二月三十一日、大晦日であり歌野の誕生日。
景夜は歌野の隠れた趣味などを知らないので、直球でプレゼントに何が欲しいか聞いたところ。
「ベジタブルズの収穫を手伝って欲しいわ!」と言われて、歌野の畑に訪れていた。
「歌野~、大根抜き終わったぞ」
「オーケー景夜、じゃあ新聞紙が敷いてある場所に置いておいて」
時刻は午後一時過ぎ、八時頃から手伝っていたのもあってか、景夜にも少し疲れが見える。
だが、今日の手伝いは終わりだ。
「ふ~、農業ってやっぱり疲れるな。何だか鍛錬してるみたいだ」
「そうかしら?私はそうは思わないけど」
「農業をラブだから疲れないわ!」とか言い出しそうな雰囲気で言う歌野に、景夜は苦笑いを浮かべる。
「でも、こんなんで良かったのか?誕生日プレゼント」
「ノープログレムよ、だって今日は大晦日なのよ?こんな大事な日を私の為に使ってくれたんだから、それで十分よ」
歌野も作業を終えたようで、景夜の隣に座って休憩する。
「……これ」
景夜が何でもない風を装って、小さい紙袋に入ったプレゼントを渡す。
「?景夜これは何かしら?」
「誕生日プレゼントだよ。俺は形のある物でも渡したいんだ」
袋の中にはひまわりの髪飾りが入っている。
「髪飾り?ひまわりをチョイスした理由は何かあるの?」
「何となく、ただ……」
景夜が言葉を濁す、耳が赤くなっているのを見ると何か恥ずかしいものなのかもしれない。
「ひまわりの花言葉は『憧れ』、俺は昔お前に憧れに近い感情を持ってた。だから、それにした……これでいいか?」
「ええ、やっぱりあなたは
歌野の言葉の所為で余計に顔を赤くした景夜は、顔を逸らしてしまう。
「そうか、ならいい……」
「サンキュー景夜、でも別に良かったのよ。あなたには返しきれない恩があるもの」
多分、諏訪を助けた時のことを言っているのだろう。
そう考えた景夜は歌野の言葉を否定する。
「お前らを助けられたのは運が良かっただけだ、感謝されるのはいいけど恩は感じなくてもいい」
「きっとあなたはそう言うと思ったわ、でもね景夜。それはダメよ、だってそんなことしたら勇者じゃないもの」
きっと景夜の考えは間違っていて、歌野の方が正しいように思える。
だからこそ、歌野は確信をもって話せる。
「景夜が来た時には諏訪の人口は徐々に減りつつあったわ、ご老人たちが小さい子たちに自分たちの食料をあげてないとやっていけない程にね」
飢饉、諏訪では起こっても可笑しくないことだ、何せ年々過ごせる土地は無くなっていき、終いにはその所為で食料を育てる場所もなくなっていった。
「北海道の方達も来たから、これまでは大丈夫だったものが殆どダメになった。景夜たちが来るのが後少しでも遅れていたら、きっと人同士の争いで諏訪が滅んでたかもしれない」
「それはないだろ、諏訪の人たちは善い人ばっかだったし……あっ……」
景夜が思い出したように口を塞いだ。
「まぁ、色々なことも含めて。感謝してるし、恩を感じてるわ」
歌野の『太陽の輝き』にも似た笑顔が、景夜に諏訪が堕ちなかった理由を教えてくれた。
(歌野……お前の『悲しみをとめる』力が、諏訪を守ってたんだな)
「……今日さ、丸亀城のみんなで年越しパーティするんだけど、来る?」
「グッドな提案ね!みーちゃんと一緒でも良いかしら?」
「大丈夫だよ、こうなったら西暦組の雪花や棗さんも呼ぶか」
「そうね、それが良いわ」
いつの間にかトントン拍子で話は進んで行く。
「来年もよろしくな、歌野」
「こちらこそ、景夜のこと頼りにしてるわ」
二人の間には神世紀の仲間たちは入り込めないよう空間が出来上がっていた。
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その日の夜、景夜の自室にて――
「流石に窮屈になっちゃったな……」
「そうですね、ですがこう言うのも良いものですよ」
部屋の中ではそこかしこでゲームやら、雑談で盛り上がっていた。
景夜はひなたと共に、ベッドの上で座りながらその光景を眺めていた。
「クソゥ!千景に全然勝てないぞ」
「土居さんに負ける気はないわ、秋原さんと乃木さんは別だけど」
「ありゃりゃ、何だか千景に目を付けられてるに〜」
「そうこなくては面白くない!とことんやるぞ千景」
球子と千景と雪花と若葉は、四人でトランプで大富豪をしていた。
他のメンバーは、
「分かりますか友奈さんに水都さん!あの物語の奥深さが」
「奥深さとかは良く分からないけど、凄く善いお話しだったと思うよ」
「うん、私は本の方を読ませて貰ったけど、凄く感動したかな。最後の方は涙が出できちゃったもん」
杏に友奈に水都は、ドラマの話をしているようで、小説の方が原作なのか杏が鼻息を荒くしながら質問している。
最後に歌野と棗は、
「へぇ~、サトウキビにそんな育て方が……」
「ああ、その作り方の方が甘みが出て美味しくなる」
「今度詳しくレクチャーしてもらって良いかしら棗さん?」
「構わない……上手く出来たら少し分けて貰ってもいいか?」
「オフコース!」
二人は何だか農業?の話をしている、いつも通りな二人で景夜から安心できる光景だ。
十一時五十五分、あと少しで今年も終わる。
景夜はみんなの聞こえる声で、感謝を伝える。
「一年間ありがとう!来年も頑張ろう!」
『おおー‼‼』
この場に居る十一人の声が響く。
誰が言った訳でもないのに、重なった声が嬉しくて。
そこにいる全員が笑っていた。
来年もこんな風に過ごせればいいな、と全員が心から思った。
次回もお楽しみに!
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